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きまぐれな日々

 小渕優子が今日(20日)経産相を辞任するのはどうやらほぼ間違いない情勢らしい。最近すっかり紙面に精彩を欠く朝日新聞は今朝の朝刊でも、「小渕氏進退 判断へ」との慎重な見出しだが、辞任報道を18日にフライングした産経をはじめ、19日には日経と読売が「週明け辞任」の観測を打ち出した。そして今朝の毎日も「20日辞任」と報じている。
http://mainichi.jp/select/news/20141020k0000m010105000c.html

小渕経産相:20日、辞任へ…政治資金巡り引責

 安倍晋三首相は19日、小渕優子経済産業相(40)の関連政治団体の不明朗会計問題を巡り、小渕氏の進退問題などについて首相周辺と対応を協議した。小渕氏は20日に首相と会談し調査結果を報告するが、小渕氏の説明が世論の理解を得るのは困難な情勢で、小渕氏はその場で辞表を提出する見通しだ。首相側は小渕氏の辞任は避けられないとして後任の人選に向けた作業に着手しており、閣僚経験者らの名前が取りざたされている。

 ◇第2次安倍内閣初…首相、後任の人選着手

 自民党幹部は調査結果に関し「国民が納得できる説明は難しい。ここまで来るとやむを得ない」と述べ、小渕氏の辞任は不可避との見通しを示した。小渕氏が辞任すれば、第2次安倍政権では初の閣僚辞任となり、政権に大きな痛手となるのは必至だ。

 首相は19日、東京都内のホテルで菅義偉官房長官らと対応を検討。野党は、松島みどり法相が「うちわ」を選挙区内で配布していた問題でも追及を強める構えで、松島氏の進退についても協議したとみられる。

 首相はこの後、公務のスピーチを終えて私邸に戻った。記者団の「小渕氏の進退を判断したか」という問いかけには無言だった。小渕氏も同日、別のホテルに滞在し、調査結果の取りまとめをしたとみられる。

 自民党の稲田朋美政調会長は19日のNHK番組で、「政治資金の使い道は国民の政治への信頼、ひいては日本の民主主義の質にかかわる問題だ」と強調。さらに「(小渕氏は)政治家として説明責任を果たす必要がある。きちんと報告、説明をされると思う」と語った。だが、野党からは「けじめをつけるべきだ」などと、小渕氏の辞任を促す声が相次いだ。

 小渕氏や松島氏の問題で、臨時国会は審議が滞りつつあり、政府・与党は事態を早期に収拾する必要に迫られている。首相周辺は「問題を長引かせてはいけない」と語る。民主党は20日の衆院地方創生特別委員会に小渕氏を呼び、追及する構えで、自民党中堅議員も「小渕氏が20日に辞めなければ国会審議は大変なことになる」と懸念を示した。

 与党幹部は「小渕氏の問題は事務処理の単純なミスだ。『違法性はなかったが道義的な責任、監督責任を取る』という形で幕引きをするのだろう」との見通しを示した。公明党幹部は「政権運営への影響は無くはない。第1次安倍政権を見ても、スキャンダルで支持率が下がるとなかなか戻らない」と懸念。「首相の支持率の源である経済対策をしっかりやっていくしかない」と語った。

 政権は小渕氏の辞任に備え、後任候補の「身体検査」にも既に着手した。政府・与党内では、9月の内閣改造で首相がこだわった女性議員の起用だけでなく、男性の閣僚経験者や中堅議員らの名前も取りざたされている。首相は「政治とカネ」を巡る閣僚批判がこれ以上起きないよう、慎重に人選にあたる方針だ。【高本耕太、小田中大】

毎日新聞 2014年10月20日 02時31分(最終更新 10月20日 03時02分)


 私は小渕優子が経産相に就任する以前には小渕への関心が低く、当ブログに取り上げた記憶もあまりなかったのだが、引用文中に小渕の名前が出てくる記事を含めて4本の記事があった。そして、そのうちの1本には、「小渕優子・麻生太郎ら疑惑まみれの世襲政治家たち」というタイトルがついていた。麻生太郎内閣発足直後、2008年9月30日付の記事である。以下引用する。

