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きまぐれな日々

今日はブログ定休日の土曜日だが、最新の月刊『文藝春秋』5月号に、いくつかの注目すべき記事が出ていたので、臨時で簡単に触れるエントリを上げることにした。

店頭に山積みされた同誌の表紙に、「小沢一郎の罪と罰 立花隆ほか」と出ていたので、すわ1974年の田中金脈の記事の再来か、と思って買ったのだが、読んでみると中身は朝日新聞編集委員の村山治との対談で、たいした内容ではなかった。4月1日の朝日新聞に掲載された立花隆の小沢一郎論は、なかなかに迫力があって、小沢一郎を辞任に追い込もうという立花隆の気迫が感じられるものだったが、『文藝春秋』での立花隆にはいまいち冴えがない。それどころか、みのもんたの番組に出たことについて述べたくだりなどを読んでいると、「みのポリティクス」を追認しているようにさえ読めて、大いに失望させられた。以下そのくだりを引用する。

 僕は大久保秘書の逮捕後、みのもんたのTBSの番組に呼ばれたんです。今後の捜査の展開を聞かれたから、「大久保の政治資金規正法違反で終わりじゃないですか」と言ったら、みのもんたは「小沢まで行かないんですか」と驚くわけです。僕はこのみのもんたの反応が一般の国民に近いんだと思いますよ。小沢代表本人まで捜査の手が伸びなければおかしいという。
(『文藝春秋』 2009年5月号掲載 立花隆・村山治「小沢一郎の罪と罰」より立花隆の言葉)


この対談では、村山治が、世に言う「検察のリーク」に異を唱え、

検察取材の現場はそんなに楽な世界じゃない、体を酷使しながら、夜討ち朝駆けを続け、ようやく事実確認などに応じてくれる人が出てくる。しかも、検事はリークと言われるのを最も恐れていますから、決して全貌を語らない。

と主張している。今回の西松事件でもそうだというのだが、村山治は朝日新聞編集委員という社のえらいさんであり、本人が取材したわけではあるまい。村山の経歴を調べると、1973年に毎日新聞に入社、91年に朝日新聞に移っている。村山の若い頃はそうだったのかもしれないが、果たして今も同じだろうか、各紙にあふれ返る、「検察のリーク」としか思えない記事の数々は、本当に若い記者たちの「夜討ち朝駆け」のたまものだろうかと疑ってしまうのである。果たして、ロッキード事件の頃も今みたいな報道だったのだろうか。

結局、この対談は、末尾の企業献金を禁止すべきだという村山治の主張に見るべきものがあるくらいだった。立花隆と文藝春秋と朝日新聞編集委員という三者で「小沢一郎の罪と罰」などというから、決定的に小沢一郎にトドメを刺す記事かと思いきや、そんなものではなかったというのが私の感想だ。

ところで、同じ『文藝春秋』には、安倍晋三のブレーンとして知られる右翼学者の中西輝政が、「子供の政治が国を滅ぼす」という論文を書いていて、こちらの方に驚かされた。中西は、「真正保守」をもって任じる男で、安倍晋三が参院選に敗れて退陣に追い込まれた時など、悲憤慷慨して感情的な文章を右翼論壇誌に発表していたのを立ち読みした記憶がある。だから、西松事件で小沢一郎が苦境に立ったことなど喜んでいるに違いないと思いきや、現在を戦前になぞらえて「検察ファッショ」を批判する内容の論文を書いているのだ。中西は、

歴史家としての私の直感で言うなら、後世の史家は「あのとき、日本の政治はスムーズな政権交代の可能性を喪失した」と評することだろう。私は、個人的な政論ということでは、現在の日本で政権交代を望むものではないが、ことは日本の民主政治に関わる国民的見地からの「公論」が求められる時だと思う。
(『文藝春秋』 2009年5月号掲載 中西輝政「子供の政治が国を滅ぼす」より)

と書いている。そして、やはり政権が不安定だった浜口雄幸内閣時代に疑獄事件が相次いで発覚したこと、当時も世界恐慌や浜口内閣の金解禁の失政によって深刻な不況に見舞われていたことを指摘し、政党政治が国民の信頼を失う状況が類似しているとする。当時の政友会と民政党、現在の自民党と民主党は、ともに「どっちもどっち」と言われる状態だ。

中西は、昭和初期には「政治の不在」が「軍部の暴走」を招いたとし、極右政治家として悪名が高く、半ば公然と政党政治に反対の姿勢をとっていた平沼騏一郎(平沼赳夫の養父)が検察のトップに立っていた歴史的事実を指摘する。そして、反政治的な司法が暴走した例として、昭和9年(1934年)に起きた帝人事件を挙げている。贈収賄で、鳩山一郎をはじめとする多数の政治家が連座したこの事件で、時の斎藤実内閣は総辞職に追い込まれたが、この帝人事件はなんと検察のデッチ上げだった。昭和12年(1937年)に全員無罪の判決が下ったが、時すでに遅し。日本は泥沼の戦争に突っ込んでいた。中西は斎藤実内閣が前年脱退した国際連盟への復帰の動きを見せ、高橋是清蔵相によるデフレ脱却のための積極財政政策が功を奏すなど、「バック・トゥー・ノーマルシー(常態への回帰)」を合言葉とし、「新規まき直し」(ニューディール)に取り組み始めていた内閣だったと評価している。そして、帝人事件の陰で暗躍したのが前記の平沼騏一郎であったことは研究者の間で定説とされていると指摘し、

政党政治を否定し、統制経済の下、対外強硬策を支持する平沼らの政治姿勢は、当時ムッソリーニのイタリアで一世を風靡していたファシズム政治になぞらえ、政党つぶしを目論むという意味で「検察ファッショ」と呼ばれた。端的に言えば、戦前の議会政治の息の根を止めたのは、この検察のデッチ上げの疑獄事件だったのである。
(『文藝春秋』 2009年5月号掲載 中西輝政「子供の政治が国を滅ぼす」より)

と書いている。

さらに、戦前の検察は単に平沼らトップの陰謀に単純に操られて政財界の腐敗摘発に進んでいったわけではなく、そこには「清潔」を求める国民の支持があったとしている。

論文はこのあと、東京地検特捜部と小沢一郎の双方が、国民の検察不信と政治不信を招いていると両者を批判、さらに現在の日本は「子供が動かす幼稚な国家」になっているとして「劇場政治」を批判し、小泉純一郎の責任を厳しく問うているのだが、思い出されるのは同じ『文藝春秋』の2005年10月号に掲載された中西の論文「宰相小泉が国民に与えた生贄」だ。私は普段は中西輝政など全く評価しないのだが、4年前と今回の二度、『文藝春秋』に載った論文には強い印象を受けた。中西は、戦争に突っ込もうとしているかに見えた安倍晋三を熱烈に支持している人間なのに、なんで今回のような論文を書くのかと驚くほどだ。著者名を隠してこの記事を読んだら、著者が中西輝政だとは言い当てられない、少なくとも私には。

いや、普段から中西は学者としてはそういう仕事をしており、右翼論壇誌に発表している文章は、中西が感情の赴くままに書いているだけなのかもしれない。そうなのかもしれないが、狐につままれたような気がする今日この頃なのである。


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今朝(4月1日)の朝日新聞「オピニオン」面に、「小沢氏 VS. 検察」という特集が組まれていて、フリージャーナリスト・立花隆氏の寄稿と元東京地検特捜部長・宗像紀夫氏のインタビューが出ている。そのうち、立花隆の寄稿が非常に印象的だったので、これを紹介したい。

立花隆はロッキード事件を追い続けたジャーナリストだ。最近では、2006年に今は休刊となった月刊『現代』で、「安倍晋三への宣戦布告」を発し、改憲志向の首相・安倍晋三(当時)を批判し続けた。その立花隆が書く小沢一郎論である。「民主代表のまま 裁判を続けるのか 師から何を学んだ」という見出しがついている。

立花はいきなり、「小沢一郎は結局、悲劇の政治家として終わらざるを得ないのではないか」と書き出す。そして、「小沢が裏舞台の政治工作能力は抜群だが、表舞台の大衆コミュニケーションに必要な資質がほとんどない」と厳しく批判。それが露呈したのが今回の事件だとする。

小沢が「自分が何よりも望むのは政権交代だ」というなら、万人が納得する釈明をするか、自分が身を引くかのどちらかだと立花は迫る。そして、裁判闘争を宣言する小沢一郎の言葉を聞いて、立花隆は「この人は田中角栄から何も学ばなかったのだろうか」と唖然としたというのである。

これに続くくだりは、今回の立花隆の寄稿の中でも、特に読ませる部分だ。ロッキード事件で逮捕された時に田中角栄がまっ先にやったことは自民党への離党届だった。角栄は自分の無罪を確信していたが、裁判闘争は自分一個の闘いにとどめ、自民党をそれに巻き込まなかった。この時、田中角栄が党に所属したまま幹部として裁判闘争を行っていたら、自民党内で田中の裁判闘争をめぐって大混乱が起き、自民党は分裂解体していただろうと立花は書く。

