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きまぐれな日々

今日は、トラックバックいただいた 「カナダde日本語」 の記事 「汚職問題もうやむやな中でイージス艦SM-3迎撃実験に莫大な費用をかける防衛省」 を下敷きにして記事を書いてみたい。

海上自衛隊のイージス艦「こんごう」が米ハワイ沖で海上配備型の迎撃ミサイルSM3の発射実験を初めて行い、迎撃に成功したというニュースは、一昨日(18日)に大きく報道された。

実は私は先日来、元朝日新聞記者の田岡俊次氏が書いた 『北朝鮮・中国はどれだけ恐いか』 (朝日新書、2007年)を読んでいる最中だった。ミサイル防衛(MD)についても書かれているので、この本を題材に記事が書けるな、と思った次第だ。

「カナダde日本語」は石破防衛相をおちょくっているが、前記田岡氏の著書のオビには、「石破茂(元防衛庁長官)が絶賛!」と書かれている。田岡氏は、いわゆる「軍事オタク」で、防衛省や自衛隊に対して強い影響を持っており、関係者の間では「元帥」と呼ばれている。その思想信条は「武装中立」であり、自民党とも社共とも立場を異にする。朝日新聞の入社試験の面接で、「有力な武力を持ち、それによって戦争を回避する自主防衛、武装中立が望ましい」と持論を述べたところ、朝日新聞社の幹部たちは笑ってうなずき、1人は「理論上はその通りでしょうな」と言ったという(前掲書、15頁)。同じ軍事オタクの石破防衛相とはウマが合うのだろう。

その田岡元帥は、北朝鮮の核兵器開発能力を決して見くびってはいない。昨年行われた北朝鮮の核実験については、アメリカが意識的に実験を過小評価する情報を流したというのが田岡氏の分析である。

当然、北朝鮮の核兵器の脅威に備えなければならないというのが田岡氏の主張になるのだが、そのために一番効果が高いのは「地下避難」だという。広島原爆の際、爆心地にありながら地下室にいたため助かった人の例を引きながら、スウェーデン(よく社会民主主義のお手本とされるし、当ブログもその意見に傾きがちである)の防衛政策も、大がかりなシェルターで被害を軽減する方法を選んだことを紹介している。田岡氏によると、地下避難によって人的被害は4分の1に抑えられるという。

それではミサイル防衛はどうかというと、田岡氏はいたって否定的なのだ。技術的な問題点が多く、成功したとされる米海軍のSM3迎撃実験にしても、目標となるミサイルの発射地点や発射時間、飛行方向などのデータが事前に分かっていて、「野球の練習で「センターフライ」と予告して受けさせるような形だから、実戦とは大違い」ということだそうだ。加えて、日米で共同開発中の「SM3ブロック2」は、本来米国に向かう長距離弾道ミサイルに対抗するために大型化し、高い高度での迎撃を目指すものだから、こんな米本土を守るためのミサイル開発に日本が金を出すのはおかしいとしている。集団的自衛権以前に問題があるというのだ。さらに、200基以上あるとされるノドンへの対応は不可能であるともしている。結局、ミサイル防衛は「ないよりまし」か「気休め程度」というのが田岡氏の結論である。

もちろん巨額の費用がかかることも田岡氏は指摘している。当初防衛庁が経費が1兆円以上かかりそうだったために難色を示していたのに、アメリカが執拗に日米共同開発を口説くと、断る勇気がないままズルズル行ってしまったことについて、田岡氏が「まるでセクハラ上司が訪ねてきたのを、断るのも気まずいと思い、お茶だけならと部屋に入れる女性のようだ。断り切れずにズルズルと深みにはまるんじゃないか」と防衛庁高官をからかったところ、このたとえ話が「誘われるままホテルに行こうとしている」と変形されて防衛庁で流布した、防衛官僚たちも内心は(田岡氏と)同じ思いだったか、と笑ったものだったと述懐している。これが、麗々しく「実験成功」と報じられたミサイル防衛の実態なのである。