(前略)さて、今日のエントリではしばらく前から書こうとしてタイミングを逸しつつあった「身体検査」の問題について書きたい。

9月25日に朝日新聞が、

 小渕優子・少子化担当相が代表を務める自民党群馬県第5選挙区支部が、国土交通省などの指名停止処分を受けた5社から、その処分後から07年までに計約720万円の寄付を受けていたことが分かった。

と報じたが、小渕優子にはそれ以前から別件の「古傷」が報じられていた。

それは、「サンデー毎日」8月10日号に掲載された、「本誌が身体検査! 「危ない大物議員」6人の「名前」」という記事に出ていたもので、福田改造内閣発足の直前に書かれている。「サンデー毎日」編集部の「身体検査」によって、改造内閣に入れてはいけないと列挙された議員の中に、小渕優子が細田博之・自民党幹事長とともに入っているのである。以下、「サンデー毎日」から引用する。

 では、首相(注:福田前首相)が避けるべき閣僚候補を見ていこう。

 まず、刑事事件にかかわる「関係者」は論外だろう。その点で「落選確実」なのが、官房長官候補として呼び声の高い細田博之元官房長官(64)と、同じ群馬県選出で首相が親近感を持つといわれる小渕優子衆院議員(34)だ。

 国土交通省発注の公用車運転業務をめぐり、天下りした同省OBらが談合を繰り返していた疑いがあるとして公正取引委員会が7月15日、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で業界を立ち入り検査したが、最大手の「日本道路興運」(東京都新宿区)から、二人とも「資金提供」を受けた過去があるためだ。

 (中略)小渕氏の資金管理団体「未来産業研究会」の政治資金収支報告書によると、06年5月11日に東京・赤坂のホテルで開かれたパーティーの際、日本道路興運の前社長から100万円の個人寄付を受けていた。小渕事務所は本誌(「サンデー毎日」)の取材に「(前社長とは)先代(小渕恵三元首相)からのお付き合いです」と回答した。

(「サンデー毎日」 2008年8月10日号掲載 「本誌が身体検査! 「危ない大物議員」6人の「名前」」より)


要は、小渕優子は亡き父から引き継いだ利権にまみれた世襲政治家というわけで、よくこんな人物を閣僚に起用したものだと思うが、それもそのはず、上記「危ない大物議員」の中には、なんと首相になった麻生太郎自身の名前も出ているのだ。(後略)


 何のことはない。小渕優子とは、もともと「政治と金」に関する疑惑まみれの政治家だった。当時の記事にも「亡き父から引き継いだ利権」と書いたが、世襲政治家とはかくのごときものであろう。

 小渕優子の見識のお粗末さを書き立てた『LITERA』の記事に唖然とする一方で、斜に構えた視点から「小渕優子の危機管理パフォーマンス術」を持ち上げた(?)記事まであり、果ては「原発推進勢力が小渕優子を引きずり下ろそうとしている」と言わんばかりのエントリを上げる『院長の独り言』の小野俊一のような馬鹿な人間もいるが(小渕優子自身が原発再稼働を進めようといていた事実さえ小野の目には入らないらしい)、私の感想は単純に「やっぱり世襲政治家はダメだ」という一語に尽きる。麻生太郎や小泉純一郎や小沢一郎や鳩山由紀夫、それに何よりも安倍晋三を筆頭として、世襲政治家にはろくな人間がいない。世襲政治家が日本をダメにしたと言いたくなる。

 そういえば、小渕優子の父・小渕恵三も「真空総理」などと言われ、何も考えていないように見えて、小沢一郎の要求を次々と受け入れて、戦後史を画する悪法の数々を成立させた人間だった。その後小渕恵三は、任期中に病に倒れ(その直前に小沢一郎と激しいやり取りがあったため「小沢一郎に殺された」とも言われた)、そのまま亡くなったために同情されたが、その任期中の悪行は決して忘れてはならないだろう。