さらに、立花隆がもっとも重視するのは、3月24日に小沢一郎が続投と裁判闘争を宣言した記者会見における新聞記者の質問である。記者は、もし次の衆院選で民主党が勝ち、総理大臣になったら、あなたは総理大臣としてその裁判を続けていくつもりかと問うた。それに対して、小沢は問いに正面から答えなかった。

立花隆は書く。

 総理大臣というのは、この世に存在するあらゆる職業のうちで最大の激職である。日々その職務以外のことを全く考える暇がないほど、あらゆるデシジョン・メーキングが山積状態で追いかけてくる。そんな裁判をやっている暇はとてもないはずだ。

 この問題、政治資金規正法の法的解釈などをめぐって、多くの論争すべき点があるのは小沢の言う通りだが、総理大臣の前にはもっと大事な争点が毎日のように出てくる。どちらが大事なのか。裁判が大事という人を日本国の総理大臣にするわけにはいかない。

(2009年4月1日付朝日新聞より)


以後、立花の記事は小沢一郎の金権体質批判や、鳩山由紀夫幹事長を筆頭とした民主党幹部の危機感の欠如への批判が続き、小沢一郎は田中角栄にならって「党に迷惑をかけない」を第一の行動の原則にすべきだ、民主党は小沢の私党ではないのだから、小沢の泥沼闘争に巻き込まれるべきではない、として寄稿を締めくくっている。この後半の部分は、私は立花の議論には全面的に賛成はできない。しかし、激職である総理大臣を務めながら、裁判闘争などやっている暇があるのかという立花の問いに、小沢一郎は答えなければならないと思う。現在が平時であるならまだしも、「100年に一度」とも形容される経済・社会の危機にわが国はあり、震源地のアメリカより大きなダメージを受けている、とんでもない状態にあるのだ。麻生太郎が「どす黒い孤独」と言うのは、決して大げさな表現ではないと思う。今の日本の舵取りは、とても麻生太郎などには任せておけないことは当然だが、裁判闘争に時間ををとられながら小沢一郎が果たして日本を舵取りできるのか。

とにかく、今朝の朝日新聞に載った立花隆の寄稿は、まことに説得力に富むもので、かつて田中角栄を辞任に追い込み、最近も安倍晋三の辞任に大きく寄与した立花隆が、またしても一つの時代に幕引きをする記事を書いた、そんな印象を受けた。

朝日の紙面にもうひとつ載った宗像紀夫氏へのインタビュー記事には、「捜査方法も着手時期も疑問多い」、「特捜の体質変容を危惧」との見出しがついていることからわかるように、東京地検を批判する内容だ。インタビューの最後で宗像氏は、

検察はいつでもどんな事件でもやれるということになったら、『検察国家』になってしまいます

と語っている。確かにその通りだと私も思う。しかし、現実に検察は無茶な捜査をやってしまったのだ。これは事実として受け止めなければならない。小沢一郎が裁判闘争をする権利はあるし、小沢の主張には理もあると私は思うが、現在の日本にとって何より必要なのは、政権交代を実現することだ。そのためには、小沢一郎の民主党代表辞任は、どんなに控え目な言い方をしても、真剣に考慮しなければならない選択肢の一つだと私は思う。

昨日、森永卓郎氏が日経BPのサイトに毎週月曜日に寄稿しているコラムに、「財務省の復権で漂う日本経済の暗雲」と題した記事を書いた。森永は、今回の大久保隆規秘書の逮捕で、麻生首相への逆風がピタリと止み、麻生内閣の経済政策を牛耳る与謝野馨によって、新自由主義路線は廃棄されつつあるものの、今後、財務省好みの財政再建路線(増税路線)が推進されると分析する。そして、財政官僚の意のままに動く麻生内閣が続く限り、日本経済は立ち直れない、麻生内閣がずるずる続けば日本経済もずるずる落ちていく、と書いている。全くその通りだと思うし、今何よりも求められるのはそんな麻生内閣を一日も早くお払い箱にすることだ。

だからこそ、いろいろと問題を抱えているとはいえ、民主党に一定の期待をかけざるを得ないのだが、その民主党が、国の危機的な状況にまともに対応できないのではないかとの疑いを国民に抱かせる動きをしていてはならない。自民党に全く期待できない以上、民主党にはしっかりしてもらわなければ困るのである。


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三連休直前の先週木曜日の深夜、TBSテレビで「東京地検が小沢一郎氏への事情聴取を見送り」というニュースが流れた。毎日新聞にも載っており、TBS・毎日系へのリークだったのかもしれない。連休直前にこういう報道がなされるのは、陰謀論的思考(笑)によると、政府側に都合の悪い情報をダメージの少ないタイミングでリークしたということになる。

そして、翌日深夜には、今度は読売新聞が、東京地検は既に小沢一郎の元秘書で、自民党公認で岩手4区から立候補予定の高橋嘉信氏への事情聴取を行っていたと報じた。だが、読売新聞はなぜか高橋氏が「自民党から立候補予定」であるとは書いていない(一部に公認取り消しの報道も流されたが、現実とはなっていない)。民主党議員の石川知裕氏の参考人聴取の時には、聴取もされないうちから読売新聞が「出頭」などという言葉を用いて大々的に報じ、長年小沢氏の金庫番だった高橋嘉信氏の場合は、聴取が済んでから目立たない時期に報じたのである。これは、どんなに控えめな表現を用いても、検察が時の政権に寄り添って捜査を進めて、その情報をマスコミにリークしているということだ。

きわめつきは、昨夜のNHKニュースだった。NHKは、逮捕された大久保隆規秘書が「政治資金規正法違反の罪で起訴するものとみられます」と報じたのだが、ニュースでは談合へのかかわりだとか何だとか、いかにも重罪であるかのような印象を与えることをアナウンサーがしゃべっていたが、あくまで起訴の罪名は「政治資金規正法違反」。このバカバカしい報道には笑ってしまったし、「2ちゃんねる」の政治板でも嘲笑の対象になっていた。当ブログはあえて2ちゃんねるにはリンクを張らないので、興味のある方は2ちゃんねるを訪問されたい(もう次のスレが立って消えているかな?)。

‥‥そんなワケで(笑)、マスコミ報道はもう「ジ・エンド」と言ってよいかもしれない。マスコミの流す情報には、常に権力側からの強烈なバイアスがかかっていることを意識して読み解かなければならない時代になった。これも、ネットの普及の影響なのだろうか。この事件に関する当ブログ推奨のまとめ記事は、『JanJan』に掲載されたさとうしゅういち記者の「大山鳴動してネズミなし、西松建設事件「収束」へ」という記事である(下記URL)。
http://www.news.janjan.jp/government/0903/0903209796/1.php

さとう記者は民主党員だから、決して不偏不党の立場から書かれた記事ではない。だが、バランス感覚に優れた記事につねづね感服している。さとう記者は『広島瀬戸内新聞ニュース』には、「政権交代近づくからこそ高まる民主党以外の野党の存在意義」という記事を掲載していて、小沢一郎をもきっちり批判している。その部分を以下に引用する。

小沢さんは、
1、そもそもは自民党の最高権力者
であり、
2、小選挙区比例代表並立制を導入、
その結果
(1)小泉自民に見られるような「執行部独裁体制」を招いてしまった。
(2)政権交代が結果として遅れた(∵自民党有利になってしまった)のではないか?
ということは記憶しておかねばなりません。

また、現時点で言えば以下のような個別政策への疑問点もある。

民主党の経済政策がいまひとつまだ、はっきりしない。国民新党や社民党のほうがまだはっきりしています。

高速道路値下げはそもそもは民主党の提案でしたが、「無料化」はもちろん、原則だとしても、環境問題と言う観点からどうか?また、若者の貧困が進み、クルマを持たない若者も多くなっている。一方、高齢化も進んでいる。高齢者の交通手段をどう確保するかも課題であるが、どうか?

将来的にはガソリンはもっと高くて、福祉や環境施策、教育を充実、でいいと思う。

国民新党や社民党が言うように、恒久的な財源は、累進課税強化でいいのではないか?

