20日の経済財政諮問会議で、麻生は、「たらたら飲んで、食べて、何もしない人(患者)の分の金(医療費)を何で私が払うんだ」と発言していたことが26日に公開された議事要旨で分かったというのだ。
http://www.47news.jp/CN/200811/CN2008112601000936.html
昨日(27日)未明に公開された、この共同通信の記事には、たいへんな数の「はてなブックマーク」がついており、最近の政治関係のブックマークでは異様な多さだった城内実の醜悪なレイシズムエントリについた「はてなブックマーク」の件数(この記事を書いている時点で144件)をも上回った。
但し、大部分がエントリに対する批判・糾弾だった城内のエントリに対するコメントと違って、麻生発言の場合は、報じたマスコミの偏向を批判する右派のコメントも多い。たとえば、
などというコメントがある。j-kondo マスゴミ, メディアリテラシー, はてなサヨク, バカサヨ, 印象操作, 朝日新聞 また文脈を無視しての単語抜き出しの印象操作w ネット住人もネトサヨはマスゴミに操られるバカばっかw 学習しないというか、したくないんだろなw 2008/11/27
共同通信配信の記事なのに、なぜか「朝日新聞」というタグがついていて、ネット右翼の頭の悪さがうかがわれるが(笑)、『木走日記』がこうした馬鹿をあざ笑うかのように、「もう本当に嫌になってきたな、この政権・・・」というエントリで元ソースの『平成20年第25回経済財政諮問会議議事要旨』に直接当たって、麻生の発言がいかにひどいものであるかを検証している。
この経済財政諮問会議の議論は、日本の現状が「中福祉低負担」と認識して、これでは財政が持たないから「中福祉中負担」にしよう(つまり消費税増税をしよう)という基調で行われているもので、与謝野馨や朝日新聞・読売新聞などと同じ方向性を持つものだ。
ところが、議論の終わりの方(全13頁のPDFファイルの11頁目)で麻生太郎が突然次のような茶々を入れる。
67歳、68歳になって同窓会に行くと、よぼよぼしている、医者にやたらにかかっている者がいる。彼らは、学生時代はとても元気だったが、今になるとこちらの方がはるかに医療費がかかってない。それは毎朝歩いたり何かしているからである。私の方が税金は払っている。たらたら飲んで、食べて、何もしない人の分の金を何で私が払うんだ。だから、努力して健康を保った人には何かしてくれるとか、そういうインセンティブがないといけない。予防するとごそっと減る。病院をやっているから言うわけではないが、よく院長が言うのは、「今日ここに来ている患者は 600人ぐらい座っていると思うが、この人たちはここに来るのにタクシーで来ている。あの人はどこどこに住んでいる」と。みんな知っているわけである。あの人は、ここまで歩いて来られるはずである。歩いてくれたら、2週間したら病院に来る必要はないというわけである。その話は、最初に医療に関して不思議に思ったことであった。 それからかれこれ 30年ぐらい経つが、同じ疑問が残ったままなので、何かまじめにやっている者は、その分だけ医療費が少なくて済んでいることは確かだが、何かやる気にさせる方法がないだろうかと思う。
(『平成20年第25回経済財政諮問会議議事要旨』における麻生太郎の発言)
『木走日記』は、呆れたように書く。
麻生発言がどのような文脈でなされたかというと、元ソースを読み解けば、この麻生発言こそ、会議の前後の文脈を無視した現在の日本国総理大臣の悲しいほどの知的レベルの低さを明確にしてしまったものであります。
というワケで、元ソースに当たってみると、単独で麻生発言だけ切り取ったよりもさらに異様なトンデモ発言だったことがわかるのだ。全体の議論の中で明らかにこの麻生発言だけは、会議の前後の文脈を無視した突出したまた参考資料の提示もない実にレベルの低い発言であります。
論より証拠、この発言直後、麻生発言を無視する形で与謝野議員は議論をまとめなおしています。
前記の「はてブ」コメントをつけたj-kondoなる馬鹿は、他のエントリにつけたブクマコメントを見ても、
などと書いており、いまや絶滅危惧種と化している「自己責任厨」というやつらしい。2ちゃんねるに結構な数の左翼がいるのと同じように、「はてな」にも実は相当多数の右翼がいるのだ。そんな中で、大多数を批判コメントが占めた城内実のレイシズム発言は、よほどひどいものだったことを示すが、それはともかく、「また文脈を無視しての単語抜き出しの印象操作w」をしているのは、ネット右翼「j-kondo」自身であり、「これはひどい」、「ブーメラン」とか「お前が言うな」というタグをつける対象になりそうだ(笑)。サヨの言う「自己責任」と一般人の言うそれって意味が全然違うよね。レイプ被害者を「自己責任」などと言うのは、id:***みたいな左翼だけ。立ち入り禁止の立て看板のむこうに行って溺れるイラク3馬鹿とは違うw
麻生批判がいつの間にかネット右翼批判になってしまったが、この麻生発言が数ある彼の発言の中でも飛び抜けてひどいのは、麻生が国民皆保険の精神、ひいては政府の役割というものを全く理解していないとしか思えないからだ。いくら口で積極財政を唱えても、精神は新自由主義そのもの。森永卓郎あたりは、前政権時代には、福田康夫を「財政タカ派」と批判して、麻生太郎の積極財政政策を買っているような書き方をしていたが、これはとんでもないメガネ違いだったことを今では森永も感じていることだろう。麻生太郎こそベタな新自由主義者であって、その真の目的は「階級の固定化」にある。
『木走日記』は、エントリを次のように結んでいる。
さようなら麻生さん、そして二度と永田町には戻ってこないでくださいまし。
それがあなた様にとっても国民にとっても双方の幸せのためであります。
・・・
ふう。
もう本当に嫌になってきたな、この政権・・・
著者の木走まさみずさんは、私の見るところ保守の人である。その人にまでこのように書かれるとは、本当に麻生太郎にはもう「上がり目」はなさそうだ。
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現在の麻生政権だが、発足から2か月しか経っていないのにもう末期症状を呈している。麻生は、コイズミはおろか、安倍晋三よりも福田康夫よりも人気が低く、麻生を押し立てて選挙に勝とうともくろんでいた公明党は、人気は福田康夫以下だわ、求めていた解散総選挙は先送りされるわで怒り心頭だろう。でも自ら望んで麻生内閣成立に協力したのだから、「身から出たサビ」としか言いようがない。
麻生が連発する漢字の読み間違いについて、養老孟司は、「読字(どくじ)障害ではないか」、「読字障害の人は、特異な能力を発揮することが多い」などと、庇っているのか馬鹿にしているのかわからないコメントをしている。いや、いちおう麻生を庇って「エールを送って」いるのだが、「麻生首相やブッシュ氏は時代に求められたとみることもできる」などと、今世紀最低の不人気にあえぐブッシュを引き合いに出すあたり、庇っていると見せかけて馬鹿にしているのではないかと思える。
だが、仮に漢字の読み間違いは「読字障害」に過ぎないとしても、麻生が「株式に満期がある」と思っているとしか解釈できない発言をしたことは、「読字障害」では説明がつかないだろう。麻生太郎は、単なるバカなのだ。それこそ、超えられない「バカの壁」がある。
安倍晋三も福田康夫よりも麻生太郎が不人気なのは、それなりの理由がある。「真正保守」を自称する人たちの絶大な期待を受けて総理大臣に就任した安倍晋三には、改憲へのすさまじい執念があり、経済政策をそっちのけにして、教育基本法の改正に代表される、改憲を実現するための諸政策を推進した。田母神俊雄が航空幕僚長に昇進したのも、安倍内閣の時だった。時代が「ワーキングプア」という言葉が定着し、格差問題が取り上げられ始めた頃だったから、経済政策そっちのけの安倍晋三は世論の総スカンを食って、参院選惨敗によって内閣総辞職に追い込まれたが、安倍には狂気じみた信念があった。そして、福田康夫は基本的には総理大臣になりたいだけの人間だったが、コイズミと安倍晋三が大嫌いだったので、安倍内閣の政策を転換して、新自由主義色を弱めるとともに、アジア重視の姿勢を打ち出し、「福田ビジョン」を打ち出して、私はこれでは不十分だと思うけれども、コイズミ時代に推進にストップがかけられた再生可能エネルギー政策を曲がりなりにも再建する方向性を示した。つまり、福田康夫には、「反コイズミ、反安倍晋三」という方向性があった。
だが、麻生太郎には何もない。そのことがわかった2か月だった。
麻生太郎に期待をした人たちには2種類あって、まず、安倍晋三、中川昭一や平沼赳夫らと親しい麻生に、「真正保守」の政策推進を期待した、産経文化人やネット右翼ら、「極右」の人たちだ。だが、その期待は麻生が「村山談話をふしゅうする」と言ったことによって裏切られた。
また、麻生に旧保守のケインジアン的経済政策による景気対策を期待した人たちは、麻生が実質的に何もせず、景気対策を口実に解散総選挙を先送りしたにもかかわらず、2次補正予算案の提出を先送りにしたことによって期待を裏切られた。そもそも、「株式に満期がある」と思い込んでいる人間が、「経済の麻生」などであるはずがない。
臨時国会冒頭での解散を回避した麻生の決断は、やはり自公与党を窮地に追い込んだ。あの時解散していれば、今ごろもう選挙は終わっているが、自民党は負けたにしてもさほどの大敗にはならなかっただろう。安倍内閣や福田内閣の発足直後より低かったとはいえ、麻生内閣にはそれなりの「ご祝儀相場」で40%台半ばから50%台前半の支持率があったからだ。だが、今となってはNHKがいくら「自民党のコマーシャル」として、他のメディアより高めの支持率調査結果をたたき出したところで、もはや麻生内閣の人気を再浮上させることはできない。
こんな状況に、自民党内では早くも「泥船から逃げ出す」動きが始まっているようだ。
先週の『サンデー毎日』(11月30日号)には、加藤紘一と山崎拓が自民党から30人を離党させて民主党への合流に動くという観測記事が出ていたし、朝日新聞の星浩編集委員は、先日『報道ステーション』で、中川秀直ら「上げ潮派」の動きがカギを握るという、新自由主義寄りの同氏らしいコメントをしていた。また、昨年未遂に終わった「大連立」の仕掛人・ナベツネは、「早くも麻生政権に見切りをつけ、与謝野氏を軸にした小沢民主党との連立政権の可能性を探っている」という情報もある(下記URL)。
http://www.data-max.co.jp/2008/11/post_3586.html
もはや自民党の溶解が始まった、そんな観さえある。もういつ総選挙をやろうが、自民党の再生は不可能な状態となった。ことここに至った以上、民主党が平沼一派と提携する必要など何もなく、人間とは思えないレイシスト発言をした元政治家をメンバーに含む平沼一派など、民主党は一刻も早く切り捨てなければならないと私は考えるが、それはともかくとして、こんな状態になった自民党がこれ以上政権を運営するのは、国民にとって百害あって一利なしだろう。
久々に経済関係について述べると、11月14, 15日の両日行われたG20金融サミットについて、納得できる解説をしてくれているのが森永卓郎である。
「米国という泥舟にしがみつく外交でよいのか」と題したこのコラムで、森永はIMFに1000億ドル(約10兆円)を融資すると約束した麻生を批判し、
と書いている。つまり、今回の金融サミットで、麻生総理は全面的にブッシュ大統領にくっついて戦ったわけだ。これは現在の世界経済の状況を全く認識していないことを示す恐るべき行動である。米国がまさに沈んでいこうとしているとき、その泥舟に全面的に乗っかっていこうというのだから救いようがない。しかも、それを国際舞台で堂々と宣言をして、なおかつ行動までしてしまったのだから、もう驚くよりほかないだろう。
(中略)それにしても、今後も米国ベッタリを推進するとなると、これは日本経済にとって非常にマズい事態なのである。
森永は、アメリカは今後10年は復活できないだろうと予想し、
と悲観的な予想をしているが、残念ながらこの主張にはとても説得力がある。そんな米国に、最後までしがみついていこうというのが麻生総理の戦略なのである。この方針をいますぐに転換しないと、日本の未来は真っ暗である。
しかし、米国との同盟は、祖父の真似をしたがる麻生総理の根っこであるといっても過言ではない。政権交代が起きるか、少なくとも総理大臣が変わらない限り、日本は米国という泥舟に乗ったまま一緒に沈んでいく運命が待っているのである。
もはや、自民党の世襲政治は限界に達した。無能な二世、三世の総理大臣では日本を悪くするばかりだ。
民主党の小沢一郎や鳩山由紀夫も世襲議員だが、世襲議員や極右議員が党全体に占める割合は、まだ民主党の方が自民党よりは低い。
民主党を中心とする連立内閣ができたところで、一朝一夕に素晴らしい政治をやってくれるとは私にはとても思えないが、それでも現在の最低最悪の麻生内閣が退陣するだけでも意味がある。誰に交代したって自民党ではどうしようもないことは、ここ数年続いた自公政権の迷走を見ていれば自明だろう。
麻生太郎がこれ以上悪名を後世に残さないためには、一刻も早く総辞職して、野党第一党である民主党の選挙管理内閣によって解散総選挙を行ってもらうことだ。麻生内閣の存続こそ、最大の政治空白である。
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田母神や城内には一度たりともたぶらかされたことのない当ブログだが、佐藤優にはもののみごとにダマされた。ブログを開設するかしないかの頃に読んだ佐藤の著書『国家の罠』(新潮社、2005年)はとても面白くて示唆に満ちたものだった。この本は、魚住昭が絶賛したから読んだものだが、その魚住との共著である『ナショナリズムの迷宮』(朝日新聞社、2006年)も面白かった。しかし、その後読んだ鈴木宗男との共著である『反省 私たちはなぜ失敗したのか』(アスコム、2007年)はあまり感心しなかった。
それでも、当時の私は佐藤優に対する肯定的な評価は変えていなかった。実は、2006年の末頃、『週刊現代』において、佐藤優が安倍晋三を持ち上げている文章を読んで、一度佐藤への評価が否定的に傾きかかったのだが、直後に読んだ『ナショナリズムの迷宮』で再び評価を肯定的に変えたのである。今思えばこれがうかつだったのだが、私が最も信頼していたジャーナリストの一人である魚住昭との共著だったのが大きかった。
魚住昭は、その著書『特捜検察の闇』(文藝春秋、2001年)で、私に辺見庸の「鵺のようなファシズム」という言葉を教えてくれた人である。その魚住昭自身が佐藤優に引っかかり、「佐藤優現象」の形成に協力してしまった、というのが現時点における佐藤優と魚住昭に対する私の評価である。もちろん、私自身もブログで『ナショナリズムの迷宮』を持ち上げてしまうなどの誤りを犯した。
今日のエントリの後半では、ブログにいただいたコメントを紹介する。最近再びコメントをいただくようになった三介さんは、11月21日付エントリ「麻生内閣支持率30%に見る日本人の知性の劣化と城内実」へのコメントで、
と書いている。佐藤優氏は『国家の罠』で、「ナショナリズム(排外主義)は過激なほど受け、自国の損害はよく記憶するけど、他者の痛みにはまったく無頓着」という風に定式化してる。ご本人は、ナショナリスト(排外主義)ではなく、愛国主義者(郷土愛に近い概念かな?)だとも言っている。
これを受けたjunkoさんのコメントを以下に紹介する。
>佐藤優氏は『国家の罠』で、「ナショナリズム(排外主義)は過激なほど受け、自国の損害はよく記憶するけど、他者の痛みにはまったく無頓着」という風に定式化してる。
上記で三介さんがおっしゃっているとおり、佐藤氏は『国家の罠』ではこのように記述しています。これを普通に読めば、過去アジア諸国に与えた日本の侵略や植民地支配の加害性を(も)念頭に置いた上での発言かな、と思えます。しかし、次(半年後)に刊行された『国家の自縛』では、聞き手の斎藤勉氏(サンケイ)が
?その韓国ですが、歴史・教科書問題での執拗さ、謝罪要求のしつこさには本当に閉口させられますね。
と語りかけたのに対し、
?そう思いますよね。ですから「斎藤さん、確かに斎藤さんと手切れの約束をしてあのとき百万円いただきました。しかし、斎藤さんとの子供が今度中学に入るんです。私立にも入れたいんであと二百万円ください」そんなふうに言ってくるような女性と一緒ですよね。
と答えています。歴史認識や教科書問題が、なぜこのような次元のたとえ話に変わってしまうのか、実に不可解なのですが、実は、佐藤氏の言論活動はそのほとんどがこのような二重性をもって構成されているように見えます。
金光翔さんは具体的例を克明にあげてさまざまな観点から<佐藤優現象>を記述・分析なさっていますが、その他たとえば憲法に関して、佐藤氏は、「筆者は護憲論を支持する。しかも現行憲法の条項には一切、改変を加えてはならないと考えるかなり硬直した護憲の立場に立つ。」(『世界』2007年5月号)と明言しながら、一方、著書や対談、講演などでさかんに軍法会議の設置を唱えていて、どうやら最近ではご本人もそのことを隠そうとはしていないように見えます。「私は、軍法会議を設置しようと強く主張しているんですよ。軍法会議を設置することによって、防衛省が自足するようなところへ持って行くという形になれば秘密も守れるじゃないですか。」(国家を斬る2007年)
