このところ、映画「靖国 YASUKUNI」の上映中止問題の記事を続けていたのだが、その間の4月1日に朝日新聞が報じたところによると、外交青書から、「自由と繁栄の弧」の文言が影を潜め、代わって「アジア外交重視」が前面に出たとのことだ。
http://www.asahi.com/politics/update/0401/TKY200804010041.html
上記朝日新聞記事は、「安倍・麻生外交から福田・高村外交へのシフトが鮮明に打ち出された格好だ」と指摘している。大いに結構な話だと思う。
「1月に成立した補給支援特別措置法によって、インド洋での給油活動が再開されたことなどを自賛している」のはいただけないが、安倍晋三や麻生太郎の唱える「価値観外交」から、現実的なアジア外交へと舵を切ったことは評価すべきだ。記事によると、
つねづね思うのだが、右にせよ左にせよ、イデオロギーをもって現実の外交に当たることほど馬鹿げたことはない。自由主義経済をとる同盟国が日本の国益を損ねることもあるし、共産党一党独裁の国と適度な距離を保ちながらつき合うことが日本の国益にかなうなら、そのように行動すべきだろう。
もちろん、先だってから議論が沸騰しているチベット騒乱において、中国政府による人権抑圧を非難するのは当然のことだ。だが、右翼がチベットの人権侵害に反対するという時、往々にしてそれは口だけであることが多い。彼らは単に共産党一党独裁の中国の体制を崩壊させたいだけなのだ。
彼らの正体は、たとえば右からの人権抑圧や表現の自由への容喙(ようかい)が起きた時に明らかになる。
「良識の星」なるHNの人物も、その一人だ。この人物は、3月20日付のエントリ "安倍晋三や稲田朋美にチベット騒乱に口出しする資格はない" に、下記のようなコメントを書いた。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-596.html#comment3013
以下一部引用する。
「うらずけ」や「ジェノサイト」などというtypoは、読み直して誤りに気づいたら訂正してほしいものだし、従軍慰安婦についての意見にも賛成できないが、それはともかく、中国政府によるチベット人民の人権抑圧を非難する真面目な意見に見えなくもない。
しかし、同じ人物は4月1日付のエントリ "稲田朋美の恫喝に屈して、映画「靖国」上映を全館が中止" には、同一人物の手になるとはおよそ信じがたいほどの、問題意識の希薄なコメントをつけている。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-603.html#comment3016
以下一部引用する。
異国の人権抑圧にはあんなにも敏感だったのに、自国での「表現の自由」の侵害にはかくも鈍感な態度には呆れるほかないが、この「良識の星」なる人物は、私が引用しなかった部分で、先にコメントしていた方を中傷する文章を書くという「荒らし」行為まで働いた。こんな人物が「人権」を語るとは笑止千万、それこそ「恥を知れ」といいたくなるが、これが「ネット右翼クォリティ」なのである。
ネット検索をかけると、この「良識の星」なる人物は、あちこちのリベラル・左派系ブログのコメント欄に出没し、稲田朋美を擁護するコメントなどを書き散らしているようだ。よく思うのだが、「良識」を自称する人間が良識的であったためしはない。「正論」と銘打った雑誌に正論が掲載されることがほとんどないのと同じことだ。
チベット情勢の問題については、3日の朝日と日経の社説がとりあげ、ともに中国にダライ・ラマとの対話を呼びかけている。特に朝日の方は中国政府に批判的なスタンスを明確にしており、この問題について何も語ろうとしない福田首相をも批判している。バランスのとれた主張と評価したい。
新聞の社説はどうしても当たりさわりのない表現になりがちだと思われる向きには、「カトラー:katolerのマーケティング言論」に掲載された3本の記事がオススメだ。
ところで、当ブログのコメント欄は承認制だが、いただいたコメントは、かなり乱暴なものであっても原則として掲載する方針だ。昨日、管理人の放任主義によってコメント欄が「2ちゃんねる」みたいになっていると指摘されたほどだ。但し、前にも書いたように「名無し」や「通りすがり」のようなHNは認めないし、「○○代議士は死ねばよい」などの、テロの肯定につながりかねないコメントは削除している。
とはいえ、いただいたコメントには管理人として賛同しかねるものが多い。ネット右翼系の稲田朋美擁護などは論外だが、チベット騒乱問題で、一方的に中国に肩入れしてダライ・ラマの悪口雑言を書き連ねたコメントも、古い左翼のイデオロギー剥き出しとしか思えない。右翼も左翼もご都合主義の知的不誠実な人たちばかりだなあと呆れ返るばかりだ。