(『広島瀬戸内新聞ニュース』 2009年3月22日付「政権交代近づくからこそ高まる民主党以外の野党の存在意義」より)


ここで書かれた主張には、私はすべて賛成である。四国に住んでいて痛感するのは、公共交通網が年々貧弱になっていることである。民主党にはどうもモータリゼーションに親和的な体質が強すぎる。

おことわりしておくが、さとう記者は決して「反小沢」ではなく、むしろ私の目から見ると「親小沢」の立場の人である。だが、リベラルであれば小沢一郎に対してであれ批判的な視座を持っていて当然。記事では、共産党にも一定の評価を与える記述がされているが、「共産党が自民党と一緒になって小沢代表を攻撃している。共産党は自民党の補完勢力だ」などと叫ぶ一部の人たちとは全く異なる。私などは、何十年にもわたって「小さな政府」なるスローガンに反対だったのだが、このスローガンは、つい先ごろまで疑いもなく正しいこととされていた。つまり長年の少数派時代を耐えてきた人間だから、「民主党と一緒になって小沢代表を守る」ことを、少数派である共産党および同党支持者に強要するかのような感性にはとても耐えられないものがある。

さて今後だが、24日の大久保秘書の「政治資金規正法違反」による起訴は間違いなく、そこで小沢一郎氏がどう身を処すかが一つのカギだ。29日の千葉県知事選は森田健作が圧勝の見通しで、これは西松事件の影響というよりポピュリズム政治の問題と考えるべきだろう。郵政総選挙より前の前回の知事選でも、森田は現職の堂本知事に肉薄する得票を得た。今回の選挙でも、仮に西松事件がなかったとしても森田が勝つ可能性が高かった。大阪の橋下徹だとか宮崎の東国原英夫らを論じるのと同じ視点でとらえるべきである。なお、森田は事実上自民党の候補者であるにもかかわらず、「完全無所属」を詐称しているのだが、その詳細は『東京サバイバル情報』に詳しいので、読者の皆さまには是非ご参照されたい。

いずれにしても、「政治の季節」はまだまだ続く。総選挙はまだまだ先だ。本当に任期満了選挙になってしまうかもしれない。


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昨夜(19日)遅く、TBSテレビ「NEWS23」が報じた、「小沢代表への参考人聴取、見送りへ」というニュースには驚かされた(下記URL)。アナウンサーははっきり、「小沢代表の立件は困難」と述べている。
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4087592.html

この件は、共同通信からも報じられた。
http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009031901001085.html

以下、共同通信の記事を引用する。

小沢氏聴取を当面見送り 「監督責任」立件困難

 西松建設の巨額献金事件で、東京地検特捜部は19日までに、小沢一郎民主党代表の参考人としての事情聴取を当面、見送る方針を固めたもようだ。政治資金規正法違反容疑で逮捕した公設第1秘書大久保隆規容疑者(47)に対する同法上の選任・監督責任については立件困難と判断したためとみられるが、今後も同容疑者の調べを続け、最終判断する。

 大久保容疑者の拘置期限は24日。(以下略)

(共同通信 2009年3月20日 2時23分)


当然ながら、これも検察のリークによる情報だろうが、あまりのことにあっけにとられてしまい、書く言葉が出てこない。そこで、昨日のエントリにいただいた、Black Jokerさんによる記事への批判と、それに対するsweden1901さんの反論を紹介することにしたい。

まずBlack Jokerさんのコメント。

「捜査の手が及ぶ」
これは強制捜査のことですか。
小沢に関する捜査は、3月になってから始まった訳ではありません。小沢側に対する強制捜査と秘書逮捕は3月になってからですが、それはその前のステップ(すなわち以前からやっていた西松に対する強制捜査に付随する形で小沢についても強制でなく内密に調べていた)で、ある程度の証拠(例えば小沢側から西松に送付された請求書の類)を掴んでいたから、次のステップに進めた訳です。何の証拠もなしに強制捜査や逮捕はできませんから。
小沢以外について言えば、前のステップはやっていますが、まだ次のステップに進めてはいません。それは「有力な証拠を掴めていない」ということであって、「捜査自体してない」ということではありませんよ。
普通、企業の交際費や接待費だと、領収書や請求書等を店からもらうことはあっても相手からはもらいませんし、金額の上限もそれほど大きなものではありません。その上限を超える多額の支出の場合、普通の交際費や接待費の扱いとは別の形態で処理されたりします。おそらく、そういう社内処理の都合で西松は小沢側から請求書の類を受け取った(検察はそれを証拠として掴んだ)のではないでしょうか。実際、小沢だけ金額が突出してますし。

「私は今回の事件は政府と官邸が結託した「国策捜査」ではないかとの疑いをますます強めているのだが」
・・・ということで、現時点では早合点ではないかと。少なくとも「捜査の手が及ぶ」の意味合いについては注意が必要かと。「小沢以外は強制でなく内密に調べることさえやっていない」という訳ではないでしょう。

2009.03.19 19:07 Black Joker


これを受けてのsweden1901さんの反論。

>Black Jokerさん
>ある程度の証拠(例えば小沢側から西松に送付された請求書の類)を掴んでいたから、次のステップに進めた訳です。何の証拠もなしに強制捜査や逮捕はできませんから。

その「請求書」の存在が確実なものかどうかは現時点では分からないのではないでしょうか。
あくまでもソースが「関係者」または「捜査関係者」の話でしかありませんから。
明らかになるのは裁判になってからでしょう。(起訴状に書かれる可能性はないとは言いませんが)

>「小沢以外は強制でなく内密に調べることさえやっていない」という訳ではないでしょう。

現時点では、Black Jokerさんいうところの「内密の捜査」を、「やっているかもしれないし、やっていないかもしれない」としか、言いようがありません。

郷原・元検事は、3月17日付の日経ビジネスオンラインで、二階氏への捜査が行われていない理由の一つとして、
【政治資金規正法の「大穴」がある。「裏献金」が、政治家個人に宛てたものか、資金管理団体、政党支部などの団体に宛てたものかがはっきりすれば、政治資金規正法のどの規定に違反するのかが特定できる。】
【もし「政治資金の宛先」が特定できないのであれば、政治資金規正法違反の事実が構成できず刑事責任が問えない】
というのを挙げているのですが、たとえそういう法解釈に基づくとしても、Black Jokerさんのいうところの「内密の捜査」をやらなければ、
・「裏献金」があったのかどうか。
・疑わしい献金があったとして、それが誰宛だったのか。本当に宛先が特定できないのかどうか。
すら検察は判断できないはずです。

2009.03.19 19:34 sweden1901


このように、西松建設事件に関しては、コメント欄でも活発に意見が交換されているのだが、大久保秘書の形式犯だけでの起訴に終わると、今度は検察側が厳しい批判にさらされることになるだろう。


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佐藤優という人間は、アパグループ会長・元谷外志雄が陰謀史観に基づいて書いた著書『報道されない近現代史 戦後歴史は核を廻る鬩(せめ)ぎ合い』を絶賛した人間である。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20081106/1225976062

そして、佐藤優は安倍晋三が内閣総理大臣になった2006年、安倍晋三支持を明言した。

「国策捜査」という言葉は、佐藤優が『国家の罠』(2005年)で流行らせたかのように言われているが、その4年前に出版された魚住昭の『特捜検察の闇』によって既に知られた言葉だった。魚住昭は、2000年に出版された労作『渡辺恒雄 メディアと権力』によって一躍注目を浴びた、元共同通信記者のフリージャーナリストであって、これは滅多にないほど面白い本だった。その魚住昭が書いたからこそ、私は『特捜検察の闇』も読み、魚住昭が絶賛したから『国家の罠』を買って読んだのだった。

しかし、その佐藤優はとんでもない食わせ物だった。佐藤優が3年前に週刊誌で安倍晋三支持を明言したので、私は佐藤にいったん幻滅したのだが、魚住昭との共著を出したので、再び佐藤を評価する側に戻った。しかし、それは誤りだった。左右両側からもてはやされていた佐藤優に、左側から本格的な批判を加えたのは、金光翔氏の「<佐藤優現象>批判」だった。掲載するメディアの立ち位置によって文章を書き分ける佐藤と、彼に入れあげる「護憲派ジャーナリズム」を痛烈に批判した論文である。これは繰り返し何度でも読むべき名論文であり、このエントリを書くために読み返していても、今なお私自身「痛いところを突かれている」(=現在の私にも当てはまっている批判である)と痛感させられる箇所がいくつもある。

最近、ようやく「<佐藤優現象>批判」の影響が広がってきている。私自身もはっきり佐藤優批判側に転じたのはやっとこさ昨年のことなのだが、最近はあちこちで佐藤優批判を目にするようになった。岩波書店でも佐藤との関係を見直す動きがあるとのことだ。しかし、残念ながら現在もなお魚住昭は佐藤優の強烈な影響下にあり、つい最近も佐藤との共著の第二弾を朝日新聞出版から刊行した。もちろん、購入はおろか立ち読みする気さえ起きない。

その佐藤優は、自らや鈴木宗男の逮捕は「国策捜査」だが、小沢一郎の秘書の逮捕は「国策捜査」ではなく一部の検事のはね上がりだという。そんな佐藤に「フォーラム神保町」の「ジャーナリスト」たちは引っ張られていってしまう。そして、大久保秘書の逮捕が「国策捜査」であるとする鈴木宗男らの主張は、「立場が違えばいろんな主張が変わる」と佐藤優にかわされてしまう。「フォーラム神保町」が開催したシンポジウム「青年将校化する東京地検特捜部?小沢第一秘書逮捕にみる検察の暴走?」の動画が公開されているが、一番最初にあれっと思ったのが、あれほど意気投合していて一心同体かに思っていた鈴木宗男と佐藤優の主張に、かなりの開きがあることだった。

単刀直入に言えば、鈴木宗男は民主党、社民党および国民新党と組んで自公政権打倒を目指す立場に立っているのに対し、佐藤優は自公政権を守ろうとする立場に立っている。だから、鈴木宗男は国策捜査だと言い、佐藤優はそうではないと言うのではないか。シンポジウムは、佐藤の論調に引っ張られて、欲求不満ばかりが残るものになってしまった。佐藤の「国策捜査」論に立脚して大久保秘書逮捕の件を論じようともくろんでいた人たちにとっては肩透かしを食わされたようなものだろうが、もともと佐藤は保守というより彼自身が認めるように右翼なのだから、そんな佐藤に乗っかって「権力の陰謀」を暴こうなどというのは、あまりにも甘い考え方なのである。

