まず、「安倍晋三首相の理念『戦後レジーム(体制)からの脱却』を引き継ぐのか」という問いに対して、福田康夫は、「教育再生会議などはまだ途中段階だ。方針を引き継ぐかどうかはよく吟味しないといけない」と答えている。
あいまいな言い回しだが、今朝の新聞には、中教審が道徳の「徳育」としての「教科化」を見送る方針を固めたという記事も出ている。これは、安倍晋三首相やその腹心の山谷えり子首相補佐官が主導した教育再生会議が6月に提言した道徳の「徳育」教科化の方針を事実上凍結するものだ。
共同通信の酒田英紀記者は、「教育再生会議が描いた道徳教育の「格上げ」構想は、実現しない見通しになった。政権そのものが崩壊同然となった今、道徳教育は指導内容の見直しで充実を図る、という道をたどることになりそうだ」と指摘している。安倍・山谷コンビの非常識な「バックラッシュ」路線にはブレーキがかけられる見通しだ。
福田インタビューの紹介に戻る。安倍の目指した3年後の改憲案発議については、「国会で(改憲案発議に必要な)三分の二を取れる態勢がしてもいいが、今はそうする状況ではない。実現しない、道筋が立たないことを言うべきかどうか。与野党が合意し、国会全部の合意を得る努力をすべきだ」として、棚上げの意向を示した。民意が安倍の目指した改憲路線を参院選で否定したのだから、当然のことだろう。福田は、改憲論者ではあるが、憲法を無視しためちゃくちゃな政治は行わないと言っていると解釈する。
テロ特措法延長問題については、「経済力を持つ日本が、国際的なプレゼンス(存在)を高めるために給油活動をするのは意味がある。日本が給油を止めれば、国際的にも波紋が起こる」としている。この点は民主党など野党の主張とはっきり対立している。また福田康夫は、国際的な平和活動のため自衛隊海外派遣を可能にする「恒久法」制定を目指す考えを示した。さらに福田は、「恒久法をつくる際に、集団的自衛権に関する部分をどう判断すべきか、政府の有識者会議『安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会』の答申は意味がある。話を聞きたい」と述べているが、この「有識者会議」とやらは周知の通り、早期の改憲が無理だと悟り始めた安倍晋三が自分の思想に近い人間ばかりかき集め、集団的自衛権を認めないとする従来の憲法解釈を変えさせようとしたものだ。福田は、「国連平和維持活動(PKO)でも国境警備や武装解除は行っていない。それでいいのか」と、PKOの範囲拡大も検討課題だと指摘した。福田の「衣の下の鎧」が見えると思う。安倍のような「極右」ではなくとも、自民党内の「政治思想右派」である町村派(旧森派)の議員だから、当然だろう。この福田を「ハト派」だなんていうマスコミは、どうかしている。
福田は、野党との「話し合い解散」については、「解散権は首相にある。だが参院選で大きなダメージを受けている状況で『解散権は首相にある』と威張っていられるのか。今までのように首相が『やる』と言いきれるのかどうかは疑問だ」と、これはまあ常識的な答えだ。当ブログは、従来通り、「次期内閣は『選挙管理内閣』として、早期に解散・総選挙を行うべきだ」と主張する。民主党をはじめとする野党にも、早期の解散総選挙の準備を急げ、と言いたい。
今後最大の争点の一つになるであろう地域間格差の問題についての、「小泉・安倍両内閣の政策のどこに問題があったのか」とう質問に対しては、福田は「規制改革だ。改革自体はいいが、経済合理的な部分が強くなり、たとえば企業は正規職員を非正規職員にするなど企業本位の雇用関係をつくった。その結果、賃金が下がった」、「(地方に)『ばらまきをやれ』では、財政が持たない。難しい問題だが、地方には怨嗟(えんさ)の声が満ちている。税制、交付税以外にも、やる気がある地方に、積極的に支援する仕組みを考える必要がある」と答えている。いわば「修正構造改革」の立場であり、コイズミ−竹中のドラスチックな「市場原理主義」はやや後退させながらも、「コイズミカイカク」路線を抜本的に改めるものではない。基本的には福田は、与謝野馨官房長官の「緊縮財政路線」に近いように思う。野党、特に民主党は地方への税源委譲や再分配強化の路線で、これに対抗すべきだ。
最後に、「政治とカネ」の問題にどう取り組むのか」という問いに対しては、福田は「政治活動の自由は担保されないといけない。何が何でも全部公開しろというのは危険だ。何かあった時には第三者機関が一円単位でチェックする仕組みをつくればいい」と玉虫色の答えをしている。
以上、ざっとインタビューを読んだ感想は、福田はコイズミや安倍のようなドラスチックな「経済右派」(コイズミ)および「政治思想右派」(安倍)は後退させるものの、「普通の自民党タカ派」の政治路線を打ち出しているということだ。コイズミがあまりの「経済極右」、安倍があまりに「思想極右」だったため、福田が「ハト派」に見えるのかもしれないが、私は福田はごく普通に「タカ派」だと思う。野党、特に民主党は、早期に福田との対立軸をはっきりさせるべきだろう。特に、「安倍改憲路線」は民意に否定されたものの、「コイズミカイカク」に対する幻想はまだ国民の間にも根強く残っていると思うので、今後は「カイカク」の欺瞞を暴き、真に国民のためになる経済政策を打ち出すことが野党の最大のテーマになると思う。
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