上記katolerさんの3つの記事のうち、最後に記事の末尾に、興味深い指摘がある。
この指摘には、思わず手を叩いてしまった。ネット右翼たちは、要は中国共産党の回し者も同然なのだ。敵の手の内にまんまとはまるネット右翼の言論も、中国政府による人権抑圧に目をつぶろうとするネット左翼の言論も、私に言わせればともに日本の国益を損ねるものだ。ネットでキャンキャン騒いでいる分にはまだどうってことないが、これが安倍晋三や麻生太郎のように、イデオロギーで外交を行おうとする場合、それが国益に与えるダメージは計り知れない。そういう政治が、日本国民を貧困に陥れるのである。イデオロギーの化け物のような政治家たちには、早晩退場願わなければならない。
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http://www.asahi.com/politics/update/0401/TKY200804010041.html
上記朝日新聞記事は、「安倍・麻生外交から福田・高村外交へのシフトが鮮明に打ち出された格好だ」と指摘している。大いに結構な話だと思う。
「1月に成立した補給支援特別措置法によって、インド洋での給油活動が再開されたことなどを自賛している」のはいただけないが、安倍晋三や麻生太郎の唱える「価値観外交」から、現実的なアジア外交へと舵を切ったことは評価すべきだ。記事によると、
外務省関係者によると、08年版では「自由と繁栄の弧」という表現はわずか3カ所で使われただけで、代わってアジア外交に重点が置かれている。特に日中関係では、要人の往来を通じて「ハイレベル対話が強化」され、「『戦略的互恵関係』の更なる進展に向けた展望が広がった」と評価している。とのことだが、こういうニュースを読むと、安倍晋三内閣が倒れて福田康夫内閣に代わって良かったと思う。しかし、これが麻生太郎内閣なんかに代わったら、元の木阿弥になってしまうだろう。何でもかんでも自民党に反対しさえすれば良いというものではない。首相が福田から麻生に代わったりしたら、政治は間違いなく今よりもっと悪くなる。
つねづね思うのだが、右にせよ左にせよ、イデオロギーをもって現実の外交に当たることほど馬鹿げたことはない。自由主義経済をとる同盟国が日本の国益を損ねることもあるし、共産党一党独裁の国と適度な距離を保ちながらつき合うことが日本の国益にかなうなら、そのように行動すべきだろう。
もちろん、先だってから議論が沸騰しているチベット騒乱において、中国政府による人権抑圧を非難するのは当然のことだ。だが、右翼がチベットの人権侵害に反対するという時、往々にしてそれは口だけであることが多い。彼らは単に共産党一党独裁の中国の体制を崩壊させたいだけなのだ。
彼らの正体は、たとえば右からの人権抑圧や表現の自由への容喙(ようかい)が起きた時に明らかになる。
「良識の星」なるHNの人物も、その一人だ。この人物は、3月20日付のエントリ "安倍晋三や稲田朋美にチベット騒乱に口出しする資格はない" に、下記のようなコメントを書いた。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-596.html#comment3013
以下一部引用する。
(前略)弾圧されているものが中共という漢民族に対して自由を求めて抵抗をするのは当然の行為なのでは。慰安婦のときにはあまりにも怪しげなもと慰安婦の証言をうらずけもないまま信用し、チベット問題では必死に抵抗を繰り返し、世界に訴えようとする人々を一部の狂信者扱いし、ろくに耳を貸そうとせず、中共の言うことを鵜呑みにする方々にはたして人権のことを語る資格があるのでしょうか。ましてやあきらかな虐殺行為、ジェノサイトまで見過ごしにして、暴動鎮圧なんぞと吠えるばか者は恥を知れといいたい。 (後略)
「うらずけ」や「ジェノサイト」などというtypoは、読み直して誤りに気づいたら訂正してほしいものだし、従軍慰安婦についての意見にも賛成できないが、それはともかく、中国政府によるチベット人民の人権抑圧を非難する真面目な意見に見えなくもない。
しかし、同じ人物は4月1日付のエントリ "稲田朋美の恫喝に屈して、映画「靖国」上映を全館が中止" には、同一人物の手になるとはおよそ信じがたいほどの、問題意識の希薄なコメントをつけている。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-603.html#comment3016