なぜ軍事裁判所が必要なのかといえば、佐藤氏によると、「私は、自分の裁判でよくわかったんですけれども、司法官僚たちには外交の意味がわからない。」からだそうです。
イージス艦衝突事件の時、石破防衛相はテレビでチラッと「軍法会議がないから、こうやって隠そう隠そうとすることになる」というような発言をしたそうですね。誰もこの重大発言に注目しなかったと怒っておられるブログを2、3見ましたが、防衛相がこんなことをテレビなどで大っぴらに、しかもあんな大事故の直後に言えるのはなぜなのか。佐藤氏の言動を見ても、彼らの間ではもはや秘密にしなければならないほどのことでもないのではないかと疑いたくなります。「現行憲法の条項には一切、改変を加えてはならない」という見解はどこへ行ったのか。佐藤氏が見事なほどのダブルスタンダードの遣い手であることは間違いないでしょう。
(junkoさんのコメント=適宜改行を追加しました)
当ブログは以前にもjunkoさんのコメントを紹介したのだが、その時と同様、これはコメント欄に置いておくのはあまりにもったいないコメントだ。リベラル・左派をたぶらかす右翼論客・佐藤優の手口がわかりやすく書かれている。
CrowClawさんは、佐藤優現象にからめて城内実を批判している。これを紹介する。
はじめまして。
新しいエントリーへのコメントでも書きましたが(http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.m-kiuchi.com/2008/11/21/misogiharahe15710/)、あのエントリーが差別なのは、彼が(おそらく意図的に)観念としての「人種」と目の前の人間を混同して扱っているからです。例えどんなに悪辣な中国人が目の前にいたとしても、それが観念としての「中国人」を悪辣だと言える根拠にはならないように、観念としての「左翼」や「反日主義者」と、一人の右翼(城内氏)への批判者を混同することはできません。が、新しいエントリーで彼がやっていることはまさにその通りの行為でしょう(彼の言い方を用いるなら「レッテル張り」です)。
このように集団的な観念(国家もですが)ばかりが増幅され、社会が一人一人の人間の顔を見ようとしなくなったとき、ファシズムのような動きが活発化するのだと思います。
もちろん、こうした「レッテル張り」は右派に限った行動ではありませんから、kojitakenさんの仰られる通り、本当に危険なのは左派にすら肯定されるファシストが出てきてしまったときだと思います(金光翔氏は「佐藤優現象」をそのような動きの準備段階とみていますが、佐藤や城内程度の人物では(幸いなことに)真のファッショの担い手とはなり得ないでしょうね)。
あと、エントリー中で麻生の支持者について書かれていますが、kojitakenさんの言われるような「騙される人」は、別に愚かだから騙されているのではなくて、騙されたいから騙されているのではないでしょうか。私は性格が悪いので、そういうものに「騙される」人を「本当は無垢なのだ」とは思いません。むしろ、「騙される」人々の内面の悪辣さこそが、彼らをそのような行動に駆り立てているのではないかと思います。
よろしければ、toledさんの以下のエントリーなども参考になさってください(もう読まれているかもしれませんが)。
http://d.hatena.ne.jp/toled/20070726/1185459828
(CrowClawさんのコメント=適宜改行を追加しました)
コメント末尾でご紹介のエントリは未読だった。とても興味深いエントリのご紹介を感謝する。長いのでまだ全文は読めていないが、「はてなブックマーク」をつけておいたので、あとでゆっくり読みたいと考えている。
最後に、当ブログのエントリを読んで城内実に対する認識を新たにしてくださったブログ『てあとる☆北極』の管理人さん、もとい支配人さんのコメントを紹介する。
kojitakenさん、改めてお久です♪
うちにコメを入れて下さった時点では、私自身城内実氏について判断しかねる状態だったのですが、ご紹介して下さったエントリを読んだ時点で貴方が城内氏に辛辣な評価をなさる理由が良く判りました。
今日び、ネトウヨに阿るなど言語道断、正直、故・いかりや長助氏の定番フレーズ・「駄目だこりゃぁ」としか言いようがありませんね。
(てあとる☆北極の支配人さんのコメント)
当ブログでは、このところせっかくいただいたコメントにもほとんど答えることができずにいるが、このように時々コメントをエントリ本文で紹介することによって、せめてもの罪滅ぼしをしたいと考えている。
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本当にこの男は単独犯なのか、背後関係はないのかということに関しては、当ブログでは議論しない。ただ、怖いと思うのは、このような暴力が肯定される空気があることで、それだけ日本の社会がすさんできたということだ。
ファシズムがいつやってきてもおかしくない、そんな時代だと思う。マスコミでも大騒ぎになった田母神俊雄の「アパ懸賞論文」問題も、ネットの一部だけでしか問題になっていない城内実ブログのトンデモエントリも、底流をなす思想は同じで、渡部昇一や「新しい歴史教科書をつくる会」、メディアでは産経新聞が主導してきた過激な国家主義、すなわち極右思想が台頭しつつあるということだ。ちなみに、渡部昇一は統一協会系の日刊紙『世界日報』ともかかわりが深いことで知られており、一昨年ネットを中心に話題になった、安倍晋三をはじめとする大勢の政治家が統一協会系団体の大会に祝電を送った件も、一連の流れと密接な関係を持っている。
今朝(11月25日)の朝日新聞3面に、「検証・前空幕長論文の底流」と題した記事が掲載されているが、それによると、航空自衛隊のOB会「新生つばさ会」や、10万人を超す自衛隊OBの最大組織「隊友会」には、田母神俊雄に対して、「彼ひとりを孤立させてよいのか」、「会をあげて彼を応援しよう」という意見が相次いでいるそうだ。一方で、隊友会副会長でもある冨澤暉(とみざわ ひかる)・元陸上幕僚長は、「今、私たちが考えるべきことは、田母神氏の言動に同調することではない」と戒めたそうだから、暴走一方という状態でもないようだ。
しかし、上記朝日新聞の記事によると、田母神は、統幕学校の校長時代の2003年、「日本の歴史と伝統への理解を深めさせる」として、「幹部高級課程」の一部カリキュラムに「歴史観・国家観」の講義を新設したそうだ。そして、その講師陣は「つくる会」のメンバーら、田母神と同じ歴史観を持つ極右が多く、これまでに幹部390人が受講した。
さすがに、これは国会で批判を浴び、防衛省は来年度からの見直しを明らかにしているというが、ここで見逃してはならないのは、これまで田母神俊雄のような人物を引き上げてきた政治家たち、具体的には森喜朗、安倍晋三、石破茂らの責任だろう。朝日新聞などのメディアは、田母神までは批判しても、森や安倍らをまともに批判しようとする姿勢さえ見せない。
ただ救いは、右派メディアでも田母神を擁護する動きは少なく、産経は本家本元だし、そもそも花岡信昭なるゴロツキがアパ懸賞論文の審査員を務めていたくらいの確信犯だからどうしようもないが、文春も新潮も田母神を批判する側に回っている。それほど田母神の妄動は危険すぎるのだ。
たとえば、「週刊文春」11月27日号は、「田母神支持「ヤフー・アンケート」はヤラセだった」という記事を掲載している。この記事は、「調布史(ふみ)の会」世話人の松木國俊なる人物が、ヤフーが実施した「田母神発言は是か非か」というアンケートに対して、投票先のURLを明記して田母神への支持を呼びかける「指示メール」を送ったことを暴露している。さらに、このメールを受け取ったある女性がネット右翼が運営するブログにメールを送り、そのブログがアンケートへの投票を呼びかけた。これが他のブログにも広がり、ついにアンケートは田母神支持派が58%を占めるに至ったのである。
当ブログは、この種のネット世論調査は無作為抽出にはなりえず、煽りによって偏った結果が出るのは当たり前と考えているので、アンケートへの投票を呼びかけることはしていないが、この種の呼びかけはもちろん右でも左でもやっていることだ。だが田母神の滑稽なところは、今月11日に行われた参議院外交防衛委員会の参考人招致で「ヤフーの『私を支持するか』『問題があると考えるか』(という意識調査)では、58%がですね、私を支持しております」と堂々と語ったことだ。こんな頭の悪い人物に航空幕僚長が務まったこと自体が、私には信じられない。
ま、田母神の頭の悪さは放っておくことにして、城内実応援の動きについて最後っ屁をかますが、どこか城みちるにも似た、ソフトなムードを漂わせる風貌と、社民党の政治家かと思わせるような主張が並ぶウェブページを持つ城内は、「リベラル・左派」をたぶらかそうとしていたのであろうか。かなり前から、アクセス数の多い著名な「リベラル・平和系」(と思われている)ブログが、右派民族主義者である常連コメンターの勧めに従う形で、かなり前から大々的に城内実応援キャンペーンを張っている。それに積極的に応じて城内の写真をバナーとして貼りつけるブログもあれば、何も言わずに城内と関係のない記事で当該のブログにリンクを張って持ち上げるような、いわば間接的に城内を助けているブログもある。もちろん、中には当該ブログとの友好関係を保ちながらも、城内実を厳しく批判する筋の通ったブログもあるが、それはあくまで例外であって、当該ブログとつるんでいる大部分のブログは、城内実批判を腫れ物に触るように避けているのが実情だ。
ファシズムとは、こんな雰囲気の中から生まれてくるのではないかと思う今日この頃なのである。
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サワヤカな安倍晋三は「パチンコ業界から北朝鮮への資金の流れ」の解明を拒絶した警察官僚・城内康光警備局長(当時)とは関係ない。
城内康光が拒絶した理由は「パチンコ業界に警察OBが多数天下っている」からじゃない。
城内康光は、自分のレイプスキャンダルを山口組系後藤組に隠蔽してもらってなんかいない。
城内康光は神奈川県警本部長時代に(注)後藤組の資金源だったオウムの犯罪を隠蔽なんかしていない。
城内康光の倅は城内実(桜チャンネル常連)・元国会議員じゃない。城内実は安倍晋三の弟分なんかじゃない。
ちなみに、「チャンネル桜」というのは、私も全然知らなかったのだが、
とのことだ。日本の伝統文化の復興と保持を目指し
日本人本来の「心」を取り戻すべく設立された
日本最初の歴史文化衛星放送局です。
この、「歴史文化衛星放送局」は、水島総という男が、私費7億円を投じて運営していたものの、全く採算が合わず、水島は無一文になってしまったそうだ。
日本文化チャンネル桜は、創立五年目を迎えましたが、ここに至りまして、運営資金が致命的な不足に陥り、平成二十年九月以降の放送を続けることが困難になりました。この五年間は、代表取締役社長である水島が、私費約七億円(衛星放送フィリピンチャンネル株売却や個人預貯金等)を投じ、チャンネル桜の運営資金に当てて来ました。 しかし、それも全て尽き果て、公共電波による放送続行が不可能になりました。残念ながら、これまでの視聴者や個人スポンサーの皆様による支援だけでは、チャンネル桜の放送を続けていけないのが、厳しい現実であります。
このまま潰れてしまえば良かったのだが、
とのことで、一部復活したらしい。チャンネル桜の衛星放送は、九月末で放送中止となっておりましたが、チャンネル桜二千人委員会創設の前進(千百名)の中で、このほど十一月からですが、スカパー!の CH 216 「ベターライフチャンネル」(無料チャンネル)において、放送を一部再開させていただくこととなりました。
「日本文化チャンネル桜二千人委員会」の代表を務めているのは渡部昇一である。あの「アパ懸賞論文」で田母神俊雄に300万円を贈った審査委員長にして、稲田朋美の後援会長、そして何より、優生思想を持つ極右文化人である。
そして、この「チャンネル桜」の常連だったのが城内実なのだ。だから、城内が極右であるのは当たり前のことだ。
この「チャンネル桜」でやらかした城内実の妄言が、ネットで叩かれたことがある(「解決不能 ?城内実元議員の発言が色々と酷い」)。
このエントリには、53件の「はてなブックマーク」がついている(11月21日に3件増えたw)が、残念ながらリンク先の動画は削除されてしまっていて、見ることができない。
なお、「城内実」を検索語にしてGoogleで検索すると、「反戦な家づくり」のエントリ「城内実 ゴールネット 安晋会」が1ページ目に引っかかる。これはずっと以前からそうで、2006年2月の記事だが、同年の6月頃にはすでに検索上位で引っかかっていた。
このエントリで、城内実のメッセージが「STOP THE KOIZUMI」に出てくることが皮肉られているが、STK主宰者のブログは、前年夏の郵政解散に先立って城内実が造反した時、城内に批判的なエントリを2本上げていた。
http://critic.exblog.jp/3072592/
http://critic.exblog.jp/3077636/
後者については、「kojitakenの日記」のエントリ「3年前の城内実」で一部を抜粋、紹介した。本エントリでは前者の一部を抜粋、紹介する。
城内実は森派所属の当選一回議員で、静岡七区選出の四○歳。採決の前に議場席で「どうしよう、どうしよう」と手を震わせ、机に顔を伏せたり上げたりして、迷い抜い抜いている様子を露に表現した。あまり目立つので、「迷っている若い議員がいるぞ、あれは誰だ」という話になり、テレビ朝日が撮ったのである。するとお誂え向きに親分の安倍晋三がノコノコやって来て、城内実を議場の後方に連れ出し、バカな真似はするんじゃないと釘を刺す場面まであった。結局、安倍晋三の説得の甲斐なく城内実は青票を投じ、採決後にはテレビ朝日のインタビューで「安倍政権実現のために粉骨砕身させていただきますと申し上げました」とシラッと言いのけた。若いのに芸達者な男である。古館伊知郎の話では、城内実の後援会の有力者が特定郵便局長会の大物なのだと言う。城内実にとっては最高の票決結果となった。
(『世に倦む日日』 2005年7月6日 「郵政民営化と靖国参拝 ? 一石二鳥と政界再編の解散総選挙」より)
「採決の前に議場席で「どうしよう、どうしよう」と手を震わせ、机に顔を伏せたり上げたりして、迷い抜い抜いている」議員がどうして「とことん信念」を自称し、稲田朋美(自民党)や松原仁(民主党)といった極右政治家の応援歌も作った右翼作曲家に「信念つらぬく 城内実」なる応援歌を作ってもらえるのかさっぱり理解できない。この記述を見る限り、城内実は「信念」どころか、コイズミばりの「劇場政治家」そのものではないか。
それにしても、2つのエントリで城内をこき下ろしたブログが主宰する反コイズミキャンペーンに登場した方もさせた方も、「敵の敵は味方」の論理に基づいて行動したものだろうか。私は、「STK」に城内が登場したことが、その後城内が「リベラル・左派」のブログに一定の支持を広げることにつながったのではないかと思う。
ま、私も安倍晋三を倒すためなら右派の反新自由主義勢力を組むことも辞さない、と書いたことがあるので、大きなことは言えないのだが、城内実はその安倍晋三の腹心だったのだ。なにか、城内は「今は政治家ではない」などとわけのわからないことを言っているらしいが、城内は、3年前に「ポストコイズミ」の一番手と見られていた(そして、実際に首相になった)安倍晋三の側近といわれていた男だ。郵政解散・総選挙のハプニングさえなければ、城内実は2006年に発足した安倍晋三内閣で内閣官房副長官になったのではないかとさえ思う。立派な大物政治家である。
安倍晋三は、2000年の森政権時代にコイズミに推されて内閣官房副長官になり、コイズミ時代にも同じポストにいて、2002年に早稲田大学で「核兵器の保有も使用も違憲ではない」などのトンデモ発言をやらかした。城内実も、安倍内閣の官房副長官になっていたら、同様に好き放題のレイシスト発言を繰り返したのではなかろうか。
そう思うと、城内実の酷いレイシズムエントリについた「はてなブックマーク」にある、
というコメントに共感してしまう。コメント主は、明らかに「コイズミカイカク」や「郵政総選挙」に否定的だが、それでも城内実が落選したことは、「郵政総選挙」で唯一良かったことだ。そう言いたいのだろう。私も同感である。先の「郵政選挙」も悪いことばかりでは無かったのだなぁ・・・
(注)城内康光が神奈川県警本部長を務めたことはありません。「サワヤカな安倍晋三」の文章が間違っているわけではありませんが(笑)。
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"bakawashinanakyanaoranai" (馬鹿は死ななきゃ直らない)というふざけた文字列を含む城内実のブログエントリについた「はてなブックマーク」の数は、増加が一向に止まらず、ついに110件を超えた。これまで零細だった城内実のブログとしては突出した人気エントリになり、城内は一躍人気ブロガーの仲間入りを果たした(笑)。