 そして小渕恵三死去の翌月に行われた2000年の衆院選で、小渕優子は26歳にして父・恵三の後を継いで衆議院議員になったのだった。つまり何の努力をすることもなく、「弔い合戦」とやらで地位を得た政治家である。その後、父から受け継いだ「負の遺産」を見直すこともなく、のほほんと代議士センセイの座に安住してきた結果、「政治と金」の問題を引き起こした。

 思えば当ブログは、以前には世襲政治家批判の論調を強く打ち出していた。最近はあまり書かなくなってきていたが、それは良くなかった。

 小渕優子の辞任(?)を機に、以前にも増して、世襲政治家批判を強く打ち出していきたいと思う今日この頃である。
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普天間基地問題に関して、考えられる限り最悪の決着を選んだ鳩山由紀夫首相に対しては、本当に怒り心頭に発した。

なぜ鳩山首相はダメなのかと考えると、政治家に必要な内発性を持っていないからだろう。突き詰めれば、大富豪のお坊っちゃんの政治家が、道楽で政治をやった結果がこれだと言う他ない。鳩山首相を見ていて思い出すのが前首相の麻生太郎だ。福田康夫や安倍晋三も「○○元首相の息子」や「×元首相の孫」だが、一番鳩山由紀夫に近いのは麻生太郎だろう。大富豪には「国民の生活が第一」の政治はできない。

そう思ったから、前回のエントリでは久々に世襲政治家批判をしたが、麻生内閣発足当時とは打って変わって、反応ははかばかしくなかった。

安倍晋三や麻生太郎の世襲は許せないけれども、鳩山由紀夫の世襲は許すというのではダブルスタンダードだ。鳩山由紀夫の世襲に言及しないのであれば、安倍晋三や麻生太郎の世襲を批判する資格はない。当ブログは、道楽で政治をやっているようにしか見えない鳩山由紀夫を、総理大臣の座から引きずり下ろすべきだと主張する。5月14日付のエントリで、「真正保守」とは金持ちの道楽だと書いたが、それは何も「真正保守」だけには限らず、政権交代を実現させた内閣総理大臣も同類だった。

社民党の連立離脱騒ぎが起きて、ようやく、小沢一郎と関係の深い輿石東から、鳩山首相に対する批判が飛び出したが、小沢一郎自身は沈黙しておいて輿石東にしゃべらせるというせこいやり方をとっている。自身が矢面に立たずに済む今のポジションに、小沢一郎は深く満足していることだろう。

いい加減、「小沢一郎が総理大臣だったなら、普天間基地移設問題は違った結果になっていただろう」などという幻想は捨てた方が良い。鳩山内閣でだって、小沢一郎が本気なら、鳩山首相の判断に影響を与えられる力を持っていたのに、小沢一郎はそれを行使しなかった。つまり、小沢一郎にも「やる気」はなかった。そう私は解釈している。

この観測を裏付けるのが、一昨日(26日)の『日本がアブナイ!』に紹介されていた時事通信の記事で、同ブログから孫引きすると、

官邸にも大きな影響力を持つ小沢氏は普天間問題の調整に乗り出す気はなさそうだ。与党3党の国対委員長が25日、「基地の県外・国外移設に今後も取り組む」ことなどを盛り込んだ幹事長レベルの「覚書」で決着を図ろうと動いたが、小沢氏は「官邸と社民党でやってくれ」と拒否した。
(2010年5月25日 時事通信)

とのことだ。

よく、小沢一郎でなきゃアメリカにものをいえない、という人がいるが、前々から書くように私はそれを疑っている。古い話を持ち出すと怒られるかもしれないが、小沢一郎は日米構造協議で一方的にアメリカに譲歩した人間である。