以下一部引用する。
(前略)事前上映は助成の妥当性を見るためであり、そののちなぜ、見たいと思わない映画をわざわざ見なくてはならないのでしょうか。映画というのは自身が見たいと思うときお金を払って観るもので人に強制されるものではないのですが。(後略)
異国の人権抑圧にはあんなにも敏感だったのに、自国での「表現の自由」の侵害にはかくも鈍感な態度には呆れるほかないが、この「良識の星」なる人物は、私が引用しなかった部分で、先にコメントしていた方を中傷する文章を書くという「荒らし」行為まで働いた。こんな人物が「人権」を語るとは笑止千万、それこそ「恥を知れ」といいたくなるが、これが「ネット右翼クォリティ」なのである。
ネット検索をかけると、この「良識の星」なる人物は、あちこちのリベラル・左派系ブログのコメント欄に出没し、稲田朋美を擁護するコメントなどを書き散らしているようだ。よく思うのだが、「良識」を自称する人間が良識的であったためしはない。「正論」と銘打った雑誌に正論が掲載されることがほとんどないのと同じことだ。
チベット情勢の問題については、3日の朝日と日経の社説がとりあげ、ともに中国にダライ・ラマとの対話を呼びかけている。特に朝日の方は中国政府に批判的なスタンスを明確にしており、この問題について何も語ろうとしない福田首相をも批判している。バランスのとれた主張と評価したい。
新聞の社説はどうしても当たりさわりのない表現になりがちだと思われる向きには、「カトラー:katolerのマーケティング言論」に掲載された3本の記事がオススメだ。
"チベット暴動、胡錦涛の恐れとダライ・ラマのメッセージ"
(3月18日)
http://katoler.cocolog-nifty.com/marketing/2008/03/post_ae2a.html
"日本政府は、ダライ・ラマの対話路線を支持すべきだ"
(3月23日)
http://katoler.cocolog-nifty.com/marketing/2008/03/post_7e57.html
"ダライ・ラマと毛沢東 ?その光と闇?" (3月30日)
http://katoler.cocolog-nifty.com/marketing/2008/03/post_a34b.html
ところで、当ブログのコメント欄は承認制だが、いただいたコメントは、かなり乱暴なものであっても原則として掲載する方針だ。昨日、管理人の放任主義によってコメント欄が「2ちゃんねる」みたいになっていると指摘されたほどだ。但し、前にも書いたように「名無し」や「通りすがり」のようなHNは認めないし、「○○代議士は死ねばよい」などの、テロの肯定につながりかねないコメントは削除している。
とはいえ、いただいたコメントには管理人として賛同しかねるものが多い。ネット右翼系の稲田朋美擁護などは論外だが、チベット騒乱問題で、一方的に中国に肩入れしてダライ・ラマの悪口雑言を書き連ねたコメントも、古い左翼のイデオロギー剥き出しとしか思えない。右翼も左翼もご都合主義の知的不誠実な人たちばかりだなあと呆れ返るばかりだ。
上記katolerさんの3つの記事のうち、最後に記事の末尾に、興味深い指摘がある。
国際社会は、チベット問題について、中国政府に対してダライ・ラマとの対話を促すことが、最も正しい態度である。日本の頭の弱い右翼や中国嫌いの連中は、中国政府を罵ることしか能がないが、こうした反応は、「毒入り餃子問題」での対応を見ればわかるように、既に先方にとっては織り込みずみの反応である。反中国の声に反日感情を対峙させ、国内の結束に利用するというのが、毛沢東以来の常套手段だったことを忘れてはならない。
(「カトラー:katolerのマーケティング言論」 2008年3月30日付 "ダライ・ラマと毛沢東 ?その光と闇?"より)
この指摘には、思わず手を叩いてしまった。ネット右翼たちは、要は中国共産党の回し者も同然なのだ。敵の手の内にまんまとはまるネット右翼の言論も、中国政府による人権抑圧に目をつぶろうとするネット左翼の言論も、私に言わせればともに日本の国益を損ねるものだ。ネットでキャンキャン騒いでいる分にはまだどうってことないが、これが安倍晋三や麻生太郎のように、イデオロギーで外交を行おうとする場合、それが国益に与えるダメージは計り知れない。そういう政治が、日本国民を貧困に陥れるのである。イデオロギーの化け物のような政治家たちには、早晩退場願わなければならない。
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