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きまぐれな日々

私自身がブログの記事を書くのにもいまいち力が入らない状態なのに言えた筋合いではないかもしれないが、最近ネットにおける政治談義がやけに低調だ。1月の「小沢一郎 vs. 検察」では大きく盛り上がったが、小沢一郎の不起訴が報じられたあと、鳩山政権内で民社協会系政治家の力が強まって、次々ととんでもないことをやらかしているのに、かつて反安倍晋三や反自民で拳を振り上げていた人間たちは口をつぐんでいる。その間に、日本の政治はもう溶けてしまいそうになっている。

鳩山邦夫が自民党に離党届を出した件は、鳩山が名前を挙げた与謝野馨や舛添要一らの反応も悪く、マスメディアからも冷ややかに扱われており、鳩山に好感触を示したのは平沼赳夫(笑)だけだった。私は昨年、『kojitakenの日記』に、「鳩山邦夫 裏切りの人生」と題したエントリを公開して、当たりをとった。今回の鳩山邦夫の離党で思い出したのはこのエントリのことだが、どうしても思い出せなかったのは、その時に鳩山邦夫が何をやったのかということだった。ネット検索をかけてみてようやく思い出したのだが、鳩山邦夫は「かんぽの宿」の件か何かで麻生首相(当時)と対立して、総務相の職を解かれたのだった。この時、鳩山由紀夫民主党代表(現首相)が実弟の鳩山邦夫について肯定的なコメントをしたか何かで、ネットの民主党支持者たちの多くが鳩山邦夫を歓迎する声を挙げたことに、私は強い不快感を持ち、徹底的な鳩山邦夫批判を行ったのだった。だいたい鳩山邦夫はタカ派の自民党議員(当時)であって、選挙区(福岡6区)には鳩山邦夫の対抗馬である民主党候補・古賀一成氏(衆議院議員)がいたにもかかわらず、鳩山邦夫に対して歓呼の声を挙げる民主党支持者たちをも私は批判した。なんだかんだ言って、民主党支持者の多くも世襲政治家が大好きなんだなと悟った苦い思いだけは今も忘れられないが、鳩山邦夫の空疎な「かんぽの宿」騒ぎなんかすっかり忘れていた。郵政民営化の是非論も、鳩山邦夫にとっては政治利用のための道具であることはあまりに明白だった。今も鳩山邦夫の離党騒動をはやし立てる民主党支持者は多いが、私は鳩山邦夫という人間は、自民党よりもむしろ民主党、特に民主党左派に大きなダメージをもたらす可能性のある政治家であると考えている。その理由については、書くのも面倒だからいちいち書かないけれど、鳩山邦夫がその「裏切りの人生」において何をやってきたかを思い起こしてみれば、私が上記の結論に達した理由は容易にご想像いただけるだろう。

一方、民主党でも小沢一郎幹事長を批判した生方幸夫副幹事長が更迭された。この件では、生方氏がこれまで小沢一郎と親密とされていた横路グループの議員であることに注目したい。前原・野田系の議員ではなく、横路グループの議員から小沢批判の声があがったことは、小沢一郎の幹事長職辞任はそう遠い未来ではないと予感させるものだ。

で、鳩山政権だが、これがもうしっちゃかめっちゃかの状態であり、このていたらくで支持率が30%台から40%台もあるのは、政権交代のご祝儀がまだ残っているからだとしか私には思えない。自民党政権でこれほど失政を重ねていたら、支持率は間違いなく一桁を記録していたことだろう。それほどまでにも鳩山政権のていたらくはひどく、鳩山首相が法人税は減税が筋だとほざくわ、原発推進を打ち出すわ、高校無償化の対象から朝鮮学校を除外するわ、普天間基地は結局沖縄の県内移設、しかも現行案以下のひどい案を提示する動きを見せるわ、などなど、「自公政権でさえやらなかった」と形容されてばかりいる悪政のオンパレードである。

