きまぐれな日々

 11年前、2007年の6月は、「消えた年金」問題が発覚して、4月・5月に支持率を持ち直しつつあった第1次安倍内閣が一気に奈落に突き落とされるきっかけになった月だった。

 その11年後の2018年6月は、末期症状を呈しつつあるかに見えた安倍内閣支持率が、2015年と昨年、2017年のそれぞれ8月に続いて、三たび、あるいは四たびだろうか、支持率をV字回復させるという痛恨の月となった。現時点で既に、9月の自民党総裁選で安倍晋三が3選されることはほぼ不可避の情勢となった。

 この1か月では新潟県知事選と米朝首脳会談が大きかった。

 後者では安倍晋三は何もしなかった、というより何もできなかったのだが、NHKや読売、産経といった御用メディア、ことに大きなできごとになると頼る人々の多いNHKが「外交の安倍」という大キャンペーンを打って「大本営発表」を垂れ流した悪影響がもろに出た。これは、それに先立つ南北首脳会談で安倍が「蚊帳の外」に置かれていたとする正当な指摘に対して官邸が大々的な反撃に打って出たものとみるほかない。官邸の御用メディアコントロールといえば、文科省元事務次官の前川喜平を陥れようとした昨年6月の読売新聞の報道に典型的に見られるように、(もともと右翼の跳ねっ返りを喜ばせるためのメディアだと誰もが知っている産経新聞はともかく)、NHKや読売といった世間一般では(私は全くそうではないが)比較的信頼されている大メディアを使って臆面もなくフェイクニュースを垂れ流させるという由々しき段階に達した。その手口のおぞましさは、安倍晋三が政権をトリモロした2012年以前には想像もつかなかったほど厚かましく破廉恥そのものだ。中でも最悪なのは岩田明子の「解説」であって、あれはもはや朝鮮中央テレビを笑うことなど全くできないレベルにある。

 この御用メディアの大キャンペーンによって、昨年来「人柄が信用できない」とする人が増えて、しばらく前に謎の「失脚」をした木下ちがや(「こたつぬこ」)氏あたりが、もう以前のように内閣支持率が回復することはないと予言していた安倍内閣支持率が、木下氏の楽観的予想に反してまたしても「V字回復」を遂げてしまったのだった。

 私が連想するのは、1944年10月に突如大々的垂れ流された、台湾沖航空戦で日本軍が大戦果をあげたという「大本営発表」だ。久々の「日本軍の勝利」に当時の日本国民は沸き返ったというが、実際には日本軍の戦果など何もないただの虚報だった。今回の米朝首脳会談をめぐるNHKや読売の報道は実質的にそれと同じだ。二度目は笑劇として繰り返されている「崩壊の時代」の崩壊はもうここまできた。

 安倍晋三がここまでメディア支配を完成させるまでには、思えば長い年月があった。古くは2001年のNHK番組改変問題にまで遡れる。これを朝日新聞が報じたのは2005年だったか。しかし朝日は腰砕けとなって安倍と故中川昭一に謝罪してしまった。その間に魚住昭が安倍と中川からの圧力をあったことを立証する記事を月刊『現代』に発表したにもかかわらず、不可解な屈服だった(朝日は同じ誤りを2014年の「慰安婦報道」撤回で繰り返した)。

 その後、一時は政権を投げ出した安倍晋三は政権に返り咲くと、百田尚樹をNHK経営委員に、次いで籾井勝人をNHK会長に次々と送り込んで、NHKの報道を「大本営化」させてしまった。私はもう数年前からテレビのチャンネルをNHKに合わせることはほとんどなくなっている。ここ数年のNHKの報道に対する私の信頼度はゼロなのだが、このような人間では今の日本ではごく少数派なのだろうと自覚している。メディアを支配した権力の暴走はとどまるところを知らない。読売はいつだったか前記木下ちがやが指摘した通り、もはや渡邉恒雄(ナベツネ)はグリップしていないと見られるが、エピゴーネン(追随者)は常に本家本元よりもたちが悪いという私の経験則の通り、ナベツネ全盛時代でもみられなかったほど堕落してしまった(その代表例が前記の前川喜平をめぐる虚報だ)。

 ところで、腐敗した政権の暴走が末期的な段階に達しているにもかかわらず、「野党共闘」の迷走はもはやお花畑の域に達している。新潟県知事選の敗因を総括せよとは、たとえば世論調査の分析で定評のある「はる」氏や、私のあまり好まない菅野完なども言っているが、「野党共闘」の中核をなす指導者たち、具体的には志位和夫、小池晃、枝野幸男、辻元清美、岡田克也といった人たちの言動からは総括どころか反省の色さえみられない。

 特に頭にくるのは労働の規制緩和の総仕上げともいうべき「高プロ」反対のアピールが「モリカケ」問題追及に比べて力が入っていないように見えることと、それと対をなすかのように、新潟県知事選でもみられたように、こともあろうに小泉純一郎と「共闘」している惨状だ。

 高プロが世紀の悪法であることは言うを俟たないが、その前段階として派遣労働の対象拡大という労働の規制緩和があった。小泉純一郎はそのうち、製造業への派遣労働の解禁を定めた2003年の派遣法改定(改悪)に総理大臣として関与したゴリゴリの新自由主義者だ。首相在任中に竹中平蔵と組んだ悪行は実にひどかったが、そんな小泉純一郎と「脱原発」で共闘しているのが今の「野党共闘」だ。

 新潟県知事選の直後に、東京電力が同社の福島第二原発の4基を廃炉にする方針を表明したが、東電がこれを知事選の前ではなくあとに表明したのはむろん意図的だ。投票前に表明した場合、東電が保有する原発で残るのは柏崎刈羽原発だけとなるため、自動的に原発が知事選の争点になる。それを配慮したものであることは明らかだ。

 逆にいえば、2011年の東日本大震災字に起きた東電福島第一原発事故(以後、東電原発事故)以来、「脱原発」のベクトルの方向を持つ惰性力が強く働いており、それに権力ずくで対抗しようとしているのが安倍政権と経産省だといえる。

 米山隆一が勝った2016年の新潟県知事選では、その「空気」というか惰性力の強さを読めなかった自公候補の森民夫がうっかり原発を争点にしてしまったとも聞く。今回の花角英世は極右人士ばかり応援に仰ぐようなとんでもない人間だが、森民夫が犯した誤りは繰り返さなかった。「野党共闘」側は争点隠しだというが、そもそも不利な土俵に自分から上がる馬鹿はそうそういない。「脱原発シングルイシュー」あるいは「脱原発プラス『モリカケ』」で自公候補に勝てるという「野党共闘」側の甘い見通しこそ批判されなければならない。

 しかし、「民主集中制」の共産党と「元祖新保守主義・元祖新自由主義」の象徴にしてかつては多数の[信者」を抱えていた小沢一郎、それに「下からの(草の根)民主主義」というのはどうやら看板だけだったらしいことがはっきりしてきた、小沢と同根ではないかとさえ疑われる立憲民主党とが組んだ「野党共闘」にはどうやら批判に耳を傾けるつもりは毛頭ないらしい。ある意味安倍政権と似た体質を持っているともいえる。「野党共闘」内では、2013年に自由党の前身である生活の党が自民・維新とともにカジノ法案を共同提出した過去を問う議論さえタブーになっている。一説によると、当時生活の党がこれに加わったのは、前年の衆院選で袖にされた橋下徹との連携になお未練を持っていたからではないかともいわれる。橋下といえば、小泉純一郎に優るとも劣らない新自由主義者だ。

 こんなざまだから、「野党共闘」は高プロ反対の世論を盛り上げることさえままならず、敗北に敗北を重ね続けるのかと思ってしまう。

 2018年も早くも半分が過ぎようとしているが、年の前半はますます暗さを増す一方だった。
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 先週金曜日(25日)に、政府やマスメディアが「働き方改革法案」と呼んでいるいくつかの法案を束ねたものが、衆議院の厚生労働委員会で強行採決の末可決された。これについて、概略を元民主党衆議院議員の小宮山洋子氏がまとめたブログ記事(下記URL)が『BLOGOS』に掲載されていたので、以下に引用する。
http://blogos.com/article/299828/

働き方改革法案 委員会で強行採決

政府、与党が、この国会の最重要法案と位置づける働き方改革関連法案が、先ほど、衆議院厚生労働委員会で採決が行われ、一部修正のうえ、自民・公明・日本維新の会の賛成多数で可決されました。

この法案は、何回も指摘しているように、規制強化と規制緩和のいくつもの法案をひとつにまとめたもので、これは分けて十分な審議をすべきものです。

委員会採決について、立憲民主党、国民民主党、共産党は、厚生労働省が平成25年に行った労働時間の調査結果の一部に誤りの可能性が高いものが確認されたことなどから、「審議は不十分で、採決には応じられない」と主張し、昨日25日に審議、採決を、という与党側と折り合いませんでした。

このため自民党の高鳥委員長が25日に委員会を開いて、法案の質疑採決を行うことを職権で決めました。

野党側は加藤厚労相の不信任決議案を提出しましたが、本会議で否決され、委員会採決となりました。

働き方を改革することは、超少子高齢社会で働き手が少なくなっていくことからも喫緊の課題です。

方向性としては、男女を問わず、人間らしく働ける、心身ともに健康で能力を発揮できる環境整備のはずです。ところが、同一労働同一賃金も実効性が疑われるもので、長時間労働の規制も過労死の限度時間を上限とするなど、働く側にとっては不十分なものです。

一方で、経営者が強く望んだ高度プロフェッショナル制度は、過労死の危険が増すという、労働組合や過労死家族の会など多くの反対を押し切って導入されることになってしまいます。

この高プロ制度というのは、対象者は専門的で高度な知識などが必要な職種で、新たな契約によって全労働者の平均の3倍(1057万円)の年収が見込まれる人たちです。

それなら関係ないと安心してはいられないのは、経団連などが、すでに年収要件の引き下げを求めているからです。

派遣労働のように、一度堰を切ったら、どんどん広げられる恐れがあります。

問題なのは、経営者が法に基づいて労働者を長時間労働させることが可能になることです。

経営者は「年間104日」かつ「4週で4日」以上の休日を確保すれば、1日何時間でも働かせることができることになります。

必要と考える労働者がどれ位いるのか、厚労省は12人の研究者などからしかヒアリングをしていません。

日本維新の会が、高プロで働く本人が制度適用への同意をした後に撤回できる規定などを設ける修正案を出し、そうなりましたが、経営者と労働者の力関係があり、このことで改善されるとは思えません。

安倍首相は、面会を求める過労死家族の会のメンバーとの面会を断りました。

都合の悪い人たちとは会わず、お友達とは秘密裡に会う、ということなのでしょうか。

この法案では、働き方改革ではなく、働かせ方改革になってしまいます。

参議院で、さらに審議を尽くしてもらいたいと思います。

(『BLOGOS』掲載記事 小宮山洋子 2018年05月26日 08:23)