小沢一郎は、確かに政権交代にはもっとも寄与した人間かもしれないが、政権交代を実現させたことによって小沢一郎は歴史的使命を終えた。何もできない鳩山政権を見ると、そう断定するしかない。小沢一郎は、鳩山由紀夫ほど浮世離れした人間ではないが、やはり世襲政治家には違いない。小沢一郎にも、自らが掲げた「国民の生活が第一」のスローガンにのっとった政治はできないと私は考えている。

これも久しぶりに書くフレーズだが、鳩山由紀夫や小沢一郎が「なんとかしてくれそう」という幻想は捨てなければならない時だ。彼らには、結果を出せなかった。それがすべてである。われわれは、事実に基づいて判断を下さなければならない。鳩山由紀夫がどこまで真剣にアメリカと対峙しようとしていたかなどということはどうでも良い。命がけだったと言わんばかりの小沢・鳩山信者もいる一方で、私などは、鳩山由紀夫には本気など全くなくて、ただ単に「対等な日米関係になれば良いなあ」という淡い願望があっただけだろうと考えているが、鳩山由紀夫の本心について議論するつもりは、私には毛頭ない。政治家は、出した結果だけから評価されるべきだ。

ところで、今朝の『朝日新聞』1面の見出しは、「首相、福島氏更迭を検討」となっている。asahi.netにも出ている(下記URL)。
http://www.asahi.com/politics/update/0528/TKY201005270602.html

記事には、首相側近議員の一人が「社民党に弱腰なところを見せれば、政権の評価はますます落ちてしまう」と懸念しており、首相に更迭を進言したというが、普通に読むとこの発言の主は官房長官を務める無能な平野博文ではないかと思える。平野ではないとしても、鳩山首相のお友達である旧民社系議員の一人ではないか。実際には、鳩山首相は自ら辞任するどころか無能な平野博文さえ更迭しないから政権の評価は地に堕ちた。ハマグリという仇名の国家公安委員長が政権の足を引っ張った時にも鳩山首相はなんのお咎めもなしだった。お仲間の民社系議員に対してはとことん「友愛」精神を発揮するのが鳩山由紀夫という男だ。

社民党については、前掲の朝日新聞記事に、

政権内には、社民党の辻元清美・国土交通副大臣を現職に残すことで、「福島氏を更迭しても、連立の枠組み自体は維持できる」との見方がある。

などと書かれている。社民党もなめられたものだが、朝日は

 一方で社民党内にも、福島氏のかたくなな姿勢を批判する声がある。27日夜の社民党議員の会合では、福島氏を前に「党首として責任を果たしていない」と批判し、党首交代を求める声も上がった。

とも伝えている。確認はしていないけれども、阿部知子あたりが言いそうなことだ。阿部知子だけではなく、沈黙を守る辻元清美も、本心では連立離脱に反対なのではないかと思える。昨夜の『報道ステーション』では、社民党が福島党首を説得している構図になっていると伝えていた。

社民党の連立離脱は、マスコミの望むところだが、鳩山首相が「現行案」での決着に踏み切った以上社民党が連立離脱するぞと言って鳩山首相と争うのは当然だ。私の意見を言うと、連立政権発足後に社民党及び福島党首が出した結果には到底合格点は与えられないし、仮に普天間基地問題で鳩山首相を止められないと最初からわかっていたとするならもっと早い段階で連立を離脱すべきだった。いまさら連立を離脱しようがしまいが、今度の参院選で社民党に投票することはなく、今回は選挙区も比例代表も共産党に投票する。だが、その一方で福島党首にはあくまで粘ってほしいとも思う。最低でも無能な平野博文の首を取るくらいの結果を出すまで引き下がってはならない。

民主党内の社民党応援団もようやく動き出したように見える。前掲の朝日新聞記事で、もっとも目をひいたのは下記の箇所だ。

 ただ、民主党内では、7月の参院選での社民との選挙協力を重視して福島氏に譲るべきだとの意見も根強い。このため、首相の姿勢への党内の批判も厳しさを増しており、同党参院幹部の一人は27日夜、「鳩山さんはいずれにしても辞めないといけない。この内閣は完全に機能不全になっている」と語り、首相の辞任論に言及した。
(asahi.com 2010年5月28日)


