きまぐれな日々

昨日(5月11日)放送されたフジテレビ「報道2001」に平沼赳夫が出ていた。この平沼赳夫は、きたるべき政界再編において、キャスティングボートを握ろうとしている極右政治家で、郵政民営化に反対票を投じて自民党を離党し、その後も復党していない。自民党や民主党にいる極右政治家を集めて新党を立ち上げ、自民党と連立を組むことを目指していたが(昨年10月27日付エントリ参照)、先月末には民主党の小沢一郎代表と会談したと報じられた。

当ブログは、5月3日付エントリで、「民主党は平沼赳夫一派との連携を模索するな」と主張したが、コメント欄の反応は芳しいものではなく、一級の政治家である平沼を、改憲派というだけで「極右」扱いするのかとか、リベラル・左派の方からも、「不愉快なタカ派政治家だが、信念を持って郵政民営化に反対しただけマシ」などというコメントをいただいた。実際には、同じ改憲派でも民主党の枝野幸男のような理詰めのリベラル派もいるのに対し、日本会議の首魁である平沼は、国家神道への傾斜の顕著な神がかり的政治家で、だからこそ「極右」と私が評するゆえんだが、リベラル・左派系の有力ブログの中には、平沼の子分格である城内実を応援するブログがいくつかあるせいか、はたまたたまたま平沼が今現在自民党から離れているせいか、平沼を批判する言説は、リベラル・左派系ブログの世界でもあまり歓迎されないのが実情だ。

しかし、「報道2001」を見ていて、声高に反中を叫び、南京虐殺を否定しようとする平沼を見ていて、怖い右翼のオヤジという印象を改めて受けた。それだけではない。いただけなかったのは、中国のパンダ外交に対する平沼の批判だ。平沼は、「タイミングよくパンダのランラン(ママ)が死んで、何らかの策謀があるんじゃないかと言う人もいた」などと発言し、伝聞形とはいえ、あたかも中国がパンダ外交をやりやすくするために、上野動物園が中国の意を受けて(?)パンダを見殺しにしたとも言わんばかりの発言をしていた。なんという下品な物言いだろうか。この男が「信念を貫く第一級の政治家」だなんて誰が言ったんだ? 平沼のあまりの下劣さに、テレビを見ていて激しい怒りを抑えられなかった。民主党は、断じてこの男と連携してはならない、その思いをますます強くした。もし民主党が平沼と連携しようとするなら、当ブログは民主党を攻撃することを宣言しておく。

この平沼赳夫と対照的な印象を残したのは、「サンデープロジェクト」に出演した中曽根康弘だった。中曽根は、土井たか子、不破哲三とともに出演し、背後に座った若者たちを対象に、政治について語った。1982年から87年までの首相在任中、私はこの中曽根が大嫌いだった。政治思想的には右派、経済思想的には日本で最初に新自由主義を導入した政治家である。私は、バブル経済は中曽根の民活(民間活力の活用)路線によって生じたもので、その責任はきわめて重いと考えている。

しかし反面、中曽根は自らの言葉で語るべきものを持った最後の総理大臣だった。これは、朝日新聞の石川真澄記者(故人)が下した評価だが、納得できるものだ。石川氏は、「中曽根以前と竹下以降の大きな違いは、首相としての抱負や識見の有無にあります」(『戦争体験は無力なのか』=岩波書店、2005年)と指摘し、竹下以降では、首相ではなかった小沢一郎の論と挙措動作の背後にある抱負がかすかにある程度だ(同)と述べている。

実際、竹下登以降、総理大臣は急に小粒になったのだが、橋本龍太郎以降、世襲の総理大臣が続くようになって、質はさらに低下した。中でも、日本をぶっ壊したコイズミと、無能の代名詞のような安倍晋三の2人は特にひどかった。政治権力が衰える時というのは、こんなものかもしれない。

中曽根は、今も改憲に執念を燃やすタカ派の政治家だが、首相在任時に国会で不破哲三の質問に答え、「先の戦争はアジア諸国に対しては侵略戦争だった」と明言した。番組でも不破氏が語っていたが、田中角栄をはじめ、三木武夫も福田赳夫も戦争の性格については「後世の歴史家が判断することだ」と答えて侵略戦争であるとの明言を避けたのに対し、中曽根が初めて侵略戦争であったことを認めたのだという。自民党の改憲案についても中曽根は、憲法9条の第2項は変えるが、第1項は堅持する、生存権を規定した第25条などは維持すると番組で明言したが、土井たか子が「中曽根さんは信用できても今の自民党は信用できない、9条の第1項の扱いもフラフラしている」と混ぜっ返した。その信用できない政治家の極致が、官房副長官時代の2002年に「戦術核の使用も意見ではない」との驚くべき主張をした安倍晋三であり、安倍の盟友である平沼赳夫だ。アジアに対する侵略戦争だったことを認めようとしない現在の自民党タカ派の政治家について、中曽根は「歴史を勉強していない」と一刀両断にした。

中曽根は、自ら新自由主義を導入した人物でもあるが、「市場原理主義には反対だ、特に教育などは市場原理に任せてはならない分野だ」と言っていた。ところが、教育に市場原理を導入して失敗したサッチャーの「教育カイカク」を真似ようとしたのも安倍晋三であり、「英国教育」調査団団長としてイギリスを視察した平沼赳夫なのだ。当ブログは、過去にも安倍や平沼の教育カイカクを何度も批判してきた。

"安倍晋三につながる極右人脈"
(2006年11月16日)
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-179.html

"安倍内閣 「教育カイカク」の行き着く先"
(2007年2月20日)
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-259.html

"「新自由主義」の存在と「哲学」の不在が教育の荒廃を招く"
(2007年5月24日)
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-350.html

"極私的 「安倍晋三」 論"
(2007年10月9日)
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-468.html

ここで見たように、安倍晋三と平沼赳夫はとてもよくウマが合う。それは、この2人がともに政治思想的には極右、経済思想的には新自由主義者だからだ。平沼赳夫は安倍晋三とつながっている。民主党の支持者が、単に現在自民党を離れているというだけで、平沼赳夫との野合を容認することが私には信じられない。民主党と平沼新党が連立を組んだりしたら、安倍晋三内閣崩壊以来止まっていた改憲への流れが再び加速する可能性もあるし、経済政策だって福祉国家指向には決してならない。

同じタカ派でも、中曽根康弘と平沼赳夫には天と地ほどの落差がある。平沼赳夫は、本物の政治家ではない。タカ派の政治家もずいぶんひどく劣化したものだと思う。ところが、「報道2001」の最後に、平沼は、小沢一郎が平沼に新党結成をけしかけたと告白した。明らかに小沢は、「敵の敵は味方」の論理で、政権奪取のために平沼を利用しようとしている。だが、民主党と平沼新党の連携は、昨年画策されながらお流れになった自民党と民主党の「大連立」よりさらにたちが悪い。「報道2001」での平沼の言葉を聞いていると、今にも中国と戦争を始めんばかりの勢いだった。民主党はこんな政治家と連携して良いのか。党内のリベラル派はどう考えているのか。

民主党と平沼一派との連携は、一時的な数合わせにはなるかもしれないが、のちのちに禍根を残す最悪の選択肢だと、当ブログは考える。


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