 少し前に厚労省のデータの誤りが発覚して、本来この「働かせ方改革法案」に盛り込もうと安倍政権が狙っていた「裁量労働制」に関する法案の提出断念に追い込まれたが、その裁量労働制と同じ問題をはらんでいる上、裁量労働制よりさらに悪質な「高度プロフェッショナル制度」を定めた法案が、政権の狙い通り衆議院の委員会を、強行採決の形をとったとはいえ私の目には簡単に通ってしまったように見えた。

 私自身について書くと、四半世紀前の1993年に短期間裁量労働制下で働いたことがある。その後ほどなくして、残業代のもらえない身分になった(私が当時勤務していた企業では、係長級以上になると残業手当がつかなかった)。しかしその企業のうち一部の部署には長時間労働の悪弊があり、私が属していた部署もそうだった。そして私自身あわや過労死の病気を患った経験があるし、その数年後には単身赴任者が月200時間以上もの時間外労働を強いられて脳内出血で倒れてしまった事例にも遭遇した(この時、彼の上司は「事情により出向元の関連会社に戻ってもらうことになりました」とだけ言って真相を社員から隠した)。また、その後転職して働いた企業では、小泉純一郎政権時代の2004年に製造業にも解禁された派遣労働者を部下に持って、全国から職を求めて集まってくる派遣労働者の低賃金が動機となって犯した犯罪行為の実例にも遭遇した。それは、雨宮処凛氏が著書に書いた実例とそっくりのものだった。

 以上の経験を持つ私から見て、下記つしまようへい氏の一連のツイートの指摘は的確そのものだと思ったので、以下に引用する。

https://twitter.com/yohei_tsushima/status/1000364781973393408

1993(平成5)年の裁量労働制に関する国会での議論の読むとかなり興味深い内容。 裁量労働制について、遂行方法の裁量はあるが、業務量の裁量はない場合どうするのかという質問に対して政府が答えている。高プロの議論とよく似ている。ちょっと長いけれどぜひ読んでみて。 http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/126/0340/12604230340009a.html


 以下、1993年4月23日の第126回国会・労働委員会の議事録から引用する。

○石田(祝)委員 安易な拡大をしないということですから、これはどういう形になるのか、ぜひ厳しくやっていただきたいというふうに私は思います。
 それで、この裁量労働制で私は一番大きな問題だと思うのは、要するに、裁量できる範囲というのは、仕事のやり方とか時間を裁量はできるわけですけれども、仕事の量そのものを裁量はできないということだと思います。
 例えば、私が読んだ鼎談というのでしょうか、労働基準法についてのそういう座談会の中でフランスの例を挙げている方がいらっしゃいまして、その中に、その方が企業調査でフランスへ行った、そのときに、フランスの労働省の説明では裁量労働が認められるのはいわゆるガードルという管理職だけと聞いていたけれども、ある研究所に行くと事務員からテクニシャンを含むほとんど半分ぐらいの人が裁量労働の契約を結んでおった、こういうことを知ってびっくりしたという話もあったのです。そしてその中で、裁量労働を結ぶときに条件があった、三つあるということでその方は述べておりましたけれども、一つには本人と必ず書式、書面の契約を結ぶ、それから二番目として、原則として時間の拘束はなくフレックス、これは日本でも同じなようでありますが、そして三番目に仕事の量が適切なものである、こういう三つの条件があったようであります。
 ですから、私は、最初に申し上げましたように、この裁量労働の大きな問題は仕事の量そのものは自分では裁量できない、こういうことではないだろうかと思うのです。企業というものは、例えば一年間でやる仕事の量、これこれの人数の裁量労働のグループはこれこれの量の仕事だ、こういうふうにやっておっても、年度の途中でも仕事が入ってくる。こういう仕事をぜひおたくのこの部門でやってもらいたいというふうに来られたら、いや、うちは裁量労働で労使で協定を結んでこの一年間はこういう仕事しかやりません、お引き受けできませんといって断るところはまずないと私は思うのです。ですから、仕事の量が裁量できないということを考えてどういうふうな歯どめをお考えになるのか。これは私は大事な問題ではないかと思いますが、どういう歯どめを考えていらっしゃるのか、お答えをいただきたいと思います。


 赤字ボールドの部分は、前記つしま氏のツイートに引用された画像で赤字ボールドになっていたのに準じたが、そうだ、それこそが裁量労働制の問題点なんだよ、と私も強く思った。そしてそれと同じ問題が高プロにはある。しかも裁量労働制ではまだみなし残業代がついたが(この手当がつくこと自体、経営者が残業を必要とする労働を前提としていることを意味するが)、高プロには残業手当すらない。もちろん深夜業手当もない。

 上記に続くつしま氏の4件のツイートを続けて引用する。

https://twitter.com/yohei_tsushima/status/1000366290295390208
https://twitter.com/yohei_tsushima/status/1000368703458852865
https://twitter.com/yohei_tsushima/status/1000369670988349440
https://twitter.com/yohei_tsushima/status/1000370343549194240

 政府は最初、裁量労働制は裁量で判断できるから大丈夫だと説明する。でも業務量が増えたらどうすればいいのかを繰り返し聞かれて、最終的に政府は、業務量が過大になった場合は、みなし労働時間を見直すか、人員を増やすことが必要になるので、労使協定を見直せばいいと言っている。

 で、それから25年がたってどうなった? みなし労働時間と実労働時間が大きく乖離しても、労使協定が見直される事例はまれだろう。裁量労働制の適用労働者が過労死する事例すらある。このときの政府答弁が想定した仕組みは機能していない。

 みなし労働時間と実労働時間が「●時間」乖離した場合は、裁量労働制の適用除外になるとか、裁量労働制適用労働者に対しても、「時間外労働」の上限規制を設けるなどの規制を設けるべきではないか?

 そして、これ、高プロでも必ず同じことが起きると思う。今政府は「対象労働者の裁量を失わせるような過大な業務を課した場合は制度が適用されない」と説明するが、何が過大な業務なのかの説明はまったくない。

  「過大だったら後から見直せ」だけでは、裁量労働制の二の舞になる。具体的な上限が必要だ。


 本当にその通りだ。

 ところで、今回の「働かせ方改革」法案の審議に関して全く予想もしていなかったことは、裁量労働制の間違ったデータの件ではあれほど批判の論陣を張った野党やマスメディア、それに市井の反安倍政権の人々の抵抗がいたって弱かったことだ。裁量労働制のデータ偽造の際にあれほど注目された上西充子氏が、各紙の報道を比較してそれを批判したツイートを上げても、彼らの反応は鈍かった。朝日新聞や東京新聞が、委員会強行採決の翌日の社会面に取り上げなかったことが、「怒りの温度」のどうしようもない低さを示している。

 11年前に同じ安倍晋三がホワイトカラーエグゼンプションを労働基準法に盛り込もうとした時とは、あまりにも違い過ぎる。これもつしまようへい氏のツイートから引用する。

https://twitter.com/yohei_tsushima/status/1000189039905914880

約10年前、安倍首相がホワイトカラー・エグゼンプションを断念したとき、なんて言ったか。 「現段階で国民の理解が得られているとは思わない。働く人たちの理解がなければうまくいかない」 今回も理解は得られていない。世論調査でも明らか。でも強行採決した 今の政権の強引さを表している。


 当時の状況で思い出されるのは、第1次安倍内閣発足直後から、『週刊現代』と『週刊ポスト』の2誌が競って安倍政権批判を展開し、ホワイトカラーエグゼンプションは「残業ただ働き法案」とあだ名をつけられて徹底的に叩かれた。内閣支持率は急落し、自民党からも労基法「改正」に慎重論が続出して、安倍晋三はあっけなく法案の改正案提出断念に追い込まれたのだった。

 だが今回はそれもない。前回から今回までの間に、2度政権交代があって、そのたびに(つまり民主党への政権交代時も含めて)「官邸主導」が強まり、その結果自民党内から高プロを見送るべきだという反対意見は出なくなった。また世論の反発も弱く、5月に入ってから(連休直後にはよくあることとはいえ)内閣支持率がわずかながら上昇するありさまだった。

 それにも増して違ったのは野党の態度だ。私が一番呆れたのは、今回の「働かせ方改革」法案強行採決の直前に共産党の志位和夫が上げたツイートだった。

https://twitter.com/shiikazuo/status/999598901098246144

「小泉元首相、池田氏にエール」 小泉純一郎元首相からの嬉しいエールです! 今日から開始された新潟県知事選挙! 「原発ゼロ」の声を新潟から発信しよう! 私も2日には応援にうかがいます!


 前述のように、小泉政権時代に派遣労働が製造業に解禁になった。これと、派遣労働の対象を一部限定から原則容認へと変えた1999年(小渕政権時代)の二度の法改正が、派遣労働による貧困を招く元凶となった。

 小泉純一郎は、それにとどまらず竹中平蔵と組んで新自由主義の悪政を敷いた。なんと言っても「格差のどこが悪いんですか」と国会の答弁で言い放った男だ。そんな小泉が新潟県知事で「野党共闘」の候補を応援すると言って狂喜する共産党の委員長。これも11年前には考えられなかった光景だ。

 そして、この志位のツイートに「いいね!」をつけた人間がこの記事を書いている時点で1,345人もいる。どうしようもない。これでは「高プロ」が易々と国会を通るはずだ。

 共産党は、今回の「働かせ方改革」法案の審議に関連して、国民民主党、立憲民主党と競うように労働基準法の改正案を出した。残業時間の上限は月45時間、年間360時間というリーズナブルなものだった。これと比べると立民の案では80時間、国民の案では100時間だが、立民の案だと1日平均4時間、国民の案だと同5時間残業させても合法になってしまう。とうてい労働者の側に立った方改正案とは言い難いものだ。それに比べて共産党の案はもっともすぐれている。

 また、同党の機関紙『しんぶん赤旗』の経済面には、欧米では労働生産性と賃金がセットで上昇しているのに対し、日本では、生産性アップの果実が労働者に還元されておらず、大企業の内部留保と高額の役員報酬に消えてしまっていることを指摘する記事が、それを一目瞭然で示すグラフとともに掲載されたという。これは、共産党系の「カクサン部長」氏のツイート(下記URL)に示されている。
https://twitter.com/kakusanbuchoo/status/999607445126172673

 こうしたせっかくの下部の活動をぶち壊しにしているのが、小泉純一郎の新潟県知事選応援に狂喜し、昨年秋には希望の党設立に小沢一郎が関与したことを不問に付した上、岩手3区で小沢を支援までさせた志位執行部だというほかない。

 これは、土台と上部構造とが合致していない状態にしか私は見えないが、このように土台と乖離した上部構造を守っているのが「民主集中制」なのではないか。強い疑問を感じる。