ブログにおける「政治談義」の世界において気づくのは、「小沢・鳩山マンセー」の元有名エコノミスト・植草一秀の人気が急激に凋落していることである。植草ブログ自体はアクセス数を公開していないが、植草を支持しているブログを見てみると、かつてあれほど多かった植草ブログ経由のアクセスが激減していることが観察される。おそらく、全盛期(昨年3月の「西松事件」直後の頃がピークだった)のおよそ3分の1から4分の1くらいにまで減少しているのではないか。鳩山政権のあのていたらくでは、それを必死にマンセーする植草一秀が信用を失うのも止むを得ないだろう。植草は民主党と公明党の連立を肯定するような記事も書いたが、これも植草信者の半数を占める(と私は見ている)もともと社民党に近かった左派からは無視されている。植草信者の残り半数は、平沼赳夫や城内実を支持ないし容認するような極右またはそれに容認的な人たちだが、今後植草はこの人たちを主な拠り所にして、これまでのしがらみを断ち切れない左派を利用する形で生き残りを図るのではないか。そして、植草のニーズと鳩山邦夫のニーズが不気味にシンクロしていることも指摘しておきたい。

鳩山民社国政権の迷走の話題に戻ると、上記以外で私が注目しているのは、先月当ブログでキャンペーンを張った「取り調べの全面可視化」(この「全面」というところが特に重要)への動きである。

一昨日(17日)、民主党は今国会での「可視化法案の見送り」を決めたと一部で報道されたが、ネットでもほとんど注目されず、鳩山・小沢マンセーの「政治ブログ」はもちろん取り上げなかった。私が知ったのは、『kojitakenの日記』に書いた通り、「平成海援隊Discussion BBS政治議論室」という掲示板を通してだった。マスメディアの報道を見ると、時事通信

 法務省は17日、犯罪取り調べの録音・録画(可視化)のための刑事訴訟法改正案について、今国会への提出を見送る方針を民主党に伝えた。

などと書いている。「法務省が民主党に伝えた」ってそりゃ一体何事だ、「政治主導」のはずじゃなかったのかと思ったことはいうまでもない。

この件は、asahi.netも報じているが、今朝の朝日新聞本紙には延与光貞、五十嵐透両記者の署名の入った、さらに詳しい記事が出ている。以下の当エントリの記述は、その朝日新聞記事からの引用を主に、一部私の主観を交えたものである。

取り調べの全面可視化実現をめぐっては、千葉景子法相が就任直後に早期の実現を表明し、一気に気運が高まったものの、同法相が昨年10月(政権発足の翌月)に「捜査に与える影響や問題点を議論する」と述べて党内勉強会を設置してからかげりが見えた。そして、高校無償化の対象から朝鮮学校を除外した件で悪名を高めた中井洽国家公安委員長が、賛否両論の論者を加えた研究会を今年2月から始めた。要するに、中井は「取り調べの全面可視化」にも急ブレーキをかけたのである。

朝日新聞の記事は、さらに「取り調べの全面可視化を実現する議員連盟」の辻恵事務局長(生方幸夫氏の後任として民主党副幹事長に就任すると伝えられた)が「官僚案丸のみだ」と憤っていることを紹介しながら、勉強会の立ち上げも法務省の筋書き通りであり、当初「人権派」大臣との対立を警戒していた官僚から、今では「できるだけ長く続けてほしい」との声が上がり始めていると、皮肉に書いている。

「小沢一郎 vs. 検察」の対立が盛り上がった頃には一時100人以上にメンバーが膨らんだという議連も、小沢一郎の不起訴が決まると会合に参加しなくなる議員が増え、今月上旬に開かれた会合には議員は30人弱しか集まらなかったとのことだ。記事は、「このまま、はいそうですかと言えるはずがない。次の手を考えないと」という議連幹部の言葉で締めくくられているが、民主党がマニフェストに掲げた「取り調べの全面可視化」に、本当に熱心に取り組んでいる議員の数は、せいぜい「30人弱」ということなのだろう。そういう人たちが、「必要な法案の国会提出は早くても2012年」という法務省が示したスケジュールに屈従しそうな千葉法相らに対して「マニフェスト違反だ」、「検討が必要というなら欠陥法案に賛成したことになる(注:2008年と09年の二度、参院で全面可視化法案が可決された)」、「検討するテーマが取り調べる側の理屈ばかりだ。冤罪防止策なのに、捜査側の意見ばかり聞いてどうするのか」などと声を上げている。その通りだと私も思う。なお、ネット右翼が大嫌いな韓国の状況についても、朝日新聞の記事は伝えていて、韓国では捜査当局が率先して可視化を進めているのだそうだ。

