7月10日付エントリ 「スウェーデンの人々の暮らしを支えるバイオマスエネルギー」 で、飯田哲也氏が創価学会系の雑誌 『潮』 8月号に発表した 「スウェーデンのエコライフは日本の "未来予想図"」 を読んで以来、突如として環境・エネルギー問題への関心がわき上がってきた。というより、人類にとっても日本にとっても大きな課題であるばかりか、今後の産業のあり方についても非常に重大な問題であるにもかかわらず、これまであまり関心を持ってこなかった己の不明を恥じるばかりだ。
この問題は、科学技術的な観点と社会科学的な観点の両方が要求されるので、たいへん知的好奇心をそそられるが、上記のようにうかつにもこれまで関心が低かったので、現在の私の知識レベルは低い。徐々に勉強しながら駄文を公開していくのは、ある意味恥ずかしい話なのだが、当ブログの新たなチャレンジとしてやっていきたいと思うので、どしどし批判なり激励なりのコメントをいただければ幸いである。
先週末には、本屋に行ってまず技術系でそんなに難しくない専門書を、と思って書棚を見ていたのだが、いまいちピンとくる本がなく、その代わりに金子勝とアンドリュー・デウィットの共著になる 『環境エネルギー革命』 (アスペクト、2007年)という本が目に止まり、これを購入した。
金子勝は、テレビでもおなじみの経済学者(慶応大学教授)で、新自由主義に対して一貫して批判的なことで知られる。また、アンドリュー・デウィットは1959年カナダ生まれ、ブリティッシュ・コロンビア大学で政治学博士を取得したが、現在は立教大学で経済学を教えている。金子勝とはしばしば共著を出版しているようだ。
この本は、学術書ではなく一般向けの本だが、一気に読ませる面白さがあり、たいへん興味深く読んだ。これから何回かに分けて紹介していきたい。
初回の本エントリは、手抜きしてちょっと前に「kojitakenの日記」に書いた文章を、一部手直しして再録する。序章、第1?6章、終章の8章からなるこの本の序章について書いた文章だ。
この本は、参議院選挙で自民党が大敗する直前の昨年6月に書かれており、そのため、冒頭に当時首相だった安倍晋三に対する辛辣な批判が出てくるので、大の安倍嫌いである私としてはすんなり入っていけた。
序章で、早くも注目すべき記述に行き当たった。環境エネルギー政策に関する対抗軸は、従来の「大きな政府」対「小さな政府」(新自由主義)や、「第三の道」対「小さな政府」では理解されず、代替エネルギーの開発には補助金だけではなく国家主導のあらゆる政策が動員されている(政府介入的)一方で、代替エネルギーの売買を促進するための規制緩和政策も用いられており、環境税が導入される一方で、排出権取引のような市場原理も、時には肯定される。
確かにこの点は、以前飯田哲也氏の論考をいくつか読んだ時に気づいたことで、福祉国家対新自由主義という対立軸では説明できないな、と思っていたところだ。
実際、この本によるとイデオロギー的な色分けは困難らしく、イギリスの保守党は若いリーダーを押し立てて環境政策を前面に押し出す一方、フランス社会党の大統領候補だったロワイヤルは元環境大臣だった。カナダの中道左派政党で、2006年に下野した自由党は、温暖化対策を重視した元環境大臣のステファン・ディオンが党首に選ばれたそうだ(2006年12月)。
蛇足だが、ネット検索したら「日本deカナダ史」というブログが見つかったが、結構面白そうだ。ブログのタイトルからしてウケたが、「日本でカナダ情報を発信するdescriptiveな元記者のブログ」という副題にさらにウケた(「カナダde日本語」からもリンクが張られていますね)。そういえば、本エントリで紹介している本の著者、デウィット教授は日本で経済学を教えているカナダ人だ。
本論に戻ると、世界では右も左も実のある温暖化対策に目を向けているのに、日本のネット右翼は原子力発電推進の金切り声を上げ、一方ネット左翼は「地球温暖化論は原子力推進派の陰謀だ」と得意の陰謀論をぶち上げる。反知性(反知識人主義)同士の不毛な争いには、心胆を寒からしめるものがある。
金子とデウィットは、日本政府は、環境エネルギー技術において、日本はEUの20年先を行っていると錯覚しているが、実際には風力、地熱、波力、太陽光などの再生可能エネルギーの分野では、既にEUに追い越されていることをわかっていないようだ、と批判する。
思考停止の右翼が原発にこだわるのを批判しようとするあまり、「リベラル・左派」が「地球温暖化陰謀論」なんかにのめり込んでいるようでは、日本の環境エネルギー技術および政策のお先は真っ暗だ。くだらない陰謀論にかまけるのはたいがいにしろ、と言いたくなる。