しかしその内容は笑いごとではなく、「こんな人が実際に国会議員をやっていたなんて信じられない」とは、誰もが思うことだろう。さすがは安倍晋三の側近だっただけのことはある。人権感覚のかけらもない極右レイシストだ。反コイズミ・反安倍晋三の主張をしていたかたわら、こんな人物を持ち上げていた「政治ブロガー」たちの責任もきわめて重い。
「はてブ」100件超については、「kojitakenが煽ったせいだ」と被害妄想に陥っている城内実の支持者もいるかもしれないが、当ブログではエントリ1件あたりの「はてブ」件数は、50件を超えたことが一度あるだけだ。自分のブログでもその程度なのに、他人のブログの「はてブコメント」を炎上させる力など、当ブログにはない。城内のエントリについたすさまじい「はてブ」の数は、それだけあのエントリが読んだ者の度肝を抜き、心胆寒からしめるものであることを示している。
なお、「kojitakenの日記」の方では、「故稲尾和久氏が暴露していた「燃える男・星野仙一」の正体」という、稲尾和久さんの著書を紹介したエントリで142件の「はてブ」をいただいたことがあるが、「kojitakenの日記」においても、これが唯一の3桁「はてブ」である。この時には、1日に8600件を超えるアクセスをいただいたが、城内のブログにも相当な数のアクセスが殺到したに違いない。そして、読者の大部分は城内に対して極めて強い嫌悪感を抱いたことだろう。
これは、場合によっては静岡7区の情勢を変えるかもしれない。静岡7区は、前回の総選挙で「刺客」の片山さつきが城内を倒して当選した選挙区だが、その後の新自由主義の没落と、倣岸不遜な片山のキャラクターが嫌われていること、さらに落選した城内に同情が集まっていることなどもあって、情勢は圧倒的に城内が有利と見られていた。
前回の総選挙では、民主党は阿部卓也を立てたが落選した。その阿部はブログを開設しており、昨年12月18日付で、「城内 実氏について」というエントリを公開している。以下引用する。
民主党の7区の公認候補者擁立作業が進んでいますが、
「城内実氏を民主で公認するなり、国民新党で戦ってもらって
応援すればどうか」とのご意見やご質問をいただきます。
この際、あくまで「私個人の認識」ですが
誤解や混乱が生じないよう、はっきり申し上げておきます。
あらゆるルートからのアプローチに対して
ご本人が「NO」であり、
野党サイドでたたかうことに同意がいただけなかったもの。
と考えております。前回同様、“正当な自民党”を
めぐる選挙を望まれているものと拝察いたします。
よって、政権選択選挙となる今回の衆議院選挙におきましては
民主党としては当然ながら候補者の擁立を致します。
(静岡県議会議員 阿部 卓也のブログ 『負袋録(ふたいろく)』 2007年12月18日付エントリ 「城内 実氏について」より)
呆れたことに、城内実を民主党または国民新党公認で擁立しようという動きがあったのだ。だが、城内の方からそれを蹴った。だから、民主党は静岡7区の候補者を公募し、その結果内定したのが斉木武志なのである。
昨日、「カナダde日本語」が、静岡7区と静岡8区の民主党候補を紹介するエントリ(下記URL)をあげていて、それに私がコメントしたところ、エントリに盛り込んでいただいたのだが、そこにも書いた通り、斉木武志は先月発表された民主党の2次公認から漏れた。
http://minnie111.blog40.fc2.com/blog-entry-1272.html
ここから私のコメントを再録する。
民主党が先月発表した二次公認から斉木武志氏は漏れています。
私は、もしかして民主党が城内実に遠慮して斉木氏に立候補を取り下げさせるのではないかと思っていました。しかし、ここにきて城内実がブログで筆禍事件を起こし、事情が変わりました。
城内のブログ記事
http://www.m-kiuchi.com/2008/11/11/bakawashinanakyanaoranai/
は、そのあまりのひどい内容のため、「はてブコメント」が炎上しました。
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.m-kiuchi.com/2008/11/11/bakawashinanakyanaoranai/
これで、民主党が城内や片山さつきを倒すために立ち上がらなかったら、政権交代を目指す政党の名が泣くというものでしょう。おそらく斉木氏は三次公認に入ると思います。
有力と見られていた城内は、今後間違いなく失速するでしょうから、静岡7区は片山を含めた三つどもえの大混戦になることでしょう。
ここで書いたように、私は民主党は斉木武志の公認を内定したあとも、候補者の擁立を止めて、事実上城内実の応援に回るのではないかとずっと疑っていた。当地から瀬戸内海を隔てた対岸にある岡山では、平沼赳夫に遠慮して民主党は岡山3区の候補者擁立をしない方針だから、同様のことを静岡7区でもやらかすのではないかとずっと心配していたのである。
しかし、城内が極右レイシストの本性をむき出しにした文章を公表して激しい非難を浴びた以上、民主党は静岡7区で候補を立てるなり他の野党の候補(もちろん城内実を除く)を支持するなどしない限り、静岡7区の有権者に、新自由主義者のコイズミチルドレンと、平沼一派の極右レイシストのどちらかという、究極の選択を迫ることになってしまう。もちろん、他の野党候補に投票すれば良いといわれればそれまでだが、選挙は勝たなければ意味がない。静岡7区の有権者の思想信条が、新自由主義か極右レイシズムのどちらかに大別されるなら、片山対城内の対決の構図でも構わないかもしれないが、そんなことはあり得ないだろう。
民主党には、早く態度をはっきりさせることを望みたい。斉木武志の公認を内定した以上、斉木を早く公認することが最善の策だと思う。万々一、ここで戦いを放棄して事実上城内実を助けるようなことがあったら、民主党はファシズムとの親和性がきわめて強い政党であると断ぜざるを得ない。そんなことになったら、二大政党が新自由主義か極右かの選択になってしまう。いや、今でも民主党には大勢の新自由主義者がいるから、民主党はネオリベ兼ネオコンの極悪政党ということになってしまう。これでは有権者を失望させ、政治に対する絶望感を深めるばかりだろう。もちろん、当ブログは現在自民党に対して行っているよりももっと強い批判を民主党に対して行わざるを得ない。
民主党の賢明な判断に期待したい。
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そもそも、平沼赳夫や城内実らががなり立てていた国籍法改正反対論は、新聞などでもほとんど相手にされず、産経新聞でさえ衆院を通過したあとで自民党議員の反対論や懐疑論を紹介する程度だった。しかし、ネット右翼の間では一大事として大騒ぎになっていて、反対論をぶち上げていた平沼や城内は英雄扱いだったようだ。それでネット右翼の歓心を買おうとして城内が書いたのが、くだんのエントリだったのだろう。もちろん、正気の人間が読めば「これはひどい」というタグをつけるほかない代物であることはいうまでもない。
これまで静岡7区で劣勢と見られていた片山さつきにとっては、思いもかけない幸運だろう。昨年の参院選前に、「消えた年金」問題を菅直人のせいにするビラを作成して大顰蹙を買った片山なら、城みちる、もとい城内実の人権感覚はこの通りですよ、と城内のブログ記事を転載したビラを作成して、こんな人を当選させて良いのでしょうか、と訴えるだろうし、当ブログとしても、静岡7区の有権者に城内実の正体を知ってもらうためにも、片山さつき陣営にはこの件をバンバン宣伝してもらいたいと思う。
そして、現状では静岡7区の有権者は、新自由主義者と極右レイシストという不毛な選択を強いられる状態なので、野党にはこの2人を共倒れさせる強力な候補者の擁立を是非お願いしたい。仮に、野党の候補者が弱体で、片山か城内どちらかを選ばざるを得ない立場に私が追い込まれたとしたら、迷わず片山を選ぶ。城内実だけは断じて許せない。こんな男は絶対に国政に復帰させてはならない。第一、この男は今問題のアパ(元谷外志雄会長)とも癒着しており、「ワインの会」にも何度か出席している(下記URL参照)。城内はもともと安倍晋三の弟分として売り出した政治家だから当然の癒着ではあるのだが。
http://www.apa.co.jp/appletown/pdf/wine/0404_wine.pdf
http://www.apa.co.jp/appletown/pdf/wine/0508_wine.pdf
民主党は従来、平沼一派に色目を使ってきたが、麻生政権が醜態をさらして、次の選挙はどう転んでも民主党絶対有利の情勢が見えてきた今、ファシズムへの道を開きかねない平沼一派は切り捨てるべきだと思う。岡山3区も、平沼と自民党候補の比較ならまだ自民党候補の方がましだと私は考えている。岡山3区でも是非民主党独自候補の擁立を検討してほしい。
マイナーな政治家の悪口はいったん中断して、久々に麻生太郎内閣について書くことにするが、このところの麻生内閣の迷走は実にひどいものがある。本エントリのタイトルは、福田内閣の発足直後に支持率が50%以上を記録した時に書いたエントリ「福田内閣支持率50%超に見る日本人の知性の劣化」というタイトルのもじりで、このエントリは当ブログの数ある記事の中でももっとも悪評の高かったものだ。それには理由があって、これは、あえて読者を挑発したエントリだった。
当時のエントリで、現在は思うところあって使用を止めている「B層」という用語を用いているが、考える訓練を十分受けておらず、流されやすい国民が増えていて、彼らがコイズミカイカクを支持し、「サワヤカな安倍晋三」を支持したあと掌を返し、かと思うとすぐ福田内閣を支持したもののすぐ離れ、麻生内閣を支持したものの離れようとしている。麻生も、言葉が軽くて、言ったことをすぐ引っ込めたり、「(医師は)社会的 常識がかなり欠落している人が多い」などと馬鹿なことを言うものだから、誰が作ったか知れない麻生の虚像に騙されていた人たちも麻生の正体に気づき始めているが、そもそも騙されること自体がおかしい。
そして、簡単に騙されるのは何も自民党支持者ばかりではない。一部の右派民族主義者が、仲の良い反政府系ブロガーをたきつけて、城内実を支援するキャンペーンを始めてからもうかなりの年数が経つ。その間、コイズミの新自由主義に反対していただけならまだしも、安倍晋三の極右政治に反対していたはずのブロガーたちまでもが城内を応援した。だが、城内実は安倍晋三の側近だった政治家であり、城内の口からはコイズミカイカクへの批判は聞けても、安倍晋三への批判は一度もなされたことがないはずだ。それを、「AbEndキャンペーン」に賛同していたはずのブロガーたちまで、見て見ぬふりをする。城内実応援の旗振り役を務めているブログは、安倍政権崩壊と同時に安倍晋三批判を止めると宣言した。それは、城内実の利益に合致した行動だった。旗振り役のブログは確信犯だから仕方ないが、そのブログ仲間たちも簡単に騙されて城内実に好意的な評価を下していた。どういうわけか、「左のほうの水伝騒動」における「共感派」に、城内実を応援する人たちが多く、そもそも旗振り役のブログ自体が、騒動開始後直ちに「XXちゃんと共闘する」と宣言した。その後も、平沼赳夫の動画までブログに載せて、郵政民営化反対を訴えていた「共感派」のブログもあった。確信犯の旗振り役ブログからはもはや何も聞きたくないが、彼に騙された多くのブロガーたちには、今回明らかになった城内実の醜悪なブログのエントリをいったいどう思うのか、聞いてみたい。
もちろん、城内実応援の旗振り役のブログと友好関係にありながら、城内のエントリを厳しく批判した良心的なブログも存在する。私が城内のトンデモなエントリを知ったのも、そういうブログを通じてである。だから、みんながみんな騙されやすいわけではない。しかし、これまで城内を応援してきたブログのほとんどが、この件に沈黙を守っている。「私は騙されていました」などとは恥ずかしくて言えないからだろう。つまり、彼らも「コイズミカイカク」に騙されていた人たちと何も変わらないのだ。
今日のエントリは、タイトルと中身にかなりの落差があるが、今麻生内閣を支持している30%前後の人たちのうち、20%くらいは確信を持った自民党または麻生太郎の支持者だろう。問題はそういう人たちではなく、風に流されてコイズミカイカクを支持し、騙されたと知って郵政民営化反対を訴える城内実を支持してまたも騙されたような人たちだ。こういう人たちが増えれば増えるほど、社会はファシズムにつけこまれやすくなる。城内のエントリについた「はてなブックマーク」にも、
というCrowClawさんの的確なコメントがついている。次世代のファシズムは表面上「反ファシズム」を謳いながら表れる(例:佐藤優現象)
城内実の場合は、あまりにも稚拙だったから、あっさり馬脚を現した。だが、今後もっと巧妙なファシストが現れたら、日本はいとも簡単に「いつか来た道」を歩んでしまうのではないか。そう強く危惧する今日この頃である。
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これらの事件は、新聞(朝日新聞及び四国新聞)では「テロか」という見出しで報じられている。一方、「テロ」という表現に否定的な意見もあり、ネットなどでは「やられても仕方ない」とか「自業自得だ」と言わんばかりの意見も散見される。たとえば、全体主義的傾向が強いと私がみなしている某ブログには、自民党の政治家や高級官僚たちがこれまでやってきた悪事に比べたらたいしたことはない、と言わんばかりのコメントが寄せられており、これを見て背筋が凍る思いがするとともに、昨年4月に長崎市の伊藤一長市長が殺された時、「これは思想的背景のない事件で、テロという言葉を用いるべきではない」とネット右翼がしたり顔で言っていたことを思い出した。
私は、右であろうが左であろうが、上記の例のように人命を軽視するかのような意見には断じて与しない。昨年の伊藤一長市長銃撃事件も、今回の元厚生次官が狙われた事件も、テロ以外のなにものでもないし、決してこれらのテロを許してはならないと考える。そして、この感覚を共有しない人とは政治や社会について語り合いたくない。そういう人は、私にとっては門前払いの対象である。
だが、残念ながら政治家にしてもブロガーにしても掲示板投稿者にしても、私の規定する最低ラインに達していない人たちは、あまりにも多い。今でも苦々しく思い出すのは、伊藤一長市長が銃撃された知らせを聞いた時、暴力を憎み、言論の自由を脅かす行為を許さない言葉が口をついて出てこなかった元首相・安倍晋三である。一昨年加藤紘一の実家が放火された時にも、安倍はコイズミともども、なかなかテロ行為を非難する言葉を発さなかった。
朝日新聞の記事が報じているように、正常な感覚を持った政治家であれば、事件後直ちに暴力行為を非難するコメントを発する。中山成彬のトンデモ日教組批判を擁護した細田直之も、日頃防衛関係のタカ派的傾向を私が苦々しく思っている鳩山由紀夫も、ただちに犯行を「テロ行為」として非難するコメントを出した。これが正常な人間の姿である。被害者がどんな立場の人であろうが関係ない。人の命をいとも簡単に奪おうとする行為は、背後関係があろうがなかろうが断じて許してはならない。
だが、そんな感覚を持っていない政治家と見なさざるを得なかったのが安倍晋三だった。加藤紘一邸放火事件の時、伊藤一長襲撃事件の時、どんなに安倍のリアクションに腹が立ったことか。
ところで、3年前の郵政解散・総選挙直前まで、その安倍晋三の懐刀と見られていた政治家が城内実である。この城内は、郵政造反組として3年前の総選挙でコイズミに刺客・片山さつきを送られて落選して以来、反コイズミを標榜する一部の人たちに異様な人気があり、城内を持ち上げる「リベラル・平和系」(笑)のブロガーも多い。
これは、コイズミの新自由主義と同じくらい、安倍の国家主義極右政治を嫌う私としては、実に不可解な現象であり、安倍政権成立直後の一昨年11月16日に書いた「安倍政権につながる極右人脈」で、「城内実は「AbEnd」の敵である」と書いて以来、一貫して城内を批判し続けている。なお、比較的最近からの読者のために書いておくと、「AbEnd」とは「安倍を 『the End!』 させよう」を合言葉として行った反安倍晋三のブログキャンペーンの名称である。
そのブログを見る限り、社会民主主義者かと思える主張が並んでいるが、実体は信じられない差別意識を持ち、人権感覚のかけらもない極右政治家、それが城内実の正体だ。そして、昨夜「kojitakenの日記」にも書いたのだが、国籍法改正反対の主張に絡めて、ついに城内実がその本性を露呈したエントリをブログに公開した(下記URL)。
http://www.m-kiuchi.com/2008/11/11/bakawashinanakyanaoranai/
上記URLの文字列 "bakawashinanakyanaoranai"、つまり「馬鹿は死ななきゃ直らない」、この言葉に城内実の本性が凝縮されている。
私はこの城内のエントリを、「日本がアブナイ!」経由で知ったのだが、同ブログ管理人のmewさんもあきれ返っていて、
と書いておられる。ところが、上述の記事の後半に書かれた「たとえ話」は、あまりにもヒドイものだ。本人が作ったのか、他者が作ったものをアップしたのかわからないが。これは、品がないを通り越して、あまりに下劣なものだし。他国の人を愚弄し、蔑視するようなもので、政治家としてだけでなく、ひとりの人間として、人権概念を有していないと言っていいだろう。(ーー;)