最初読んだ時、これは輿石東の発言かと思ったが、記事ではその直後に

 平野博文官房長官や輿石東・参院議員会長は、政府方針を閣僚の署名の必要のない「首相発言」とすることで事態を収拾すべきだという考えと見られる。

と書かれているので、輿石ではないのかもしれない。いずれにしても小沢一郎の息のかかった者の発言と考えられる。ようやく民主党内からも「鳩山降ろし」の声が出てきた。もっとも、最近の小沢一郎の行動パターンから類推すると、強くは「鳩山降ろし」を推進しない可能性もある、というよりそちらの可能性の方が高いようにも思える。

手詰まりの鳩山首相は、昨日(27日)、東京都内で開かれた全国知事会議に出席して、普天間飛行場や嘉手納基地で行われている米軍の訓練の一部を各都道府県で分散して受け入れられるよう協力を要請したが、これを政治利用したのが橋下徹だった。石原慎太郎はけんもほろろの態度をとったが、橋下は、「基地負担をしている県の犠牲のもと、大阪府民は安全をただ乗りしている。もし何かあれば、できる限りのことをしたい」と述べた(5月28日付朝日新聞より)。『報道ステーション』では古舘伊知郎と朝日新聞の一色清がこの橋下発言を絶賛していたが、いよいよ極右ポピュリストの主役が石原慎太郎から橋下徹に交代したなと思わされた。おそらく、夏の参議院選挙で、石原が入れ込んでいる「たちあがれ日本」は、仮に送信塔もとい創新党だとか改革クラブの後身だとかと連携したところで惨敗するだろう。もはや石原の時代は終わり、今後もっとも警戒すべきは橋下徹だと私は考えている。在阪テレビ局は橋下信者に支配されているらしく、大阪はいまや極右と新自由主義者の一大拠点になっている。

苦し紛れの一手も橋下徹の人気取りに利用される鳩山由紀夫首相は、もはや日本の政治にとって百害あって一利なしの存在に成り下がった。繰り返すが、大富豪で世襲四世の鳩山由紀夫に「国民の生活が第一」の政治はできない。公約をほとんど守れず、結果を出せない鳩山由紀夫には、総理大臣の座から降りてもらわなければならない。


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政治は、結果がすべてである。

どんなに根が善良な人間が政治をやろうが、結果を出せなければその政治家は評価されないし、ましてや政治家の善意を指摘して彼を庇おうという言説には、私は強く反対する。政治家とは、結果に責任を持たなければならない人間だからであり、なぜそういえるかというと、政治家の出す結果が国民の暮らしに直接反映されるからだ。

その意味で、鳩山由紀夫は政治家失格である。

昨年、小沢一郎が民主党代表を辞任した時、小沢一郎と鳩山由紀夫の二人が共謀して、5月12日に行われた小沢一郎代表退陣表明のわずか4日後の5月16日に民主党代表選を行うことを決定した。岡田克也を支持する人たちが反対したが、小沢一郎がこれを一喝したことが報じられた。

当時私は、鳩山由紀夫が2002年に民主党代表として党の支持率を数パーセントにまで下落させて代表退任に追い込まれた、つまり、かつて鳩山が代表を務めた頃に民主党の支持率がどん底まで落ち込んだことを指摘して、鳩山由紀夫と、自らの後継に鳩山を推した小沢一郎を批判したが、民主党は鳩山由紀夫を党代表に選んだ。

私の予想と違ったのは、過去もっとも不人気な民主党代表だった鳩山由紀夫が代表に復帰したのに民主党が衆院選で大勝したことだった。あの鳩山由紀夫を代表に据えて選挙戦を戦ってさえ総選挙に圧勝できるほどに、国民の自民党に対する不信感は強烈だったのである。

だが、政権交代を実現して総理大臣に就任した鳩山由紀夫は、前回民主党代表を務めた2002年と同じ失敗を犯した。失敗は、何も普天間基地移設問題に限らない。労働問題から企業・団体献金全面禁止や取り調べの全面可視化の件に至るまで、鳩山政権は何もなし得ていない。

