きまぐれな日々

昨年は年明け早々、NHKなどの討論番組に竹中平蔵が出突っ張りで、新自由主義陣営が全力で反転攻勢を仕掛けていたが、ここにきて竹中の姿をめっきり見かけなくなった。昨年の一年間で、新自由主義の敗北は明らかになったと言えると思う。

たとえば、朝日新聞論説副主幹の小此木潔は、著書『消費税をどうするか―再分配と負担の視点から』(岩波新書、2009年)で、下記のように書いている。

 「政府は小さければ小さいほどいい」「すべてを市場に任せれば片がつく」という幻想は、「すべてを政府に任せればうまくやれる」と考えた古い左翼の幻想と対をなす誤謬であり、いずれも人々の暮らしや民意の実態を見ないイデオロギーだった。

 市場取引の自由と野放しの強欲が需給の均衡をつくり出すことを素朴に信じた、現代の「おまじない経済学」の時代は終わった。

(小此木潔『消費税をどうするか―再分配と負担の視点から』(岩波新書、2009年) 192-193頁)


著者は「あとがき」で、わざわざ勤務する新聞社(朝日新聞社)とは独立した個人の立場で書いた本だとことわっているし、小泉・竹中の構造改革の時代には小此木氏は論説委員ではなかったが、それでも小泉・竹中の構造改革を熱心に支持する社説を書いた朝日新聞の論説に関わる幹部記者がこのようにはっきり書くくらい、新自由主義に対する否定的評価はほぼ固まったといえると思う。

もちろんネットの世界には変化は遅れてやってくる。ネットではいまだに単純にして獰猛な新自由主義の主張を振りかざす池田信夫が大人気だし、それに対抗しているはずの人々が担いでいる植草一秀氏にしても、もともとサプライサイド経済学を出発点として、今でも「良い小さな政府」を理想としている論者である。すなわち、社会民主主義や修正資本主義側よりはむしろ新自由主義側に近い立場に立っている。そして、池田・植草両氏が唱える「地球温暖化懐疑論」(または「地球温暖化陰謀論」)になびくネット住民たちは、経済軸の左右を問わず非常に多いし、いかなる増税であっても絶対反対という立場で、上記の「左」右はみごとに一致している。それは皮肉にも同様に温室効果ガス削減政策や環境税の導入などに熱心に反対している日本経団連にとってきわめて好ましい言論になっている。財界首脳は、こと経済問題に関してはネット工作など不要だなとほくそ笑んでいることだろう。

時代は、既に「良い小さな政府」という立場をも過去のものとしており、「賢い(効率的な)大きな政府」こそ望ましい、という立場が主流になろうとしている。特に、民主党政権も力を入れようとしている環境・エネルギー技術で日本が世界をリードしていけるよう、日本政府が適切に政府支出を行うことが求められる。

元日付のエントリに、『広島瀬戸内新聞ニュース』からトラックバックをいただいたが、私はいつも同ブログから教えられるところが多い。昨年末に同ブログからいただいたTBのエントリ「2010年、経済政策の根本転換になるか?【総括2009・展望2010】」には、当ブログの昨年12月25日付エントリ「『減税は善、増税は悪』という観念こそマスコミによる刷り込み」に寄せられた下記コメントが引用されているので、当ブログでも改めて紹介する。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1027.html#comment8235

もう一つマスコミ及び経団連の刷り込みがあります。
グローバル化だから、右肩上がりに所得が、賃金が、上がることは ないという デタラメ。
2000年くらいから、刷り込みが始まり、今も続いています。

もし、上記が真実であれば、
日本以外の先進国、OECD国が、過去に一人当たりのGDPで3位<00年>だった日本を次々に追い越すことは出来ません。
日本以外の先進国だけが、グローバル化においても、所得、賃金を増やすことは出来なかったはずです。
ところが、現在日本の一人当たりのGDPは23位です。しかも、一人当たりの収入が100万円減った。
日本以外に労働者賃金を減らした先進主要国はないのです。すべて、増やしています。
1・5-2倍、所得を増やしています。それが、各国の一人当たりのGDPに現れています。

では、なぜ、日本だけが、労働賃金をデフレさせたか。
簡単です。
単純労働の外国人を入れたからです。90年から、外国人研修生、日系ブラジル人3世まで、外国人留学生、
これが、始まりで、仕上げは小泉の04年、製造業までの派遣拡大。
これで、賃金がデフレしない方が不思議、というか、そうさせるための立法。
そして、内需崩壊。