当初から難航が予想されていた普天間基地の問題とは異なり、取り調べの全面可視化には、党内の異論はほとんどなく(当ブログ2月5日付エントリ「『取り調べの全面可視化』に反対する衆院議員の名前を晒す」参照)、早期の実現が予想されたが、「人権派大臣」として期待された千葉法相があっさり法務官僚の軍門に下ってしまった。そして、党の取り組みが足踏みしている陰に、小沢一郎と検察の取り引きがあったのではないかと疑っているのは、私だけではないだろう。

前記の「平成海援隊Discussion BBS政治議論室」にも、下記のようなコメントが投稿されている。

(前略)野党時代2度議員立法で提出しました。
阻害要因は何なのでしょうか。菅家さん他冤罪や異様な捜査が明らかになった以上、むしろ加速すべきことです。

となるとわたしがここで再三疑念を言及した「幹事長と検察の手打ち」という儀式の結果、いよいよ疑いは高まるのであります。

まあ、民主党のマニフェストや三党連立合意など方向性や政策はおおむね支持するのですが、鳩山内閣はそれを実行する意欲に欠けるもしくは能力に欠けるのではないかと考えます。

トップ下の攻撃的MFがセンターバック付近でウロウロしているような感じです。
腹が減って動けないのか、下痢でもしているのか、風邪でも引いているのか、もう単にスタミナ切れでゲームに出る資格がないのか、それは不明でありますが。

(浮舟亭田中屋さんのコメントより)


「取り調べの可視化法案」さえも足踏みさせてしまう民主党に、存在価値など何もない。


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起訴された石川知裕議員は民主党を離党したが議員辞職まではしなかった。私の予想していた通りであり、私自身は石川氏が議員辞職する必要は全くないと思うが、民主党離党は仕方がないと思う。無理筋の捜査ではあったが、政治家個人の闘争と政権政党としての闘いは分けた方が良い。無罪が勝ち取れれば復党には何の障害もない。

国政には課題が山積で、企業・団体献金の全面禁止や取り調べの全面可視化を法制化するよりも、貧困対策や景気対策などの経済政策を優先させよという声もあり、それももっともなのだが、経済政策を議論すれば企業献金の禁止や取り調べの可視化ができないわけでもなかろう。検察の無理筋の捜査から始まった今回の事件からも、政治は成果を勝ち取らなければならない。せっかく政権交代したのだから、民主党がマニフェストに謳った企業・団体献金の全面禁止と取り調べの全面可視化は必ずや早急に法制化しなければならない。それができなくて何のための政権交代か。民主党政権にはどうせたいした景気政策など打ち出せないのだから、企業献金禁止と取り調べの可視化で民主党が手抜きすることは許されない。いや、他の人は許しても当ブログは許さない。

企業・団体献金の全面禁止は政業の癒着に歯止めをかけるものなら、取り調べの全面可視化は警察や検察による人権侵害やでっち上げ捜査に歯止めをかけるものだ。当ブログ管理人が最近苛立つのは、取り調べの全面可視化に反対している(私に言わせれば)国賊の衆院議員のリストを毎日新聞のアンケートを元に作成・公開までしたのに、この件に対する反応がいたって鈍いことだ。もっとも、小沢一郎熱烈支持系のブログなどを読んでいると、石川知裕の離党に反対する声が鈍いと怒っていたから、人間誰しも自分がもっとも訴えたいことへの反応が思ったほどではないとイラつくもののようだが、取り調べの可視化の件に関しては特に、日本人のお上への隷従意識を強く感じて不快だ。

それでなくとも最近は検察が失態を重ねている。厚生労働省の雇用均等・児童家庭局長を務めていた村木厚子氏が昨年虚偽公文書作成、同行使容疑で逮捕・起訴された事件は、当時の舛添厚労相が村木氏について賛辞としかとれない発言をして注目されたが、当初から冤罪ではないかといわれていた。案の定というべきか、公判で検察側の証人である村木氏の元上司・塩田部長(当時)が「事件は壮大な虚構」と証言し、検察側は旗色が悪くなった。塩田氏は、「『村木さんを無実の罪に陥れてしまった』と気づき、今日は『実は記憶に無いことを、供述させられてしまった』ということを証言するために、法廷に来た」と証言したそうだ(下記URL参照)。
http://www.janjannews.jp/archives/2573227.html

