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きまぐれな日々

7月21日付の朝日新聞と四国新聞に、竹島に関するコラムが掲載された。いうまでもなく、中学校の学習指導要領の「解説書」にはじめて竹島が盛り込まれた件に関するものだ。

朝日新聞の方は、前論説主幹の若宮啓文氏が書いた「風考計」というコラムで、せっかく韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領と福田康夫首相が日韓関係改善に動き始めた時に、何たることだと慨嘆している。米国産牛肉をめぐって米韓関係がぎくしゃくしていることも引き合いに出して、「ほくそ笑んでいるのは北朝鮮の金正日総書記に違いない」などと書いている。そこには、「同じ自由主義陣営がなぜ仲間割れするんだ」というニュアンスがあり、かつて1979年に中国が「懲罰」と称してベトナムに侵攻した際に、同じ朝日新聞が「社会主義国同士がなぜ」と見出しを打ったときの裏返しのような違和感を覚えるのだが(しかもこの時、中国はポル・ポトのカンボジアに肩入れしていたのだった)、右翼はそんな若宮氏に対しても、「竹島問題で韓国に媚びを売る国賊」などと言うのだから、彼らとの距離は果てしなく大きい。

ところで、このコラムの中で若宮氏は、

竹島が「我が国固有の領土」かどうかは日韓の相違だけではなく、実は日本の中にも長い論争がある。政府見解を否定する研究者も少なくないのだ。

いまは島根大の内藤正中名誉教授らがそうだ。明治政府は竹島を韓国領だと見ていながら、軍事的な思惑などで1905年に島根県に編入した。そんな見方を著書や論文で展開している。

と指摘している。古来の文書は島の名称からして入り乱れ、歴史も法的解釈もややこしいとのことで、若宮氏は3年前、同じコラムに「いっそのこと島を韓国に譲って『友情島』にしてもらう」との「夢想」をコラムに書いて、「国賊」との非難を浴びた。今回は、「島の所属も昔はあいまいで、さして大きな問題ではなかった」として、「大事なのはむしろ昔のあいまいさを思い、未来に向けて柔軟な発想をすることではないか」と書いている。それこそあいまいな表現だが、言いたいことはわからないでもない。

若宮氏は、コラムの最後でも「北の高笑いは聞きたくない」と書いて、日韓とも歩み寄れと主張しているのだが、何かというと北朝鮮を引き合いに出す書き方はちょっとどうかなあという気がしなくもない。

四国新聞の方は、元日本経済新聞記者で早稲田大学大学院教授の田勢康弘氏のコラム「愛しき日本」でこの問題を取り上げている。こちらはネットで全文を読める(下記URL)。
http://www.shikoku-np.co.jp/feature/tase_column/20080721.htm

このコラムの終わりのほうで、田勢氏は竹島問題を取り上げているので、その部分を紹介する。

G8が終わったら、こんどは日本と韓国の間のもっともやっかいな問題である領土問題が再燃した。日本は「竹島」といい、韓国は「独島[ドクト]」。「独」という文字にナショナリズムが詰まっているように見える。たがいに自国の領土だと主張し譲らない。というよりは譲れない、というべきだろう。

 地球上のあらゆる領土問題はよく似ている。自国に有利な史料を根拠に主張しあっても解決は難しい。昔なら戦争で決着もしただろうが、いまはどちらかが譲らない限り政治決着しかない。最近、決着した中国とロシアの領土問題のようにまん中に線を引き、面積を半分ずつするという方式は、参考にすべき知恵だ。

 地球上の土地はもともとだれのものでもない。日比谷公園ほどの面積の岩だけの島の帰属をめぐって、国と国とが抜き差しならないような関係になるなど、愚かなことではないか。外交より国内事情を優先させるやり方は一時のうさは晴らせても根本的な解決にはまったく役に立たない。韓国の李明博政権は窮地に立たされており、ナショナリズムを刺激しながら国民の目を外に向けようとしている。米国ばかりではなく、対外関係はにわかに悪化している。その流れの中にわが国も入っていると考えれば、あわてることはない。こういうときには「反応しない」という選択こそ「智徳」というものではないだろうか。

(四国新聞 2008年7月21日掲載 田勢康弘「愛しき日本」より)


コラムの筆者・田勢氏は新自由主義者の範疇に入る人だが、経済問題以外ではリベラルといってよく、私は月一回「四国新聞」に載る田勢氏のコラムを楽しみにしている。ここで紹介した竹島問題に対する態度も、なかなかクールで好ましいと思う。

このコラムの最初のほうで田勢氏は福沢諭吉の「文明論之概略」から、「文明とは人の安楽と品位との進歩を云うなり。又この人の安楽と品位とを得せしむるものは人の智徳なるが故に、文明とは結局、人の智徳の進歩と云て可なり」という部分を引用し、

 いずれにしろ洞爺湖G8の百三十三年前に福沢は文明の本質について「結局、人の智徳の進歩」と指摘している。G8の議論と結論を見て、文明というものは科学技術のように時間がたてば進歩するというものではないのだな、と雨に煙る山の緑を見つめながら考えた。豊かになるということは、その過程でエネルギーの消費が増える。また温暖化ガスの排出量も増える。一方で地球の人口が六十億人を超えたいま、すべての資源が不足することは、相当前からだれもがわかっていたこと。そのわかっていたことに手が打てない。利害が対立し、己の利だけを得ようとして地球全体を傷めてしまう。

と書いている。

「己の利だけを得ようとして地球全体を傷めてしまう」を地で行ったのがブッシュであり、それに盲目的に追随したバカがコイズミと安倍晋三だったのだが、環境問題については次回のエントリで述べることにしたい。

竹島問題に関しては、福田首相も韓国を刺激したくないようで、それがまたネット右翼や産経新聞、それに安倍晋三らにとっては面白くないのだろうと思うが、日本を危うくするのは後者の人たちだと当ブログは考えている。


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