それもこれも、組閣時に政権を担当することを甘く見て、気心の知れた人間で自分の周囲を固めようとしたからではないのか。例えば、誰が平野博文の官房長官就任など予想しただろうか。誰もが官房長官は菅直人がなるものだと思っていた。週刊誌もそう書き立てていた。

しかし、鳩山由紀夫は平野博文を官房長官に任命した。その名前に言及される時、必ず「無能な」と形容される平野博文だが、その平野を選んだのはほかならぬ鳩山由紀夫である。

鳩山由紀夫から見て「うるさい」存在であろう国民新党(亀井静香)や社民党(福島瑞穂)を抑えるためには、彼らにもっと重責を担わせれば良かった。それを、なまじ鳩山由紀夫自身に近い旧民社系議員で固めてしまったから、内閣が反動的性格を帯びることになった。その結果、「これくらいはやってくれるだろう」と思っていた取り調べの完全可視化さえ全然前に進んでいない。

普天間基地移設問題は、沖縄、連立与党のパートナー(社民党)、アメリカの「三元連立方程式」を解くと鳩山由紀夫は言っていたはずだが、結局、事実上前政権時代の「現行案」でアメリカと合意し、それを沖縄(と社民党)に呑め、という態度に出た。テレビで保守寄りのコメンテーターでさえ批判していたこの鳩山のやり方を、植草一秀のブログは必死に擁護している。これまでも当ブログは頻繁に植草一秀を批判してきたが、これに対して「植草が県外・国外移設を主張していることをブログ主は評価せよ」と言っていたコメンテーターは、おのれの不明を恥じるべきだろう。もちろん、金魚のフンのように植草を翼賛していたブロガー連中は論外である。

植草批判はこのくらいにして鳩山由紀夫の話に戻るが、政権発足当初、私は鳩山という人間にはもっとずる賢いと思っていた。それは、小沢一郎にコバンザメのようにくっついて忠誠を誓ったあげく、小沢が「政治と金」の問題で代表辞任を余儀なくされた時にちゃっかり後継についたやり方から抱いた印象だった。だが、実際には鳩山が自ら掲げる「友愛」を実現させたいという意欲だけはあった。普天間基地問題に関していうと、私は昨年の政権発足直後には、「最後には現行案で決着させようと最初から思っているのではないか」と鳩山を疑っていたのだが、実際には、福島瑞穂(や小沢一郎)に尻を叩かれてとはいえ、県外・国外移設を模索していて、それが官僚たちとの意見と合わずに迷走する形になったようだ。

アメリカとの関係は、マスコミは「日米同盟」としか言わないが、実際には利害関係が一致しない二国間の交渉事だから、相手国の政権の腰が定まっていないと見ればアメリカが強気に出たのが当然なら、それを丸呑みして「負担をお願いする」と言われた沖縄が激怒するのも当然だ。

結局、鳩山由紀夫という人間は、よく言われるように、いわゆる「いい人」なのだろうが、それは、結果責任を負わなければならない政治家にとっては別に美徳でもなんでもない。鳩山由紀夫がなぜ結果を出せないかというと、ここ数代続いた「○○元首相の息子」や「××元首相の孫」たち全員に共通しているが、困った時には誰かが助けてくれるだろうという、世襲政治家に共通する甘さがあるからではないか。たとえば安倍晋三は、狂ったように改憲にこだわった政治家で、次々と改憲に向けた法案を、小泉純一郎が「郵政総選挙」で獲得した議席数の力で成立させたが、それが国民に支持されず参院選で惨敗を喫すると、当初はそれでも政権にしがみついたけれども、結局小沢一郎が給油の延長に同意してくれないとかなんとか言って、政権を投げ出してしまった。福田康夫は安倍晋三などよりもよほどましな首相だったと思うが、やはり安倍同様就任後1年で自ら政権を投げ出した。