佐藤優が湯浅誠、雨宮処凛や小沢一郎、それにコイズミ時代に自民党を追い出された政治家たちと手をたずさえて、自公政権が倒れたあとに、平和志向の福祉国家を建設するという夢想をするのは別にかまわないが、政治を論じるというよりは政治に題材をとったコンピューターゲームでもやっているようなもので、全く現実的ではない。政治家たちの思惑の、表に現れている部分からさえ目を背け、自らの願望に浸っているとしかいいようがない。たとえば平沼赳夫については、2ちゃんねらーの方が「自End」界隈のブログよりもずっと冷徹な批判を加えている。その一例を『kojitakenの日記』に収録した(下記URL)。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20090315/1237089415

「10年ほど選挙を凍結し大連立を」などという平沼の妄言は、2ちゃんねらーが指摘する通り、

憲法改正が無理な現状では「武力による憲法停止」と同じ意味

である。あまりの電波発言に自民党支持者からさえ見放されている。もちろんしばしば平沼に期待を持たせるような思わせぶりな態度をとっている民主党も、単純な平沼をおだて上げて動きを封じているだけであることはいうまでもない。数年前ならともかく、今となっては平沼赳夫はとっくに「終わった」政治家であり、私にしても単にストレス解消のために平沼を叩いているに過ぎない(笑)。しばらく前までは本気で平沼を警戒していたが、コメント欄などでしばしば指摘されたように、それは平沼に対する過大評価であったことを今では了解している。

妄想を膨らませて自己陶酔の世界に浸っているというと、ネット右翼たちがそうなのだが、「左」の方でも同じことをやってれば世話はない。今後、現実は大きく、そして劇的に動いていく。亀井静香の言うとおり、血みどろの戦いになる。「ネット右翼」の夢も「ブログ左翼」(?)の夢も泡と消え、その一方で平沼赳夫批判スレに書き込んでいたリアリストの2ちゃんねらーはしたたかに生き残っていく(もちろん、「ニュース速報+」などで騒いでいる有象無象のネット右翼は言論戦に生き残れない)。日本の社会をマイルドな変革によって徐々に変えてゆければよかったのだが、どうやらそれは許されそうにはない。運命は、4年前の郵政総選挙で自民党を大勝させてしまった時に既に定まっていたのかもしれない。

合従連衡の模索から、「万人の万人に対する戦い」への移行。自然状態への回帰。その時こそ、まさに「右」も「左」もない。乱世の到来である。


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昨日のエントリで、『きっこの日記』(『きっこのブログ』)が西松建設違法献金事件について書いた真偽不明の情報について紹介したが、コメント欄で「負け組みの矜持」さんに、同じニュースソースによると思われる時事通信の報道のことを教えていただいた。速報として『kojitakenの日記』で記事にしたが、再度こちらでも内容を検討してみたい。

まず、『きっこのブログ』の報じた内容は下記の通り。
http://kikko.cocolog-nifty.com/kikko/2009/03/post-bc77.html

西松建設前社長が小沢氏からの便宜供与を否定

「西松建設前社長が小沢氏からの便宜供与を否定」(世田谷通信)

西松建設の違法献金事件に関して、西松建設の国沢幹雄前社長が、民主党の小沢一郎代表側からの便宜供与はなかったと証言していることが分かった。東京地検特捜部は、西松建設による小沢氏側への献金は公共工事などの見返りを目的としたものとして捜査しているが、国沢前社長は「公共工事が欲しかったので(小沢氏側への)献金を続けていたが、まったく工事を回してもらえないため、このまま献金を続けていても無駄だと思い、2つの政治団体を解散するに至った」と証言した。この証言は、小沢氏の影響力が強いと言われている東北地方での公共工事が、西松建設側にほとんど斡旋されていなかった事実とも合致している。小沢代表は11日の党本部での会談で「何としてでも衆院選で勝つ。俺は何も悪いことはしていない。いずれ真実が明らかになれば国民も理解してくれるはずだ」と語った。一方、西松建設による裏金疑惑や違法献金容疑を報じられている自民党の二階俊博経済産業相や森喜朗元首相の地元である近畿地方や北陸地方では、数十億円単位の公共工事が西松建設へと優先的に流されていた事実が判明しており、今後の捜査の方向性が注目される。(2009年3月11日)


「きっこの日記」が更新されるたびに配信される「お知らせメール」によると、「きっこの日記」の更新日時は、3月11日13時49分56秒となっている。

その6時間後、時事通信が下記の報道を行った。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090311-00000140-jij-soci

「東北支店弱く、焦って献金」=受注工作の一環?規正法違反事件・東京地検

3月11日19時57分配信 時事通信

 西松建設が小沢一郎民主党代表の資金管理団体「陸山会」に違法献金したとされる事件で、同社担当者が小沢氏側への献金について、東京地検特捜部の調べに対し、「東北支店が弱く焦っていた。東北には公共工事が多いため、(受注の)戦略のため献金した」と話していることが11日、分かった。同社関係者が明らかにした。同社は過去十数年間で小沢氏側へ約3億円を献金しており、特捜部は受注工作の一環だったとみて、裏付けを急いでいる。
 西松関係者によると、同社は2000年、陸山会の会計責任者を引き継いだ公設第一秘書大久保隆規容疑者(47)=政治資金規正法違反容疑で逮捕=と企業献金の枠組みを調整。社名を隠すため、ダミーの政治団体「新政治問題研究会」などを通じ、岩手県の民主党支部や党連合会などにも献金していた。
 同社東北支店の営業には、「業務屋」と呼ばれる談合担当がいたという。しかし、他社との受注調整でも公共工事を取るのは容易でなく、小沢氏の影響力が強い岩手県を中心に東北地方で、政治的影響力を背景に受注を目指したとされる。


非常に面白いのは、この2つの記事は、互いにまったく矛盾しないことだ。時事通信が書いた、

東北支店が弱く焦っていた。東北には公共工事が多いため、(受注の)戦略のため献金した。

というのは、要するに利益供与はなかったと証言しているという意味だし、担当者が言ったとなっているが、明かしたのは「同社関係者」と書かれており、これが国沢幹雄前社長だとすると、『きっこのブログ』の記述と符合する。時事通信は、

他社との受注調整でも公共工事を取るのは容易でなく、小沢氏の影響力が強い岩手県を中心に東北地方で、政治的影響力を背景に受注を目指したとされる。

と書いたが、献金の効果が上がっていないのにもかかわらず、ことさらに小沢氏の名前を読者に印象付けようとする文章だ。そして、『きっこのブログ』が書いた、

国沢前社長は「公共工事が欲しかったので(小沢氏側への)献金を続けていたが、まったく工事を回してもらえないため、このまま献金を続けていても無駄だと思い、2つの政治団体を解散するに至った」と証言した。この証言は、小沢氏の影響力が強いと言われている東北地方での公共工事が、西松建設側にほとんど斡旋されていなかった事実とも合致している。

という重要な指摘は、時事通信の報道からはすっぽり抜け落ちているが、単に書いていないだけであって、両者の記事にはまったく矛盾がない。よって、両者は同じ情報源による記事と推定され、西松建設の件で小沢氏との間に贈収賄罪が成立していた可能性を否定する証言を、ことさらに小沢氏に不利な印象を与えるように書いたのが時事通信の記事であるといえる。

『きっこの日記』は、ニュースソースを明かさないという特徴があるし(情報源の秘匿に関しては間違ったやり方ではない)、ライブドア事件当時、週刊誌の取材に答えたきっこさんが、真偽不明の情報も流していると言っていた記憶もあるが、独自のニュースソースを持っていることも確かであり、それが2004年から2006年にかけてアクセス数が急増した理由の一つだと思う。

たとえば、2005年3月3日の西武グループ総帥・堤義明の逮捕を、同年1月29日付日記「最近の若いもんは‥‥」で、「逮捕も秒読み段階に入った」と正確に予言している。

さらに、2006年1月10日の日記「虚業と言う巨悪」で、ライブドアを過激に批判すると、その翌週、ライブドアに強制捜査が行われた。そして、公開後すぐに削除されたが、同年1月21日には、「特別日記」と題して、下記のように書いていたのだ。

■2006/01/21 (土) 特別日記

ライブドア関連の日記は、イノシシ社長に大損させられてカンカンに怒ってるホニャララ団が怖いので、あんまり書く気はなかったんだけど、今日付けで、ライブドアの上場廃止と解体、イノシシ社長の逮捕がほぼ決まり、村上ファン怒も一蓮托生の運命が決まったので、あたし的にはバンザーイ!ってことになった。

それにしても、コイズミは「結城純一郎」って偽名を使って数々のレイプ事件を起こして来たけど、イノシシ社長は「有馬純一郎」って人物に成りすまして自社株を動かしてたなんて、中身の無い見せかけだけの内閣と、中身の無い見せかけだけの虚業とは、使う名前も似てるんだね(笑)