 もちろん、問題は共産党だけにあるのではない。微温的な労働基準法改正案しか出せなかった立憲民主党や国民民主党なども強く批判されるべきだし、与党でも25年前に裁量労働制についての質問をした「石田(祝)委員」というのは、現在も公明党衆院議員を務める石田祝稔のことではないだろうか(議事録の一番最初にフルネームが記載されている)。その石田は、今後行われる衆院本会議での採決では間違いなく法案に賛成票を投じるはずだ。

 自民党に至ってはもう論外で、委員会採決の時にぴょんぴょん跳び跳ねながら両手を振り上げて議員の規律を促すなど、軽薄に喜んでいた堀内詔子という議員は、希望の党から立候補して落選した小沢一郎系の元衆院議員・木内孝胤のさらに上を行く、究極の超エスタブリッシュメント階級の世襲議員だ。なんと、明治の元勲・大久保利通から数えて6代目の人で、係累や配偶者には歴代のエスタブリッシュメントたちが目白押しだ。山梨の選挙民は、よくこんな人に投票したものだと呆れ返る。

 この堀内詔子のような議員を抱えた「階級政党」たる自民党がゴリ押しした「働かせ方改革」法案によって日本の労働者はますます疲弊し、国力は衰える一方だ。深い絶望感を抱かずにはいられない。
 最近は月1回の更新になってしまったこのブログだが、今日(4月16日)でブログ開設からまる12年になり、本エントリで1500番目の記事になる(但し公開後に削除した欠番が14件ある)。最初の記事は2006年4月9日付だが、書き始めて1週間後の4月16日に公開した。

 これを機に、今後のこのブログについての心づもりを書いておくと、このまままばらな更新をしばらく続けたあと、記事番号1515番、つまり本エントリのあと15番目のエントリを最後の記事にして、更新を停止しようと思っている。理由はまあ気力と体力の限界と言っておこうか。

 せめてそれまでに安倍政権が倒れてくれるのを願うばかりだ。開設時の記事は安倍晋三どころか政治とは何の関係もないが、それはウォーミングアップに過ぎず、いつかタイミングを見て安倍晋三批判を始めようと思っていた。当時、ライブドア事件への関与が疑われながら、前原誠司が代表を務めていた頃の民主党が犯した「偽メール事件」の大失策によって、阻止できるだろうと思っていた安倍晋三の総理大臣就任が実現してしまいそうな情勢だったが、それが我慢ならなくなって、やっと重い腰を上げたのだった。

 それから12年。安倍晋三はいったんは総理大臣になったものの、その1年後には惨めな政権投げ出しに終わった。そこまでは良かった。しかし、そのあとがいけなかった。民主党への政権交代は実現したものの、民主党政権は党内抗争が国民に呆れられて自滅し、安倍晋三が政権の座に返り咲いた。そして今度は悪夢のような独裁政治を5年以上も続けている。

 本ブログ運営で大きな躓きになったのは、2011年4月のFC2のサーバートラブルだった。それは東日本大震災と東電原発事故の翌月に起きた。それも全部のサーバーだけではなく、本ブログが利用している "blog63" だけだったかほかの一部のサーバーにもトラブルがあったかは忘れたが、FC2の中でもごく一部のブログだけが被害を蒙った。FC2の対応も良くなく、それでなくても前年の2010年には既にこのブログとはてなに開設している『kojitakenの日記』のアクセス数がほぼ同じくらいなっていたので、サーバートラブル後は徐々に重心をはてなの方に移していった。

 以後、本ブログの公開頻度もアクセス数も年々減少して今に至るのだが、実を言えば数年前から着地点を模索していた。しかし安倍晋三の悪政が延々と続いている時にブログを閉じる気にはならず、せめて記事番号1500番までは続けようと思っていた。1500番が近づいてくると、削除した14件を除いて生きている記事が1500件を超えたら更新を止めようと思い直した。1515番目の記事で、生きている記事が1501件になる。

 そうこうしてるうちに、「一強」と言われた安倍政権が揺らいできた。世論調査に見られる支持率は、おかしいものをおかしいと思う能力を失った3分の1ほどの日本国民の支持がすっかり「岩盤化」してしまったためなかなか下落しないのだが、昨日(4/15)のTBSテレビ「サンデーモーニング」で田中秀征が言っていた通り「統治機構が溶解」してしまっている。

 2012年に戦後日本の「崩壊の時代」の始まりを予言したのは坂野潤治だったが、「二度目は笑劇として繰り返される歴史」は、固体が粉々に砕ける崩壊というより、溶けてしまう「溶解」の方が実感に合うかもしれない。「ようかい」という言葉は、安倍晋三の母方の祖父・岸信介を形容するのに用いられた「妖怪」に通じるものがある。あるいは今は「妖怪の時代」というべきかもしれない。

 先週は「愛媛文書」が話題になったが、愛媛県知事の中村時広(日本新党・新進党の衆院議員を1期務めた)は愛媛県の職員を守る発言をしたが、これが組織の長の普通のあり方だ。しかるに、安倍晋三は官僚に責任を押しつけて逃げ回りながら厚顔無恥にも「膿を出す」などと口にする。モラルもへったくれもない。膿は安倍自身じゃないか、と思わない人がいる方が私には信じられないのだが、安倍内閣支持率は未だに3割前後を保っている。こんな現状には「崩壊の時代」よりも「妖怪の時代」という方が適切ではなかろうか。

 せめて、あと15件の記事を公開するまでに、「妖怪」の「溶解」、すなわち安倍政権の終わりが実現しますように。
 1か月ぶりの更新になる。

 前回はちょうど1か月前の公開で、記事のタイトルは「経営者が強く要望する裁量労働制は窮乏と過労死を招く制度」だった。

 それから1か月、安倍政権をめぐっていろいろなことがあった。

 まず、安倍政権は裁量労働制下で働く労働者の労働時間に関するデータ捏造によって浴びた批判をかわすために、一連の「働かせ方改革」法案から裁量動労制の対象範囲拡大を定めた法案のみ国会への提出を断念した。だが、「残業代ゼロ法案」として、裁量労働制のデータ捏造が問題になる以前にはもっとも強く批判されてきた「高度プロフェッショナル」法案は押し通すつもりらしい。

 私がもっとも危険だと思ったのは、安倍政権が裁量労働制対象範囲拡大の法案提出を断念した直後に、自民党参院議員の丸川珠代(元テレビ朝日アナウンサー)が国会の質問で「悪いのは厚労省。それを安倍総理が大英断で糺してくださった」などと発言したことだった。

 年々強まる安倍晋三への個人崇拝だが、ここまでエスカレートしたかと暗澹たる気分になった。私が連想したのは北朝鮮ではなく、政権崩壊末期に個人崇拝ムードが極限にまで高まった後、一転して急速に崩壊した1989年のルーマニア・チャウシェスク政権だった。同年10月頃、他の東欧諸国がみな共産党の一党独裁体制瓦解に突き進んでいるのに、ルーマニアでは逆にチャウシェスクへの個人崇拝が強まっていることを報じた朝日新聞の記事が今も忘れられない。その2か月後の1989年12月末、ニコラエ・チャウシェスクと、昨年来しばしば安倍昭恵がなぞらえられるエレナ・チャウシェスクの夫妻が捕縛され、即席裁判で夫妻の死刑を宣告されたあと直ちに銃殺されてルーマニアの共産党独裁政権が終わったのだった。

 ここでも「悲劇は笑劇として繰り返される」のであろうか、丸川珠代の安倍晋三個人崇拝質問が国会で飛び出した3月1日の翌日である2日付朝日新聞1面トップに、森友学園問題をめぐる財務省の文書「書き換え」をスクープした記事が掲載された。当初「書き換え」を安倍政権も財務省も否定していたが、おそらく大阪地検特捜部のリークを受けたのであろう朝日は動かぬ証拠をつかんでいるとみえ、財務省は12日に「書き換え」を認める事態に追い込まれた。明らかになったのは「書き換え」などという価値中立的な言葉で表現されるべきものではなかったため、たとえば朝日新聞では13日付紙面からそれまでの「書き換え」から「改ざん」(私自身は原則として「改竄」と漢字表記するが、引用文はその限りではない)へと用語を変えた。蛇足だが、この用語の変更はテレビ朝日が12日午後にいち早く行い(朝日新聞の夕刊やTBSは12日の段階ではまだ「書き換え」だった)、13日に朝日・毎日両紙やTBSなどがそれに追随した。あの産経ですらだいぶ遅くなってから「書き換え」を「改ざん」に(しぶしぶ?)書き換えたが、この記事を書いている26日現在、主要メディアで唯一「書き換え」に固執しているのが読売新聞だ。読売は、日本でもっとも悪質な御用メディアというほかない。

 これはまさに民主主義の根幹に関わる問題だ。旧ソ連でさえやらなかったと言われる文書改竄だが、実は日本では昔から結構この悪弊が横行していた。たとえば、やはり安倍晋三にたとえられる昭和初期の総理大臣・田中義一は、軍人時代に日露戦争開戦へと導くために、ロシアと日本の軍事力に関する参謀本部のデータを改竄し、日本の軍事力がロシアを上回るように見せかけてまんまと日露戦争開戦を実現させたという。こうしたことの積み重ねが、最終的に1945年の敗戦を招いた。

 今、日本国民に問われているのは、おかしいことをおかしいと認識できるかどうかだ。それができるのであれば安倍政権を退陣に追い込めるだろうし、もし仮に近い将来に政権を退陣に追い込むことができないのであれば、それは日本国民がおかしいことをおかしいと認識できなくなるまでに劣化してしまっていることの証明になる。

 今後安倍政権が倒れる要因としては、貿易問題で突如日本に向かって牙を剥きだしてきたかに見える米トランプ政権の件もある。先週話題になったのはトランプの下記の発言だった。以下時事通信の23日付記事(下記URL)を引用する。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018032300576&g=use

安倍首相は「出し抜いて笑み」=トランプ氏、対日貿易に不満

 【ワシントン時事】「安倍晋三首相と話をすると、ほほ笑んでいる。『こんなに長い間、米国を出し抜くことができたとは信じられない』という笑みだ」。トランプ米大統領は22日、ホワイトハウスでの会合で首相についてこう語り、対日貿易赤字への不満をあらわにした。

 トランプ氏は「偉大な男で、私の友人」と前置きして、首相の笑顔を解説した。その上で「こういった時代はもう終わりだ」と述べ、「互恵的」な関係を求める考えを強調した。

(時事通信 2018/03/23-11:01)


 トランプ政権の動きで言えば、同政権が米朝対話へと動いたことで、安倍政権もそれに追随せざるを得なくなった件もある。つまり安倍晋三はこれまでのような国内世論向けの「北朝鮮カード」を切れなくなった。