自民党支持者が安倍晋三を支持したり、民主党支持者が鳩山由紀夫を支持する心理が私にはわからず、どうして世襲の政治家をそこまで信頼できるのだろうかといつも思う。世襲の議員は、参院選でも乱立がいわれる「タレント候補」と同じで、安易に候補者を当選させることができるから政党に重宝されるが、かつても世襲議員は多かったけれども、総理大臣には非世襲の人間がなるのが普通だった。それが橋本龍太郎あたりの頃から世襲議員が総理大臣になるようになり、安倍晋三以降は元首相の子や孫が4代続くという異常事態を招いた。堺屋太一は安倍政権を「ベルサイユ化」と評したが、それは安倍の後に続く福田康夫、麻生太郎、それに鳩山由紀夫にも当てはまる。鳩山内閣は自民党内閣ほどには世襲議員で固めた内閣ではないが、いかんせん総理大臣が世襲の権化のような鳩山由紀夫である。

再来月の参院選については、このていたらくでも自民党相手なら勝てるだろうと小沢一郎と鳩山由紀夫が高をくくっているのか、民主党は現状のまま鳩山?小沢体制で強行突破を図るつもりのようだが、あまりに有権者をバカにした話だ。しかし、野党第一党の自民党が、「小さな政府」を指向しながら消費税大増税を掲げる、民主党以下のDQN政党であることも事実だ(もちろん「たちあがれ日本」も同様というか、自民党よりさらに下)。そういえば自民党総裁の谷垣禎一も、いずれも総理大臣になった「麻垣康三」の他の3人同様の世襲議員だ。

参院選では国会議員の世襲についても再度議論がなされるべきだし、たしか世襲に否定的だったはずの民主党は、世襲政治家を代表の座から下ろすべきだろう。そういえば鳩山代表の任期は今年9月末までだから、今年秋には民主党代表選があるはずだが、昨年5月のような八百長代表選を行うのではなく、民主党員自身に鳩山由紀夫を引きずり下ろしてほしいと強く願う次第である。


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しばらく前に、福永文夫著『大平正芳―「戦後保守」とは何か』(中公新書、2008年)を、麻生太郎首相が読んでいると報じられた。大平正芳は、香川県出身ということもあって、大平について書かれた本は、香川県の本屋では比較的目立つ場所に置かれることが多い。そこで、この本を買って読んでみた。

「保守本流」のイメージとは異なり、大平正芳は「小さな政府」論者だった。私は、30年前の首相在任時に大平が「小さな政府」論を唱えていたことをおぼろげに覚えていたので、サッチャー登場前夜の経済思想に影響されていたのかとずっと思っていたのだが、そうではなく大平の「小さな政府」論はもっと若い頃からのもので、讃岐の農家で苦学して出世した経験からきているもののようだ。それは、大平が「小さな政府」論を当初「安くつく政府」と言っていたことからも伺われる。当時の高度経済成長時代には、既に官僚支配の政治からの脱却が政治の課題になっていた。現在民主党が言っているような「無駄を省く」ことを当時やっていれば、本当なら積極財政が求められる現在のような状況で、サービスの縮小も招きかねない「無駄を省く」議論がなされることはなかった。つまり、60年代から70年代当時であれば、「小さな政府」論にもそれなりの理があったと思われる。だが、大平の盟友だった田中角栄は、もちろん積極財政を実行した人間で、公共事業にも社会保障にも金を使った。1973年を「福祉元年」と定めて、老人医療費の無料化、健保改正による家族給付忌避上げ、厚生年金引き上げなどの施策を実施した。田中角栄には、開発独裁の次の段階は福祉国家への道だというビジョンがあったのだろうと思う。しかし、日本が福祉国家への道を目指し始めたとたん、石油ショックに見舞われ、結局日本が福祉国家になることはなかった。結局、「中負担低福祉」の国になってしまい、貧困層が急激に増えている今でも、政官業癒着構造はそのままである。民主党も、このところ官僚批判をしきりに行うが、財界批判はほとんどしない。そんなことでは、安倍晋三の「公務員制度カイカク」とどこが違うのかと思ってしまう。一昨年の参院選前に安倍の「公務員カイカク」を絶賛し、「小沢一郎は『小沢自治労』だ」と罵っていた評論家の屋山太郎は、現在では渡辺喜美を支持しており、小沢一郎を擁護する側に回っている。これは、民主党の「官僚叩き」が権力にとって(というか財界にとって)無害化していることを意味しないか。菅直人は昔から「政官業癒着構造」を批判していたものだが、いつの間にか民主党の批判から「業」が抜け落ちている気がしなくもない。