‥‥そんなワケで、イノシシ社長がやって来た悪事の数々を詳しく解説して、ライブドアって言う虚業が崩壊することを何ヶ月も前から予見してたサイトをご紹介します。ここに登場するペテン師たちの名前を良く覚えておきましょう。

http://blog.goo.ne.jp/yamane_osamu

(『きっこの日記』より。現在は削除されている)


この日記が公開された2日後、堀江貴文は逮捕された。しかも、なお驚くべきことに、5か月後の村上ファンド摘発(2006年6月5日に村上世彰逮捕)まで正確に見通していた。

つまり、『きっこの日記』の発信には、確かに真偽取り混ぜた情報が混ざっているが、ある種の情報に関しては正確で、しかもマスコミ報道より早いのである。最近は、ライブドア事件当時の路線から離れていたが、今回の西松建設献金問題に関して、『きっこの日記』が大久保隆規秘書逮捕の翌日、3月4日付の日記で、早くも「西松建設事件は自民党の自作自演劇」と断定したのにも、情報源の裏打ちがあると思われる。

小沢関連で他のゼネコンへも捜査の手を伸ばした、と新聞が報じているが、これは裏を返せば西松1社では東京地検は起訴にこぎつけられそうにもない、という意味にも取れる。

ところで、今回の事件に関して「自民党への波及はない」とオフレコの記者懇談会でしゃべった漆間巌だが、ライブドア事件をめぐるエイチ・エス証券副社長・野口英昭氏(「安晋会」理事)が沖縄で怪死を遂げた事件が起きた時の警察庁長官であり、この事件を「自殺」で片付けた人物であることも、既にこれまで多くのブログ等が指摘しているけれども、当ブログも改めて指摘しておきたい。

そして、発売中の『文藝春秋』4月号に載っている、「各界識者33名&政治記者84名アンケート これが日本最強内閣だ」なるくだらない特集で、佐藤優が内閣官房長官にこの漆間巌を選んでいることも、合わせて指摘しておきたい。佐藤は、漆間を「こういう恐い人が官房長官をすると国家が引きしまる」などと評している。これは、今回の事件を考えた時、ぞっとせざるを得ないコメントである。

「右も左もない」という考え方は間違っている。新自由主義に反対でさえあれば、極右とでも手を組むという行き方には、私は断じて与しない。


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いやはや、すさまじいばかりの情報シャワーだ。東京地検のリーク作戦は、これまで見たことがないほど徹底したもので、マスメディアがそれを垂れ流すものだから、多くの国民にとっては、小沢一郎や二階俊博はとんでもない国賊に思えることだろう。

この表現にも、何だ、お前は小沢と二階を同列に論じるのか、と小沢支持者からお叱りを受けそうだが、私にとっては二人は同列なのである。そして、森喜朗や尾身幸次は異系列に属する。ここまで書けばお気づきの方も多いだろう。小沢一郎と二階俊博は田中角栄、森喜朗と尾身幸次は福田赳夫の系列に属する。麻生太郎は、清和会の傀儡として擁立されたのに、清和会の路線を骨抜きにしようとして党内から「麻生降ろし」を食う羽目に陥ったが、小沢一郎の秘書逮捕によって生じた奇妙な均衡によって、かろうじて権力の座を守っている。だがそれは、両側が切れ落ちた崖になっているナイフリッジの稜線を歩くような、危なっかしい政権運営だ。

それにしても、小沢一郎の疑惑は、ロッキード事件を覚えている世代の人なら、誰しもこれを思い出さずにはいられないものだ。逮捕された田中角栄は、自民党を離党して総選挙に立候補し、地元新潟3区の有権者は、田中に17万票の得票を与え、大勝をもたらした。総選挙後、田中を逮捕させた三木武夫は首相の座を降り、福田赳夫が後継首相になったが、緊縮財政路線をとった福田は、得意としていたはずの経済政策で成果を挙げることができず、皮肉にも田中角栄の置き土産である日中平和友好条約の締結が最大の成果となった。そしてこれを成し遂げた直後、自民党総裁予備選で、田中角栄の支援を受けた大平正芳に惨敗して総理総裁の座を降り、以後2000年に森喜朗が首相になるまで、岸信介から福田赳夫の流れを汲む名門派閥は、冷や飯を食わされ続けた。

当時、ロッキード事件で逮捕された田中角栄は法を犯したが、そうまでして金を集めなければならなかった田中角栄よりも、官僚上がりで岸信介譲りの尻尾をつかませない金集めのできる福田赳夫のほうがもっと悪質だという意見があり、私はそちらに傾いていた。田中角栄に投票した新潟3区の有権者に対して、日本中から罵詈雑言が浴びせられたが、私はいたって同情的だった。

A級戦犯の岸信介の流れを汲むだけあって、福田赳夫はタカ派色の強い男で、1978年の終戦記念日に靖国神社に参拝し、公用車を使用、公職者を随行したうえに「内閣総理大臣」と記帳しておきながら、しゃあしゃあと私的参拝だと主張した。同じ年の夏、栗栖弘臣が「週刊ポスト」誌上で「超法規発言」を行って解任された時にも、福田赳夫は閣議で有事立法・有事法制の研究促進と民間防衛体制の検討を防衛庁に指示し、これがたいへんな議論を巻き起こした。その後時代が流れ、朝日新聞の論説主幹が若宮啓文に代わって有事法制賛成に社論を転換した直後、コイズミ内閣下で有事関連3法案が成立した。

こうしたことを考える時、自民党政治を終わらせることは、2000年から始まった清和会支配を終わらせることだと考える。いまさら田中角栄的な土建政治に戻る必要はないが、グリーン・ニューディールなど新たな政府支出によって産業を振興させていかなければ、世界金融危機に端を発した恐慌から脱出することはできない。すでに、清和会の方がかつて新自由主義路線を突っ走っていた路線を転換しようとしているが、「コイズミカイカク」によって国民生活をズタズタにした張本人たちの責任を追及し、彼らを権力の座から追い落とさなければならないと私は考えている。だから、きたる総選挙は必ずや「コイズミカイカク審判選挙」でなければならないのである。

単に新自由主義を問うだけではない。政治の混乱に乗じて、安倍晋三が元気を取り戻し、産経新聞は「日教組問題を総選挙の争点にする」などとたわけたことを言い出している。もちろん、そんなものが争点になどなろうはずもないが、かつて「安倍晋三降ろし」(AbEnd)のブログキャンペーンに加わって安倍の改憲路線を批判していた人間が、現在では平沼赳夫一派に加担し、あわよくば平沼一派を小沢民主党と組ませようなどと夢想しているし、「偽装CHANGE勢力」批判を行う人たちの多くも、平沼一派に容認的か、あるいは積極的に支持している。

そして、小沢一郎支持者の間で最近目立ってきたのは、「小沢さんじゃなきゃ対米従属から脱せない」とか「小沢さんじゃなきゃ官僚支配を打倒できない」という、小沢一郎に対する盲目的な信仰である。これは、かつての日米構造協議で小沢一郎がほとんどアメリカの言いなりだったことや、小沢が新自由主義的政策を強く打ち出した『日本改造計画』(旧版)が、実は官僚が書いたものだとされていることを考えると、いかにも奇妙で実態にそぐわない、誤った信仰であるとしか私には思えない。

そもそも小沢一郎は、よく当ブログにコメントいただくsonicさんが指摘されるように、中央で新自由主義者を気取っていた頃は、地元では田中角栄直系らしい、土建業者と強く結びついた利益誘導型の政治家であり、民自合流で民主党に移ってきた当初、党の保守系の人たちが「小さな政府研究会」を発足させて、「小沢派結成か」と言われた時には、労組に支えられる組合政治家に転向していた男なのである。

小沢一郎は、民主党内右派の政治家を引き連れているにもかかわらず、党内で社会党出身の左派政治家たちと組んだのも、組合政治家に転向していたことを考えれば当然で、だからこそ2006年に代表に就任するや、それまで自民党と「カイカクを競う」方向性をとっていた党の方針を180度転換して、「国民の生活が第一」と言い出した。そして、共産党の政策をパクったが、同じ政策でも共産党が言うのでは支持されず、民主党が言うと支持されるというのは、共産党支持者の方々が言われる「アカの壁」なのだろうと思う。

内実はともあれ、民主党の「国民の生活が第一」というスローガンが国民の心を捉え、新保守主義と新自由主義の権化だった安倍晋三率いる自民党をものの見事にノックアウトしたのが、2007年の参院選だった。その後、小沢一郎支持者が個人崇拝の度を強めていったのは、おそらく、その大勝利の印象があまりに鮮烈だったからではないだろうか。「大連立」騒動の時でさえ、小沢一郎を批判し、代表辞任を求める意見は、「自End」ブログ界隈ではごく少数派だった。当時、当ブログをコメント欄で何度か罵倒した、「araなんとか」と名乗っていた人間は、最近も「アホバカマヌケ」とか「愛読者」などと名乗って、当ブログを罵倒しているが、そんな無駄なことに時間を費やすよりも、自分のブログで当ブログを批判し、支持を集めたほうがよっぽど良いと思う。