 このように、政権維持に突如として困難が多方面から現れて視界不良となった安倍晋三だが、この男にとって何よりも大事な改憲だけは絶対に譲らない構えを見せている。以下、朝日新聞の22日付記事(下記URL)を引用する。
https://www.asahi.com/articles/ASL3Q6FLPL3QUTFK02B.html

自民の9条改憲、首相案で決着 2項維持し自衛隊を明記
二階堂勇
2018年3月22日21時05分

 自民党の憲法改正推進本部は22日、安倍晋三首相の9条改正案に沿って、戦力不保持を定める2項を維持して「自衛隊」を明記する方向で取りまとめる方針を決めた。新たに9条の2を設け、「(2項は)必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織」と位置づけて自衛隊を保持する案が軸となる。

 今後の対応一任を受けた細田博之本部長は25日の党大会での9条の条文案提示は見送り、党大会以降、最終的な条文案を作成する。

 推進本部は22日の全体会合で、2項維持・自衛隊明記の二つの修正案を提示。前回示された2項維持案では、自衛隊を「必要最小限度の実力組織」と定義したが、修正案では削除した。自衛隊が2項で保持を禁じる「戦力」に当たらないとする政府解釈を明記し、世論や他党の反発を和らげることを狙っていたが、自民党内から異論が出ていた。

 この日は、修正案を中心に首相案を支持する意見が多数を占めた。2項削除論を展開する石破茂・元幹事長らから意見集約に反対する意見も出たが、細田氏が一任で押し切った。執行部の説明によると、修正前の2項維持案と二つの修正案のうち、どれを選ぶかに対応が一任された。細田氏は会合後、記者団に「必要な自衛の措置をとることを妨げず」とした修正案を採用する意向を表明した。

 9条改正案の一任を受けて、参院選の「合区」解消など▽大規模災害時に政府に権限を集中したり、国会議員の任期特例を書き込んだりする緊急事態条項▽「教育無償化」を含めた自民党の「改憲4項目」の条文化にはめどが立った形となった。今後は、連立与党の公明党との協議や国会の憲法審査会での議論を目指すが、各党には改憲4項目に対する反対論が根強く、国会での発議が見通せない状況は解消されていない。(二階堂勇)

自民党憲法改正推進本部の執行部が有力と考える案

 9条の2 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。

 2 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

(朝日新聞デジタルより)


 ここまで日本をめちゃくちゃにした安倍晋三の政権下での改憲など、絶対に許してはならない。

 だが、この1か月で安倍晋三は「一強」のやりたい放題ができる状態からはかなり後退したとはいえ、まだ土俵中央に押し返した程度の段階に過ぎない。

 闘いはこれからが正念場だ。
 平昌冬季五輪が終わった。振り返ると、子どもの頃はテレビの五輪中継に熱中していたが(特に1972年の札幌冬季五輪)、年々五輪への興味が減退してきて、今回は競技の生中継を見たのは女子ジャンプで最後の2人、銀メダルを獲ったアルトハウス選手(ドイツ)と金メダルのルンビ選手(ノルウェー)のジャンプを見ただけだった(本当は高梨沙羅選手の2回目のジャンプを見ようと思ってテレビをつけたのだが、飛び終えた直後だった)。

 しかし、8年前、2010年のバンクーバー五輪直前に放送された報道ステーションの特集が今も印象に残る小平奈緒選手のスピードスケート女子500mの金メダルは良かった。銀メダルの韓国・李相花選手との友情は、今大会でもっとも印象的なシーンとの世評が高い。前記2010年の報ステの特集でも、小平選手は「三ヶ国語で、韓国語と中国語と日本語で、調子いいねとか言い合ったりして」中国や韓国の選手とエールを交換していることが紹介されていたが、最近では中国のメディアから「中国語力」を絶賛されているとの記事もある。

 一時は開会式の出席に難色を示していた安倍晋三とはあまりにも好対照だが、その安倍は小平選手の金メダル獲得が決まるや否や、さっそく「首相官邸」のTwitterのサイトから、日の丸の旗を2本も手にして自らの馬鹿面を晒した気持ちの悪いツイートを発した(下記URL=閲覧注意)。
https://twitter.com/kantei/status/965206781700931584

 小平選手の優勝を称えるツイートなのに、安倍はなぜか小平選手の画像ではなく、自らの馬鹿面の画像を晒した。海外の首脳にも五輪で好成績を残した自国代表選手を称えるツイートを発信した人は多いが、彼らは皆一様に選手の画像を添付していた。しかし、2016年のリオデジャネイロ五輪の閉会式で、マリオブラザーズのマリオに扮する売名行為を平然と行った安倍は、今回も厚顔無恥の挙に出た(さすがにこのツイートを批判されたあとに金メダルを獲った選手を称えるツイートでは選手の画像を添付したようだが)。

 しかし、小平選手のような選手が政権の宣伝に狙われ易いのは間違いないだろうし、だからこそ官邸(安倍)は小平選手に国民栄誉賞を授与しようと画策しているようだ。実際、スポーツ界の体質から言って、また橋本聖子の悪例を思い出しても、小平選手が安倍政権や自民党に将来ともなびかないとは残念ながら断言できない。小平選手が誤りを犯さないことを願うばかりだ。

 以上は長くなったが前振りでここからが本論。安倍は冬季五輪のタイミングに「働き方改革」の法案の審議をぶつけてきて、人々が五輪にかまけている隙にさっさと成立させて、春からはいよいよ安倍長年の野望である改憲に向けて全力を傾注するつもりだったに違いない。しかし、国会の答弁で安倍が、裁量労働制下で働く人の労働時間が一般労働者と比較して短いとのデータが出ているかのような虚偽答弁を行ったことが問題化し、報道でも連日取り上げられるようになった。

 既に安倍は答弁の撤回と謝罪を行っているが、それでも法案は成立させるとかいうわけのわからないことを言っている。これも問題だが、そもそも裁量労働制の問題が国民の間でほとんど知られていないように見受けられる。これが現時点で最大の問題だ。

 たとえば、内田樹の人脈に属する小田嶋隆などは、「一介の労働者に過ぎない多くの日本人が、なぜなのか、国策や日本経済を語る段になると「経営者目線」で自分たちの暮らしている社会を上から分析しにかかっている」などとしたり顔で論評しているが、この小田嶋の仮説は正しくないと私は思う。そうではなく、単に世の人々が裁量労働制の問題点を知らないだけだ。私はもう四半世紀前の1993年、その頃は経団連の中核をなす大企業に勤務していたのだが、実際に半年間だけ裁量労働制下で働いた経験があるからわかる。

 たとえば、昨日(2/25)放送されたTBSの「サンデーモーニング」を見ていても、コメンテーターは誰もわかってないなあと思った。テレビでは初めて見た朝日新聞の高橋純子記者は、「人の命がかかっている大事な法案なのに何故急いでやらなければならないのか。しかも裏付けとなるデータが不適切だったと分かったのだから顔を洗って出直してもらうしかない」とコメントした。仰ることはその通りだが、高橋記者も法案の問題点そのものは指摘しなかった。そこにぬるさを感じた。関口宏はもっとダメで、裁量労働制について「いいところもあるけど問題もある」みたいな言い方だったし、サッカーが専門の中西哲生に至っては論外で、「データは不適切だが、野党は鬼の首を取ったように色んなことを言ってる。大事なことは裁量労働制を良いものにし働き方を良くし日本を良くすること。いつも対立構図にする野党に違和感を感じる」と抜かしていた。これまでは中西に右翼のイメージはほとんどなかったが、時流に迎合して野党攻撃を始めるべく「転向」したのかもしれない。事実、中西は早速ネトウヨの絶賛を受けている。

 いずれにせよ、ぬるい高橋純子の発言、輪をかけてぬるい関口宏の発言と続いたあと、野党を攻撃して間接的に安倍政権を援護射撃する中西哲生の論外の発言に接して、「リベラル」のはずのこの番組でもこの程度か、やはり裁量労働制の問題は全然知られていないんだあと長嘆息したのだった。

 裁量労働制については、遠い昔の四半世紀前に半年だけ経験した私のような人間ではなく、最近裁量労働制を経験した方による下記のブログ記事にリンクを張っておく。『脱社畜ブログ』の2月24日のエントリ「裁量労働制になったら、働き方は何も変わらずに残業代だけ減った話」だが、このタイトルは四半世紀前の私の経験そのものだ。
http://dennou-kurage.hatenablog.com/entry/2018/02/24/155303

 以下が今回の記事の核心部になる。今回、私が一番感心したのは、『kojitakenの日記』でも紹介した今野晴貴氏の一連(4件)のツイートだ。

 この中では、4件目にあたる下記ツイート(下記URL)が多くリツイートされているようだ。以下引用する。
https://twitter.com/konno_haruki/status/966590331197116416

裁量労働性の規制緩和「対岸の火事」だと思っている方も多いと思うが、財界は以前から、ホワイトカラーの大半に適用できるようにすべきだと主張している。裁量労働性が全面規制緩和されれば、ブラック企業の「使い潰し」がますます加速し、歯止めがかからなくなるだろう。もちろん、過労死も増加する。


 私が感心したのは、今野氏が2件目のツイート(下記URL)で1994年に出された日経連(当時)の要求を紹介していたことだ。再び引用する。
https://twitter.com/konno_haruki/status/966589732497997824

1994年に法改正を要求して出された旧日経連の「裁量労働制の見直しについて(意見)」では、「就業者全体のほぼ半数に達している。こうしたホワイトカラーの相当部分は、自己の判断で職務を行う「裁量労働者」である」としている。つまりは、ほとんどの労働者が「裁量労働」にすべきだということだ。


 当時の日経連ですぐ思い出されるのが、1995年に出された「新時代の『日本的経営』」だが、これらはいずれも90年代前半のバブル経済崩壊を受けて始まった流れだ。

 つまり、バブル経済の崩壊によって、企業がそれまでのように利益を上げられなくなったため、労働者の賃金を下げようと画策した。裁量労働制はその一つの手段だ。日経連が法改正を要求して意見書を出したのは今野氏が指摘するように1994年だが、実際には各企業において裁量労働制を導入する試みはその少し前から始まっていた。現に私が裁量労働制下で働いたのは1993年だ。

 当時、多くの企業で人事制度の見直しが行われ、成果主義が謳われたりしたが、特に成果主義に力を入れた富士通で、人事制度改革が大失敗に終わったばかりか、赤字を出しても当時の富士通社長・秋草直之が居座るばかりか、「業績が悪いのは従業員が働かないからだ」(2001年)と暴言を吐くなどの破廉恥な振る舞いに出て(つまり、秋草自身には成果主義は適用されなかったわけだ!)、世の指弾と失笑を買った。しかし現在はその当時よりもさらに問題は深刻で、当時の富士通よりもさらに悪質な、いわゆる「ブラック企業」が日本中にはびこっている。