話を70年代に戻すと、保革伯仲時、自民党最左派の三木武夫が「保革連立」を模索したことがあったが、1974年の田中角栄退陣の時、椎名悦三郎の裁定によって三木を首相にしたのは、三木派が自民党を離党して、野党との連立政権を作るのを阻止する狙いもあったのだという。この当時から、自民党というのは政権維持を目的としてくっついている政党だったんだなと感心した次第だ。

ところで、首相を歴任した大平正芳、田中角栄、三木武夫、それに福田赳夫も中曽根康弘もみな非世襲の政治家たちだったが、だからといって当時の自民党に世襲議員が少なかったわけではない。1968年産の生産者米価をめぐって、自民党総務会で田村元、田村良平の両総務が、当時政調会長を務めていた大平は大蔵省のエリート官僚出であって、農民の生活など知らないからこんな低い米価が問題になるのだ、大平は辞職せよと批判したことがあった。それに対し大平は、自分は讃岐の貧農の倅であり、家の農業を手伝いながら苦学した。父が自民党の代議士で裕福な家庭に育った両総務に、農業を知らないと言われるのは心外だと反論したという。

だが、当時の自民党は二世議員よりも大平正芳ら実力のある非世襲議員が出世する政党だった。それが変わってきたのは竹下登、宮沢喜一、安倍晋太郎の「ニューリーダー」の頃からである。竹下登の父は、島根県会議員、掛合村長を務めた地方政治家だったから、竹下は「二世議員」には当たらないが、田中角栄や大平正芳のような叩き上げでもない。宮沢喜一の父は、戦時中に鉄道政務次官を務め、敗戦で公職追放された後、復帰して自由党から立候補するも落選した。事実上の二世議員といえる。安倍晋太郎の父は、当ブログでも以前、「安倍のもう一人の祖父は「平和主義者」だった」(2006年7月30日付)で取り上げた安倍寛である。二世議員だが、父は戦争に反対した気骨の政治家だった。安倍晋太郎は生前、「岸信介の娘婿」と呼ばれるのを嫌い、「俺は安倍寛の息子だ」と言っていたという。この三人は、世襲と非世襲の間のグレーゾーンにいた、いずれも実力を持った政治家だったといえる。

問題は、橋本龍太郎以降である。橋本龍太郎、小渕恵三、小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎と、途中に地方政治家の家系に生まれた、一応非世襲の森喜朗を挟んだ世襲政治家の首相たちは、あとになるほど質が落ちてきている印象がある(実際に最低最悪だったのは安倍晋三だと思うが)。私は、前記福永文夫著『大平正芳―「戦後保守」とは何か』に書かれた、大平正芳が田村元、田村良平の両世襲議員の批判に反論したくだりを麻生太郎が読んでどう思ったのか興味があるが、たぶん「親の代から25年も空いて議員になった俺には関係ない話だ」とでも思ったのだろう。

それにしても、仮に今度の総選挙で政権交代が起きても、総理大臣が「吉田茂の孫」から「鳩山一郎の孫」に代わるに過ぎないとは、ちょっと信じられない話だ。気が早いが、来年の民主党代表選では、党員やサポーターの意見を反映させた公明正大なプロセスで、次代の日本を担うリーダーを選んでほしいものだと思う。


PS

そういえばコイズミが世襲批判に反論したらしいね。書くの忘れてた(笑)。ま、コイズミや進次郎の批判は別途やります。


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