当ブログは、民主党の方向転換と、2007年の参院選勝利については、小沢一郎を高く評価している。しかし、かつての新自由主義にしても、近年の路線転換にしても、小沢一郎の思想信条から発するものとはあまり思えない。前者は時流に乗っただけのものだし、後者は時流に乗ったことに加えて、選挙区の支持者の都合からきたものだと思っている。小沢一郎であればアメリカに対抗して自主独立の道を歩めるとか、官僚支配から脱却できるというのは、幻想に過ぎまい。

昨日(11日)、『きっこのブログ』が「西松建設前社長が小沢氏からの便宜供与を否定」と書いた。

西松建設の違法献金事件に関して、西松建設の国沢幹雄前社長が、民主党の小沢一郎代表側からの便宜供与はなかったと証言していることが分かった。

とのことだが、ニュースソースは示されていない。しかし、それは正体不明の「関係者」発の情報であふれ返るマスコミ報道とて同じである。そして私は、きっこさんが2005年の堤義明逮捕や、その翌年の堀江貴文逮捕を正確に予言したことを覚えているので、ニュースソースこそ示されていないものの、根拠のない情報とは思えない。

これについての、sonicさんのコメントを紹介したい。

なんか、きっこのブログを見ていたら、西松が、小沢さんに献金していたのに便宜をはかってもらえないから政治団体を解散したとバラしてしまったそうです。
きっこのブログはソースを明らかにしないので、これ自体確実な情報ではありません。
でも、とても本当っぽいですね。
岩手の建設業者はそう言う思いを味わいましたので。

ほんと、自民党時代はともかく、離党後の小沢さんは応援してもぜんぜんダメだった。
利益供与? ちゃんちゃらおかしい。
一番バカバカしかったのは自自連立時代で、この時は与党なので地元ゼネコンは小沢べったりで応援したのに、東京では新自由主義をきどっていましたよね。
小沢さんを応援してもしなくても、建設予算は徐々に縮小。
当時は談合組織が残っていたから利益を分け合って潰れずに済んでいた。
会社の偉い人は頑固に小沢一郎支持で固まっていましたが、私ら若手の不満はとても大きかった。
予算がつくようになったのは、小沢チルドレンだった増田前知事が官僚に門前払いされると言う屈辱を味わい、2期目の途中で自民党に鞍替えしてからです。
与党の公共事業への影響力と言うのは、それほど強いのです。

小沢一郎がどれほどカリスマ性があり、実力があったとしても、野党は所詮野党に過ぎません。
そして野党小沢一郎が公共工事に対して急激に無力化するのを私らは経験しました。

今回の西松騒動で報道されるように野党小沢一郎に便宜をはかる力があったと思うのは、いくらなんでも過大評価です。

...というか、小沢さんが首相をやって日本を変えられると思うのも過大評価だと思います。

2009.03.11 20:49 そにっく


「小沢さんが首相をやって日本を変えられると思うのも過大評価だと思います。」というコメントの結びにウケた。

今回の西松建設違法献金事件に絡んだ小沢一郎の収賄疑惑も、小沢が首相になれば自主独立で官僚支配から脱却できるという夢も、ともに幻想ではないかと私には思える。民主党も、いつかは「小沢一郎離れ」をしなければならない。今は、その良いチャンスではないだろうか。

何はともあれ、自民党支配の政治は終わらせなければならない。それはそうなのだが、かつてコイズミが個人崇拝されたように、小沢一郎が個人崇拝されるようだと、日本の政治は何もよくならないと思う今日この頃なのである。


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小沢一郎であれば、「政治とカネ」で叩けばほこりが出るのは当たり前。そう私は思っている。だから、西松建設からの違法献金事件が報じられた時、小沢氏は潔く代表を退くべき、と書いた。だが、その後の捜査の進展と報道を見ていると、権力側による謀略の可能性がきわめて高くなったと言わざるを得ない。

昨日(10日)の朝日新聞が報じた「談合関与」が疑われる小沢一郎の元秘書とは、明らかに高橋嘉信氏を指すのだが、読売新聞は昨日の夕刊一面トップで、「小沢代表元秘書・民主の石川衆院議員を参考人聴取へ」と報じた(らしい。当地は朝夕刊統合版地域だが、これは大都市圏の版の話)。

なんだ、お前は自民党公認で総選挙に立候補予定の高橋嘉信氏と書いたが、元秘書は民主党から中川昭一の選挙区で立候補予定の現職議員・石川知裕氏ではないか、と思われた読者も多いだろう。だが、朝日新聞は明らかに高橋嘉信氏を念頭に置いて書いたのである。朝日の記事には、

 今回の事件で政治資金規正法違反容疑で逮捕された、小沢代表の公設第1秘書で陸山会の会計責任者も兼ねる大久保隆規(たかのり)容疑者(47)は、元秘書の後任だった。

この記述に該当するのは高橋氏であり、35歳の石川氏ではない。読売の記事には、

 石川議員は1996?2004年に小沢代表の秘書を務め、00?04年には、陸山会の事務担当者に就いていた。

とある。

当ブログに寄せられた小沢氏に関する情報によると、小沢氏は自民党時代から自由党時代にかけてはずいぶんあくどいことをやっていたとのことだ。そして、高橋嘉信氏こそその鍵を握るキーパーソンである。しかし、小沢事務所とかかわりの深かった地元の建設会社は2002年4月に破綻しており、これを契機に地元の建設業界は小沢離れを起こした。従って、高橋氏の関与した件は時効になっていると思われる。その後の小沢氏については、たとえば建設会社との間の贈収賄罪を立件するのは困難ではないか。西松建設の東北進出に関しても、主役は小沢氏ではなく、もっとミエミエに怪しい他の大物政治家がいるが、検察の捜査がそこに伸びているとの報道は皆無だ。以上が、当ブログが持っている感触である。

以上の認識からすると、高橋嘉信氏をさしおいて、中川(酒)の選挙区である北海道11区から立候補予定の石川知裕氏を先に参考人聴取するということなど、小沢一郎と民主党のイメージを落とすことが目的の、政府と東京地検が結託した「国策捜査」以外のなにものでもない。「ここまでやるか」と、そのなりふりかまわない手口に唖然とする。ましてや、報じたのは「自民党の機関紙」ともいわれる読売新聞なのである。ここまで露骨だと、有名ブログが書く「麻生首相の権力犯罪」という表現が、決して大げさではないと思える。

そんなわけで、かつては真っ黒な政治家だったが、西松建設との件に関しては「でっちあげ」の様相の濃厚な小沢一郎が検察に徹底抗戦するのは、それなりに「理」はあると思う。でも、それはあくまで小沢一郎事務所の問題である。

民主党員でもある『JanJan』のさとうしゅういち記者は、3月10日付の「民主党のピンチはチャンス めざせ女性初の総理」と題した記事で、次のように書いている。

■自民党こそ政官業一体、されど「国民の生活が第一」のためには・・・

 民主党よりも、自民党のほうが、大手企業(経団連)からはたくさんお金をもらっています。2007年で言えば、経団連企業の献金総額は29億8000万円で、うち97%の29億1000万円が自民党へのものです。経団連は「政策優先事項」を定め、各政党の「通信簿」をつけ、各企業の献金の参考にしてもらっています。そのことが、自民党の衰退の背景にあります。

<参考>
日本経団連、献金総額4億増、民主は横ばい 政治資金収支報告
「優先政策事項」と「企業の政治寄付の意義」について
2008年政策評価の発表にあたって

 西松建設問題ばかりに焦点がいくマスコミ報道ですが、実際には、自民党と経団連が深く結びつき、新自由主義的政策を車の両輪として進めたことが、今の惨状の背景にあるのです。そして、小沢さんには、闘う権利があります。

 それはそうなのですが、今、国民生活が大変な状況です。そういう状況で、国民から「やめろ」という声が強い小沢さんが代表のままではせっかくのチャンスが生かせないと思います。

 「小沢さんがやめたら、自民党にさらに追撃される」という議論もありました。しかし、二階経済産業大臣側にも捜査が及ぶ情勢になり、状況が変わりました。言い方は悪いが「二階大臣もやめ、小沢さんもやめて相打ち」もありではないか。

 小沢さんは「潔白を証明するため、代表をやめ、法廷闘争に力を割く」ことにすればよいのです。

(『JanJan』 2009年3月10日付記事 「民主党のピンチはチャンス めざせ女性初の総理」より)


冷静で筋の通った正論だと思う。小沢一郎氏も、「次の総選挙で民主党が勝てるかどうかを見極めたうえで、進退を最終判断する」とした(下記URLの朝日新聞記事より)。
http://www.asahi.com/politics/update/0310/TKY200903100325.html

総選挙の争点は、あくまで国民生活を守るためにどのような政策をとる政党を選ぶかであり、ひいては、「コイズミカイカク」に対して審判を下すものでなくてはならない。国策捜査問題などを選挙の争点にしてはならないのである。