けど・・・他の地方を含む政治家系ブログにも、時々見られることであるが。これが近時の超保守系orウヨ保守系の政治家の実態なのである。(**)
「他国の人を愚弄し、蔑視する」城内は、ブログの記事でインドネシア、フィリピン、中国の人たちを蔑視している。それどころか、ニューヨークや大阪、特に西成区の住民に対する差別意識をむき出しにしている。とにかくこれは正視に耐えないほどひどいエントリであって、これを読んで怒りを覚えない人間を、私は信用できない。「何でもカイカク、カイカクの一環や」というフレーズに、コイズミカイカク批判が込められているが、こういうフレーズさえあれば城内のすべてを許してしまう倒錯したブロガー連中が、城内を再び国政の場に送り出そうと懸命にキャンペーンをしており、私はずっとそれを批判し続けているのだが、賛同する人間はきわめて少ない。
私ははっきり言って、こんな城内実のような人間が当選するくらいなら、前原誠司を「こいつ」呼ばわりした傲岸不遜な片山さつきが当選したほうがまだましだとさえ思う。片山の新自由主義には辟易するが、少なくとも歴史認識においては片山さつきは城内実よりずっとまともだ。
もちろん、選挙では片山と城内の共倒れがベストであり、民主党の二次公認に漏れた斉木武志が力不足と見るなら、もっと強力な候補者を民主党は送り込むべきだ。実は私は、最終的に民主党は斉木武志を降ろして、城内実を事実上バックアップするのではないかとずっと疑っているのだが、万一そんなことになったらブログで民主党を大々的に批判させていただく。
それにつけても、城内実のことを考えるたびに思い出すのが、10月25日に大阪で行われた辺見庸の講演会である。10月27日付エントリ「新自由主義のあとにくるもの ? 国家社会主義を阻止せよ」にも書いたが、辺見庸は、これまでの新自由主義に代わって、国家による統制をよしとする言論が支持されるようになり、それに伴って国家社会主義の変種ともいうべき者が、「革新づらをして」現れるだろう、そう予言した。特に、「革新づらをして」という語句に、異様なまでに力を込めていた。
「佐藤優現象」批判で論壇の注目を集めた金光翔さんは、ブログ「私にも話させて」のエントリ「辺見庸の警告と<佐藤優現象>の2つの側面」において、辺見庸は佐藤優を念頭に置いているのではないかと書かれているが、講演を聴きながら私が直ちに思い出したのは城内実だった。最近、某ブログ経由で、城内実が自分自身のことを「中道左派(リベラル)」だと称していると知った時、「革新づらをして」という辺見庸の言葉を再び思い出したことはいうまでもない。私の分類では、城内実は国家社会主義者になる。
城内のくだんのエントリには、当然のことながら、ネガティブなコメントを伴った「はてなブックマーク」がついている。その中からいくつか紹介したい。
- 2008年11月18日 kazenofukumama これはひどい 一生落選してろ。
- 2008年11月19日 arkanal 城内氏の人間観、品性の自己紹介。小倉弁護士やイシケリアソビ氏のブログと比較するとより味わいが増す。こんな下品な想像を記録に残しながら、わが国の立法府に返り咲こうと言う気概と言うか妄想だけは買う
- 2008年11月19日 vanacoral 政治, 城内実, 差別 汚らしい文章だなあ。ゲシュタポというか、ナチのタブロイド紙「シュテュルマー」みたいなエントリー。
昨夜は、あまりに下劣極まりない城内実のブログに対して、どうにも怒りが収まらなかったのだが、この時点で城内が本性を露呈してくれたことによって、多くの人が城内の正体を知り、支持をやめてくれることを願うしかない。それと、民主党には何が何でも城内実と片山さつきを共倒れに追い込んで欲しいと重ねてお願いする次第である。
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11月8日付のエントリ「田母神俊雄、渡部昇一、元谷外志雄、佐藤優らに呆れる日々」は、当ブログでも有数の人気エントリになっていて、特に「元谷外志雄」を検索語にしたネット検索で訪れてくださる方が多い。
ところが、その私がうかつなことに元谷外志雄の著書『報道されない近現代史』が産経新聞出版から出ていることを知らなかったのである。普通ならブログで本を紹介する時はアマゾンあたりのサイトにリンクを張るのだが、それすらけがらわしいと思ってネット検索もしていなかった。
産経新聞ウォッチャーのvanacoralさんは、11月2日付の「ちょっと陰謀論」というエントリで、田母神俊雄や元谷外志雄の画像やフジサンケイビジネスの宣伝文も盛り込んで紹介してくれているのだが、どうしたわけかこの良エントリを私は見逃していた。
上記フジサンケイビジネスの宣伝文を見ただけでは、元谷の著書は、ちょっと怪しげだなと思わせる程度で、しかもアパのサイトでは佐藤優が絶賛している。だから、ダマされる人も大勢出てくるかもしれないが、本の中身が田母神論文と共通点の多いトンデモであることは、昨日のエントリで紹介した「週刊新潮」の記事にも書かれている。
なんと言っても田母神論文のキモの1つは、コミンテルン陰謀論なのである。産経新聞はこれを広めようと躍起になっているが、この陰謀論は保守派の歴史家からも相手にされていないことはたびたび指摘してきた通りである。
そして、コミンテルン陰謀論に関して、こんなのを見つけた。
http://www.meiseisha.com/katarogu/rekishi-no/kakikae.htm
これは、日本会議という日本最大の右翼団体が発行している「日本会議ブックレット」の中の「日本の息吹ブックレット」シリーズに含まれる、小堀桂一郎と中西輝政による『歴史の書き換えが始まった!?コミンテルンと昭和史の真相』という小冊子である。
自ら歴史修正主義を高らかに謳い上げた小冊子で、小堀と中西はコミンテルン陰謀論を開陳しているのであろう。東大名誉教授の小堀桂一郎は大昔からの著名な極右イデオローグで、私は30年近く前から名前を知っている。また京大大学院教授の中西輝政は、言わずと知れた安倍晋三のイデオローグで、安倍内閣時代に「5人組」と呼ばれたうちの1人だ(当ブログ2006年11月16日付エントリ「安倍晋三につながる極右人脈」参照)。この2人が書いた小冊子の宣伝文句を以下に引用する。
歴史資料公開の「五十年ルール」に伴い、先の大戦にまつわる重要な歴史資料が続々と公開され、その真相が明かされつつある。
謀略に満ちた世界の現実を直視し、いかにして国家の存続を図るか。 それは、幕末明治以来、日本の先人たちが直面し続けた課題でもある。
その対応を困難にしたのは、ほかならぬコミンテルンの国際謀略だったことを明らかにしたのが本書である。
しかも、その根底にある人間不信の原理は、冷戦崩壊後の現在も進行中であり、GHQの占領政策とその固定化としての「戦後レジーム」に入り込み、日本の歴史、伝統、文化を破壊し続けているのである。
そして、小冊子の推薦人には渡部昇一が名を連ねている。
http://www.meiseisha.com/katarogu/rekishi-no/kakikae-suisen.htm
「コミンテルン陰謀史観」は「日本会議」公認のものといっても良いわけだ。
この団体の名前は滅多に新聞に載らないが、改正教育基本法の成立を報じた2006年12月16日付の毎日新聞1面に掲載されたことがある(当ブログ2006年12月16日付エントリ「毎日新聞の報道?改正教育基本法は「改憲へのステップ」」参照)。画期的な報道と思ったが、極右の安倍内閣が倒れた後は、再び「日本会議」の名前は新聞にあまり載らなくなった。だが、極右的人士たちの野望は決して潰えたわけではなかったことが、今回の田母神論文騒動で明らかになったわけだ。
日本会議の関連組織として、超党派の国会議員が所属する日本会議国会議員懇談会があり、その会長を務めているのは平沼赳夫である。この会のメンバーは詳らかではないが、2005年8月時点でのメンバー一覧が、ブログ『ホドロフスキの記録帳』の2008年5月31日付エントリ「平成17年8月時日本会議国会議員懇談会加盟衆議院議員リスト」に出ている(下記URL)。
http://d.hatena.ne.jp/Jodorowsky/20080531#1212214474
これは、『日本の息吹』2005年9月号に掲載されていたリストらしい。貴重な資料である。現首相・麻生太郎や元首相・安倍晋三は当然のごとく名を連ねている一方、前首相・福田康夫やコイズミの名前はない。Wikipediaでは福田康夫もメンバーであるように書かれているが、これは間違いかもしれない。意外にも、森喜朗の名前もない。加藤紘一の名前ももちろんないが、山崎拓はあってもおかしくなさそうなのに名前がない。民主党では、前原誠司、藤井裕久、松原仁、長島昭久らが名を連ねているが、小沢一郎や鳩山由紀夫の名前はない。原口一博や河村たかしら、あっても不思議なさそうな名前もない。国民新党では亀井静香、綿貫民輔らの名前がある。無所属では、郵政造反組の名前が多く、巨魁・平沼赳夫のほか、小林興起や、自称「中道左派(リベラル)」(爆)の城内実の名前がある。
延々と政治家の名前を挙げたが、要は「コミンテルン陰謀論」とは、この人たちが属している極右組織のイデオロギーに則った考え方だということだ。つまり、「文民統制」ができていないのではなく、「文民」があらぬ方向を向いて軍(自衛隊)を「統制」している。だから、私は田母神論文事件は「文民統制」以前の問題だと主張しているのである。
さて、以上を結論にして本エントリを締めくくる予定だったが、2003年以降、小松基地の宿舎の実に3分の1がアパと契約していたというニュースが飛び込んできた。
http://www.asahi.com/national/update/1118/TKY200811180178.html
上記URLの朝日新聞記事から引用する。
防衛省・自衛隊では、他基地から長期で隊員が派遣された際などに、基地外で民間のアパートやホテルなどを宿舎として借り上げている。
防衛省が03年度から08年11月までの小松基地の契約状況を調べたところ、同基地の地元周辺での契約額計約337万円のうち、アパとの契約が106万円で3分の1を占めた。05年度は小松基地の契約額の7割以上をアパが占め、03年度も5割にのぼっていた。原則、随意契約という。
また、アパグループが全国展開するホテルチェーンと、陸海空自衛隊全体の契約では、03年6月から08年11月にかけて、計32件約466万円の利用があり、小松基地の106万円は全体でも2割を占めていることが判明した。演習時などに、基地内の宿舎で間に合わない際に利用されたという。同ホテルチェーンは、防衛省共済組合を通じた契約先の一つで、組合員の自衛隊員は割引があるという。
(朝日新聞 2008年11月18日)
ますます「贈収賄」の匂いを強く漂わせる報道だ。これは「サンデー毎日」が書くように、本当に「第二の守屋事件」に発展するかもしれない。
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朝日や毎日は産経新聞の仇敵だ。だから目を吊り上げて怒るのだろうが、もっと強烈な記事を書いているのが、右翼週刊誌の「週刊新潮」(11月20日号)だ。
そのタイトルも、"「田母神」「国会招致」では解明できなかった「森元首相」と「アパ夫婦」の異様な関係」"という、「サンデー毎日」や「週刊朝日」よりずっとセンセーショナルなものだ。
「週刊新潮」の記事によると、田母神は1998年から99年にかけて第6航空団司令として小松基地に勤務していた頃に首相になる前の森喜朗と知り合った。そして、森はなんと12月8日に明治記念館で行われる田母神らの懸賞論文の表彰式で、発起人代表に就任する予定になっていたというのだ。
表彰式の案内には、「発起人を依頼している方々」として、森のほか、予想通り安倍晋三をはじめとする国内政治家約40人の名前が挙がっているほか、金泳三・韓国元大統領や、李登輝・元台湾総統の名前もあり、合計で120人以上の著名人の名前が列挙されているという。しかし、案内状には発起人を辞退したい場合にはファックスで返信するよう用紙がついていて、用心深い政治家などは辞退したそうだ。だが、森は「田母神論文」が騒動になってから急遽発起人を辞退することにしたそうだし、おそらく安倍晋三も同様なのではないか。
記事は、田母神、元谷、森の三者の親密な関係についてたっぷり書いている。元谷は、1971年に小松市内で不動産関連業を始めたが、小松は石川2区、つまり森の選挙区の町だ。アパグループが発行する雑誌「アップルタウン」の2003年2月号にも森と元谷夫妻の対談が掲載されている。元谷はケチで有名だが、森には政治献金をしているそうだ。森が支部長を務める自民党石川県第2選挙区支部に、2003年から05年にかけてアパホテルと元請設計会社から計72万円の献金がなされていた。
さらに、昨年11月に千葉県幕張の「アパホテル&リゾート東京ベイ幕張」で行われた元谷夫妻の次男の結婚披露宴に、森は主賓として出席した。また、今年6月2日に同じホテルで行われた元谷の著作『報道されない近現代史』の出版記念パーティーでも、森は出席こそしなかったものの、発起人としてお祝いのビデオレターを会場に流した。これには田母神も出席していたという。
この元谷の著書を佐藤優が絶賛していることは、11月7日付エントリ「田母神俊雄、渡部昇一、元谷外志雄、佐藤優らに呆れる日々」にも書いたが、その内容の一端が「週刊新潮」の記事からうかがえる。以下引用する。
ところで、先の元谷代表の著作と田母神論文とでは共通点が多数ある。
日米開戦はルーズベルトの陰謀で、背後にコミンテルン(共産主義の国際組織)の影響があったこと、戦前の日本のアジア進出は、欧米諸国のような植民地ではなく、教育やインフラ整備を施すなど「内地化」であったことなど。論文審査には元谷代表も関わっているが、はたして額面通りの最優秀賞だったのか。防衛省関係者はこう話す。
「田母神氏の論文が最優秀賞を取ったのは疑問に思う。他にも航空自衛官94人が論文に応募していたのが分かったわけですが、応募総数は235人ですから、自衛官の論文はそのうちの4割を占めることになる。しかも佐官や尉官などの幹部ばかり。彼らは、自身の階級を上げるため常日頃から勉強している、現役バリバリです。が、田母神氏以外の自衛官は1人として佳作すら受賞していない。4割も応募しているわけですから、1人ぐらい受賞してもおかしくないはず。だから省内でもアパによる田母神氏への "利益供与" ではないかと囁かれているのです」
(「週刊新潮」 2008年11月20日号掲載 "「田母神」「国会招致」では解明できなかった「森元首相」と「アパ夫婦」の異様な関係」" より)
佐藤優が絶賛した元谷の著書とは、やはり陰謀史観に満ち満ちたトンデモ本のようだ。これを、常日頃佐藤を持ち上げている人たちはどう申し開きするのか、それを聞きたい。
また、花岡信昭大センセイには、是非とも「週刊新潮」も厳しい批判の対象とすることをオススメするとともに、「週刊新潮」の記事に書かれている「防衛省内の声」に対しても、ご見解を賜りたいと思う今日この頃である。
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こういう問題に関しては、まだまだ朝日新聞と毎日新聞も生きているとも思う。両紙は、経済問題についてはまるでダメだが、安全保障の問題では、まだ「連盟よさらば!我が代表堂々退場す」という見出しで朝日新聞が日本の国際連盟脱退をほめたたえた翼賛報道の段階にはきていない。「いつか来た道」を警戒する論調が紙面では支配的だ。
一方、昭和初期の段階に踏み込んでいるのは自民党の議員たちである。nesskoさんのコメントで教えていただいたのだが、自民党参議院議員・佐藤正久が、自民党国防関係合同部会における紛糾の模様を描いた文章をウェブサイトに公開している(下記URL)。
http://east.tegelog.jp/?blogid=24?catid=164&itemid=1934
以下引用する。
また自衛官の教育に関しては、防衛省側から「歴史教育をしっかりやりたい」との発言に、「政治将校をつくるのか」「憲法違反の恐れがある」と批判が集中した。
本日の部会において、最も紛糾したのは、11月9日付の毎日新聞に掲載された五百旗頭真・防衛大学校校長の論文だった。この論文では、今回の田母神さんの空幕長解任に触れ、「これに関連して想起するのは、1928年の張作霖爆殺事件である」として、「軍部に対するブレーキが利かないという疾患によって、日本は滅亡への軌道に乗った<中略>このたびの即日の更迭はシビリアンコントロールを貫徹する上で、意義深い決断であると思う」と綴られている。
ある議員が問題視したのは、今回の田母神論文事案と張作霖爆殺事件を同一視しているという点と、あわせて、この五百旗頭論文は「部外への意見発表」であるが、その手続きがなされていたのか、という点だった。
防衛省は、手続きの有無について、即座に答えられず、また論文の内容については確認していない、との発言があり、議員の間からは、「これこそ懲戒の必要があるのではないか」との怒号にも似た声が相次いだ。
