きまぐれな日々

北海道洞爺湖サミットが閉幕した。

日本で行われるサミットを報道する時、日本のマスコミが普段の政権批判の姿勢を棚に上げてサミットに出席する総理大臣を持ち上げる報道をするのは今に始まった話ではなく、日本で最初に開催された1979年(東京サミット、大平正芳首相が議長)の頃からの伝統だ。東京サミットを前にした朝日新聞の見開きの特集記事で、「大平さん がんばれ」だったか「頑張れ大平さん」だったか、そんな大見出しが踊っていた記憶がある。

で、今回もマスコミはサミットの成果を強調する。そして、日本が高度の環境技術を有しており、世界から期待されていると伝える(たとえば下記URLの毎日新聞記事)。
http://mainichi.jp/select/biz/news/20080710k0000m020124000c.html

しかし、昨日のエントリで紹介した飯田哲也氏が『日経エコロミー』に公開した論考の数々を読むと、日本が環境エネルギー工学の先進国だなんて、とんでもない思い違いではないかと思えてくるのである。

たとえば、4月16日付の「世界は「ルック・ドイツ」(上)」を読むと、飯田さんは

 経産省と環境省はともに英国政府と密接にやっているが、英国の環境エネルギー政策は必ずしも十分な成果があがっておらず、太陽光や風力、バイオマス、太陽熱などはそれほど普及していない。

 製造業を基盤とする経済大国として、日本はドイツを参考にすべきだ。

と主張している。ドイツは、1997年の京都会議の時点で世界最大の風力発電国になったのをはじめ、太陽光やバイオマスなどの風力以外の自然エネルギーの普及も図っている。日本では、先週のテレビ朝日『サンデープロジェクト』もそうだったが、ドイツの大幅な二酸化炭素削減は、京都議定書が1990年を基準年としており、旧西ドイツが経済発展の遅れていた東ドイツを併合したための棚ボタ効果のおかげだ、などとマスコミが宣伝しているが、飯田さんによると自然エネルギー導入の寄与度が圧倒的に大きいとのことだ。

 ドイツは自然エネルギー導入の資金はどう調達しているのか。以下『日経エコロミー』の記事から引用する。

■自然エネルギーの導入資金、地域住民が拠出

――ドイツは自然エネルギー導入の資金はどう調達しているのか。

 ドイツでは、自然エネルギー事業の90%以上が地域によるオーナーシップだ。たとえばドイツの養豚農家が風車を作り始め、いまや35基のオーナーで年商5億円を計上している例もある。ところが日本で同じ100億円規模の風力発電のウィンドファームを建設しても、地域には、固定資産税と地代が1億円くらいしか落ちないだろう。この違いは大きい。

 なおかつ、その建設資金は一般の人がエコファンドを通して出資することができる。最近売り出したファンドは、5%複利で20年間元本保証。20年後に2.5倍になって戻ってくる。

 そのお金はまっすぐ太陽光とか風力に向かい、20年間に渡って、クリーンなエネルギーを生み出し続ける、真のエコファンドといえる。日本のエコファンドは、様々な企業の株や債権を買い集めるだけで、お金の働きとして本当にエコかどうかわからない。

 ドイツでは年度末の12月に1年間貯金して年金代わりにエコファンドに投資する。こうしたエネルギー自給向上→CO2削減→産業形成→雇用創出→地域活性化→マネーのグリーン化という、自然エネルギーを巡る好循環が広がっている。そういう世界がわずか10年余りで出現したのだ。

 さらに、これに税金は1円も使われてない。電気料金で全員が平等に負担する仕組みで、1カ月1世帯1.7ユーロ、250円くらいの負担ですむ。購買力平価で200円くらい。1世帯3人としても1人100円未満で実現できてそれだけのメリットがある。

 私はドイツと同じ法整備を10年前に目指した。超党派議員270人の議員立法として、自民党以外の政調を通ったが、自民党だけが反対して成立しないまま廃案になった。

 今日のように、時代の後押しがあれば、日本でも実現するのではないか。

(『日経エコロミー』 2008年4月16日付 飯田哲也氏へのインタビュー記事より)