石川議員逮捕直後の1月18日付エントリ「小沢一郎を乗り越えるべきは東京地検特捜部ではなく国民だ」で紹介したように、西松事件の大久保隆規氏の裁判でも、検察側の証人(元西松建設部長)が検察に不利な証言をして、大久保氏無罪が囁かれる展開になっていた。今回の事件での大久保氏再逮捕と起訴で、検察は大久保被告の訴因変更を申請するとの見方が新聞等で流れている。もし本当に申請されて認められれば、西松事件裁判の無罪を回避するために東京地検特捜部が大久保氏を今回も逮捕したのではないかと勘繰られても仕方ないだろう。

前回のエントリでリンクを張って軽く触れた佐藤栄佐久福島県前知事は、知事在職中に収賄容疑で逮捕されたが、二審で収賄額0円と認定された(それなのになぜか有罪判決は覆らなかった)が、ブログで検察の取り調べについて下記のように書いている(下記URL)。
http://eisaku-sato.jp/blg/2010/02/000033.html

真実を貫こうとしても、検察官の意に沿う供述をするまでは、決して保釈されません。弁護士との接見は平日に30分ほどあるのみで、検察官は拘置中、土日なく、早朝から夜半まで取調べを行います。検事が思う通りの供述が得られないと、娘が高校生になるまでここから出さない、県議、支持者を皆逮捕する、等と恫喝し、怒鳴り、机をたたき、背広を床にたたきつけたことを、弟は法廷で証言しました。

「これでは誰でも犯罪者にされてしまう」と。

その法廷で検事が証人の証言中に突然、派手に机を叩き、傍聴人も裁判官もその場にいた全ての人が肝を冷やしたことは先述のとおりですが、法廷内ですら相手を威圧する行動をとるのだから、これが密室だったらどれほどか、想像に難くありません。

私との接見の際、弁護士が「弟さんは判断能力が失われてきている」と伝えられたのを覚えています。連日、長時間の取り調べはそれ自体、精神と肉体を痛めつける物ですが、洗脳に近い効果があることを私自身も感じました。

任意の事情聴取も、密室で長時間拘束し、脅迫的、高圧的に供述を促す点では同じです。

(佐藤栄佐久 公式ブログ 2010年2月4日付「国民はどこにいるのか。国民は誰が護るのか。【1】」より)


文章はこのあと、『週刊朝日』が報じた石川議員の女性秘書の取り調べについて書かれているが、この件についてはいくつかの有名ブログでも取り上げられたので、ここでは省略する。

大阪府枚方市の中司宏市長(当時)や、小堀隆恒副市長らが逮捕・起訴された談合事件で無罪判決を受けた小堀副市長の書簡も、違法としか思えない検察の取り調べの過酷さをうかがわせるものだ。
http://www.kiku-sakura.net/kobori.html

以下引用する。

4,それでも、検察官は私の話を聞き入れません。汚職警察官の言うことが正しいと決め付け、私がそうでないと何度も申し向けても聞く耳を持ちませんでした。挙句、「二度と枚方に住めないようにしてやる。」、「お前ら家族も町を歩けないようにしてやる。」などと怒号し、机を叩きつけたり、パイプ椅子を蹴り飛ばしたりし続けました。拘置所の看守が、近所から苦情が出ていると取調べの最中にクレームを述べに来たり、多数の取調べを目の当たりにしている看守が私に「間違いをおかすなよ。」と自殺の心配をしなければならないほど過酷な取調べが続いたのです。

その上、排尿障害でカテーテルを挿入され、その挿入に問題があったがため出血が酷く、まともな手当てもされないまま、オムツを履かされ出血が止まらない状況で取調べを受けたのです。その屈辱は一生消えることはないでしょう。私は、法治国家の日本の現実かと恐ろしくなりました。

5,勾留中、私には弁護士以外とは面会できないという措置が講じられていました。
保釈後、マスコミが、私が罪を認めたであるとか、1000万円受け取ったなどと虚偽の報道を競うようにしていたことを知り愕然としました。特捜部からリークされた虚偽の事実を、そのまま平然と報道するマスコミの姿は、それまで私が持っていたマスコミ像とは全く違っていました。権力と戦う正義感に燃えるマスコミ像というのは、単なる幻想であることを思い知りました。

事件について何も知らず、マスコミからの情報にだけ接する一般人の考えは当然誤った方向に導かれます。私が勾留中、私の家族には「松岡農林水産大臣のように自殺されてはどうですか」と書かれた匿名の手紙が届きました。あの時、私の家族に何かあったとしても、マスコミは責任を認めなかったでしょう。
これが報道の自由を標傍するマスコミの実態なのかと虚しくなりました。