(佐藤正久オフィシャルページ掲載 「国防部会、田母神論文事案で紛糾す」より)
ここで言及されている、11月9日付毎日新聞掲載の五百旗頭真(いおきべ まこと)の論文は、同紙のウェブサイト「毎日jp」には掲載されていないようだ。五百旗頭は神戸大学名誉教授で、現在防衛大学校校長を務めており、猪木正道に師事した穏健保守の学者である。上記引用部分から読める五百旗頭の主張は、私から見ると正論としか思えないのだが、産経新聞の「正論」を信奉する右翼の自民党議員にとってはもってのほかなのだろう。
いずれにしても、朝日新聞や毎日新聞が保守派の論客による正論を掲載し、それに自民党議員が極右側から噛みつく構図になっている。もちろん、民主党にも同様の意見を持つ極右議員は結構多い。
さて、本エントリの後半では、「サンデー毎日」の記事を紹介する。いちおう、開店休業状態の「毎日新聞叩きに反対するキャンペーン」の一環にもなるかなと思う。「サンデー毎日」は編集長が交代してから鋭く権力を批判する記事が減ったのではないかと危惧しているのだが、11月23日号では久々に同誌らしく、前航空幕僚長・田母神俊雄とアパグループ代表・元谷外志雄の「F-15戦闘機体験搭乗」を批判する記事を掲載している。
この件は、先週、朝日新聞に報じられた。以下引用する。
元谷氏は07年8月、小松基地でF15戦闘機に体験搭乗。その時の写真は元谷氏の著書に収められている。航空幕僚監部広報室は「広報活動の一環で、小松基地金沢友の会の会長として搭乗してもらった」と説明する。
元谷氏は朝日新聞社の取材に対し、田母神氏に論文の応募を依頼したことはないと説明している。「毎月送っているアップルタウンの告知で気づいたのではないか。まさか航空幕僚長が応募してくれるとは思わなかった」。田母神氏の論文は8月に届いた。他の航空自衛官の応募作78編も含む235編が、執筆者名を伏せた形で審査されたという。その結果、元谷氏のペンネームを冠した最優秀賞に田母神氏が選ばれ、300万円の懸賞金を受け取ることになった。
(朝日新聞 2008年11月8日 10時4分)
「サンデー毎日」の記事はさらに踏み込んで、元谷外志雄らに小松基地の方から体験搭乗の案内をしたこと、そのお伺いを立てる「進達文書」という内部文書に最終決裁し、許可を与えたのが田母神俊雄であることを自衛隊関係者からの取材によって明らかにして、公務員が第三者に便宜を図り、懸賞金という名の現金を受け取る構図は、「贈収賄」に当たるのではないかと書く。そして、問題発覚直後に麻生政権が素早く田母神を更迭したのは、文民統制の問題のほか、「刑事事件に発展する恐れがある」とみなされたためではないかと推測している。
記事はさらに、航空自衛隊出身の参院議員だった田村秀昭(国民新党、小沢一郎の元側近)が今年1月に死去して(昨年の参院選に立候補せず引退していた)、自衛隊出身の国会議員が陸上自衛隊出身の中谷元(自民党)と前述の佐藤正久(同)の2人しかいなくなったため、田母神を次期参院選の候補者にしてはどうかという話まで持ち上がっていたと伝えている。まったくもってとんでもない話である。
この問題の背後には、森喜朗や安倍晋三もいる。彼らをも巻き込んで、「サンデー毎日」が書くように、「第二の守屋事件」に発展すれば面白いのだが、政治家まで到達しなかった守屋事件同様、どうせまた尻すぼみに終わってしまうのだろうと半ばあきらめている今日この頃である。
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これに対し、「こころ」さんから下記のようなコメントをいただいた。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-780.html#comment4419
どうなんでしょう。まさに「文民統制以前」の問題なのでは?文民統制のもとにあって、公務員はもとより軍人ともなればその思想信条にも統制がかかるという考え方はありうると思いますが、こうして思想信条に強い枠をはめるやり方は、一たび間違うとまったく危険な方向に行きかねない議論ではないでしょうか。なによりいかなる思想をもっていようとも客観的に法律の範囲を逸脱しないような、文民による統制が必要ということだと思います。
栗栖発言は当時の法律に存在しない有事の概念のもと自衛隊を独自に動かすことを宣言したという点でまさに文民統制そのものに触れ、はるかに重大な気がしますけど。珍妙な歴史観を雑誌に発表する程度ならまだましでしょう。(後略)
(「こころ」さんのコメントより)
私はこの意見には反対だ。田母神発言の問題は、陰謀史観に基づくトンデモな歴史認識に市民権を獲得させようとした極右の試みであって、毎日新聞記事も、纐纈厚(こうけつ あつし)・山口大教授の見解を引きながら
と書いている。この纐纈厚や毎日新聞記者・遠藤拓の危機感を私は共有する。これまで波紋を呼んだ制服組幹部の発言というのは、法制上の問題点に関してのものがほとんどで、歴史認識を直截(ちょくせつ)的に論じたのは今回が初めて
「こころ」さんは、しばしば当ブログにコメントを頂く方だが、自民党内の「旧保守」の支持者とお見受けする。私は民主党を中心とする野党が仮に「共闘」するとしたらその相手は「旧保守」であって、中川秀直らの新自由主義者のグループや、「HANAの会」(麻生太郎、中川昭一、安倍晋三、それに無所属の平沼赳夫)などの国家主義者のグループではないと考えているので、その点では「こころ」さんと意見が一致するが、「こころ」さんは自民党支持者らしく右寄りの歴史認識の浸透に対して甘いところがあるのではないかと考える。
なお、「こころ」さんへの注文だが、当ブログにコメントする際に毎回毎回HNを変えるのは止めていただきたい。前回は確か「にだりんこ」だったし、その前には「舐島」というHNだった。私にはどのコメントがあなたによるものかがわかるが、ブログの読者にはわからない。せめてHNを統一して、フェアな議論をお願いしたい。
なお、前記毎日新聞の記事には、纐纈厚のほか、石破茂と秦郁彦の、いずれも田母神論文に否定的な見解が掲載されている。このうち左派は纐纈厚だけで、石破茂は自民党の「カイカク系」の(世襲)政治家だし、秦郁彦は『諸君!』を主な舞台にする歴史家で、「つくる会」のメンバーにして、従軍慰安婦問題を教科書から削除せよと主張するゴリゴリの右派である。その秦郁彦までもが、11日付の朝日新聞(ウェブでは読めないようだ)と上記毎日新聞で田母神論文を徹底的に批判しているのだ。
参院で行われた田母神の参考人招致について、秦は上記毎日新聞記事で、
とコメントしている。また、11日付朝日新聞記事では秦は、「日本はルーズベルトの罠にはまり真珠湾攻撃を決行した」とする田母神の主張を、マンガ的な低レベルのやりとりで不快でした。肝心の国防について、『これでは国を守れないから困る』といった注文が出ているわけでもない。戦争を巡るコミンテルン陰謀説は、徳川埋蔵金があるとかないとかいったレベルの話です。懸賞論文で最優秀賞を取ったのが不思議でならない。
とあっさり退けている。コミンテルン陰謀説についても、最近産経新聞が躍起になって広めようとしている「張作霖爆殺コミンテルン陰謀説」を、これも、バージョンを変えて繰り返し出てくる「ルーズベルト陰謀説」の一種だ。ルーズベルト大統領は日本側の第一撃を誘うため真珠湾攻撃を事前に察知していたのに現地軍に知らせなかった、という筋書きのものが多い。こうした話はミステリー小節のたぐいで、学問的には全く相手にされていない。
とコテンパンに批判している。「極めて有力になってきている」などと田母神論文は書くが、歴史学の世界では、問題にされていない説だ。張作霖爆殺事件が関東軍の仕業であることは、首謀者の河本大作はじめ関係者が犯行を認めた。このため田中義一内閣が倒れ、「昭和天皇独白録」でも、「事件の首謀者は河本大作大佐である」と断定されている。他にもコミンテルン謀略説が論文に出てくるが、根拠となる確かな裏付け資料があいまいで、実証性に乏しい俗論に過ぎない。
当ブログは、昨年12月23日付エントリ「ネットに横行する「トンデモ」や「陰謀論」を批判する」を公開して以来、一貫して陰謀論批判を行ってきているが、陰謀論の最悪の例が今回の田母神「論文」だといえるだろう。秦郁彦の例に見られるように、右派であってもまともな言論人であれば、田母神俊雄の陰謀論など一顧だにしない。
リベラル・左派のブログの間でも、今年1月
当初擬似科学批判の問題からスタートした論戦だが、泥沼化していくうちに、「逝きし世の面影」なるトンデモ陰謀論ブログが参戦し、勝手な思い込みに基づいて、「らんきー」側のブログを「極左」、「たんぽぽ」側のブログを「解同」(部落解放同盟)と決めつけるぶっ飛んだエントリを公開したことがあった。実は、「逝きし世の面影」こそ「極左」と評するにふさわしいブログであり、「らんきー」側のブログは「極左」ではないし、「たんぽぽ」側のブログも「解同」などではない。
その「逝きし世の面影」が、またしても「陰謀論が嫌いな人の心理」なるトンデモエントリを上げてきて、
などと主張しているが、朝日新聞や毎日新聞という大手マスコミに載った秦郁彦の言説がもののみごとな反例になっており、「逝きし世の面影」管理人(旧HN・布引洋)の主張は簡単に否定されてしまうのである。田母神俊雄や布引洋の妄論は、「陰謀論」がいかにダメかを示す絶好の例になっている。陰謀論という言葉は 昔はほとんど使っていなかった。
今まではユダヤ陰謀論なんていう風に、極々限定的に笑い話や居酒屋談義で使われるぐらいで政治論議で『陰謀論』なんてあやしげた言葉は普通のマトモな大人は使いません。
今のように頻繁に使われだしたのはごく最近の風潮です。しかもネット空間だけの現象でしょう。
今でも対面した討論なら『懐疑論』なら使えるが『陰謀論』なんて言葉は恥ずかしくて使えません。
ちょっと脱線しすぎたが、田母神俊雄の「論文」の話に戻る。毎日新聞の記事でもっとも注目すべきは、やはり纐纈厚の指摘である。以下引用する。
それだけに、纐纈さんの危機感はぬぐえない。
「論文後段は、いつまでも米国の従属軍的な立場でなく、自律的な立場を取り戻さねばという趣旨で書かれています。戦前の日本を縛った『アジア・モンロー主義』とも重なる。アジアで日本が単独覇権を握るため、米英に依存せず、自前の軍装備や資源供給地を確保しなければならないという考え方で、政財界にも広がり戦争への道を切り開く一因となった。今の制服組にもそうした欲求があるのかもと思うとぞっとします」
田母神論文には秘められた狙いがある、とも言う。
「国会でもメディアでも、彼はとにかく自説を説きたいんですよ。批判も多いが、共感もあると踏んでいる。いずれ自衛隊内外から『よくやった』との反応もあるでしょう。推測の域を出ないが、これは彼の単独プレーでは片付けられない気がしますね」
(毎日新聞 2008年11月12日 東京夕刊より)
私には、「田母神論文に秘められた狙い」は、昨今台頭してきている民族派系反米右翼の主張と響き合うものがあるように思う。反米右翼の人たちの名前を挙げると、政治家では平沼赳夫、西村真悟、城内実、橋下徹ら。文化人では関岡英之、佐藤優、西部邁ら。そして、芸能関係その他では勝谷誠彦や小林よしのりら、といったところだろう。従来、親米右翼の代表格だった安倍晋三も、本音では反米右翼だろうし、実際、最近の右派論壇誌において、安倍はその反米右翼としての本性を現し始めている。
彼らのうち、佐藤優に代表されるように、リベラル・左派にもアピールするものを持っている人たちが、辺見庸の表現を借りれば、「革新づらをして」左側にも支持を広げる。これこそが、日本が再び戦争への道を歩み始める時ではないか。そして、それはもう始まっている。
前記毎日新聞の記事は、
と結ばれている。少し前なら私にさえ「陳腐な左翼的表現」と思えた「いつか来た道」という言葉に、いまやリアリティを感じるようになった。もはや、「鵺(ぬえ)のような全体主義」という曖昧な表現の段階から「国家社会主義」へと一歩を踏み出しつつある。そんな危機感を覚える今日この頃である。田母神論文の書かれた2008年を、後世の歴史家はどう位置づけるだろう。今のこの国に“いつか来た道”の再現を拒む力は残っているか。問いは田母神氏ではなく、私たちに突きつけられている。
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正直言って、麻生太郎がここまで無能だとは想像していなかった。定額給付金そのものは、それだけを切り取ってみれば悪い政策だとは私は思わないが、あとに消費税増税をやろうとしているのが最悪で、左手で飴を差し出している人間が、利き手の右腕を思いっきり振り絞って相手(国民)に殴りかかろうとしているようなものだ。これでは朝日新聞と経団連以外の支持が得られるはずがない。
思わぬ国民の反発にたじろいで、麻生の言うことが毎日変わるのはさらに印象が悪く、信念がなく腰の定まらない政治家に映る。実際、麻生は一昨年の自民党総裁選レースでは、「景気が上がるときに消費税を上げると言ったら景気がなえるでしょ。これまたやったらアホですよ」と発言して、消費税増税論者の谷垣禎一を厳しく批判していた。
http://www.news24.jp/65574.html
その麻生が2011年の消費税増税を口にしたかと思うと、増税の実施時期をめぐって翌日には発言のニュアンスを変え、かと思えば昨日(11日)にはまた、「経済がうまくいけば、2年後にも消費税を上げる」と述べた。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20081111k0000e010063000c.html
朝令暮改がこれだけ続けば、誰も麻生の言うことなど信用しないし、しかもそれが国民にとって不利益な政策なのだからなおさら怒りと不信を買う。
定額給付金にしても、所得制限を設けるか設けないかで、麻生と経財相の与謝野馨との意見が合わず迷走し、毎日のように異なる政府の方針が報じられたあげく、所得制限は設けないが年間所得額1800万円以上の人には「受け取りを辞退するよう促す」というわけのわからない方針が固まった。
税制に関しては、当ブログでは10月31日付エントリ「社会保障を削って消費税率を引き上げる麻生内閣の理不尽」で、神野直彦著『財政のしくみがわかる本』(岩波ジュニア新書、2007年)の記述に基づいて、日本は他国と比較して個人所得課税が著しく低く、要するに金持ちが応分の負担をしていないと主張した。
当ブログの読者の皆さまには、上記『財政のしくみがわかる本』を手にして、同書の68頁に掲載されている「所得階層別に見た所得税の実効負担率」のグラフを是非ご参照されたい。高額所得者の所得は給与所得ではなくて、利子所得や配当所得、不動産所得などの資産所得が多いが、日本の税制ではこれらを分離課税にして累進税率の適用除外にしているため、年間所得2500万円以上の高額所得者の実効負担率は、同2000万?2500万円の所得の人よりも低くなっている。つまり、この所得層をピークに、それ以上の高額所得者に対しては実質的に逆進的な税制になっているのだ。
つまり、これだけ金持ちを優遇しておいて消費増税を行おうとすること自体が言語道断なのである。給付金の年収制限など、税制の根本に横たわる大きな問題と比較すれば、枝葉末節に過ぎない。こんなことで毎日方針を二転三転させる麻生内閣の欺瞞を見ていると、心底腹が立つ。
なんだかんだ言って、自民党は金持ちのための政党だから、絶対に所得税の累進性強化の政策はとらないし、新聞もテレビも所得税の問題点を全然指摘しようとしないが、これもマスコミ人たちが高額所得者だからだろう。ジャーナリズム精神などどこかにいってしまった。
ジャーナリズム精神というと、これを持った最後のジャーナリストが7日に亡くなった筑紫哲也ではなかったかと思う。昨日(11日)もTBSテレビで追悼番組をやっていた。私は、「kojitakenの日記」に、「筑紫哲也の死を悼む」(11月7日)と「筑紫哲也の福田康夫論が興味深い」(11月11日)の2本の追悼記事を書いた。後者は、昨夜のTBSの追悼番組を見て書いたものだが、記事についた「はてなブックマーク」のコメントに、「主張の偏りはあるにせよ、最後までジャーナリストだった筑紫」とか「よくもわるくもジャーナリストなんだな」などと、筑紫哲也に批判的だったと思われる人たちからも筑紫に一定の評価を与えるコメントがついているのを見て、かけがえのない人を亡くしてしまったのだなあと、その存在の大きさに思いを馳せた。
追悼番組には、立花隆や鳥越俊太郎のほか、田原総一朗も出ていた。生放送だったようで、田原は参院外交防衛委員会で行われた前航空幕僚長・田母神俊雄の参考人招致における野党の追及が手ぬるい、筑紫さんが生きていたらどう言ったかと思うと言っていた。
普段コイズミや安倍晋三の提灯持ちをしている田原だが、時々思い出したように平和主義者に変身して驚かされる。特に印象に残っているのは、2002年8月に靖国問題をめぐって高市早苗の歴史認識を批判し、「下品で、無知で、憎たらしい顔をしている」と高市を罵倒して泣かせたことと、今年4月に映画「靖国 YASUKUNI」を「検閲」し、実質的に上映中止の圧力をかけた稲田朋美をこっぴどく批判した2件だ。後者については、当ブログ4月7日付エントリ「映画「靖国」と稲田朋美、日本会議、そしてネット右翼」で取り上げた。
