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きまぐれな日々

とても寒い週末だった。

この季節だとこの程度の寒波の襲来があってもおかしくないのだろうが、土曜日の新聞で加藤周一の死を知って、ますます寒さが身にこたえた。加藤周一については、私は論じる能力を持っていないので何も書かないが、朝日新聞は私にとって加藤周一と吉田秀和(音楽評論家)の文章が読める新聞だった。「夕陽妄語」は、「山中人間話」として掲載が始まった頃(1979年)から知っており、途中朝日新聞をとっていなかった期間もかなり長いが、朝日をとっている時期には必ず読んでいた。

加藤周一は逝き、吉田秀和も4年前に妻に先立たれてから3か月に1度しか朝日新聞に寄稿しなくなった。加藤周一は吉田秀和賞の選考委員も務めてきたのだが、95歳の吉田秀和は89歳の加藤周一にも先立たれた。長生きというのも残酷なものだと思う。

巨星が落ち、為政者は虚勢を張り続ける。土曜日の強風は去ったものの空気の冷たい日曜日の街を歩きながら、麻生太郎首相のことを考えると、なんともいえないむなしい気持ちに襲われ、それでなくても暗い心がますます沈んだ。非正規を中心に、大規模な首切りが始まっているというのに、麻生は連日政策も日本語も勉強しないで飲み歩き、何の政策も講じず、前の日に言った言葉を撤回し続ける。ふと、月曜日(今日、12月8日)は真珠湾攻撃の日だなあ、と気づいて、占領期の宰相・吉田茂の孫はなんたる愚物なんだ、どうしてこんな人物を総理大臣なんかにしてしまったのかと思いをめぐらせた。

10月25日に大阪で聴いた辺見庸の講演会で、辺見はジョン・ダワーの『敗北を抱きしめて』(1999年、日本語訳増補版は岩波書店、2004年)を読めと読者に薦めた。半身が不自由になって以来、もっぱら文庫本を好むようになったという辺見庸が、例外的に開く大きな本だという。前々から気になっていたこの本を、私は昨年買ったのだがまだ読んでいなかった。辺見庸の講演を聴いたことがきっかけとなって、この大作を読んだのだが、読み終えてなぜ辺見がこの本を推薦したのかわかるような気がした。

日本国憲法の第1条と第9条はセットになっているという、よく聞く説の根拠も、この本を読んで理解することができたし、何より、戦後の「日本モデル」とされるものが実は日本とアメリカの交配型システム a hybrid Japanese-American model であり、このモデルに支配された時期は、戦争前の1920年代後半に始まり、1989年に終わった(つまり、大部分が「昭和」に重なる)、とする議論には説得力があり、目からウロコが落ちる思いだった。どうして自民党政権の政治家は代々対米従属路線を取らなければならなかったのか、その必然性も理解できたような気がした。

ダワーによると、日本にとっての戦後は1989年に終わったという。年の初めに昭和天皇が死んだが、ベルリンの壁が壊されて冷戦が終わった年でもある。国内経済ではバブルが頂点に達し、この年の大納会につけた最高値をピークにして、バブルは弾けた。この年が歴史の大きな転換点になったとは多くの人が指摘するところである。

本来、自民党の役割もこの年に終わったのだ。自民党だけではなく、社会党の役割も終わった。だから社会党は分裂し、一部は民主党に合流し、一部は小政党としてそのまま残り、さらに一部は零細政党に分かれていった。自民党も、2000年の森政権時代には、よく「歴史的役割を終えた政党」といわれていたものだ。それを、「自民党をぶっ壊す」と叫びながら延命させたのがコイズミだった。コイズミは、過激な新自由主義カイカクによって、自民党の代わりに日本の社会をぶっ壊した。

だが、社会の混乱と引き換えに政権政党を延命しようなどという馬鹿げた試みは永続はしない。自民党は相変わらず「戦後」を引きずっていて、日本とアメリカの交配型のシステムに縛られているから、アメリカのバブルが弾けて経済危機に陥ったこの期に及んでも、対米従属の政策しかとれない。国益をもたらす政策をとることができない。麻生太郎首相が無能さを露呈して内閣が自壊の様相を呈するに伴い、8年前に聞かれたと同じ言葉が、コイズミカイカクを熱心に持ち上げてきた電波芸者の口から聞かれるようになった。「お前が言うな」と私などは思うが、田原総一朗には恥も外聞もない。麻生内閣の支持率は、共同通信の調査で25%、朝日新聞の調査で22%、毎日新聞読売新聞の調査ではそれぞれ21%にまで落ち込んだ。

この世論調査結果を知って、私は気を取り直した。絶望している場合ではない。今度こそ、日本の人民の手によって政治を変えていくべき時ではないか。そう気づいた今日この頃なのである。


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