赤字ボールドはブログ管理人による。自民党を批判するのであればこういう視点から環境エネルギー技術に消極的な同党や日本の経済界を批判すべきなのではないか。一個の仮説に過ぎない「地球温暖化陰謀論」を無批判に受け入れる反知性的な姿勢からは、何も生まれないと思う。

さらに飯田さんは、「日本の環境エネルギー政策は世界標準の「三周遅れ」」とまで批判する。この記事からも引用する。

――何がだめなのか。

 エネルギー政策の無策に尽きる。

 気候変動では鉄、エネルギー政策では電力産業が抵抗勢力になっている。さらにいうと、経産省が既得権益を擁護するスタンスになっていることも問題だ。

 その背景の1つは、10年前からの電力自由化をめぐるバトルがある。経産省の改革派は電力自由化によって市場メカニズムを機能させようとしたが、現状の独占体制を維持したい電力業界に敗れた。電力自由化を表明した現職の通産大臣が2名も選挙で落選し、電力業界の力を見せ付けた形となった。2004年に、電力市場の自由化と原子力政策の合理化を巡って最後のバトルがあったが、その両方で経産省は敗れた。それ以来、こうした状態が続いている。

 さらに経産省は、改革派であれ、既得権益派であれ、反京都議定書というイデオロギーは共通なので、環境省とは、ずっと対立が続いている。とくに現状は、既得権益のエージェントが、政府を二分しているのだ。

■日本が省エネ大国、実はウソ?

――そのような状況で日本は温暖化対策が主要議題の洞爺湖サミットを乗り切れるのか。

 無理でしょう。日本から出てくるのは既得権益を代弁する「セクター別アプローチ」や原子力・省エネだけ。既得権益を脅かす新エネはない。

 なお、省エネはもちろん重要なのだが、タテマエ社会の日本でよくあるように、真面目に取り組むつもりなのではなく、厳しい義務を避けるための方便でしかない。実際に、日本は省エネ先進国と声高に自慢しているが、実態はまったく違い、日本が省エネ大国というのはフィクションだ。

(『日経エコロミー』 2008年4月23日付 飯田哲也氏へのインタビュー記事より)


飯田さんは、世界各国のエネルギー消費量を購買力平価で比較すると、日本はアメリカよりは良いがEUと同じくらい、さらに部門別で見ると、産業部門の比較では、日本はEUよりも悪く、米国と変わらないくらい。日本は民生部門、とりわけ家庭部門のエネルギー消費量の少なさと交通部門の少なさが、産業部門のエネルギー消費量を打ち消して、エネルギー消費全体では、一見、省エネに見えるだけだ、と指摘する。

もと原子力技術者として出発しながら、現在では「脱原発」の立場に立つ飯田さんは、日本の原子力政策も痛烈に批判する。

 原子力政策も実態とまったく乖離している。原子力に携わっている人たちのアタマの中には依然として鉄腕アトムがいる(笑)。自分たちは、ハイテクで優秀な技術者が管理していると思いこんでいるが、夢を見ているだけ現実が目に入らず、足元が崩れ始めているのに気づいていない。六カ所再処理、柏崎刈羽地震の影響と対応、耐震設計、活断層調査、あるいはJCO臨界事故、もんじゅ事故、トラブル隠し事件など、すべてに渡ってそうだ。

(『日経エコロミー』 2008年4月23日付 飯田哲也氏へのインタビュー記事より)


まことにお寒い限りだが、政府の環境・エネルギー政策を批判する側が、「地球温暖化陰謀論」しか持ち出せないようでは、議論にもならない不毛な状態が延々と続き、政府の政策を変えさせることなど全くできないだろう。「リベラル・左派」を標榜する政治ブログが、いつまでもそんな状態にとどまることは、決して望ましいこととは私には思えない。

もっと地に足がついた環境・エネルギー政策批判が望まれる。


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