たまに平和主義者の顔を見せても、翌週にはそんなことはコロッと忘れたかのように政府を応援する司会をする田原だから、決して信用してはならないのだが、昨夜の筑紫哲也追悼番組では、「アパの懸賞論文に自衛官94人が応募するなんて、これは一斉蜂起だ、クーデターだ。筑紫さんに対する挑戦だ。こんな時に筑紫さんが死んでしまっているなんて」と言い、筑紫哲也が(11歳の時に接した)日本国憲法にしびれたと言っていたと思い出を語り、一昨年に安倍晋三の改憲路線を批判して安倍晋三に「宣戦布告」した立花隆にも同意を求めた。あたかも田原自身も護憲論者であるかのような口ぶりだった。
にわか平和主義者の田原総一朗への嫌味はこれくらいにしておくが、田母神俊雄は国会で憲法改定を主張するなど言いたい放題だった。しかも、6千万の退職金の返上は拒否し、「生活が苦しいから使わせて欲しい」などと泣き言を言う「金の亡者」ぶりを見せつけた。およそ「国士」らしからぬ金銭への醜い執着ぶりに田母神の本性を見る思いだ。
ところで、昨日当ブログへのアクセス数が多かったのは、昨日のエントリと同じくらい、11月7日付エントリ「田母神俊雄、渡部昇一、元谷外志雄、佐藤優らに呆れる日々」へのアクセスが多かったためだ。検索語「元谷外志雄」によるブログ来訪者が多かったし、「佐藤優現象」に触れたことから、金光翔さんのブログ「私にも話させて」のエントリ「辺見庸の警告と<佐藤優現象>の2つの側面」に紹介されたりした。
田母神の妄言はもう広く知れ渡っているから、私としてはアパ会長の元谷外志雄や休職中の外交官・佐藤優についても、その正体を多くの人に知ってもらいたいと思う。2人とも極右政治家・安倍晋三とつながりのある人物で、佐藤は安倍の支持者だし、元谷は安倍の非公然後援会「安晋会」の副会長である。その元谷外志雄の著書を佐藤優が絶賛している。
田母神とアパとのすさまじい密着ぶりについては、時事通信も報じている。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2008111100886
アパとの密接ぶり、次々明らかに=公用車でパーティー、戦闘機搭乗許可?田母神氏
政府見解と異なる意見を発表して更迭された田母神俊雄前航空幕僚長(60)=3日付で定年退職=と、懸賞論文を主催した「アパグループ」の密接ぶりが11日、次々と明らかになった。公用車でパーティー出席、戦闘機に体験搭乗。「資金提供などは一切受けたことがない」と言い切った田母神氏だが、論文は最優秀賞に選ばれ、300万円の賞金を手にする。
田母神氏はこの日の参院外交防衛委員会で、月曜日だった6月2日に開かれたアパの元谷外志雄代表の出版パーティーに公用車で出掛けたことを認めたほか、同社主催の「日本を語るワインの会」に計3回出席、同代表が航空自衛隊の戦闘機F15に体験搭乗した際、空幕長として許可したことを明らかにした。
(時事通信 2008年11月12日 1時4分)
そして元谷は、昨年の安倍晋三退陣後、「(安倍は)ヒトラーのように民主主義下で独裁政権を生み出すことも可能だったのに」などと惜しんでみせた。
http://www.apa.co.jp/appletown/bigtalk/bt0711/bt0711.pdf
(2頁の末尾に元谷の問題発言が出ている)
田母神の後ろ盾といわれる森喜朗を含めて、田母神俊雄、元谷外志雄、佐藤優、それに安倍晋三といった極右たちの跳ね上がりぶりは目も当てられないほどひどい。今後、彼らを全力で叩き潰すくらいの気概をもって、と言ってももちろん暴力ではなく言論によってだが、彼らに対峙する必要があると思う今日この頃である。
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http://mainichi.jp/select/today/news/20081111k0000m010078000c.html
リンクを張った毎日新聞の記事によると、
とのことだ。野党側は、田母神氏の在職当時の歴史観などを改めて問い、政治家が自衛隊を統制する文民統制(シビリアンコントロール)の観点から政府を追及する構えだ
今回の田母神の一件でよく引き合いに出されるのは、1978年に統合幕僚会議議長だった栗栖弘臣が「週刊ポスト」誌上で行った「超法規発言」だ。同誌のインタビューで栗栖は、「現行の自衛隊法には穴があり、奇襲侵略を受けた場合、首相の防衛出動命令が出るまで動けない。第一線部隊指揮官が超法規的行動に出ることはあり得る」と発言した。栗栖のこの発言が、文民統制(シビリアン・コントロール)の観点から不適切であるとして、防衛庁長官・金丸信(当時)に事実上解任されたのだが、福田赳夫首相(当時)は閣議で有事立法・有事法制の研究促進と民間防衛体制の検討を防衛庁に指示し、これがたいへんな議論を巻き起こした。当時高校生だった私にとっては非常に印象に強く残った一件で、「福田赳夫イコールタカ派」を印象づけたし、この頃から強まった日本の右傾化が、その後の30年の流れを決定づけたと私は考えている。だから、昨年から1年間政権を担った福田康夫前首相が、前任者・安倍晋三の極右路線を修正してアジア重視の外交に舵を切ろうとしたのを見て、親子で方向性が逆だなと思ったものだ。だが、絶対位置で見れば、福田康夫より父の福田赳夫の方がずっとリベラルであって、30年前には周囲と比較して福田赳夫は「右」、昨年から今年にかけては周囲と比較して福田康夫は「左」だったのだが、その「周囲」が30年前と比較して今はあまりにも右に偏っているということだ。
今回の田母神の一件を栗栖弘臣の「超法規発言」と比較するのは、私には抵抗がある。栗栖の時には文民統制が問題になったが、今回はもちろん文民統制の問題もあるけれど、それ以前の問題が噴出してきているように思えるからだ。
それ以前の問題というのは、今朝(11月11日)の朝日新聞2面で秦郁彦と保阪正康にも批判されている、幼稚な陰謀論を取り入れた田母神の妄想に満ちた歴史観のことで、あんな馬鹿なことは栗栖弘臣はもちろん言わなかった。だから、田母神俊雄を栗栖弘臣と比較するのは、栗栖に失礼だと私は思う。
さらに問題なのは、毎日新聞も指摘しているように、田母神が自説の「正しさ」を盾に、任命権者である防衛相の辞職要請を拒んだことだ。以下毎日新聞から引用する。
田母神(たもがみ)俊雄前空幕長(60)は10月31日に航空幕僚監部付に更迭され、併せて辞表の提出を求められたにもかかわらず、拒否し続けた。「辞めたら間違いを認めることになる」が理由だった。
浜田靖一防衛相や増田好平防衛事務次官らと押し問答が続く最中、田母神氏は「私の考えは理解されている」として唐突に元首相2人の名前を挙げた。
増田氏は、元首相らの支援があるかのような田母神氏の姿勢に身構えた。発言を伝え聞いた自衛隊首脳は「武人のすることじゃない」と激怒したという。ただ、政界との関係が焦点化しないよう、やりとりは封印された。
関係者によると、田母神氏が口にした一人は森喜朗元首相だという。森氏の地元、空自小松基地(石川県)に勤務したことで接点はあった。空自幹部は「森さんは歴代の小松基地幹部と親交がある。田母神さんの空幕長就任時にも森さんから祝い酒が届いた」と話す。
森氏は12月の懸賞論文授賞式に招待されていたが、今回の騒ぎでキャンセルした。森氏は、近隣諸国の植民地支配と侵略を謝罪した「村山談話」(95年)の取りまとめに自民党幹事長としてかかわった。
森氏周辺は「田母神氏との思想的なつながりはまったくない」と強調しており、田母神氏は自己の主張を正当化するために元首相の名前を利用し、抵抗したとみられる。
(毎日新聞 2008年11月9日 東京朝刊より)
この記事には田母神が名前を挙げたもう一人の元首相の名前が書かれていない。だが、11月10日の「きっこの日記」には、安倍晋三であると書かれている。アクセス数の多いきっこさんのところにはいろいろ情報が寄せられるようだから、おそらく間違いないだろうと思う。何度も書くが、アパの会長・元谷外志雄は安倍の非公式後援会「安晋会」の副会長であり、田母神はその元谷と十年来の深いつきあいがあった。
森喜朗と安倍晋三は、ともに幼稚な極右思想を持っている点で共通している。森は、首相在任中の2000年5月15日、神道政治連盟国会議員懇談会においてが行った挨拶で、「日本の国、まさに天皇を中心としている神の国であるぞということを国民の皆さんにしっかりと承知していただく、そのために我々(=神政連関係議員)が頑張ってきた」という発言をした。また、安倍は森以上にエキセントリックな極右政治家で、首相在任中、国民生活が困窮の度を深めているにもかかわらず、憲法改定しか頭にないとしか思えないイデオロギー政治に邁進し、教育基本法を改定して「真正保守」たちの評価を得たものの大多数の国民からは総スカンを食らい、昨年の参院選で歴史的な惨敗を喫して退陣に追い込まれた。教育といえば、麻生太郎内閣が発足したばかりの頃、中山成彬が暴言を連発して辞任に追い込まれたが、中山の日教組批判は、森や安倍の持論とそっくり同じである。
以上のことを考慮すると、田母神が「私の思想は森元首相や安倍元首相と同じもので、この2人の元首相からも支持されている」と発言したことも、さもありなんと思えるのである。つまり、森喜朗と安倍晋三も、元首相でありながら政府見解を否定する思想を持っているということだ。
一方、自民党の政治家の中でも、石破茂あたりは戦争中の日本を「遅れてきた侵略国家」と見ており、アパの懸賞論文で審査委員長を務めた渡部昇一に雑誌「WiLL」6月号で「石破防衛大臣の国賊行為を叱る」と批判されたとのことである。
当たり前のことを言ったに過ぎないこの石破のブログ記事には、田母神を支持するネット右翼の反論だとか石破をやたら持ち上げるお追従のコメントが多数ついていて、めまいがしてくるが、石破はイージス艦衝突事件の際に危機管理能力のなさをさらけ出した無能な世襲議員であることだけは思い出しておきたい。当ブログも2月29日付エントリ「危機管理能力ゼロの石破茂、福田康夫、それに自民党」で石破を批判した。
しかし、歴史観だけから言えば石破はまともで、田母神や森喜朗、安倍晋三らには問題がある。民主党をはじめとする野党は、文民統制の観点から質問をする予定とのことだが、それ以前に田母神のような人物がなぜ航空幕僚長にまで登りつめることができたのか、そこには極右思想を持ち、自ら政府見解を否定する元首相たちの影響力があったのではないか、そちらの方が重要だと思う。統制される側より統制する側の方がより深刻な問題を抱えているのである。
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こんな時期までプロ野球の日本シリーズをやるのは異例だと思うが、五輪期間中ペナントレースを中断するなどした影響なのだろう。最近ほとんど野球中継を見なくなっているが、それでも巨人対西武の日本シリーズは第1戦の4回以降と昨日行われた第7戦の7回以降を見た。優勝した西武の渡辺久信監督は、現役時代は力任せに速球を投げ込む投手で、大活躍もしたけれど、もっとも強く印象に残っているのは、西武の黄金時代で唯一優勝を逃した1989年に近鉄のブライアントに優勝を決めるホームランを叩き込まれたことである。
失礼ながら、現役時代の印象からは、渡辺監督が前年5位のチームを日本シリーズ制覇に導くとは想像もしていなかった。だが渡辺は、日本シリーズで第4戦にシリーズ初登板で毎回奪三振の完封勝利を飾った岸孝之を第6戦でロングリリーフさせる果敢な采配を見せた。こういう用兵は、かつて森祇晶(まさあき)監督が得意としていたことを思い出す。森は、ペナントレースと日本シリーズで選手起用を変えてくる監督だった。特に現役時代捕手だったせいか投手の調子を見極める目が確かで、短期決戦の日本シリーズでは、前半の数試合で投手の調子を見極め、好調の投手をシリーズ後半では抑えに先発にと大車輪の活躍をさせた。特に工藤公康の度胸満点の投球が見ものだった。渡辺久信も現役時代日本シリーズには強く、確か連勝記録を持っていたと思うが、若い頃救援で打たれて先発で好投すると、短期決戦では先発に適した選手と森は判断したようで、もっぱら先発で活躍していた。
今回の日本シリーズで、渡辺久信は師匠の森譲りの采配を見せ、意外と言っては失礼だが短期決戦の監督としての適性を見せつけた。何が言いたいかというともちろんWBCのことであり、日本シリーズの前に監督は原辰徳に決まったのだが、原よりも渡辺の方が適任ではないかと思うのだ。
もっとも原も決して悪い監督ではない。巨人の監督を務めた5シーズンで3回リーグ優勝し、日本シリーズには2度出場して1勝1敗だから、13シーズンで3回のリーグ優勝で、日本シリーズには一度も勝てなかった星野仙一よりははるかにましだ。星野は中日監督時代に森監督率いる西武と対戦したことがあるが、1勝4敗で完敗した。以前にも書いたと思うが、短期決戦における星野の用兵の特徴は、シーズン中と変わらない選手起用をすることである。不調の先発投手(88年の中日では小野、03年の阪神では伊良部)がいてもローテーションを崩さず、次の登板機会でもそのまま使って打たれ、今年の北京五輪のように、リリーフ投手(岩瀬仁紀)が不調でも何度も使って打たれる。短期決戦に必要な柔軟な采配ができないのである。ところが、短期決戦の采配は下手でもうぬぼれの強い星野は、選手が自助努力で育っていっても、「わしが育てた」という始末だ。ちなみにこの「わしが育てた」というのは、つい最近まで知らなかったのだが、2ちゃんねるで大流行したそうだ。これを知った時には腹を抱えて笑ったものだが、星野が「大半の(中日の)選手は私が育てた」とか「阪神と中日が優勝争いしたでしょ。本当はどっちが勝ってもよかったんや。皆、私の教え子みたいなもんやから」などと本当に言っていたことを知った時には呆れた。
しかし、そんな星野の「ジジイ殺し」にころっとやられてしまったのがナベツネだった。野村克也の暴露やイチローの発言によって星野仙一のWBC監督就任の芽を潰されたナベツネは、不承不承原を監督に決めたあとも、「原君一人では無理だから、王に助けてもらう」とかなんとか不満たらたらだったが、巨人と縁のない渡辺久信や、ナベツネの言いなりになりそうにもない落合博満らは最初から監督候補にもならないようだ。今でも、プロ野球は自分の私物だとナベツネは思っているのだ。
結局、プロ野球をダメにしたのはナベツネだった。今回の日本シリーズで巨人が王手をかけながら連敗して日本一を逃したのは、ナベツネにとって癪の種に違いなく、リーグ2連覇にもかかわらず原辰徳への評価がまた一段と下がったことだろう。来年のペナントレースの結果によっては、またしても「人事異動」を発動させるかもしれない。本当は、ナベツネ本人を人事異動させることが巨人のためにもプロ野球のためにも、そして日本の政治や社会のためにも必要なのになあ、と思う今日この頃である。
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最初に、アパの会長・元谷外志雄は、安倍晋三の非公式後援会「安晋会」の副会長であって、アパの耐震偽装が新聞で報じられるずっと前から「週刊ポスト」の記事(2006年9月29日号)や「きっこの日記」を通じたイーホームズ社長・藤田東吾の告発によって同社のホテルの耐震偽装疑惑が伝えられ、ネットでは安倍晋三に「アパ壷三」というあだ名がついていたことを思い出しておこう。また、アパの本社は石川県金沢市にあり、ここは言わずとしれた森喜朗のお膝元である。ヒューザーの耐震偽装事件が騒がれた時、なぜアパはオトガメなしで放っておかれたか、その理由はおおよそ見当がつくだろう。
そのアパが募集した懸賞論文だが、審査委員長が優生思想の持ち主である渡部昇一であることは、2008年11月5日付エントリにも書いた。
同じエントリで、田母神の「論文」のひどさをさんざんあげつらったが、ひどい「論文」は何も田母神のものだけに限らない。この懸賞論文で「佳作」に入選した、「諸橋茂一」という村山富市と河野洋平を提訴したことのある会社役員が書いた論文には、冒頭に「捏造」として知られる「アインシュタインの予言」が出てきてぶっ飛ぶ。「論文」とやらの内容ももちろんトンデモだし、田母神の「論文」と同様、章節立てもなく、体裁が整っていないひどいものだが、そもそも冒頭に「アインシュタインの予言」が出てきた時点でアウトだろう。こんな駄文を、『知的生活の方法』なる題名の著書のある渡部昇一大先生が「佳作」にお選び遊ばされたのである。なお、「アインシュタインの予言」は日本会議のドン・平沼赳夫も信じていたことをつけ加えておこう。
さらに6日、この懸賞論文には、航空自衛艦78人が応募していたと防衛省が発表した。朝日新聞の報道によると、
とのことである。田母神自身、98年から99年に小松基地トップの司令を務めていたそうだ。またしても石川県である。どうしても森喜朗の顔がちらついて仕方がない。前記朝日の記事によると、空自小松基地(石川県小松市)の第6航空団が、田母神氏が応募した懸賞論文と同じテーマ「真の近現代史観」で幹部隊員に論文指導をしていた
とのことだが、「論文」と称した文章で無知蒙昧、無教養を露呈した無能に違いない田母神が、なぜ航空幕僚長にまでのし上がることができたのか、おぼろげながら想像がつき始めた。ここにも「癒着構造」があるのではないか。そして、この件は一大疑獄事件に発展する可能性を秘めているのではないか。そんな想像もしたくなる。元谷氏は小松市出身で「小松基地金沢友の会」会長。田母神氏は第6航空団司令の時に知り合ったとされる。
