fc2ブログ

きまぐれな日々

映画「靖国」の上映中止の件は、「表現の自由」にかかわる本当に重大な問題で、昨日(6日)の政治番組では、普段その新自由主義マンセーぶりに閉口させられる岸井成格や田原総一朗まで、国会議員による試写会上映と上映中止騒ぎとの因果関係を指摘し、これを問題視していた。

リバタリアンであれば自由を制限されることに反発するのは当然といえなくもないが、それよりも、田原や岸井には、70年代以前から活躍しているジャーナリストが持っているリベラリズムというものがあって、それはマスコミ界で偉くなるにつれて失われてはきているけれど、表現の自由が脅かされる事態に直面した時には、昔の気概を取り戻すだけのものを持っているのではないかと思う。そういった気概が、ブログ管理人やその前後の世代にあるかというと、正直言ってまことに心許ない。

今回、テレビ朝日の「サンデー・プロジェクト」では、映画を検閲しようとした首謀者・稲田朋美を名指しで批判する番組作りをしたが、これは責任の所在を明確にするという意味で高く評価したい。他のテレビ番組や新聞報道では、稲田朋美の名前が出てくるケースは少なく、「政治家」というぼかした表現になっていることが多い。そんな中にあって、サンプロは正面切って稲田朋美を批判したため、番組がこの問題を取り上げていた昨日の午前10時台には、「稲田朋美」の検索語による検索エンジン経由の当ブログへの訪問客が殺到し、アクセス数はこの1時間だけで500件を大きく超えた。

それにしても、稲田朋美やその周辺をめぐっては、いろんなブログの記事で、これでもか、これでもかとろくでもない材料が出てくる。

たとえば、「日本がアブナイ!」は、毎日新聞の報道をもとに、一議員には帰属しないはずの「国政調査権」を稲田が行使しようとしていたことを指摘していたし、「日暮れて途遠し」が新聞記事及び関係者のブログ記事をもとに論証したところによると、名古屋での上映中止には、稲田朋美も所属している日本会議がかかわっていたようだ。稲田らは、組織的・計画的な言論弾圧を行おうとしていたと言われても仕方がないと当ブログは考える。

こういう動きに、どちらかというと体制側のジャーナリストと思われる田原や岸井でさえ反対の声をあげているのだが、それより下の世代の反応が鈍いように思えてならない。たとえば朝日新聞の記者たちは、昔の世代と比較して権力の暴走を糾すチェック機能が甘いように見受けられる。「朝日新聞の民主党化」を指摘するのは、元共同通信記者の魚住昭だが、確かにそんな印象は否めない。テレビによく出てくる朝日新聞記者たちは、政府批判はするのだが、民主党と同じでどこか追及が甘いのである。3年前の郵政総選挙の時には、「コイズミさんの夢をかなえてあげたい」などと口走った朝日新聞記者もいた。

一方、今回批判を受けた稲田朋美らも、「公開前に映画の試写を要求したことはない」などと言って、映画「靖国」の配給協力と宣伝にあたったアルゴ・ピクチャーズの岡田裕社長に、「本当のことを言っていないからテレビに出てこられないんだろう」と言われる始末だ。番組司会の田原によると、稲田のみならず、「伝統と創造の会」の幹部7人に出演を依頼したが、全員に断られたのだという。論戦に出てくる気概もない人間が、陰でこそこそ映画の上映を妨げるような言動をする。それでも右翼かと言いたくなるほどだ。「伝統と創造の会」とは、その程度の信念も何もない議員たちの集団なのだ。

その腰抜け集団の圧力で映画の上映が中止される、というのはいかにも情けない話だが、番組では岡田裕社長や加藤紘一がネット右翼の行動の影響を指摘していた。つまり、稲田朋美らの言動がネット右翼たちをあおり、彼らの嫌がらせ電話などに音を上げた映画館が上映を止めてしまったのではないかということだ。

番組で加藤らがネット右翼を批判した時の「2ちゃんねる」が面白くて、テレビでネット右翼が批判されたというので大騒ぎになっていた。だが、加藤紘一によるネット右翼批判は、以前から雑誌や著書に載っているし、テレビの早朝番組で加藤が、極右議員らの思想や行動を説明する際に、日本会議について述べていたのを見たことがある。日本最大の右翼団体である日本会議は、長らく新聞記事にもめったに載らなかったが、一昨年12月15日に改正教育基本法が成立した翌日の毎日新聞が、安倍内閣の中枢の人たちと日本会議の関係について記述していた(当ブログ2006年12月16日付エントリ参照)。しかし、その後も相変わらず日本会議の名が新聞の紙面を飾る頻度はそう多くない。その中にあって、自民党代議士である加藤紘一の積極的な言論は特筆に価する。しかしその加藤ももう68歳。自民党には若手に「リベラル」といえる政治家がいなくなってしまった。

1950年代から70年代に生まれた日本人は、高度成長(1955年?73年)またはそのあとの安定成長期に子供時代を送った世代だ。戦争経験がないから正念場に弱いのかもしれないが、それにしても、ここぞという場面で沈黙してしまいがちな傾向が強いと思う。われわれの世代がしっかりしなければ、日本は沈没してしまうという強い危機感を持つ。今回の「表現の自由」の危機にあたっては、断固として声をあげ続けなければならない。


#この記事は、「トラックバックピープル・自民党」 および 「トラックバックピープル・安倍晋三」 にトラックバックしています。ここにTBされている他の自民党および安倍晋三関係の記事も、どうかご覧下さい。

↓ランキング参戦中です。クリックお願いします。
FC2ブログランキング

スポンサーサイト