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漆間巌・内閣官房副長官が、報じられた「自民党側は立件できない」とした発言を、9日の参院予算委員会で「全然記憶にない」と否定したのにはあきれてしまった。昨日のエントリに対し、「政治記事は政治部の記者と各政治家との信頼関係で成立しており、情報元のプライバシーを守ることは、知る権利よりも優先的に守らねばいけない」とするコメントをいただいたが、それはあまりにもナイーブな見方だ。問題の本質は、マスメディアの横並びの体質にある。記者クラブに入っていれば、どの社にも同じような情報が「政府高官」からもたらされ、記者は労せず記事を書くことができる。それは、権力側の政治家の利益にはかなうが、国民の利益を損なうものだ。オフレコ取材が全く不要とはいわないが、権力者に過剰な権利を与えているのが現在のマスメディアのあり方であり、これは「メディアが権力と一体となっている」という以外に表現できないものだ。1972年の「西山事件」では、毎日新聞の西山太吉記者(当時)に情報源の秘匿の配慮が足りずに失敗してしまったが、今回の漆間の件はそれとは全く異なる。「政府高官」という符牒で報道されたことによって、マスメディア報道の慣習を知っている人にとっては、ああ、官房副長官が言ってるんだな、とわかるだったのであり、こともあろうにその内容が捜査への政府の介入を疑われるようなものだったから、報道関係者にとってはわかり切っていた発言者の実名の公表が求められたのである。繰り返して言うが、これは、政治家側に過剰なフリーハンドを与えている現在のマスメディアの問題である。政治家と新聞記者には、信頼感だけではなく緊張関係もなければならない。昔の新聞記者が書いた本などからはそれが感じられるのだが、現在の新聞記者からは感じられない。

それから、「国策捜査」批判への批判も結構出ているが、昨日、立花隆がテレビに出演して、検察はいつでも国策捜査をする、それが彼らの仕事だ、と言ったそうだ。これは、当ブログがずっと主張し続けていることでもある。検察が行政機関である以上当然のことで、何も小沢一郎の秘書逮捕の一件だけが「国策捜査」ではない。だから、検察の捜査については、常に権力側からのバイアスを疑ってかからなければならないのは当然である。何度も何度も書くけれども、陰謀の仮説を立てることは「陰謀論」でもなんでもない。立てた仮説がドグマと化してしまって、仮説への検証作業を攻撃したり排除したりすることが、「陰謀論」の弊害だ。陰謀論者も、型にはまった、というか考察を欠く「陰謀論批判論者」も、この点を理解していない。自然科学でも社会科学でも当たり前に行われるアプローチのプロセスを全くわかっていないのである。

とことで、各種メディアの世論調査は、予想通り民主党の支持率が大きく下落する一方、麻生内閣および自民党の支持率は変わらないか微増である。毎日新聞の調査で麻生内閣支持率が5ポイント上がって16%になったのと、テレビ朝日の調査で21%に増えたあたりが目立つ程度だ。だが、もともと毎日新聞調査では麻生内閣支持率は低かったし、テレビ局の支持率調査は、どういうわけか都市部の有権者の意見が強く反映されるように思う。麻生内閣が、経済軸で「右」から(つまり、渡辺喜美氏らのような新自由主義的な立場から)批判されていた頃は、テレビ局調査の世論調査で内閣支持率がいち早く下がった。地方在住者としての感覚からいうと、地方の保守は自民党が「コイズミカイカク」を総括しない限り、自民党支持に戻ることはあり得ない。

それにしても、自民党はなんで麻生太郎のような男に総理大臣をやらせてしまったのかと、ベルサイユ宮の人たちの感覚にあきれるばかりだ。つくづく思うのだが、福田康夫総理のままで、昨年秋くらいに解散総選挙をやって、自民党はいったん下野し、経済危機の難局への対応は、一昨年の参院選で「国民の生活が第一」を唱えていた民主党を中心とした連合政権にやらせて、自民党は野党としてその政策を批判する状態にすればよかったと思う。「良き敗者」であれば、自民党に再生の道はあった。だが、自民党はその道を選ばず、権力にしがみつく道を選んだ。人気者だとうぬぼれて首相になった麻生は、その人気がコイズミ政権時代に捏造されたものだったという事実を認めることができず、小出しにする景気対策は後手に回り、ウケを狙うパフォーマンスも不発に終わり、あげくのはてには財務相が泥酔して辞任に追い込まれた。小沢一郎に狙いをつけたのは、「そうでもしなければ政権の座を守ることができなかった」麻生が、ついに禁断の手段に手を染めたものだ、そう誰もが思ったことだろう。だから、民主党の支持率が大きく下がったにもかかわらず、麻生内閣や自民党の支持率はほとんど上がらなかったのだ。敵失で支持率が上がるものではないし、「政治とカネ」の問題だから、直ちに自民党に跳ね返るのも当然のことだ。昨日のエントリでも書いたように、捜査が小沢一郎と二階俊博で止まったのでは、「旧経世会」の狙い打ちであり、依然として権力の利益と合致する。西松建設が受注した沖縄の公共事業に関する職務権限を持っていたことが指摘されている尾身幸次は、本当なら真っ先に捜査の手が伸びていて当然の人物だが、捜査がなされていないのは、尾身が町村派の政治家だからではないかと私は疑っている。とはいえ、「はてなブックマーク」のコメントでも指摘されたように、「国策捜査」と一言でいっても、何をもって「国策捜査」とするのかという問題もある。ライブドア事件のように、コイズミ内閣の利益とは必ずしも一致しない、旧保守側による「国策捜査」が行われた例もあるから、今後尾身幸次の身は安泰、とまでは言い切れないだろう。

ところで、私がとっている朝日新聞の早版には出ていないのだが、最終版では「小沢代表の元秘書、談合に関与か」という記事が一面トップになっているようだ(下記URL)。
http://www.asahi.com/national/update/0309/TKY200903090343.html

この元秘書とは、ネットでは既に広く知られているように、次回の総選挙で小沢一郎の「刺客」として岩手4区から自民党公認で立候補を予定している高橋嘉信氏を指すのは明らかで、早朝のテレビ朝日の番組でも、コメンテーターがその旨コメントしていた。今回の一件も、高橋氏によるタレコミに端を発するといわれていて、真偽不明の情報によると、これは朝日新聞の記者が社のスクープにはしないで検察に垂れ込んだのだという。今朝の朝日に、元秘書に関する記事が掲載されたのは、上記の噂話と一致する。

元秘書は自民党から立候補予定とはいえ、小沢一郎に歯が立つはずもなく、自民党からしたら絶対勝てない選挙区で候補者を差し替えれば良いだけだ。一方、元秘書が提供した情報が小沢一郎に与えるダメージの大きさは計り知れない。朝日新聞は、民主党に対して「この不信にどう答える」と題した社説も掲載しているし、当初検察の捜査に激しく反発していた鳩山幹事長も、トーンを下げてきた。

ことは「政治とカネ」の問題であり、自民党も民主党も深くかかわっているのは当然だ。「自民党もやっているから小沢代表は悪くない」という論理は成り立たないし、公共事業にかかわる職務権限を持っていた議員が複数いるのに、「金額が小沢一郎より少ないから問題ない」という論理も全く成り立たない。

そして、単に自民党も民主党も悪い、というのではなく、「民主党も悪いが、自民党はもっと悪い」のだということだけは押さえておかなければならない。政治不信に陥るのは仕方ないが、投票率が著しく下がると、公明党の票に支えられた自民党の議席が増え、最悪の政治勢力がさらに延命するという結果を招くことを忘れてはならない。比例区においては、何も自民党と民主党だけが選択肢ではないのだし。


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週末に、民主党・小沢一郎代表の公設第一秘書・大久保隆規容疑者が逮捕された西松建設の献金問題で、次々とお騒がせな材料が出てきた。こんな話題はいい加減に切り上げたいのだが、なかなかそうもいかない。

この件の議論に関しては、私が何か書くより、最近の当ブログのエントリのコメント欄をご覧いただいた方が良いと思う。興味深い情報の提示やいろんな立場からの議論が読める。当ブログは、捜査の進展状況によっては、総選挙に向けて民主党が大きなリスクをとることになるので、これを回避するためにも小沢一郎代表は速やかに辞任した方が良いという主張で、政治資金規正法違反の容疑や、ささやかれる贈収賄疑惑については、これまでもほとんど触れなかったし、今後も深入りするつもりはない。それよりもっと大事な問題(国民の生活を守ること)があると考えるからだ。

だが、3月5日に、「政府高官」が「捜査が自民党議員に波及する可能性はない」と述べ、誰もが疑っていた「国策捜査」を自ら認めてしまった失態を犯し、それがきっかけとなって、マスコミ報道が持つ問題点が噴出した。今日はそれについて書く。

「政府高官」が、首相官邸で記者団に対して「自民党側は立件できないと思う。特に(違法性の)認識の問題で出来ないだろう」と述べ、自民党議員に捜査は拡大しないとの認識を示したことは、3月5日に各メディアが一斉に報じた(下記は朝日新聞の例)。
http://www.asahi.com/politics/update/0305/TKY200903050292.html

この「政府高官」が内閣官房副長官の漆間巌であるという情報は、翌日にはネットを駆けめぐっており、当ブログも6日のエントリを公開したあと、コメントで教えていただいた。以後、ネットでは実名がバンバン流れているのに、マスメディアの報道は「政府高官」であるという状態が続いた。