朝日の記事に戻ると、
とあるが、アパのサイトにもこの本が宣伝されている。それを見て私は驚いた。懸賞論文は、ホテルチェーンなどを展開するアパグループの主催。グループ代表の元谷外志雄氏の著書「報道されない近現代史」の出版を記念して創設された。本は「鬱積(うっせき)する愛国、憂国の思いを、半ば書き下ろした」と書き、懸賞は「独自の近現代史観で日本の活性化に役立つ論文を」と呼びかけた。
http://www.apa.co.jp/outline/outline07.html
昨夜、メモ代わりに使っている裏ブログ『kojitakenの日記』にも記録しておいたが、なんとあの佐藤優が推薦文を寄せているのである。
元谷の著書にアパがつけた宣伝文句には、「陰謀渦巻く世界の真の姿がここにある」と謳われており、元谷の陰謀史観に基づいて書かれたトンデモ本であることは本を読まずとも明らかなのだが、これをなんと佐藤優は、
と絶賛しているのである。異能の実業家、元谷外志雄氏が描くグローバリセージョン後の帝国主義的国家対立の姿に戦慄した。
佐藤優というと、以前は私もその論考を面白く思い、何度か好意的に取り上げたことがあるのだが、その後認識を改めた。佐藤の正体を知るうえで、『多文化・多民族・多国籍社会で「人として」』のエントリ「脱「植民地主義」という鍵(その2)?「〈佐藤優現象〉批判」を読んで」が大いに参考になる。
http://ukiuki.way-nifty.com/hr/2008/01/post_c7ee.html
佐藤は、『正論』と『世界』の両方に論文を発表することで知られており、「左右共闘」を主張する人たちから神のように崇め奉られている。たとえば、城内実を熱心に支援しているブログがあるが、当然のごとく佐藤優も絶賛している。
私は一昨年末ごろだったと思うが、「週刊現代」に佐藤が安倍晋三を持ち上げる文章を書いているのを読んだことがあり、それが佐藤に疑問を持った最初のきっかけであった。しかし、その後魚住昭との共著で朝日新聞社から発行された『ナショナリズムという迷宮』(2006年)は結構面白かったので、当ブログで好意的な書評を書いたことがあった。
佐藤は、論文を掲載する媒体や議論の相手によって議論を巧みに使い分けるテクニックを持っており、それにころっとダマされてしまうわけだ。もちろん、私自身も例外ではなかった。そして、間違いなく政官業癒着企業であり、安倍晋三や森喜朗らと癒着していると想像される極右思想の持ち主・元谷外志雄が書いたトンデモ本を絶賛するところに、佐藤優という男の本質がある。「優しくなければファシズムではない」というのは他ならぬ佐藤優の指摘だが、その佐藤の名前が「優」であることは、実に面白い偶然の符合である。
『kojitakenの日記』にも書いたが、いいかげんにリベラル・左派の人間は「佐藤優現象」に真剣に向き合う必要があると思う今日この頃である。
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当ブログで初めてオバマを取り上げたのは、昨年2月7日付の「次期大統領は初の女性か黒人か?」である。毎日新聞に載ったオバマの記事を紹介し、感想をつけ加えただけのたわいもない記事だったが、当時まだブログで「バラク・オバマ」を取り上げる人は少なかったので、公開後しばらくは、「バラク・オバマ」を検索語にしてブログを来訪される方がしばしばあった。現在では、この検索語に当ブログごときがつけ入る隙などないことは言うまでもない(笑)。
朝日新聞に、「私には夢がある」から45年、という記事が出ているが、記事で紹介されている1963年のキング牧師の伝説的な演説は、TBSの「NEWS23」でも映像が流れたが、私はリアルタイムでは知らない。1968年のキング牧師暗殺や、それに先立つ3年前のマルコムXの暗殺も、朝日新聞の花形記者だった本多勝一のルポルタージュや雑文集(『貧困なる精神』など)で知ったのではなかったかと思う。私が物心ついたときのアメリカの大統領はニクソンで、そのニクたらしい名前のせいか、子供心に嫌っていたが、のちにウォーターゲート事件が発覚して、本物の犯罪者であることを知った時には、アメリカの大統領というのはこんなに悪いやつなのかと驚いたものだ。
しかし、新自由主義の時代が幕を下ろそうとしている今振り返ってみると、リチャード・ニクソンの悪はそんな生易しいものではなかった。ニクソンというと、ジョージ・ウォーカー・ブッシュと並んでアメリカ史上もっとも支持率の低かった大統領として知られるが、それもそのはず、この2人は史上稀に見る極悪の犯罪者大統領といっても過言ではない。
アメリカ・シカゴ学派の経済学者、ミルトン・フリードマンとチリの独裁者、アウグスト・ピノチェトがともに一昨年(2006年)に死去した時に書かれた、ブログ『代替案』の2006年2月16日付エントリ「ラテンアメリカとフリードマン: 神話の捏造」および同年12月19日付エントリ「ピノチェト死す」経由の孫引きだが、1973年にアジェンデ政権を倒したチリの軍事クーデターをアメリカがどのように支援したかについて、2003年にアメリカの情報公開によって明らかになった。それによると、CIAのたくらんだクーデター計画にはチリ軍部さえ反対しており、CIAに逆らったチリ国軍のシュナイダー司令官は、CIAによって1970年に暗殺された。そして、チリのクーデター1973年9月11日(!)に起こされたのだが、マネタリストの経済学者フリードマンは、このクーデターに深く関与し、革命後のチリに手下の学者連中を送り込んで新自由主義の実験を開始した。これが多大な成果をあげたという「歴史の捏造」が行われ、前記『代替案』のエントリを読むと、朝日新聞や毎日新聞も捏造された歴史観に沿った記事を書いていた。両紙は、コイズミ政権時代においては、右派の読売新聞や産経新聞以上に熱心にコイズミ・竹中の「構造カイカク」を支持していたからそれも当然だろう。実際には、新自由主義者たちの政策はチリにとんでもない格差社会を現出させて、失業率は1973年から1983年の間に実に4.3%から22%に増大し、ついにはアメリカの傀儡として出発したピノチェト自身がフリードマンの手下どもを追い出し、ケインジアンの政策を採用してチリの経済を立て直した。
一般には、アメリカの新自由主義の開祖はロナルド・レーガンとされているが、実は先駆者がリチャード・ニクソンであって、そのブレーンがフリードマンだった。ニクソンとフリードマンは、歴史上稀に見る悪質な犯罪者というしかないと思うが、フリードマンは1976年にノーベル経済学賞を受賞し、その2年前のフリードリヒ・ハイエクの同賞受賞と合わせて、新自由主義が主流になるのちの流れを決定づけた。
その影響がいかに広範にわたったかは、日本でも保守本流とされる大平正芳が「小さな政府」を標榜し(保守系学者・公文俊平の「大平正芳の時代認識」参照)、それは大平の直系・加藤紘一に引き継がれていることからも伺われる。最終的に日本で新自由主義の大実験を行って、70年代のチリ同様惨憺たる結果を引き起こしたのはコイズミと竹中平蔵だが、彼らが登場する以前に、保守本流の大平や加藤らが道を誤った責任も、今後歴史の審判を受けなければならないだろう。大平は故人だが、幸いにも加藤は健在で、現在でも一定の影響力を持つ政治家だ。加藤は、右翼は先の戦争の総括、左翼は社会主義の総括をそれぞれしなければならないと著書で主張したが、加藤自身も「保守本流」の経済政策を総括しなければならないのではなかろうか。
本家のアメリカでも、前の民主党大統領のビル・クリントンは1993年の就任演説で「大きな政府の時代は終わった」と宣言した(11月6日付朝日新聞1面掲載の同社アメリカ総局長・加藤洋一氏の記事による)。そして実際、ビル・クリントンはいやらしい新自由主義政策をとって日本にグローバリズム(実体はアメリカニズム)を押しつけてきて、日本はこれにずいぶん苦しめられた。私が米民主党の大統領選候補者争いでヒラリー・クリントンよりもオバマを応援したのは、このビル・クリントンの悪印象によるところが相当に大きい。
新自由主義の時代は、ニクソンが先鞭をつけ、レーガンの登場によって本格的に始まり、ブッシュJrの時代で終わったと言って良いと思う。この40年間は、必ずや後世の歴史家によってネガティブに評価されることになるだろう。この時代において、アメリカでは金融業にばかりかまけて製造業が没落し、それとともに中産階級が下層化した。後を追って新自由主義化した日本でも、同様の現象が起き始めているが、幸いにも製造業はまだ没落の兆しが見える程度で、今からならまだアメリカよりはかなり早く立ち直ることができると思う。
そして、没落するアメリカを立て直すべく期待を一身に集めて登場したのがバラク・オバマだ。
選挙戦においては、オバマはずいぶん幸運に恵まれた。民主党内の候補者争いではヒラリー・クリントンと争ったが、正直政策面では、国民皆保険制度に関する主張など、クリントンの方が先進的と思われる部分も多かった。しかし、当初から最有力と見られていたクリントンは、保守層から"hard left"(極左)だと非難され、保守層の機嫌をとるために軸足を中道に移していた。そこで空白になったリベラルのポジションを、オバマがしっかり押さえた。これが民主党の候補者争いにおけるオバマの勝因になった。ジョン・マケインも、もともと共和党左派で、"underdog"(負け犬)などと言われていたのだが、共和党の候補者争いの早い段階において右派のルドルフ・ジュリアーニが選挙戦略を誤って早々と脱落する幸運に恵まれた。そこで、弱点とする保守層の支持を獲得するべく、サラ・ペイリンを副大統領候補に起用して保守層の機嫌をとろうとしたのだが、ペイリンの化けの皮があっという間に剥がれてしまったところにリーマン・ショックが起き、経済を重視する中道の人たちは一斉にオバマに流れた。それで、今回の大統領選はオバマの圧勝になったわけだ。「負け犬マケインの負け因はペイリンだった」といえるかもしれないが、英語の"underdog"というのは、侮蔑語として用いられる日本語の「負け犬」とは違って、社会的弱者という意味合いがあって「判官びいき」を呼ぶポジティブな意味合いが強いとのことだから、前記のダジャレはあまり適切ではないだろう。
もっとも、得票率だけからいえば、昨夜のTBS「NEWS23」が報じたところによると、オバマ52%に対してマケイン47%(残り1%はラルフ・ネーダーその他の候補者の得票)だった。白人男性に限ればマケイン支持の方がかなり多かったそうだから、まだまだ人種問題の壁もあるし、経済政策でもこれまでの新自由主義が結構根強い支持を得ているようだ。
アメリカ民主党とのパイプをほとんどの政治家が持たない日本でも、愚かにも大統領選投票日直前まで「マケイン大逆転待望論」なるものがあったそうだ。しかし、世界の大部分は上記のアメリカや日本の「抵抗勢力」(笑)とは意見が全く異なり、オバマの勝利と犯罪政治家・ブッシュの政権が終わりを告げることを歓迎していることが報じられている。朝日新聞は、オバマの父方の故郷であるケニアの政府が、オバマの当選を祝って6日を祝日にすると伝えた。
確かに、オバマの政治家としての手腕は未知数だ。アメリカが直面している未曾有の経済危機を乗り越えるのは容易ではないし、個人的にはオバマがこれまで主張してきたアフガニスタンへの介入を強める主張を方向転換しなければアメリカは立ち直れないと思う。読売新聞はオバマの「テロとの戦い」重視の路線に期待しているようだが、アフガンにいつまでもかかわりあっていられる余裕などアメリカにはないはずだ。
だが、それよりも何よりも、今回の大統領選ではオバマが勝つことに何よりの意義があった。報道でも指摘されているように、オバマの当選が時代の要請だったと思う。アメリカに滞在した経験のある、黄色人種のアジア人である私としても、人種のるつぼではありながら支配層は白人が占めているアメリカの社会を、ほんの一部ではあるが目で見て肌で感じた感覚を持っているから、黒人やヒスパニック、それにアジア系のアメリカ国民が、いや世界中の人たちが熱狂する気持ちは、かなりの程度わかる。
「報道ステーション」で寺島実郎がジミー・カーターを引き合いに出していたが、私も長かった大統領選レースの終わり頃、しきりにカーターを思い出していた。日本でも好感をもって迎えられる大統領は、カーター以来になるだろう。「大きな政府」路線をとった最後のアメリカ大統領だったカーターは、やはり時代の流れには抗することができず、その業績の評価は芳しくないが、オバマに対しては時代の流れはフォローの方向だ。不安も多々あるが、期待を込めて来年誕生するバラク・オバマ大統領を見ていきたいと思う。
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次期大統領が決まったあとも、なお2か月はブッシュ政権が続くが、各国政府はもちろん次期大統領の政策を意識して動く。だが、これまでブッシュ政権に付き従って動くこと行動原理としてきた自民党政権には、急激な世界情勢の変化を後追いするだけしかできないのではないだろうか。もちろん、日本の民主党がうまくやれるとも必ずしも思わないけれども、日本の政治にも「チェンジ」が必要だろうとは思う。
さて、先月末に前航空幕僚長・田母神俊雄が、耐震偽装企業・アパの募集に応じた懸賞論文「日本は侵略国家であったのか」を寄稿し、これが最優秀賞を獲得し、賞金300万円を得た。これを知った政府は、これまでの政府見解と異なる内容だとして、早々と田母神を更迭した。しかし、特に何の処分もせず、田母神は退職金を手にしたわけだから、毎日新聞が書くように、「問題をあいまいにしたままの幕引き優先の対応」としか言いようがないだろう。昔からのことだが、自民党には内心ではこういう意見に賛成の人たちが多い。先日国交相をクビになった中山成彬や、財務相・中川昭一、元首相・安倍晋三、それに先年自民党を追われた平沼赳夫といった人たちの名前がまず思い浮かぶし、麻生太郎首相自身もその中に加えても良いだろう。そういえば、「HANAの会」というのもあった。
だが、いかなる極右思想の持ち主であっても、ひとたび総理大臣に就任したら、もはや本音は言えない。「河野談話」や「村山談話」を踏襲するとしか言えない。それは、国際関係を配慮して、国益のために行動しなければならない総理大臣の職責からくるものだ。安倍晋三などは、首相在任中は心にもない言動をとらざるを得なくて、ストレスがたまりにたまったことだろう。たまりかねて、従軍慰安婦問題について「狭義の意味での強制性を裏付ける資料はなかった」と発言したところ、国際社会から問題視されて、ご主人さまのブッシュに対して謝罪させられる羽目に陥った。田母神を政府が早々と更迭し、麻生太郎が田母神を批判するコメントをしたのは当然のことである。
頭の悪い右翼マスコミや極右ブロガーらは、こんな現状に歯噛みする。産経新聞の客員編集委員・花岡信昭は、同紙に掲載した「【政論探求】田母神氏の重い問いかけ」と題した記事で、
とか、「村山談話」「河野談話」がいかに手かせ足かせになっているか、改めて思い知らされる事態だった。
とか、朝日新聞の社説は「ぞっとする自衛官の暴走」とあった。その見出しにこちらがぞっとした。「自虐史観」「東京裁判史観」にがんじがらめになっているメディアの実態がそこにあった。
などと書いている。田母神氏は「第2の栗栖」として歴史に残ることになった。
だが、実際に田母神の論文を一読した私は思うのだが、あれを読んで花岡信昭は味方陣営の言論に危機感を感じなかったのだろうか。他の産経新聞記者や右翼ブロガーたちはなんとも思わなかったのだろうか。
「kojitakenの日記」にも書いたが、田母神の文章は、「論文」とはとても言えない類の、きわめて質の低いものだった。いわく、蒋介石はコミンテルンに動かされていた、張作霖爆殺事件はコミンテルンの仕業だ(これは、近年産経新聞が広めようとしている説である)、アメリカもコミンテルンに動かされていた、などなど、学術的には全く相手にされないであろう陰謀論に支配されている。一部のブログで、陰謀論を唱えることの是非がまた論じられているが、陰謀論がいかにダメかということを身をもって示しているのが、この田母神の「論文」なのだ。
そもそもこの「論文」には章節立てさえなくて、著者が感情の赴くままに書いたものであることは明らかだ。レイアウトもワープロソフトのデフォルトをそのまま使ったもののようで、文字間隔が異様に開いている。数字は全角と半角が入り混じっていて、中には、「2600人」などと、同じ数字の千の位だけ全角で百の位以下は半角になっている例さえある。引用文献リストも論文の末尾に示されていないし、本文中の引用でも著者と発行元が括弧の中に入っているうえ、発行年さえ明記されていないなど体裁がめちゃくちゃであって、まともな教養を持った人物の手になる文章とはとても思えないのである。
「はてなブックマーク」にも、田母神論文を読んで呆れた人たちのコメントが多数あるので、以下に紹介する。
- 2008年10月31日 katamachi 歴史, 中国, 事件 これが「最優秀藤誠志賞 (懸賞金300 万円・全国アパホテル巡りご招待券)」の作品なのか。航空幕僚長が、既存の入門書や一般雑誌の記述を繋ぎ合わせたレベルの感想文しか書けていないという現実に、絶望した!