 しかし、バブル崩壊に先立つ1980年代の「労働界の右翼的再編」の悪弊もあって、賃下げを強行する使用者に対して労働者はなすすべなしの状態が長年続いた。その結果が日本経済の没落だ。安倍晋三が入れ込んだものの平昌五輪で赤恥を晒した「下町ボブスレー」は日本のものづくりの現状を象徴している。

 その没落の進行をさらに早め、労働者を窮乏と過労死に追い込む制度、それが裁量労働制だ。「定額働かせ放題」とは、この制度の本質をぴたり言い当てた適切な言葉といえる。この制度は、バブル崩壊後の日本を長期低落させた悪しき労働政策を、適用業種を広げることによってさらに広めようとするものであって、絶対に成立させてはならない論外の法案だ。まだ国会に法案が提出されていない現段階においては、法案の提出を許さない闘いが、野党にも労働界にも強く求められる。また、「リベラル」が(小田嶋隆のように)「法案は、間違いなく成立する。」などとほざいて諦めムードを醸成させることは断じて許されない。

 なお、2006〜07年のホワイトカラーエグゼンプション(WCE)に続いて今回の裁量労働制と、安倍政権が他の政権よりもとりわけ使用者側に立った労働政策を法制化することに熱心なのは、この政権が「経産省政権」と言われていることと深い関係があるとみるべきだろう。おそらく安倍晋三自身は改憲には熱心であっても労働政策にはさして関心があるとは思われないので、経産官僚と大企業経営陣の思惑通りに亡国の法案が導入されようとしているのが現状だ。

 それにしても、バブル崩壊直後に始められ、日本経済を長期低落させてきた悪しき労働政策の流れが、四半世紀以上経った今も惰性で続いているとは、人の世に働く惰性力の強さ、恐ろしさを改めて痛感する。1993年当時には若手社員だった私も、その後二度の転職を経てもう初老だが、私よりもはるか若くて将来性のある人たちが今後裁量労働制下で苦しめられるのは絶対に看過できない。そう強く思う。

 最後に、『広島瀬戸内新聞ニュース』の昨日(2/25)の記事(下記URL)を引用して終わる。短く簡潔な記事だが、本当にその通りだと強く思った。
https://hiroseto.exblog.jp/27102781/

「働き方改革」関連法案は、これは提出そのものを断念させるしかないですね。
その一言に尽きます。
ハッキリ言ってしまうと、労働組合も野党も、この法案を通してしまえば鼎の軽重を問われます。
日本中の職場は大変なことになる。裁量労働制そのものが、経営側から出てきた発想であるということをきちんと思い起こさないといけません。

 平昌冬季五輪が開幕したが、五輪に合わせて韓国と北朝鮮の合同チームが結成されるなど、南北対話の機運が高まっている。

 大いに結構なことだとしか私には思えないのだが、不思議なのは日本のマスメディアで、いわゆる「保守メディア」(実際には産経やNHKなど、もはや右翼メディアあるいは国策メディアとしかいいようがない)ばかりか、朝日新聞を筆頭とする「リベラル」系メディアまでもが、今年初め頃から南北の接近や対話に「警戒」する報道ばかりを行っている。日本の「リベラル」メディアは、昔から朝日新聞の腰が砕けると総崩れになる悪弊があるが、たとえば最近の毎日新聞やTBSやテレビ朝日などからは「惨状」という言葉しか思い浮かばない。毎週見ているTBSの日曜朝の番組『サンデーモーニング』も右翼的なコメンテーターが占める比率が増え、司会の関口宏も彼らに迎合するなど、番組の内容が大きく右傾化している。

 まさに安倍晋三の「メディア征圧」完了せり、の観があるが、何よりもひどいのはその安倍を筆頭とする日本の右翼政治家たちの言動であって、たとえば安倍は平昌五輪の開会式への出席を渋ったし、再来年の五輪開催都市であるはずの東京都知事・小池百合子に至っては開会式に出席しなかった。

 思えば、この小池が政権奪取の野望に燃え、昨年の日本の政治を攪乱した。小池が選挙戦中だけ代表を務めた「日本ファーストの会」は昨年夏の都議選に圧勝したが、小池が国政に進出しようとして結成した「希望の党」は野党第一党の民進党の分裂を引き起こしたあげくに惨敗し、以後「安倍一強」体制はますます強まったのだった。

 その過程において、「リベラル」の一部はあろうことか小池百合子に「打倒安倍」の夢を託した。マスメディアでは、「民進党は『野党共闘』で左に寄りすぎたから支持を失ったのだ。だから『真ん中』の小池都知事が支持されるのだ」などという誤った認識が平然と流布していた。毎日新聞の与良正男が署名記事で上記の主張を平然と書いたことを知った時、私は唖然として、日本の「リベラル」はもうどうしようもないところにまできてしまったと思った。「リベラル」系大新聞の幹部記者がこのていたらくだから、市井の「リベラル」(実質的には都会保守)のブロガーが「小池都知事と民進党と公明党にちょっとワクワク」してしまったのも無理はなかったかもしれない。

 ともあれ、そんな「百合子の野望」が、「今なら勝てる」と理不尽な衆院解散に踏み切った安倍晋三によって木っ端微塵に砕け散って以来、「リベラル」系メディアは茫然自失の醜態を呈しているように私には見える。その表れが、安倍晋三やその政権に対して言うべきことを何も言えない現在の惨状がある。

 たとえばしぶしぶ平昌五輪の開会式に出席した安倍は、韓国の文在寅大統領と会談してとんでもない内政干渉をやらかし、文大統領の不興を買った。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2679165010022018EA3000/

韓国大統領、安倍首相に不快感 五輪後の米韓演習要請

 【平昌=恩地洋介】9日に韓国の平昌で開いた日韓首脳会談で、安倍晋三首相が文在寅(ムン・ジェイン)大統領に米韓合同軍事演習を冬季五輪後に予定通り実施するよう求め、文氏が不快感を示していたことが分かった。韓国大統領府と日本政府双方の関係者が明らかにした。

 首相は会談で、北朝鮮への対応を巡って文氏に「五輪後が正念場だ。米韓合同軍事演習を延期する段階ではない。演習は予定通り進めることが重要だ」と語った。これに文氏は「韓国の主権の問題であり、内政に関する問題だ。首相がこの問題を直接取り上げるのは困る」と答えたという。

 会談では北朝鮮への対応を巡る両首脳の温度差が浮き彫りとなった。日本側によると首相は文氏を「北朝鮮のほほ笑み外交に目を奪われてはならない。対話のための対話では意味がない」などとけん制。一方、韓国側の説明によると文氏は「日本も積極的に対話に乗り出すことを願う」と語っていた。

(日本経済新聞 2018/2/10 20:41)


 本来こんな件は、「文氏が不快感を示していたことが分かった」などと「客観報道」スタイルで書くことではなく、日本のメディアが日本国首相・安倍晋三による内政干渉を指摘し、安倍を批判しなければならないはずだ。だが、たとえば毎日新聞などは、文大統領と安倍の会談より以前の8日付の記事ではあるが、「対北朝鮮 日米、韓国へ結束求め 「ほほ笑み外交」警戒 安倍首相・ペンス副大統領」などという見出しをつけて、アベさまにひれ伏している。開いた口がふさがらない。

 報道だけではなくアカデミズムの世界もひどい。現在世間を騒がせているのは、東京大学に籍を置く三浦瑠麗なる「国際政治学者」だが、この三浦が11日にフジテレビの「ワイドナショー」なるワイドショーに出演し、下記のトンデモ発言を行った。以下ハフィントンポスト日本版の記事から引用する。
http://www.huffingtonpost.jp/2018/02/12/ruri-miura_a_23359021/

(前略)番組は、核・ミサイル開発問題でアメリカや韓国、日本と対立し続ける北朝鮮が選手団を派遣したことで、オリンピックが政治外交の舞台になっているなどと紹介した。

そうした流れの中で、三浦氏は朝鮮半島における安全保障問題に触れ、戦争によって北朝鮮の指導者・金正恩氏が死亡した場合、ソウルや東京、大阪に潜む北朝鮮のテロリストたちが活動し始めると指摘。中でも大阪について「今ちょっとやばいって言われていて」などと、潜伏者が多数いるとも受け取れる発言をした。

番組でのやり取りは次の通り(敬称略)。

三浦 もし、アメリカが北朝鮮に核を使ったら、アメリカは大丈夫でもわれわれは反撃されそうじゃないですか。実際に戦争が始まったら、テロリストが仮に金正恩さんが殺されても、スリーパーセルと言われて、もう指導者が死んだっていうのがわかったら、もう一切外部との連絡を断って都市で動き始める、スリーパーセルっていうのが活動すると言われているんですよ。

東野 普段眠っている、暗殺部隊みたいな?

三浦 テロリスト分子がいるわけですよ。それがソウルでも、東京でも、もちろん大阪でも。今ちょっと大阪やばいって言われていて。

松本 潜んでるってことですか?

三浦 潜んでます。というのは、いざと言うときに最後のバックアップなんですよ。

三浦 そうしたら、首都攻撃するよりかは、他の大都市が狙われる可能性もあるので、東京じゃないからっていうふうに安心はできない、というのがあるので、正直われわれとしては核だろうがなんだろうが、戦争してほしくないんですよ。アメリカに。

こうした三浦氏の発言に対し、Twitterを中心に反発の声が上がった。「根拠を示すべき」「根拠がない」と発言内容の信憑性を疑う投稿が相次いだ。また、三浦氏が直接在日コリアンに言及する場面はなかったが、大阪には在日コリアンが多く暮らすことから、彼らに対する差別や偏見を助長するなどと指摘するツイートもあった。(後略)

(ハフィントンポスト日本版 2018年02月12日 18時47分 JST)


 こんなのが東大のセンセイ(講師)だというのだから、日本のアカデミズムの劣化には目も当てられない。もっとも日本の「リベラル」は、そんな東大が排出した右翼学者・西部邁が自殺した時、西部の核武装論を棚に上げて西部の冥福を祈りまくったていたらくだから問題外もいいところだが。

 かくして安倍晋三は一強体制で「わが世の春」を謳歌しているが、そんな安倍政権が長年続き、アベさまを賛美するネトウヨが「日本スゴイ」を連呼しているうちに、「スゴイ」はずの日本の町工場がとんだ失態を晒した。それが「下町ボブスレー」が平昌五輪のジャマイカチームに採用を取り消された一件だ。これについては下記記事にリンクを張っておく。『kojitakenの日記』では同じ件に関するリテラの記事を紹介したが、リテラよりこちらの記事の方が良い。「下町ボブスレーという安倍晋三案件について」と題された2月11日付のはてなブログの記事(下記URL)だ。
http://www.po-jama-people.info/entry/2018/02/11/120732