間違いです。
繊維産業を思い出してください。
日本の昭和前半は、これで、大幅な貿易利益を作ってます。しかし、60年代くらいから、中国が安い人件費で台頭します。
日本は徐々に確実に、高級品にシフトしています。
また、自動車他の輸出産業が育っている時期です。
そして、賃金のデフレはなかった。

従い、90年以降、自民は 政府補助政策の外国人をいれず、民間の運営に任せれば良かったのだ。繊維不況の時のように。
低品質、中品質なものは、中国と競争しても始まらない。繊維で学んだことだろうに。

そう意味での”小さな政府”政策ならば、正しかった。
実際は真逆の”小さな政府”の政策だった。

労働賃金を減らすことで、製造業を守ろうとしたことで、
他の先進国同様な発展が出来なかった。
ほかって置けば、民間企業、というか輸出型製造業は、新たな国際競争力のある製品へシフトしただろうし、
政府主導で、フランスのように農業の集約発展、もあっただろう、
自民は、経団連主導での大きな政府で、輸出型製造業だけを守ろうとしたことが、間違いの始まり。

マスコミ及び経団連の刷り込み
グローバル化だから、右肩上がりに所得が、賃金が、上がることは ないという デタラメ。
ひどい話の上に、今の日本がある。


PS 私はちょうど95年前後に、オーストラリアに移住しました。
移住して、驚いたのは、自身が10年前に廃車した車がまだ走ってる!
そんな、国でした。
しかし今は、一人当たりのGDP、日本を追い抜かし、
光景がいっぺん。新しい車がほとんど。
乗用車の平均車齢、日本は年々長くなってますが、他の先進国は減っているはずです。
平均車齢が増えるのは、購買力の低下です。

2009.12.26 22:04 もう一つの刷り込み


小泉・竹中のやった政治は「小さな政府」(新自由主義)でさえない、何もしなければまだましだったが、実際には経団連を甘やかして労働賃金を下げる政策をとってしまったという批判だ。そういえば、ここ10年ほどの自民党政治においては、経済財政諮問会議(鳩山政権になって廃止)に経団連会長の御手洗冨士夫らが参画して、財界の意のままの政治が行われてきた。よく「政官業のトライアングル」といわれるが、その頂点に立っていたのは経団連ではなかったか。企業献金あっての自民党、天下り先あっての官僚。両者の首根っこを押さえているのは財界であって、特に90年代後半以降の自民党の政治家は財界の言いなりだった。今でも、谷垣禎一の発言などを聞いていると、自民党は国民政党なんかじゃなくって財界のパシリに過ぎないと思える。

それでも、経団連の主張に沿った政策をとれば、日本が経済成長を遂げるのなら、まだ多少は意味があるかもしれないが、実際には経団連の言いなりの政策をとることによって国民1人当たりのGDPで日本はどんどん他国に追い抜かれていったのだ。経営陣が楽をできるような施策が、日本経済の首を絞めたわけである。もちろん割を食ったのは国民だ。

現在、民主党政権が推進しようとしている環境・エネルギー政策は、温室効果ガス25%削減の中期目標を掲げたものだが、これにも経団連は産業の競争力をそぐとして強く反発している。しかし、不況下で政府支出が求められているものの、道路建設にはかつてのような乗数効果が期待できない現在、環境・エネルギー分野での技術革新が新たな需要を産み出し、それが経済成長につながる可能性があることは、誰の目にも明らかなのではなかろうか。成長戦略の中心に環境技術を据えようというのが民主・社民・国民新党の連立政権の政策だと私は認識している。保守マスコミはすぐ「民主党には成長戦略がない」と言うのだが、これは立派な成長戦略だ。たとえば太陽光発電の設備を備えている住宅は現在極めて少なく、太陽光発電の普及は建築業なども潤すことが期待できる。他の分野への波及効果があるのだ。民主党政権には、まだ「小さな政府」志向から抜け切れていないという問題点はあるが、少なくとも「賢い(効率的な)政府」を目指す方向性は持っていると評価できる。