(小堀隆恒・枚方市前副市長の書簡より)


こういう取り調べの実態を知るにつけ、取り調べの可視化の必要性を痛感するが、取り調べの可視化に反対する安倍晋三や城内実を含む57人の衆院議員のリストを掲載した前々回のエントリ「『取り調べの全面可視化』に反対する衆院議員の名前を晒す」に、「負け組みの矜持」さんから下記のようなコメントをいただいた。

取調べでの全面可視化は、日米地位協定の視点からも絶対に実施されなければならないことです。

今回の石川衆議院議員秘書に対する「取調べ」からわかることは、日本の検察・警察体制は戦前と変わらない前近代的なものであり、このような体制にある国に自国民を引き渡すような「非国民政府」はないでしょう。

それにしても、日本の司法(裁判所)は一体、どうしたというのでしょうか。検察のいいなりではありませんか。今回の小沢問題は、実は司法(裁判所)とマスコミの権威の失墜ではないかと思っています。

2010.02.05 11:19 負け組みの矜持


「負け組みの矜持」さんが指摘されるように、沖縄の読谷村で起きた米兵によるひき逃げ事件で、容疑者の二等軍曹が「取り調べの可視化」を求めて黙秘していることを、『琉球新報』が報じている(下記URL)。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-155353-storytopic-111.html

同紙の記事によると、弁護人の高江洲歳満弁護士は「密室で取り調べを行う日本の捜査が問題だ。密室での取り調べは米国で『拷問の名残が残る歴史的遺物』ととらえられている。公正な取り調べのために、可視化や弁護士の立ち会いを進めるべきだ」と指摘しているとのことだが、「取り調べの可視化」を日本が行わないことが日米地位協定の改定の障害の一つになっている。この琉球新報記事についた「はてなブックマーク」を見ると、

これが事実なら,アメリカ側が拒否するのも分かる。アメリカ側の外圧を期待するしかないのかしら。(haruka-izumiさん)

米国から圧力がかかることはないだろう。不平等な地位協定のままの方が美味しい。(softboildさん)

などの、皮肉なコメントが読める。城内実代議士も、「○○の裏に某国政府筋がいるのではないか」などと怪しげな陰謀論を振りまくくらいなら、現に不平等な日米地位協定を改定する妨げを取り除く「取り調べの可視化」賛成に転じるべきだと思うのだが、いかがだろうか。そういう筋の通った行動をとらないから、先日来『kojitakenの日記』でウォッチしているように、自身のブログをコメンテーターたちにからかわれるのである。

今日は本当は別の話題について書くつもりだったのだが、結局前振りのつもりで書き始めた「取り調べの可視化」に関する件だけで終わってしまった。来週からは話題を改めたいと思う。
2010.02.12 08:17 | 取り調べの可視化 | トラックバック(-) | コメント(16) | このエントリーを含むはてなブックマーク
小沢一郎は結局「嫌疑不十分」により不起訴処分となった。先週末、小沢が二度目の事情聴取を受けたあと、自らの進退に言及した時には、私は小沢が立件されると思ったし、野党や民主党内の反主流派も勢いづいた。民主党で特に目立ったのは前原誠司と野田佳彦の「偽メール事件」コンビだった。前原も野田も、私の大嫌いな渡部恒三が名づけたという「七奉行」のメンバーだそうだが、渡部の言う「七奉行」とはそもそも渡部自身や小沢一郎を含む「竹下派七奉行」に由来するものだろう。昨年末に、過去の栄光にすがる前世紀の遺物・渡部を囲む会などをやったという連中に、これからの日本を背負って立つことなど到底できそうにない。小沢一郎の不起訴で、彼らは一転してあわてふためいていることだろう。

まあ、浮かれていたのは何も民主党内の反主流派だけではなく、自民党もそうだっただろうし、われらが城内実センセイにいたっては、「小沢一郎民主党幹事長の例の土地購入原資を巡る問題と関わりのあるX氏」に、「城内実のファンなので是非会って欲しい」と言われたのに舞い上がったらしく、「小沢一郎問題」にかかわる怪情報をブログに公開した。前回のエントリで紹介した通りである。