 「下町のスゴイ工場」とは名ばかりで、実際には大企業の系列会社や東大のセンセイが名を連ね、安倍晋三は第2次内閣発足直後の2013年の施政方針演説で早くも「下町ボブスレー」を取り上げ(このことから、同社の経営者が不遇時代の安倍晋三を応援するゴリゴリの右翼人士であることが容易に推測される)、以後安倍と経産省の肝煎りで進められたプロジェクトだ。しかしその成果はといえば、ソチ五輪でも平昌五輪でも日本チームに採用してもらえず、やむなくジャマイカに(上から目線で)押しつけたものの、ラトビア製の正真正銘の「下町の工場」の製品に敗れるや、フジテレビなどの右翼メディアが、ジャマイカには契約の概念がないのか、と煽り、ネトウヨはジャマイカ非難の大合唱を繰り広げた。それがこれまでの経緯だ。

 これほどの「国辱」はあったものではあるまい。この件が示すのは、日本の技術力の低下というよりは日本の政治の劣化だ。技術や品質の優劣より、アベさまとの距離の遠近によって予算が傾斜配分される。こんな理不尽な話はない。

 第2次安倍内閣発足で戦後日本の「崩壊の時代」が始まったと言ったのは坂野潤治だが、その「崩壊」とは何も戦争に負けるなどといった劇的な出来事によってではなく、「下町ボブスレー」のような喜劇的な出来事の積み重ねで徐々に衰退していく形で崩壊していくものなのだろう。それを食い止めるのは、まず安倍政権を倒さなければならないが、現在の日本国民からはもはやその気力は失われつつあるようだ。
 今年の政治で唯一の収穫といえるのは小池百合子のバブル破裂だ、とはもう何度も書いたが、逆に最悪だったのは安倍晋三政権を生き延びさせ、第4次内閣の発足を許してしまったことだった。

 年の半ば、共謀罪法案と森友・加計問題で批判を浴びた安倍は、7月の都議選で自民党が大敗を喫したこともあって政権支持率が毎日新聞の調査で26%にまで落ちたが、その後V字回復した。

 安倍が生き延びた理由として、少なからぬ政権批判派が愚かにも「期待」なり「ワクワク」なりしてしまった小池百合子(私がこの政治家を肯定的に評価したことは一度もない)がその正体を露呈したため、「政権批判票」が(一部は立憲民主党に流れたものの)「行き場を失った」とか「自民党に回帰した」などというバカバカしい解釈も可能だし、それは全くの的外れでもないとは思う。

 しかし、何よりも良くなかったのは、早々と通常国会を閉めて議論さえなくしてしまえば批判を浴びないし、批判を浴びなければ内閣支持率も下がらないだろうとの安倍の思惑通りに世論が動いてしまったことだ。

 この悪影響は測り知れない。実際、安倍は要人を私邸に呼んで政治を行うようになったと言われている。これを「政党政治の崩壊」と私は位置づけている。

 戦前には軍部の影響力が強くなり、政党は軍部に屈従して政党政治が崩壊したが、現在は安倍の影響力が強くなり、政党は安倍に屈従して政党政治が崩壊しつつある。

 こう書くと、野党、特に共産党は安倍に屈従などしていないぞ、との反論を受けるだろう。

 安倍に屈従はしなかった。それはその通りだ。

 しかし、安倍と同様の極右独裁者である小池百合子に対してはどうだったか。「是々非々」とか言って半分屈従していたのではなかったか。

 民進党に至っては、党が小池系の希望の党と非小池系の立憲民主党に割れた。しかも選挙のなかった参院議員と希望にも立民にも行かなかった衆院議員による民進党も残っている。

 立憲民主党が本当に「非小池系」(好ましくは「反小池系」)であれば良いのだが、昨年小池百合子にすり寄った蓮舫が立民入りを希望している。こんなのや山尾志桜里や(まさかとは思うが)原口一博なんかを入党させてしまえば、もはや分裂前の民進党からわずかに極右の連中(長島昭久、細野豪志、前原誠司、松原仁ら)を除いただけの政党に逆戻りするだけだろう。

 そんなことでは、事実上失われてしまったも同然の「政党政治」を「取り戻す」ことはできないと思うのだ。

 来年、2018年は、安倍の野望である改憲を阻止するとともに、政党政治を取り戻す年にしなければならない。

 このブログはもう少しだけ続けます。それでは皆様、良いお年を。
 4週間ぶりの更新になる。盆休みの時期だった先週は最初から休むつもりだったが、その前の2週間は更新しようとして果たせなかった。もう私もいい歳なのだが、思い返せば20年くらい前の方が夏休みは取りやすかった。私は00年代にはずっと西日本(中国・四国)、その前の90年代にはずっと首都圏(横浜市)にいたが、横浜時代の90年代の10年間のうち5年間は8月に北海道へ大型旅行をしていた。それが00年代には長くて3泊の中部山岳行きくらいしかしなくなり、今年に至っては東日本の天候不順のせいもあるが未だに夏休みが取れていなくて仕事に追い回されている。先週など、盆休みの時期にこんなに疲弊したことは長い社会人人生で初めてではないかと思うほど仕事に追われてしまった。

 その間のニュースは、アメリカと北朝鮮の危ない火遊びの話ばかりだった。先週(13日)のTBS『サンデーモーニング』では、安倍晋三側の御用人士である岡本行夫が「北のミサイルが日本の上空を飛び越えて米本土に向かうというのに、日本が(何もしないで)行ってらっしゃいと手を振って見送るわけにはいきませんから」と妄言を発したが、アメリカに向かって発射された北朝鮮のミサイルを日本から迎撃して撃ち落とそうとしても、技術的に言って成功確率などほとんどないだろうとは、多少なりとも迎撃システムについて聞きかじったことのある人なら誰しも思ったことだろう。

 しかし、岡本の発言にはそれ以前の問題があったらしい。『日刊ゲンダイ』で高野孟が下記の指摘をしている。以下引用する。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/211575

(前略)ところが残念なことに、北朝鮮から米本土に向かう大陸間弾道弾は、日本列島はもちろん日本海の上空すら通らない。ミサイルは最短距離を飛ぶので、北朝鮮からほぼ真北に向かって中国ハルビンの東、露ウラジオストクの西の辺りを通り、北極海、カナダ・ハドソン湾の上空を通ってワシントンに到達する。これを日本海に浮かべたイージス艦で横から撃ち落とすというのは全く不可能なのである。グアムに向かうというのであれば、日本の中国・四国地方の上空を通るし、またハワイに向かうというのであれば東北地方の上空を通る。しかし今の日本の感知システムでは、発射から数分後に通過したことを後になって分かるのが精いっぱいで、せいぜいが誤って部品の一部が落ちてきた場合にそれを空中粉砕できるかどうかである。

 私は岡本さんとは3分の1世紀ほど前、彼が外務省北米局安全保障課長の時からの知り合いで、今もあちこちでご一緒することが多いので、こんなことを言うのはイヤなのだが、北朝鮮や中国の“脅威”を強調する安倍政権の立場に寄り添おうとすると、こんな初歩的な間違いを犯すことになるのだろう。

(高野孟「永田町の裏を読む - 米本土に向かうミサイルを日本が打ち落とすという錯誤」、『日刊ゲンダイ』2017年8月17日付より)


 要するに岡本行夫はテレビで安倍政権を擁護するために「見え透いた嘘の宣伝」をやっていたわけだ。日本のテレビ番組で数少ない「リベラル」側の番組と一般には思われている『サンデーモーニング』で明らかに政府側の立場に立った嘘のプロパガンダが行われ、それを私が常日頃からバカにして止まない『日刊ゲンダイ』に、高野孟の署名記事とはいえ指摘されるとはなんというていたらくだろうか。開いた口が塞がらない。

 なお、この件に関しては外務副大臣の佐藤正久も終戦(敗戦)記念日に「日本がミサイルを撃ち落とさないでどうする?」と発言した。

 もちろん、そもそも北朝鮮からグアムに向かって撃たれたミサイルを日本が撃ち落とすことは技術的に不可能だから実際には起こりえないシチュエーションなのだが、岡本や佐藤の真の狙いは、「北朝鮮の脅威」を印象づけて安倍内閣の支持率を引き上げることにあるのだろう。

 盆休みの影響もあって、先々週末にはどのメディアも内閣支持率調査をやらなかったし、先週末も同様だろうが、私は、次に内閣支持率調査結果をメディアが発表する時には、かなりの確率で安倍内閣支持率が大幅に回復しているのはないかと恐れている。というのは、一部の人たちの言説に反して、安倍内閣が支持される主な理由は、その経済政策によるのではなく、外交や安全保障政策によることが調査結果で示されているからだ。北朝鮮のミサイル発射は常に安倍内閣支持率を引き上げる効果を持つ。ましてやこのところテレビのニュースはトランプと金正恩の愚かしいチキンレースの話ばかりだから、さぞ安倍内閣の支持率が上がっているだろうと私は想像するのだ。

 加えて民進党代表選が今日(21日)告示されるが、これも、特に前原誠司が勝った場合は大いに安倍晋三を助けることになるだろう。というのは、前原は野党共闘の見直しを明言しているからだ。「野党共闘を継続するかどうか」が代表選の争点であるかどうかはここにきて急に明白になってきた。テレビ番組の討論で、前原が野党共闘の見直しを、対抗馬の枝野幸男が共闘の継続をそれぞれ明言したからだ。それでなくても、安倍晋三は2014年の衆院選で埼玉5区の開票速報を見ながら「なんだ、枝野は落ちないじゃないか」とヒステリーを起こしたほど枝野を嫌っている(安倍はきっと、側近から「今度の選挙で枝野幸男は危ないですよ」と耳打ちされていたのだろう)。「野党共闘」継続の可否ともども、安倍政権を倒したいならば民進党代表選で前原誠司を選んではならず、(消去法的な意味合いしか認められないとはいえ)枝野幸男に勝たせるほかないと私は考えている。

 しかし、全くだらしがないと思うのは、「リベラル」たちの行動様式だ。右を見て左を見て自分の意見を決める彼らは、「野党共闘」のオピニオンリーダーたちが前原誠司に甘言を弄しているせいか、はたまた彼らのかなりの部分がかつて崇拝していた小沢一郎が影響力を持っている松野頼久グループが前原誠司を推しているせいか、なぜか前原の「野党共闘見直し論」を批判することすらろくすっぽできずにいる。

 いま自分の意見を言わずしていつ言うんだ、仮に現在はあたかも「死に体」であるかのように言われている(私は全くそうは思わないが)安倍晋三が息を吹き返して暗黒時代が本格化したら、言いたいことも言えなくなるぞ、今こそ正念場なのに何を自分の意見を発信するのをためらっているのかと、たまらない苛立たしさを感じる。