逆に、自民党こそ政権を担っていた頃から下野した今に至るまで成長戦略を全く持っていないのではないかと私は思っている。日本の国民1人当たりのGDPは、小泉政権が発足する前年の2000年には世界3位だったが、小泉が退任した2006年には18位に落ちたことがそれを示している。小泉・竹中が悪政を行っていた間、日本人はどんどん貧しくなっていった。2002年?07年の「景気拡大期」を「小泉構造改革の成果」と見るのは誤りである。その間小泉・竹中や安倍晋三に甘やかされた経団連はウハウハだったかもしれないが、日本国民には何の利益ももたらされなかった。そして経団連を喜ばせたのは自動車産業に代表される輸出産業の増収増益だったが、これはいうまでもなく、日本の輸出産業がアメリカの住宅バブルに乗って消費意欲旺盛になっていたアメリカ人に向けて製品を輸出していたためである。バブルは大きく膨らめば膨らむほど破裂した時のダメージが大きいが、輸出産業を最大限優遇した小泉・竹中は、世界金融危機のダメージを大きくするのに一躍買った戦犯に数え入れても良いとさえ思う。自民党の成長戦略とは経団連の成長戦略にほかならず、それが誤っていたことはもう既に現実によって示されている。だが、そんな経団連がなおマスコミとつるんで国民をだまそうとしている。そして今なお経団連とマスコミのイデオロギーは、もはや敗北が明白になった新自由主義なのである。神野直彦氏によると、少し前まで自民党内で対立しているとされていた「均衡財政派」、「上げ潮派」、「消費税増税派」はすべて新自由主義のドグマ(教義)の限界を抱えているとのことだ(前記小此木潔著『消費税をどうするか』より孫引き)。こう書くと、なぜ増税を主張する「消費税増税派」まで新自由主義なのかと言われそうだが、均衡財政派ともども消費税増税派も公共サービスの増加は認めない。つまり、「小さな政府」志向なのである。それが自民党なのであり、だから彼らは現在の民主党のような、「小さな政府」志向から抜け出せていない政党をも、「社会主義」などと非難するのだろう。

それでは、小泉・竹中の政策を否定するのであれば、今後の日本はどういう方向性をとればよいのか。前記『広島瀬戸内新聞ニュース』の記事が、さすがというべきか、わかりやすくコンパクトにまとめているので、これを拝借する。

・労働者には雇用のセーフティネットを。(労働基準監督署の執行体制も強化する)
・産業政策では、新しい分野の開拓を進める。
・財政政策では再分配を強化。

この組み合わせが必要なわけです。

今まではこの正反対を日本は行なってきました。

すなわち、お金持ちには減税。庶民には増税。その結果再分配後のほうが子どもの貧困率は高いという有様です。

そして、労働者を使い捨てることに企業の存続を求めてきた結果が今の惨状です。

2008年はその矛盾が噴出した年でした。2009年はそれに対する応急措置を取った。しかし、あくまで応急措置なんです。

2010年はそれに対する、根本治療に取り掛からないといけません。

このままでは、派遣法改正案は、はっきり申し上げて、派遣先に責任は取らなくてもいいが、労働者への指揮は強化するという、都合の良いものになりかねません。

財政政策でも、このままでは逆進性を是正できるかどうか?再分配を強化できるかどうか?

産業政策もそうです。これについては、これからは、地方レベルの取り組みが大事なのです。だが、旧態依然たる、東京にお金が流れてしまうような政策が、自治体によっては温存されています。産業政策については、地方の首長や議会を変えていく必要がありますね。

(『広島瀬戸内新聞ニュース』 2009年12月30日付エントリ 「2010年、経済政策の根本転換になるか?【総括2009・展望2010】」より)



地産地消という観点からも、自然エネルギー開発は有効だ。地理や風土に合った発電方法に力を入れることができるからだ。従来の自民党の政策では、温暖化対策は原子力発電が中核になっていたが、原子力発電は高コストである上、万一の大事故のリスクや放射性廃棄物の処理の問題がある。長い間国策として推進されてきたので、利権構造がたっぷりあると思うが、そこにもメスを入れる必要があると思うが、現在の民主党は原発推進勢力でもあり、原発の見直しまでは現政権には期待できないだろう。しかし、せめて新エネルギー開発へのインセンティブを与える政策くらいは望まれる。自民党政権時代には、新エネルギー開発は原発推進の邪魔になるので、政官業癒着構造にどっぷり浸かっていた歴代政権は、新エネルギーには冷淡だったと思われる。

年の初めのエントリとしてはいささか冗長になってしまったが、今年は経済政策面では「セーフティーネットを強化する」、「小さな政府志向を改めて再分配を重視する」、それに「成長戦略として新技術、特に環境技術を軸に据える」という3点を軸にした政策を連立政権がとれるかどうかが政権の消長の鍵を握るのではないかと思う。これらは、いずれも経団連の気に入らない政策なので、経団連や自民党、それにマスコミは全力でネガティブ・キャンペーンを張ってくることが予想されるが、それにだまされてはならない。


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