(続きはこちらへ)
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この問題は、科学技術的な観点と社会科学的な観点の両方が要求されるので、たいへん知的好奇心をそそられるが、上記のようにうかつにもこれまで関心が低かったので、現在の私の知識レベルは低い。徐々に勉強しながら駄文を公開していくのは、ある意味恥ずかしい話なのだが、当ブログの新たなチャレンジとしてやっていきたいと思うので、どしどし批判なり激励なりのコメントをいただければ幸いである。
先週末には、本屋に行ってまず技術系でそんなに難しくない専門書を、と思って書棚を見ていたのだが、いまいちピンとくる本がなく、その代わりに金子勝とアンドリュー・デウィットの共著になる 『環境エネルギー革命』 (アスペクト、2007年)という本が目に止まり、これを購入した。
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金子勝は、テレビでもおなじみの経済学者(慶応大学教授)で、新自由主義に対して一貫して批判的なことで知られる。また、アンドリュー・デウィットは1959年カナダ生まれ、ブリティッシュ・コロンビア大学で政治学博士を取得したが、現在は立教大学で経済学を教えている。金子勝とはしばしば共著を出版しているようだ。
この本は、学術書ではなく一般向けの本だが、一気に読ませる面白さがあり、たいへん興味深く読んだ。これから何回かに分けて紹介していきたい。
初回の本エントリは、手抜きしてちょっと前に「kojitakenの日記」に書いた文章を、一部手直しして再録する。序章、第1?6章、終章の8章からなるこの本の序章について書いた文章だ。
この本は、参議院選挙で自民党が大敗する直前の昨年6月に書かれており、そのため、冒頭に当時首相だった安倍晋三に対する辛辣な批判が出てくるので、大の安倍嫌いである私としてはすんなり入っていけた。
序章で、早くも注目すべき記述に行き当たった。環境エネルギー政策に関する対抗軸は、従来の「大きな政府」対「小さな政府」(新自由主義)や、「第三の道」対「小さな政府」では理解されず、代替エネルギーの開発には補助金だけではなく国家主導のあらゆる政策が動員されている(政府介入的)一方で、代替エネルギーの売買を促進するための規制緩和政策も用いられており、環境税が導入される一方で、排出権取引のような市場原理も、時には肯定される。
確かにこの点は、以前飯田哲也氏の論考をいくつか読んだ時に気づいたことで、福祉国家対新自由主義という対立軸では説明できないな、と思っていたところだ。
実際、この本によるとイデオロギー的な色分けは困難らしく、イギリスの保守党は若いリーダーを押し立てて環境政策を前面に押し出す一方、フランス社会党の大統領候補だったロワイヤルは元環境大臣だった。カナダの中道左派政党で、2006年に下野した自由党は、温暖化対策を重視した元環境大臣のステファン・ディオンが党首に選ばれたそうだ(2006年12月)。
蛇足だが、ネット検索したら「日本deカナダ史」というブログが見つかったが、結構面白そうだ。ブログのタイトルからしてウケたが、「日本でカナダ情報を発信するdescriptiveな元記者のブログ」という副題にさらにウケた(「カナダde日本語」からもリンクが張られていますね)。そういえば、本エントリで紹介している本の著者、デウィット教授は日本で経済学を教えているカナダ人だ。
本論に戻ると、世界では右も左も実のある温暖化対策に目を向けているのに、日本のネット右翼は原子力発電推進の金切り声を上げ、一方ネット左翼は「地球温暖化論は原子力推進派の陰謀だ」と得意の陰謀論をぶち上げる。反知性(反知識人主義)同士の不毛な争いには、心胆を寒からしめるものがある。
金子とデウィットは、日本政府は、環境エネルギー技術において、日本はEUの20年先を行っていると錯覚しているが、実際には風力、地熱、波力、太陽光などの再生可能エネルギーの分野では、既にEUに追い越されていることをわかっていないようだ、と批判する。
思考停止の右翼が原発にこだわるのを批判しようとするあまり、「リベラル・左派」が「地球温暖化陰謀論」なんかにのめり込んでいるようでは、日本の環境エネルギー技術および政策のお先は真っ暗だ。くだらない陰謀論にかまけるのはたいがいにしろ、と言いたくなる。
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