私などは、「政府高官」と聞くと、はるか昔、1976年のロッキード事件の頃、ロッキード社のカール・コーチャン副会長が、「丸紅経由で約6億円を複数の政府高官に渡した」と証言したことを思い出す。当時、「政府高官」という言葉がはやった。時の稲葉修法相は、捜査の山場はいつか、と聞かれて「蝉の鳴く頃かなあ」と言ったが、その言葉通り、7月27日に前首相田中角栄が逮捕された。ロッキード事件の時、稲葉法相は明らかに捜査の状況を知っていたし、田中の逮捕を三木首相の同意のもと行われたのは当然だ。というより、三木は政権を安定化させるためにこの事件を最大限に利用した。稲葉修は中曽根派の政治家だったが、中曽根自身も党内の少数派だった三木の政権を支える立場に立っていて、そのおかげで「田中角栄以上に怪しい」と疑惑が取り沙汰され、腹心の佐藤孝行が逮捕されながら、中曽根自身には累が及ばなかったと言われている。歴史にもし、という言葉はないが、もし中曽根が三木政権を支える立場に立っていなかったら、中曽根は逮捕されたかもしれないし、もちろん中曽根が日本における新自由主義の開祖になることもなく、ましてや大勲位などに叙されたはずもなかった。

当時の「政府高官」とは田中角栄をはじめとする何人かの政治家を指したが、オフレコの記者懇談会における談話が記事になる時、「政府高官」というと内閣官房副長官を指すのだそうだ。そのことと、3人いる官房副長官の職務分担から、発言の主が漆間巌であることが容易に割り出され、その内容が「国策捜査」を事実上認める問題発言だったため騒ぎになったわけだが、問題発言であるにもかかわらず、漆間が実名報道を拒んだために、以後奇妙奇天烈な記事が新聞に載ることになる。

今朝の朝日新聞には、問題の経緯が報じられている。これによると漆間は6日、「一般論として、違法性の認識の立証がいかに難しいかという話をした」と釈明し、朝日新聞は実名公表を求めたが拒否された、とある。さらに7日には内閣記者会が漆間に実名公表を求めたが、「さかのぼってオン(公表)にすることはあり得ない」と漆間は重ねて拒否した。

この頃から、朝日新聞には奇妙な記事が載るようになった。3月7日午前3時の日付のあるasahi.comの記事には、「民主、漆間氏とみて追及へ 「自民立件ない」発言の高官」という見出しがついている(下記URL)。
http://www.asahi.com/special/09002/TKY200903060342.html

この記事には、新聞の遅版には載ったのかもしれないが、私が読む締め切りの早い版には出ていなかった(8日付の第2社会面の下のほうに出ていた)。だから報道に気づくのが遅れたが、抱腹絶倒ものの記事である。協定によって実名報道できないものだから、

民主党はこの政府高官を元警察庁長官で官僚トップの漆間(うるま)巌官房副長官とみて、週明けの国会で追及する。

とか、

新党大地の鈴木宗男代表は6日夜のBS放送の番組で、「漆間氏が『自民党に発展しない』と言うことがおかしい。権力側が裏でつるんでやってるという話になる」と実名を挙げて批判した。漆間氏は警察庁長官を経て、麻生内閣発足の08年9月に中央省庁を束ねる事務担当の官房副長官に就任した。

などと書く。事実上の実名報道なのだが、鈴木宗男氏のくだりは大阪本社発行の朝夕刊統合版には載っていなかった。金を払って新聞を購読している読者を馬鹿にする報道を、朝日新聞は臆面もなくやっている。その代わりといっては何だが、「政府高官は 漆間氏」という見出しの記事が、9日付紙面の真ん中やや右あたりに出ていて、社会面でオフレコ解除のいきさつを報じているわけだ。

結局、政府も騒ぎを抑え切れなくなって、8日にフジテレビとNHKの番組で、河村官房長官は発言の主が漆間巌であることを明かした。協定があったために、メディアはそれまで「政府高官」の呼称を用い続けたのである。

国民の「知る権利」とニュースソースの秘匿というと、毎日新聞記者が逮捕されたうえに毎日新聞社の経営まで傾けた1972年の西山事件を思い出すが、権力犯罪に迫った西山事件の場合と違って、この件は政府と新聞記者が馴れ合っている「記者クラブ」制度の腐敗の問題が表面化したものだ。ベクトルの向きが180度異なるといってもよい。おかげで、「政府高官」が「内閣官房副長官」を指すという政界の常識(なのだろう)を一市民の私もようやく知ったわけだが、このような慣習が、国民の「知る権利」を著しく侵害していることはいうまでもないだろう。一説によると、民主党が政権をとると「記者クラブ」制度が廃止されるという話があって、それを嫌う新聞記者が小沢叩きをしているのだと言う人もいるが、いくらなんでもそれは「陰謀論」のたぐいだろうと思う。

朝日新聞は、今日(9日)の紙面で下記のように書いている。

 記事の信頼性を確保するためには、情報源はできるだけ明示されることが好ましい。ただ、政治家や政府当局者に対するオフレコ取材は、本音や背景をつかむことで、実態をより正確に把握するために必要な側面があり、世界の民主主義国の報道機関で広くとられている手法でもある。

 漆間氏のような政権中枢が、政治家が関係するデリケートな事件の捜査の見通しについて語るのは極めて異例。そのため、朝日新聞を含む報道機関は「政府高官」「政府筋」として漆間氏の発言を報道した。

 朝日新聞や内閣記者会は発言の重要性を考慮し、漆間氏にオフレコ解除を求めたが拒まれた。情報源の秘匿を約束した場合、秘匿が解除されるのは、相手側が同意した場合だけというのが原則。そのため、朝日新聞も河村氏が匿名を明かすまで、基本的に「政府高官」として報道した。

(2009年3月9日付朝日新聞より)


いったい誰がこんな説明に納得できるだろうか。1976年、稲葉修法相は発言をオフレコになどせず、実名で法務大臣が捜査の進展を知っていることが報じられた。検察は行政機関であるから何の不思議もない。今回、町村信孝が「国策捜査なんかがあったら田中角栄は逮捕されなかった」と言ったが、これは人を馬鹿にした話で、田中角栄が三木武夫の政敵だったから逮捕されたというのはもはや歴史の常識であって、当ブログでも何度か書いた記憶がある。

問題は、いつの間にか政府側が過剰な権利を持つに至っていて、本来濫用してはならないはずの「オフレコ取材」が日常的に行われ、政府と癒着したマスメディアは権力批判に踏み込まなくなってしまったことだ。

コイズミ内閣末期から安倍内閣初期にかけて、安倍晋三にまつわる問題を取り上げた記事が、大手メディアにはほとんど載らなかったことがあった。当ブログは、安倍批判が載っている週刊誌を探してはブログで紹介することを繰り返していたものだ。安倍は、自民党の政治家の中でも特にメディア規制(言論の自由の抑圧)に熱心な政治家であり、先日国際会議の場で泥酔して財務相の座を追われた中川昭一と組んで、NHKの番組を改変させ、それを報じた朝日新聞と戦って朝日を屈服させたことがあった。これ以降、朝日新聞の報道に覇気が感じられなくなり、朝日にとっての「西山事件」になったのではないかと私は思っている。この件の経緯を報じた魚住昭の記事は、ネットで読める(下記URL)。
http://www.news-pj.net/siryou/2006/nhk-bangumikaihen200509.html

最後に、西松建設に関する疑惑の件に戻ると、漆間巌の言に反して、東京地検は今週二階俊博周辺の立件を行う見込みだそうだ。だが、私の推測ではこれもまた「国策捜査」であって、批判を抑え切れなくなった政府が東京地検に、かつて小沢一郎の「忠臣」として知られた二階俊博を差し出したものに過ぎない。

昨日の「サンデープロジェクト」では、野党の小沢一郎事務所が捜査されたが、西松建設から献金を受けた議員で、在任中に公共事業にかかわる職務権限を持っていた人間がいたのではないかという話が出た。コメンテーターは、それはいると言ったが、実名を出すのは拒み、その代わり、「沖縄及び北方対策担当大臣」という言い方をした。報道されている中でこの経歴に当てはまり、かつ献金を受けた額が多いのは尾身幸次である。この尾身は、町村派の議員であり、森喜朗ともども、「国策捜査」を画策している側としたら、絶対に捜査が及んでほしくないはずの人物である。捜査が尾身に及んで初めて、東京地検を見直す気にもなろう。

『なごなぐ雑記』の宮城康博(nagonagu)さんによると、

尾身は、沖縄では本邦初の「大学院大学」「泡瀬干潟」をはじめ様々な公共工事の利権をコントロールしにらみを利かし私腹を肥やす真っ黒な政治屋。東京地検が尾身にメスを入れきれるなら、多少は見直すに値すると私も思う。

とのことだ(『kojitakenの日記』へのコメントより)。捜査が小沢一郎と二階俊博の周辺だけにとどまるのであれば、不公正な「国策捜査」とのそしりは免れまい。


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