これだけネガティブなことばかり書いておきながら、田岡氏の結論は「ミサイル防衛は経費が莫大なうえ、完全に日本を守ることはできないが、爆撃機に対する高射砲と同様、ないよりはまし」というものだ。つまり、氏はミサイル防衛を否定する立場には立たない。このあたりが、防衛省や自衛隊に影響力を持ち、石破とも気脈を通じる田岡氏らしいのだが、これだけの材料が提示されれば、普通の感覚なら「ミサイル防衛は防衛費の無駄遣い」ということになるはずだ。少なくとも、当ブログはそう主張する。

この本では、昨年額賀福志郎が唱え、安倍晋三が「議論を深める必要がある」とした「敵基地攻撃論」を、「まったくの机上の空論」であるとして論破したり、やはり昨年中川昭一が唱え、過去(2002年)には安倍晋三も唱えたことのある核武装論を「日米対決を招く」として厳しく批判している。田岡氏にいわせれば、勇ましく敵基地攻撃論や核武装論を唱える政治家や言論人は、「タカ派」ではなく軍事常識に乏しい「バカ派」だそうだ。安倍晋三や中川昭一、額賀福志郎らを「バカ」と評しているも同然のこの田岡氏の本を、石破茂が絶賛していることは注目に値すると思う。

「カナダde日本語」は、防衛費の無駄遣いをやめてワーキングプア対策に回せと主張しているが、これまたもっともな指摘だ。ワーキングプアというと、先日NHKで放送されたシリーズの第3回が評判をとったが、「紙屋研究所」による番組評が大評判で、なんと1000件近い 「はてなブックマーク」 がついている。

これは、脱帽するしかないみごとな番組評で、1000件近い「はてブ」がつくのも納得できる。ちなみに、当ブログの記事では「はてブ」は40件強が最多(「日本は世界有数の過激な新自由主義国家ではないか?」)で、裏ブログ 「kojitakenの日記」 では70件強が最多(「731部隊元隊員が証言 「慰安婦を生体解剖したこともあった」」)である。

話が脱線したが、肝心の「紙屋研究所」の番組評のURLは下記である。まだご存じない方は、是非ご参照いただきたい。
http://www1.odn.ne.jp/kamiya-ta/workingpoor5.html

でも、やっぱりなんといっても称賛に値するのは、かかる番組を制作したNHKであって、視聴率8.1%を記録したこの番組は、確実に世論を「反新自由主義」の方向に導く力を持っている。関西の人には、「たかじんのそこまで言って委員会」などという「TVタックル」の劣化コピーの番組を擁護するのはやめて、NHKの真面目な番組をじっくり見てもらいたいと言いたい。

しかし、NHKのこうした番組を快く思わない竹中平蔵や安倍晋三らは、NHKを自民党の思うがままに操ろうと画策している。ネット検索したら、古森重隆が委員長を務めるNHK経営委員会に竹中や安倍の息がかかっており、これが業務への関与を強めていることを指摘した毎日新聞の記事(11月5日付)を見つけた。リンクが切れているので、当エントリの末尾に収録した。「安倍内閣末期には、郵政民営化を止めようとする動きが見られた」とか何とか言って、安倍晋三を再評価しようとしている「リベ平」ブログがあるが(安倍が城内実と近いからだろうか?)、この毎日新聞の記事をじっくり読んで、安倍が竹中と近い、紛れもない新自由主義者であることをよく再認識してほしい。NHK経営委員会長の古森がNHK会長を外部から招聘しようと暴走しており、一部の委員がこれを強く批判していることが、昨日の新聞に報じられていた。最初読売に出ていたが、より詳しく朝日新聞に報じられているので、こちらをご紹介する。
http://www.asahi.com/culture/tv_radio/TKY200712190291.html

竹中平蔵にしても安倍晋三にしても「過去の人」でもなんでもなく、こうやって取り巻きの古森などを用いてメディアを支配下におさめて巻き返しを図っていることは明らかだ。彼らの策謀が成就する前に、自民党政権を終わらせなければならないと強く思う。
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