城内センセのエントリからは、血湧き肉躍るセンセの興奮が伝わってきた。上気して頬を紅潮させたセンセの顔がまざまざと思い浮かぶかのようだった。もちろん、一方でCIA陰謀論を匂わすフレーズも挿入して、左側の陰謀論者たちへのサービスも怠りないあたり、さすがは東京大学経済学部卒の学歴を誇るセンセだ。しかしその一方で、センセには愛すべき(?)「不用意さ」もある。下記のくだりが読者の多くに見咎められてしまったのである。

 五、国策捜査だとか取り調べの全面可視化が必要だと叫び、検察に対する悪のイメージを流布したり、挑発するようなことを言えば言うほど、検察側は淡々と法と正義にのっとって処理せざるをえなくなる。

(『城内実の「とことん信念」ブログ』 2010年1月30日付エントリ「◎ 政 治 ◎ 小沢一郎幹事長と「陸山会」の問題」コメント欄より)


これはいったい誰が誰に向かって言っていることなのか。もちろん、X氏が城内実にこう言った、と城内実は書いているのだが、小沢一郎に対する東京地検特捜部の脅しにも見えるし、取り調べ可視化を求める世論というか、ブログに書いている内容だから、ネット言論に対して、「お前ら、取り調べの可視化なんかを要求したら、検察側は淡々と法と正義にのっとって処理せざるをえなくなるぞ、つまり小沢一郎は逮捕されるぞ」と恫喝しているようにも受け取れる。

ネット言論というのは、世論とずいぶん違った傾向があって、どういうわけか城内実は「左」側にも多くの熱心なファンを持っていたのだが、上記のブログ記事に彼らは一斉に反発し、城内実から離れていった。城内が国籍法改正に反対した際に差別記事を書いた時や、眞鍋かをりさんをポスターに無断使用したことが発覚したのに真鍋さんになかなか謝罪しなかった時にも城内支持を止めなかった人たちが、今回は一斉に「城内離れ」を起こした。それは、取り調べの可視化反対論者であることが知られている城内実の本音がはしなくも露呈して、ようやく熱心な「左」側のシンパの人たちも城内実の正体を悟ったためだろう。

犯罪の容疑者に対する取り調べの全過程を録音・録画(可視化)する「取り調べの可視化」は、何も石川知裕や小沢一郎のためにあるのではない。無実の罪で14年もの長きにわたって菅谷利和さんが投獄された足利事件のような、違法な取り調べやでっち上げが招いた冤罪を起こさせないために必要不可欠なのである。もちろん、国会議員の大部分もこのことを理解している。その一方で、警察や検察は取り調べの可視化の動きに反対している。権力を振りかざして、自らに都合の良い(容疑者にとって不都合な)自白を容疑者に強要するなどの従来のやり方ができなくなるためだろう。

そんな警察や検察の言い分を認めて、取り調べの可視化に反対している国会議員もいる。昨年、毎日新聞が衆院選候補者にアンケート(「えらぼーと」)を行ったが、その「問10」は取り調べの可視化への賛否を問うている。「犯罪の容疑者に対する取り調べの全過程を録音・録画(可視化)することに賛成ですか、反対ですか」という問である。

大部分の国会議員が取り調べの可視化に賛成している、と書いたが、反対者もいる。アンケートに回答した当選者のうち、反対と回答した者は57人で、「非該当」すなわち賛成、反対以外の回答をした者が10人、設問に答えなかった者が19人、アンケート自体に回答を出さなかった者が3人である。以上を合計しても89人にしかならないことをまず知ってほしい。

取り調べの可視化に反対した衆院議員は下記の通りである。現在の第一党は民主党だが、反対者は自民党に圧倒的に多いので、順番は自民党を最初に書く。括弧内は選挙区で、選挙区で落選して比例で復活した者も、立候補した選挙区で表記する。