- 2008年10月31日 A-xtu 論文 主張どうこう以前に、この程度で何か賞を取っちまうなぞ、査読に何度も落ちてるおいらとしては実に許し難いw
- 2008年11月01日 medapan 事実は小説より奇なり, 軍事 内容がどうこう以前に,これを論文とは言わないと思う.
- 2008年11月01日 weissorvice うーむ。これが最優秀賞か。ませた中学生辺りが、教師にたてついたような文章だ。まぁこの賞に応募したほかの論文がどんなもんだったのかは知らんけど。しかし、アパもこれをよく最優秀賞にしたな。あらゆる意味で。
- 2008年11月01日 trinh これはひどい, トンデモ 註も参考文献リストもなしで論文とはこれ如何に。
- 2008年11月01日 P2C2E 本当にトンデモない。陰謀論を受け売りする人物を空幕長まで昇進させていたとは......自衛隊は組織として大丈夫なのか不安になってきた。
- 2008年11月01日 wackunnpapa 歴史修正主義, 反知性主義 70過ぎてリタイアしたじいさんならまだしも同情の余地はあるが,現役の幕僚長が書くような内容じゃないな.資質を疑われても仕方が無いと思われる.
- 2008年11月01日 good2nd 自衛隊 ものすごい低レベル…同じ主張でももっとマシなものが書けるだろうに/てか体裁もまるでなってない。大学生向けのレポートの書き方でも読んどけ。しかし自衛隊は内部の報告書とかレポートとか大丈夫なのか…?
- 2008年11月01日 rev-9 読んだ。頭が痛い。これが「論文」として内容で評価されたという説よりは、 http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/army/1224694614/374 を鵜呑みにしたくなってきた。
- 2008年11月01日 ryankigz ワロタ これ論文じゃねーwww
- 2008年11月01日 kogarasumaru これはひどい, 歴史修正主義 これを公表できるのがスゴイ/引用文献でその論文の大体の質が決まるとよく聞くが、これは…/擁護している人たちは論文って読んだこと無いんだろうな
- 2008年11月01日 mihrdat 凄い。長い想定引用句が地の文なのは理解しにくい:《さて日本が中国や朝鮮を侵略したために(中略)敗戦を迎えることとなった、日本は(中略)過ちを犯したという人がいる。》。章節見出無。句点少。他滅茶苦茶。
- 2008年11月01日 nornsaffectio 文章 こういうの、大学だったら読まれる前に体裁がなってないって突っ返されるけどな。読んだら読んだで論証らしい論証もないし文献引用も意味をもちうるのはせいぜい秦氏くらいのもの。それですらあの秦氏だし。
- 2008年11月03日 fireflysquid 社会, 自衛隊, 軍 読んだ/「ボクちん悪くないもん」/脳内お花畑/あちら陣営としては空幕長という肩書の人物が欲しかったのかな?/渡部昇一の論文指導の質が知れる
- 2008年11月04日 shichimin 歴史, 社会, 論文 骨子は小林よしのり氏の主張とほぼ同じ。確かにこれ論文とはいえないなぁとおもう。内容というより文章力で更迭されたのでは?あとAPAってのもなんだかな。。。
- 2008年11月04日 IshidaTsuyoshi これはひどい 政府見解と異なるとかシビリアンコントロールが云々とか言ってるけど、これはそれ以前の問題だろう。このまま空自の幹部でいさせては恥ずかしいから更迭したのではないか?なぜこういう方が昇進できたのだろう?
この田母神「論文」が、もっとまともなものだったら、私もその内容を正面から批判するのだが、この内容、この体裁だったら、その気にもならない。むしろ、田母神「論文」を擁護している右翼諸氏に、あんたら、それで良いと思っているのか、その危機感のなさは一体なんなんだ、と思ってしまう。これでいったい「国を思う」人間だといえるのだろうか。
上記「はてなブックマーク」にもあるように、「自衛隊は組織として大丈夫なのか不安になってきた」とは、私も感じた。いや、かつて安倍晋三を総理大臣にして、今また麻生太郎を総理大臣にした自民党政権自体が激しく劣化している。かつて小沢一郎が海部俊樹を指して言ったとされるような「担ぐみこしは軽くてパーがいい」という考え方もあるのかもしれないが、そうではなくて自民党にしても自衛隊にしても組織全体が腐り切っているように思える。立場の違いを超えて、これではアブナイと私などは思ってしまうのである。敵に心配されるようでは右翼もおしまいだろう。
最後に付け加えておきたいのは、この懸賞論文の審査委員長は、かつて『知的生活の方法』というベストセラーを書いた渡部昇一だということだ。「知的」を自認する御仁が選んだのが、あの田母神俊雄の「論文」であったことは、まことに興味深い事実である。
この渡部は優生思想の持ち主であって、1980年の大西巨人との論争で、私は渡部の正体を知った。下記URLの資料をご参照いただきたい。
http://www.livingroom.ne.jp/db/h003.htm
蛇足ながら書き加えておくと、4月16日付エントリでも書いたように、渡部昇一は稲田朋美の後援会「ともみ会」の会長である。また、懸賞論文を募集したアパの会長・元谷外志雄は安倍晋三の非公然後援会「安晋会」の副会長であって、今回の一件によって当ブログの2006年10月24日付エントリ「週刊ポストが取り上げていた「アパ壷三」の疑惑」へのアクセスを数十件いただき、ちょっぴり懐かしさも覚えた今日この頃である(笑)。
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一方、世界の変化に全くついていけそうにないのが日本だ。ブログが何を主張しようが影響力は限定的であり、それが証拠にブログのアクセス数が目立って増える時は、扱った題材がテレビで放送されて、それを見た人がネット検索をかけた時だ。日本で世論の形成にもっとも大きな力を持つのはテレビであり、コイズミにせよ橋下徹にせよ、テレビを徹底的に利用して絶大な人気を得た。既成のメディアと戦っている橋下がネットユーザーに支持されているのではない。テレビで橋下を見ているおっちゃんやおばはんに支持されているのである。
昨日(11月3日)、ビートたけしがやっているテレビ朝日の「TVタックル」を見ていて、露骨な世論誘導の意図を感じてげんなりした。与党が打ち出した定額給付金について議論していたのだが、その中で宮崎哲弥だったかが、税金を国民から取ってそれを国民にばら撒くのだったら、最初から何もしなければ良いと言っていた。これは典型的な「小さな政府」の考え方であり、新自由主義そのものの主張だったが、出演者からこの言説への批判は出なかったのである。民主党の原口一博は新自由主義者だから何も言うはずがないが、共産党の穀田恵二まで何も言わなかった。これを見ていて私は、そういえば穀田の息子(穀田全)は昨年の参院選に出馬していたなと思い出した。共産党までもが世襲政治をやってはいけない。
話を元に戻すと、番組を見ていて私は、日本では「所得再分配」さえまともに認知されていないのかと暗澹たる気持ちになった。日本では、「税金を取る」ことはなんでもかんでも国民にとってよくないことだ、などという馬鹿げた風潮があり、それを垂れ流しているのがテレビなのである。所得再分配を意図する政策を持ち出すと、必ず田原総一朗に代表される電波芸者どもが「バラマキ」批判の大合唱をする。所得再分配の意義も何もあったものではない。与党の定額給付金は、そのあとに消費税の大増税が待ち構えているから問題なのであって、定額給付金だけ切り取って論じた場合、必ずしも間違った政策ではない。この政策は、朝日新聞社説(10月31日付)にも「バラマキ」と批判されているが、民主党が打ち出している農家への所得保障と同じ方向性を持ったものだ。
番組では当然ながら麻生太郎首相が明言した2011年の消費税増税の話になったが、三宅久之が勇気ある政策だとしてこれを絶賛し、ヨーロッパと同じ方向性を持っていると主張した。前記の朝日新聞社説も麻生が負担増を語ったことを歓迎している。しかし、当ブログ10月31日付エントリ「社会保障を削って消費税率を引き上げる麻生内閣の理不尽」でも紹介した神野直彦著『財政のしくみがわかる本』(岩波ジュニア新書、2007年)をお読みいただければわかるが、三宅の主張は嘘である。ヨーロッパは、確かに消費税率は高いが、個人所得税率も高く、金持ちが応分の負担をして、高福祉を実現しているからこそ、貧しい人にも負担を求めることが理解されているのである。日本のように、金持ちや大企業には大々的に減税して、「骨太の方針」とやらに基づいて毎年社会保障を削減しておきながら、消費税率だけを上げようとする政策は明らかに間違っている。こんな政策をとったら日本の国力は低下し、最終的には「富裕層」にも跳ね返ることだろう。
見過ごせないのは、民主党支持者として知られる福岡政行も、三宅の妄論を支持すると言明したことだ。次の総選挙で政権交代が起こり、民主党政権ができた場合でも、消費税増税の脅威は去らないことを指摘しておきたい。
もちろん、福祉国家は最終的には高福祉高負担の社会だから、最終段階では消費税を増税する必要が出てくるだろうが、それまでには民主党などの言う「ムダを削る」段階、金持ちや大企業に応分の負担をしてもらう段階があって、それでも足りない部分を消費税の増税で補うという順序を踏まなければならない。
テレビによって骨の髄まで新自由主義に侵された日本国民が、福祉国家に向かって歩みを進めるのはまだまだ先で、それまでの間は、新自由主義の揺り戻しがあっては、それによって悲惨な事件が起き、新自由主義への批判が再度強まるという、行ったり来たりの道を歩むことになるのではないかと私は予想している。
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ちょうど2か月前の9月1日に福田康夫前首相が突如辞任を表明して以来、解散総選挙に向けて一直線かと思いきや、中旬にアメリカ発金融危機が起き、世界中の経済が混乱した。自民党の調査で、いま総選挙を行っても大幅に議席を減らすだけという結果が出たせいか、新首相・麻生太郎は解散を先送りし、追加経済対策を発表した席で、3年後(2011年)の消費税増税を言い出す始末で、これで解散総選挙は大幅に先送りされることになったと考えるべきだろう。昨日(10月31日)、航空幕僚長の田母神(たもがみ)俊雄が、耐震偽装問題を起こしたアパ(同社の元谷外志雄会長は安倍晋三の非公然後援会「安晋会」の副会長である)が募集した懸賞論文(優生思想の持ち主である極右言論人の渡部昇一が審査委員長を務めている)に応募じて、「我が国が侵略国家というのは濡れ衣だ」と主張した件(下記URLの毎日新聞記事参照)について、政府は早々と田母神を更迭したが、この問題も、総選挙が行われる頃には誰も覚えていないに違いない。
http://mainichi.jp/select/today/news/20081101k0000m010089000c.html
それにしても、たいへんな2か月だった。新自由主義から福祉国家への道のりは、どれほど長いか想像さえつかず、残念ながら、それには多大な代償が支払われることになるだろう。
昨日、ふとブログの過去ログを見ていたら、1月5日付エントリ「支配者階級と闇紳士たちが金に狂奔する時代に終わりを!」に、こんなことを書いていた。
朝日新聞が(元旦の社説で)「平成20年」を持ち出そうとした気持ちはわからなくもない。元号で「20年」というと、誰もが「昭和20年」に日本に起きた大きな変化を思い起こすからである。
(中略)
今年は、ずばり新自由主義の崩壊が始まる年になる。こう予感するのは私だけではあるまい。サブプライム問題は、「リスクの分散」が、実はリスクの全世界へのバラマキに過ぎなかったことを露呈した。
(当ブログ 2008年1月5日付エントリ 「支配者階級と闇紳士たちが金に狂奔する時代に終わりを!」より)
同様の予想を立てていた人は大勢いることを私は知っているから、何も威張るつもりはない。「8月15日」には何も起きなかったが、「リーマン・ショック」は日本時間の平成20年9月15日。やはり大激変は起きた。ブログ内で「バラマキ」という言葉を検索語にして調べていただければわかるが、当ブログは一昨年の開設以来一貫して、「バラマキ」という言葉をネガティブな意味で用いることを意識的に避けており、検索で引っかかるのは、自民党や田原総一朗の「バラマキ」批判を逆批判したものばかりであるが、唯一に近い例外が上記で、サブプライム問題はアメリカによる全世界へのリスクのバラマキだ、と書いていた。
時事問題への関心が高まったせいだろう、当ブログは9月に今年に入っての月間最多アクセス数を記録したが、10月もそれをわずかに上回って、2か月連続で記録を更新し(FC2カウンタによる計数で132,791件)、過去最多だった昨年7月のアクセス数(135,446件)に肉薄した。10月は、星野仙一批判と橋下徹批判のエントリのアクセス数が多かった。
しかし、個人的には、「しんぶん赤旗」にも紹介されたという9月の自民党総裁選に絡んだ「NHKの自民党コマーシャル事件」におけるブログ連鎖の一環に加わり、大組織NHKを動かすことができたことで、ようやく一歩前進できたかなあと考えている。この件で特筆ものの大活躍をされた「大津留公彦のブログ2」から、記念すべき当ブログへの6000件目のTBをいただいたが、これがなんとNHKが沢田研二の「わが窮状」のキャンペーンを行うという記事だったことが面白い。大津留さんには、沢田研二の歌を再度楽しませていただいたことを感謝したいし、NHKにまだまだ大勢おられる良心的な職員たちにも、いろんな方面からの圧力をはねのけての今後の健闘を期待したい。
麻生邸を見に行っただけの人たちがいきなり逮捕されてしまった件も、マスコミはほとんど報じず、もっぱらネットで情報が伝わっている。当ブログは橋下徹批判にかまけて出遅れてしまったが、すでに「麻生でてこい!!リアリティツアー救援会ブログ」が立ち上がっており、雨宮処凛さんの「すごい生き方 ブログ」で紹介されるなどの広がりを見せている。
今後の政局だが、小沢一郎は「選挙は近い」と叫んでいるのだが、これまで何度その言葉を聞いたかわからない私としてはあまり信用できない。1979年に時の大平正芳首相が一般消費税の導入を公約して解散総選挙を行った時に自民党が大敗したことを、自民党の政治家たちはよく知っているはずだ。だからほとぼりが冷めるまでは解散はない。早くとも来年の春で、おそらく任期満了ギリギリまで引っ張ると思っているので、しばらくは休みたい時には休むといったペースで、これまでよりは若干余裕を持って、肝心な時にガス欠にならないようにブログ運営を続けていきたいと思う。
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