 苛立ちの原因はこればかりではない。小池百合子一派に対する「リベラル」たちの反応にも私は大いに苛立つ。このところ、長島昭久、細野豪志、木内孝胤といった、民進党でも札付きの右翼や新自由主義系の国会議員が民進党の離党届を出し、小池ファースト(地域政党の「都民ファーストの会」及び今後間違いなく結成される名称未定の国政政党の総称として以後「小池ファースト」と表記する)入りが確実視されている。このうち細野は民主党政権時代に小沢一郎に接近した人間だし、木内孝胤は他ならぬ小沢グループに属していた人間だ。

 一昨日には、自民党を離党した小池側近の若狭勝が主宰する政治塾の入党希望者に思想調査を行っているらしいことが読売新聞に報じられた。以下引用する。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/20170819-OYT1T50020.html

若狭議員、入塾希望者に「政治志向」テスト

 小池百合子東京都知事に近く、国政新党の年内結成を目指す若狭勝衆院議員(無所属)が、自ら設立した政治塾の入塾希望者向けに、憲法や外交・安全保障などを問う「選抜テスト」を行っている。

 新党が結成されれば、塾生は次期衆院選に出馬する可能性が高く、将来の「党内不一致」の芽を摘む狙いがあるとみられる。

 若狭氏は7日、政治団体「日本ファーストの会」の設立と、政治塾「輝照塾」の開講を発表した。小池氏が事実上率いる地域政党「都民ファーストの会」と連携した国政新党結成を狙う。

 塾は満25歳以上を対象に8月末まで希望者を受け付けている。希望者はインターネット上の「応募フォーム」に回答するほか、必要書類を送る仕組みだ。

(読売新聞 2017年08月19日 11時11分)


 要するに若狭は右翼的な思想信条を持つ者を選抜したいのだ。若狭は民進党きっての右翼議員の一人だった細野豪志とも連絡を密に取り合っているという。そんな若狭が小池百合子の腹心なのだ。

 このことから、小池百合子自身の思想信条が容易に読み取れる。

 世評では小池百合子は「商売右翼」であって、政局次第で右にも左にも動き得る人間だと見ている人もいる。しかし私の意見は違う。

 小池百合子の父・小池勇二郎(故人)は1969年、石原慎太郎に誘われて兵庫2区から衆院選に出馬したが落選した。その「ゆうじろう」という名前に石原が惹かれたのかどうかは定かではないが、政治に夢中になった勇二郎は貿易商の仕事をおろそかにして自らの海社を倒産させてしまい、巨額の借金を背負った小池一家は兵庫県の芦屋から東京の港区に移住したという。

 そんな、石原慎太郎の盟友だった父親の影響を受けた小池百合子は一貫して極右人士であり続けて今に至ると私はみている。おそらくその地金において、小池百合子は前原誠司よりずっと右で、安倍晋三と比較しても一歩も引けを取らない極右人士とみるべきだろう。小池は2009年の「政権交代選挙」で議席が危なくなった時には幸福実現党の選挙協力も受けたほどの人間だ。また側近の野田数(かずさ)が安倍晋三も顔負けの極右であることはよく知られている。そして小池ファーストの国政政党入りが確実視される面々はといえば、前述の若狭勝のほか、長島昭久、渡辺喜美、松沢成文、細野豪志、木内孝胤と、右翼(極右)か、さもなければ強烈な新自由主義者ばかりだ。

 さすがに、少し前まで小池百合子が民進党と連携してくれるのではないかと、私から見ればあり得ない状況の実現を期待して「ワクワク」していた人たちも今やすっかり押し黙ってしまっているが、その「黙って」いることこそ問題なのだ。自らの誤りを誤りと認め、むしろ声を大にして小池ファーストを批判していく姿勢こそ求められるのに、かつて小池を応援したうしろめたさのせいか、それをやらずに安倍政権批判に逃げ込む姿ばかりが目につく。

 沈黙と逃避と言えば、ひところ安倍昭恵とつるんでいたため、森友学園問題の発覚以来安倍政権批判ができなくなって貝になってしまった三宅洋平という人間も思い出される。

 どうしてどいつもこいつもこんな勇気のない人間ばかりなのか。これではいつまで経っても安倍政権を倒すことなどできるものか、と強い憤懣にかられる今日この頃なのである。
 週末(7/22.23)に毎日新聞社が行った世論調査で、安倍内閣支持率が26%を記録した。毎日は、内閣支持率の集計が出た時点で速報をネットに流し、その後記事に分析を追加したようだ。昨日の夕方、『kojitakenの日記』に、分析が追記される前の速報記事を引用したので、この記事ではそれに追記された部分を引用する。
https://mainichi.jp/articles/20170723/k00/00e/010/231000c

(前略)安倍晋三首相の自民党総裁任期が来年9月に終わることを踏まえ、「代わった方がよい」との回答は62%(3月調査は41%)で、3期目も「総裁を続けた方がよい」の23%(同45%)を大きく上回った。(中略)

 首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」による国家戦略特区を利用した獣医学部新設計画を巡り、政府のこれまでの説明を「信用できない」は76%に達し、「信用できる」は11%。内閣支持層でも「信用できない」(49%)が「信用できる」(36%)よりも多かった。首相は24、25両日、衆参両院予算委員会の閉会中審査で、加計学園の計画に自身が関与していないことを説明する考えだ。

 調査では「安倍1強」の政治状況についても聞いた。「自民党から安倍首相に代わる人が出てきてほしい」が31%で最も多く、「野党から首相に対抗できる人が出てきてほしい」は25%「新しい政党や政治団体から首相に対抗できる人が出てきてほしい」は23%「安倍首相が強いままでよい」は7%にとどまった。自民支持層では「安倍首相に代わる人」が51%を占め、「ポスト安倍」への期待をうかがわせた。

 支持率は2カ月連続で10ポイント下落し、与党内では憲法改正論議への影響を懸念する声も出始めた。今回の調査で、首相が目指す20年の改正憲法施行について、議論を「急ぐ必要はない」は66%、「急ぐべきだ」は22%。首相が5月に改憲方針を表明した後、慎重論は調査のたびに増えている。憲法9条の1項と2項をそのままにして、自衛隊の存在を明記する首相の改正案に関しては、「反対」が41%(前回比5ポイント増)、「賛成」が25%(同2ポイント減)、「わからない」が27%(同3ポイント減)だった。

 政党支持率は、自民25%▽民進5%▽公明3%▽共産5%▽維新2%--など。「支持政党はない」と答えた無党派は52%だった。【池乗有衣】

調査の方法

 7月22、23日の2日間、コンピューターで無作為に数字を組み合わせて作った電話番号に、調査員が電話をかけるRDS法で調査した。福島第1原発事故で帰還困難区域などに指定されている市町村と、九州北部豪雨で被害を受けた福岡、大分両県の一部市村の電話番号は除いた。18歳以上のいる1627世帯から、1073人の回答を得た。回答率は66%。

毎日新聞 2017年7月23日 16時30分(最終更新 7月24日 02時20分)


 上記引用記事を眺めると、一番多いのが「自民党政権のままで良いけど、安倍は代われ」という意見のようだ。「野党共闘」の支持層と、「国民ファ★ストの会」(仮称)や維新など、より右翼的で新自由主義色の強い政治勢力が安倍自民にとって代わることを期待する層はほぼ拮抗している。コアな安倍晋三支持層は1割にも満たない(7%)といったところだろう。

 昨日は、仙台市長選も行われた。仙台市選管の発表した開票確定速報を見ると、当選した郡和子氏(前民進党衆院議員)の得票率が43.0%、自公が推した菅原裕典氏の得票率が38.7%だった。つまり自公は「野党共闘」の9割の得票を得たわけだ。自治体の合併で馬鹿みたいに広くなったとはいえ、県庁所在地でこの接戦なのだから、過疎地に行けば行くほど自民党が今なお強さを誇っていることは疑う余地がない。とはいえ、仮に近いうちに解散総選挙が行われた場合、各都道府県の1区などでは自民党が「野党共闘」に敗れる選挙区も少なくなさそうだ。

 何が言いたいかというと、一部で噂される早期解散・総選挙の可能性はほとんどないと私は考えているのだ。今衆院選をやれば、いわゆる「改憲政党」の3分の2を守れるかどうかは怪しい。

 それよりも、「国民ファ★ストの会」(仮称)が成立して、民進党右派がこれに合流してから解散総選挙を行う方が、改憲には有利ではないか。私が安倍晋三ならそう考える。よって、早期の解散総選挙はなく、政党交付金を受け取るための期限が年末であることから年内に必ず発足する「国民ファ★ストの会」(仮称)が発足し、渡辺喜美や長島昭久や若狭勝らといったそうそうたる右翼または新自由主義の面々が名を連ねる保守政党(というより右翼・新自由主義政党)の発足を待って解散総選挙が行われると考えるべきだ。

 実は安倍は都議選についても同じことを考えていただろうと思う。ただ、安倍にとっての誤算は自らの政権への逆風が強すぎて自民党が惨敗を喫してしまったことだが、衆院選の過疎地の選挙区などではそのような心配はない。都市部では「国ファ」(首都圏及び減税日本と合流した名古屋市など)あるいは維新(大阪及び阪神間など)で棲み分けは行われるだろうが、自民党の第一党の座は動かないだろう。そして、自公と国ファ、維新などが、憲法9条への自衛隊明記という、そんなに改憲に血道を上げるまでには至らない人たちにも受け入れられやすい案でまとまって改憲へと突き進む恐れは十分すぎるほどある。

 問題は、それまで安倍政権が持つかどうかということだろう。

 つい最近まで、国会での答弁で「安倍内閣支持率は53%もある。民進党の政党支持率はどのくらいあるのか」などとほざいて、高い支持率をいいことに「僕ちゃんは何をやっても許されるんだ」とばかりにおごり高ぶっていた安倍が、支持率の急落で受けているストレスの強さは相当のものだろう。10年前と同じように、安倍の体が悲鳴を上げて政権運営を続けられなくなる可能性は小さくない。

 一方、現在の野党、特に蓮舫の「国籍」問題などという、ネトウヨや産経くらいしか関心を持たないであろう議論でもめている民進党のていたらくから考えて、現在の野党による政権打倒はほとんど期待できない。また、小選挙区制により総理総裁の権力が極端なまでに肥大し切っているので、自民党内の安倍批判勢力による安倍打倒は、野党による安倍政権打倒よりももっと期待できない。

 ここは主権者である国民の総意が安倍を追い詰めるしかない。また、仮に安倍が政権を退いた場合でも、10年前に愚劣極まりない某ブロガーがやったように、「水に落ちた犬は叩かない」などとほざいて、それまで掲げていた安倍打倒の旗を降ろして、城内実や平沼赳夫などという、小泉純一郎によって自民党から追い出されてはいたものの紛れもない安倍の盟友の応援にかまけるなどという愚挙を行ってはならない。「安倍的なもの」の根絶を目指さなければならない。