自民党(45人) 町村信孝(北海道5)、伊東良孝(北海道7)、江渡聡徳(青森2)、大島理森(青森3)、木村太郎(青森4)、永岡桂子(茨城7)、茂木敏充(栃木5)、新藤義孝(埼玉2)、林幹雄(千葉10)、森英介(千葉11)、小池百合子(東京10)、下村博文(東京11)、鴨下一郎(東京13)、平沢勝栄(東京17)、田中和徳(神奈川10)、小泉進次郎(神奈川11)、宮腰光寛(富山2)、稲田朋美(福井1)、高木毅(福井3)、棚橋泰文(岐阜2)、高市早苗(奈良2)、田野瀬良太郎(奈良4)、松浪健太(大阪10)、西野陽(大阪13)、西村康稔(兵庫9)、石破茂(鳥取1)、赤沢亮正(鳥取2)、阿部俊子(岡山3)、加藤勝信(岡山5)、安倍晋三(山口4)、後藤田正純(徳島3)、平井卓也(香川1)、鳩山邦夫(福岡6)、麻生太郎(福岡8)、武田良太(福岡11)、園田博之(熊本4)、金子恭之(熊本5)、古川禎久(宮崎3)、小里泰弘(鹿児島4)、佐田玄一郎(比例北関東)、近藤三津枝(比例近畿)、柳本卓治(比例近畿)、村田吉隆(比例中国)、河井克行(比例中国)、山本幸三(比例九州・沖縄)

民主党(9人) 石原洋三郎(福島1)、大泉博子(茨城6)、松崎公昭(千葉8)、後藤祐一(神奈川16)、萩原仁(大阪2)、山口壮(兵庫12)、松野頼久(熊本1)、山口和之(比例東北)、金森正(比例東海)

公明党(1人) 漆原良夫(比例北陸・信越)

国民新党(1人) 亀井静香(広島6)

無所属(1人) 城内実(静岡7)


賛成でも反対でもない回答(「非該当」)をしたのは、下記の10人。自民党で賛成しそうな大物が何人か混じっているが、おそらく党内世論を慮ったものだろう(笑)。

自民党(6人) 福田康夫(群馬4)、河野太郎(神奈川15)、谷垣禎一(京都5)、谷公一(兵庫5)、村上誠一郎(愛媛2)、保利耕輔(佐賀3)

民主党(3人) 松本剛明(兵庫11)、山口和之(比例東北)、笠原多見子(比例東海)

みんなの党(1人) 江田憲司(神奈川8)


この設問に答えなかったのは下記の19人。このうち森喜朗と山本拓は全設問に対して答えていない。また、無所属の川村秀三郎は、院内会派「民主党・無所属クラブ」に属している。

自民党(15人) 佐藤勉(栃木4)、与謝野馨(東京1)、甘利明(神奈川13)、金子一義(岐阜4)、橘慶一郎(富山3)、森喜朗(石川2)、北村茂男(石川3)、山本拓(福井2)、大村秀章(愛知13)、川崎二郎(三重1)、石田真敏(和歌山2)、高村正彦(山口1)、岩屋毅(大分3)、北村誠吾(長崎4)、森山裕(鹿児島5)

民主党(2人) 木村剛司(東京14)、糸川正晃(福井2)

公明党(1人) 東順治(比例九州・沖縄)

無所属(1人) 川村秀三郎(宮崎1)


最後に、毎日新聞のアンケート自体に回答しなかった者は下記の3人。

民主党(3人) 田中真紀子(新潟5)、藤井裕久(比例南関東)、沓掛哲男(比例北陸・信越)


「取り調べの可視化」に反対している面々を見ると、3つのことに気づく。まず、亀井静香や平沢勝栄のような元警察官僚や、城内実のような元警察官僚の息子や、後藤田正純のように元警察官僚の大叔父を持つ者が反対していること。次に、元首相で賛成している者が一人もいないこと。小泉純一郎のドラ息子・小泉進次郎までもが反対している(もっとも、落選した海部俊樹は賛成している)。そして、「国士様」に反対者が多いこと。もっとも、何度も書くように、平沼赳夫は元検事総長の養子であり「国士様」であるにもかかわらず賛成しているから、いちがいには言えない。

反対者の顔ぶれ以上に注目すべきは、ここに名前を挙げた89人以外の衆院議員は、すべて取り調べの全面可視化に賛成する、とする回答を毎日新聞に寄せたことだ。あの人もこの人もみな「賛成」と答えているのである。

朝日新聞と毎日新聞は、「取り調べの可視化」に賛成の立場を社論にしているにもかかわらず、民主党が検察に対抗するために「取り調べの可視化」を持ち出すのはおかしい、と書いた。違う。民主党が小沢一郎の首と引き替えに「取り調べの可視化」を延期することで検察と手打ちなどしてはならないと書くべきだったのだ。

取り調べの可視化法案は是非とも成立させなければならない。


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