 この記事では、陸自日報の隠蔽を稲田朋美が承認していた件のリークと文民統制の関係についても書こうと思ったが、時間が迫ってきたので次回以降に先送りする。私の主張は、一部「リベラル・左派」に見られる、「文民統制の議論はピント外れだ」という意見には強く反対するが、今回のリーク(報道に「複数の政府関係者」とあったことから文官からのリークであると思われるが、武官からの働きかけが影響した可能性は低くない)を2.26事件と重ね合わせる一部の見方にも強く反対する。2.26事件は国粋主義に染まった青年将校たち、つまり武官の暴走が引き起こした事件だが、今回のリークは総理大臣が自衛隊を私物化し、現実に戦闘行為が行われていた南スーダンの実態を隠そうとしたことが引き起こしたものだ。言い換えれば、安倍晋三や稲田朋美を筆頭とする文官(シビル)の暴走が引き起こした問題なのだ。

 だから、「これはクーデターだ」と叫んで問題のすり替えを行うことによって安倍政権を守ろうとするフジテレビの平井文夫らの妄論に乗っかることなく、「文民統制ができない(文民統制をやる気もない)安倍晋三と稲田朋美を打倒せよ」と叫ばなければならないと思う今日この頃なのである。
 自民党が惨敗した都議選を受けての安倍内閣支持率の世論調査結果が、昨夜(7/9)、朝日新聞、読売新聞、NNN(日本テレビ系)から一斉に発表された。特に朝日はこのところ毎週のように内閣支持率調査をやっている。都議選の前日と当日(7/1,2)にもやっていて、4日付朝刊(ネットでの公開は都議選翌日の3日朝)に報じたばかりなのにまたこの週末(7/8.9)に調査を行った。その結果は前回が支持率38%(6月調査より3ポイント減)、不支持率41%(6月より5ポイント増)、今回が支持率33%(前回より5ポイント減)、不支持率が46%(前回より5ポイント増)だった。今回の支持率33%は、2012年12月の第2次安倍内閣発足後最低の数字である。

 朝日が毎週のように世論調査を打つのは、安倍政権から明確に「敵」と名指しされている(たとえばトランプと安倍が「ニューヨークタイムズに勝った」「朝日新聞に勝った」と言い合った件など)ことや、2014年に慰安婦問題で安倍にすり寄ったところそれを「飛んで日にいる夏の虫」とばかりに政権に利用された失敗に懲りて、政権との対決姿勢を明確に打ち出したことと関係があるのだろう。

 それよりも安倍晋三にとって打撃になったのは、政権と一体になっているはずの読売新聞の世論調査で、内閣支持率が2か月で25ポイントも暴落してしまったことかもしれない。最新の読売の調査による安倍内閣の支持率は36%で、前回(6月17〜18日)から13ポイント、前々回(5月)と比較すると実に25ポイントの下落となった。不支持率は52%で、朝日の調査と同様に、支持率と不支持率は第2次安倍内閣発足後最低と最高をそれぞれ記録した。

 支持率の数字の低さでいえば、NNNの調査結果(下記URL)がもっとも低い。以下、NNNのサイトより引用する。
http://www.news24.jp/articles/2017/07/09/04366547.html

内閣支持率急落…政府・与党に危機感広がる
2017年7月9日 20:02

 NNNが週末に行った世論調査によると、安倍内閣の支持率は前月比7.9ポイント下落して31.9%となり、2012年12月の第2次安倍政権発足以来、最低を更新した。首相官邸前から青山和弘記者が伝える。

 安倍政権で入閣経験もある自民党のベテラン議員は、この支持率に「えー」と驚きの声を上げた。政府・与党内には危機感が広がっている。

 政府・与党内には都議選の結果からも、ある程度、厳しい数字を予想する声はあった。しかし、第2次安倍政権発足以来最低だった2015年8月を6ポイント近く下回る支持率には衝撃が広がっている。

 自民党のベテラン議員は「おととしは安全保障関連法をめぐる政策論だったが、今回は政権への不信感だ。早く対応しないとまずい」と語っている。与党・公明党の幹部は「自民党全体で危機感が足りない」と嘆いているが、政権幹部は「内閣改造をすれば、がらっと雰囲気が変わる」と来月上旬にも行われる内閣改造の効果に期待を寄せる。

 しかし、交代は避けられないとみられている稲田防衛相など閣僚の顔の入れ替えが、どこまで政権浮揚につながるかは不透明。政府・与党内には「小手先の内閣改造では乗り切れない」との声も相次いでいる。加計学園の問題などに対する安倍首相の説明責任をどのように果たすのかなど、信頼回復に向けた政権の対応が問われることになる。

 一方、野党・民進党の幹部は「国民が総理の言葉を信じられなくなっている」などと攻勢を強めている。ただ、今回、民進党の支持率も9.2%にとどまっていて、政権批判の受け皿になっていないというジレンマを抱えている。民進党幹部は「正直ショックだった」と語っている。

 民進党・野田幹事長「野党第一党として、一つ一つ信頼を勝ち得ていくように、がんばっていきたいと思う」

 民進党内には蓮舫代表など執行部に対する不満がくすぶっている。

 一方、世論調査では「都民ファーストの会」が次期衆院選で全国に候補者を立てることに「期待する」が26.6%だったのに対し、「期待しない」が55.2%に上った。今の政権批判がこれからどこに流れるのか、今後の政治の行方を左右することになる。

(『日テレNEWS24』より)


 安倍内閣の支持率低下の傾向には、歯止めがかからなかった。今回のNNN調査の31.9%という数字は、安保法案が批判を浴びた2015年7月に毎日新聞の世論調査が出した32%という「底値」に並ぶものだ。ついに「危険水域」といわれる内閣支持率30%をめぐる攻防の局面になった。

 都議選での自民党の惨敗をめぐって、「THIS IS 敗因」などという馬鹿げた言説が流布している。自民党が負けたのはT(豊田真由子)、H(萩生田光一)、I(稲田朋美)、S(下村博文)のせいだというのだ。

 冗談じゃない、「A級戦犯」が抜けてるじゃないかと思うのは私だけじゃないだろう。世論調査でも「首相の人柄が信用できない」ことを不支持の理由として挙げる人たちが増えている。安倍晋三こそ自民党の敗因に挙げられなければならない。

 なお、この件に関して、「『THIS IS 敗因』ではなく『THIS IS A 敗因』かも」と題された記事をネット検索で見つけたので下記にURLを示しておく。「A」はもちろん安倍晋三を指すが、Iは稲田以外に今村雅弘や石原伸晃もいるよ、Sは菅義偉や佐川宣寿もいるよ、などと書いており、責任を分散させるような書き方にはぬるさを感じさせる。
http://note365.net/?p=6741

 ただ、来月(8月)に行われるという内閣改造は、内閣支持率を押し上げる一定の効果を持つだろうとは確実に予測できる。それは、10年前の8月にも起きた現象だ。結局内閣が持たなかったのは体調を崩した安倍晋三が政権を投げ出したためだったが、あの第1次安倍改造内閣で防衛大臣に就任したのが小池百合子だった。当時、小池は "Please call me Madam Sushi." なる妄言を吐いて失笑を買った。

 その小池百合子が都議選前と選挙中にだけ党代表を務め、極右の野田数を代表に再起用した「都民ファーストの会」の国政進出について、NNNの世論調査で「期待しない」が過半数55.2%を占めたことも注目される。しかし、それなら民進党が受け皿として期待されているかといえば全くそんなことはなく、前記日テレニュースが伝えるところでも、民進党の政党支持率9.2%という低い数字に、同党幹部が「正直ショックだった」と語っている。

 おそらく、辞意を漏らしたという野田佳彦が幹事長を辞任するだけで、現在の蓮舫体制が続くのだろうが、昨年の民進党代表交代以降の民進党低迷の原因として、野田佳彦幹事長任命のほかに、もっと大きな原因がある。それは昨年晩秋に蓮舫がいち早く小池百合子にすり寄って小池に「協力を申し出た」ことだ。しかも、小池はそれにつけこんで、民進党からの協力要請は断りながら、都議選では都ファが民進党から大量の現職・前職(いずれも当時)を引き抜いた(もちろん自民党からも引き抜いたが)。都ファが民進党から引き抜いた現職・前職たちは、ある者は右翼だったり、別の者はもともとは「みんなの党」に属していた新自由主義者だったりした者が多く、民進党内でも政治思想か経済政策かのいずれかが「右寄り」の者が多かった。

 民進党代表に就任した直後に、自らのその一員である民進党右派にいい顔をしようとした蓮舫は、逆に右派に逃げられた形となった、海江田万里に代わって民主党(当時)の代表に返り咲いた岡田克也が、おそらく自らの思想信条とは齟齬があるかもしれない「野党共闘」路線にしか活路を見出せないと判断してこれに徹し、昨年の参院選で激戦となった1人区で成果を出すところまでこぎつけたのと好対照といえる。しかし岡田克也には、2005年の郵政総選挙で小泉自民党に惨敗したことからもうかがえる「ポピュリズム政治の攻勢に対する弱さ」があって、それが昨年の東京都知事選での鳥越俊太郎の惨敗(これは「タマが悪かった」側面も否定できないが)につながった。そのあとに蓮舫という「党首にしてはいけなかった」人間を党首(党代表)に据えてしまった民進党の体質を具現しているのが蓮舫なのであって、もはや蓮舫の首をすげ替えたところで蓮舫と同じような人間しか出てこないのではないかと私は思っている。

 現在は国政進出を懐疑的な目で見られている「都ファの国政政党版」、これは「新・新進党」とも「国民ファ★ストの会」とも仮称できるが、間違いなく立ち上がるこの政党は、まず民進党からの政治思想右派または経済右派の連中を引き抜き、さらにかつての新進党に倣って公明党を自民党との連立から引き離そうとするだろう。人間は歳をとっても同じことを考えるものだ。小池百合子はかつて新進党を作った小沢一郎のやり方を真似るに違いない。仮に政党名が「国民ファ★ストの会」にでもなれば、それはかつての小沢一郎の「国民の生活が第一」とそっくりの党名になる。これは決して偶然ではない。

 民進党右派を取り込み、公明党との連携に成功すれば(その際には自民党内の安倍晋三に対する批判勢力、たとえば石破茂らも動く可能性がある)、都ファの国政政党版への期待が今よりも高まる可能性がある。これに対する警戒を怠ってはならない。しかし、安倍政権をこれ以上長引かせてはならないとも強く思う。当面はろくでもない政治勢力同士のせめぎ合いが続くことになりそうだ。

 今後のブログ運営に関して、当面は、「安倍晋三批判」と「小池百合子批判」の二正面作戦で行くしかないと強く思う今日この頃だ。