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きまぐれな日々

大阪のダブル選挙投開票が目前だが、「大阪維新の会」を主宰する橋下徹の独裁を許すか許さないかは大阪市民や大阪府民の判断である。今年4月の東京でも都知事選の議題はネットでは全然盛り上がらず、石原慎太郎の圧勝を易々と許した。そんな東京の人間が大阪をどうこう言える筋合いは全くないのだが、東京にせよ大阪にせよ「強そうな者、頼れそうな者に全権を委ねる」人々が多数を占めるという、愉快ならざる気持ちになる結果になるのは目に見えている。今から日曜日の夜が憂鬱だ。果たして橋下一派の勝利が報じられるのは何時何分頃になるだろうか。東京都知事選の時には8時ジャストだったが、大阪の少なくとも市長選はそれと同じになるのではないか。

大阪のことは仕方ないかもしれないが、国政にかかわる政党や政治家が大阪ダブル選挙に際していかなる行動をとったかはよく覚えておいた方が良いだろう。この件に関してよくまとめられていると思うのが、かつてその選挙制度に関する論考を植草一秀が好意的に取り上げたことのある上脇博之・神戸大学教授のブログ記事「大阪ダブル選挙の対立構図は『独裁vs反独裁!』(『維新vs既成政党』ではない!)」である。具体的にいうと、国民新党、みんなの党、公明党、石原伸晃(自民党)、原口一博(民主党)、小沢一郎(民主党)などが「独裁」を肯定する橋下徹に事実上手を貸している国政の政治勢力ならびに政治家たちである。民主党に関しては、非主流派の小沢・鳩山系が橋下徹に親和的だからといって、現執行部を含む主流派が橋下と対決する姿勢をとっているかというとそうでもないことも付言しておく。とにもかくにも、最終的に日本を滅ぼすのは橋下との対決を避けようとする政治家の面々だと私は考えている。

最近の政治の話題は「TPP」一色だったが次の焦点は「消費税増税」に移る。前回のエントリでは、「消費税増税」に論点が移ってしまう前に書いておきたいと思って、労働者派遣法の改正に関し、民主党が自民党や公明党と妥協して「製造業への派遣」と「登録型派遣」の禁止を法律から外すという「骨抜き」をしようとしていること、そして小沢一郎がそれに関して沈黙していることを批判した。すると、この部分に関して「世直し大工」氏から批判のコメントをいただいた。以下に紹介する。

 民主党のていたらくぶりは古寺多見さんのおっしゃる通りですが後半の製造業派遣「原則禁止」削除の記事については古寺多見さんの知識のなさに呆れてものが言えません。この法律のお陰で「人夫出し」と呼ばれる日雇い派遣会社が多く潰れました。建築業というのは親方一人、職人数名の超零細企業の寄せ集めで成り立っているのです。
 通常の仕事であれば職人達でまかなえますが、材料の搬入など人出が必要な時には対応出来ません。
そのために現場で動ける「人夫」が重宝されていました。
 多くの親方(社長)は職人として働いており、3日前の人員確保など考えてる暇などありません。作業当日の朝「3人必要だ」といえば簡単に調達出来た「人夫出しの仕事」のお陰で仕事が成り立っていたのです。そこに集まる労働者も毎日現金収入が得られ、通常のアルバイトより高額な日給(8000円~1万円程度)の所得を得ていました。

民主党が出したこの法案はこの日雇い労働を規制する法案で、この法案のお陰で多くの労働者は路頭に迷う事になったのです。

民主党の「岡田」がこの法案に反対したのは親族である「イオングループ」の影響です。
 これは人材派遣方以前からあったパートタイマー改正法案が施工され 企業とパートタイマーが直接雇用できなくなり、そのため「人材派遣会社を作り派遣社員としてパートタイマーを働かせる事になったのです。
現在スーパーなどで働いているパートさんは法律上「派遣社員」になります。昔からあった契約社員もこの悪法である改正パートタイマー法のお陰で派遣会社に属する「派遣社員」になりました。その結果所得は激減しました。
今の日本の雇用体系は「正規雇用社員」と「派遣労働者」の二種類だけなのです。

「経団連」がどうのこうのと言う前に何故、「派遣社員」が増加したのかをきちんと調べてから発言して下さい。あまりにも無知としか言い用がありません。 

2011.11.17 03:58 世直し大工


このコメントに関して、「風太」さんからも、

世直し大工さんの指摘については、知り合いの関係者から少しだけですが聞かされていたことがあります。

とのコメントをいただいた。しかし、私には「世直し大工」氏の主張がさっぱり理解できなかった。

この「世直し大工」氏のコメントをめぐる議論の経緯は、『kojitakenの日記』の何件かの記事に書いたので、興味のある方は下記のリンク先をご参照いただきたい。

http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20111117/1321540451

http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20111118/1321550171

http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20111118/1321574371

http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20111118/1321614392

http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20111119/1321666106

議論といっても「世直し大工」氏から一度返事をいただいただけだった。『kojitakenの日記』及び当ブログのコメント欄からは、「風太」さんにもコメントをお願いしたのだが、一度も返事をいただいていない。

「労働者派遣法」の改正については、読者の関心も非常に薄いように思われるし、何を書いてもムダかと思っていたのだが、この記事を書く直前の23日深夜に、「世直し大工」氏から『kojitakenの日記』に再度コメントをいただいたので、その前にいただいたコメントとあわせて、こちらのブログでも紹介しておく。こちらで紹介するのは、「はてな」ユーザーにコメントを限定している『kojitakenの日記』よりコメントがつきやすいかもしれないと思うからだ(なお、「はてな」には登録するだけで「はてなダイアリー」に日記を開設せずともコメントできる。登録は簡単だしオプションをつけなければ無料だから、そんなにバリアは高くないと思うのだけれど)。

まず18日にいただいたコメント。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20111117/1321540451#c1321556685

yonaosi 2011/11/18 04:04

 労働労働者派遣法を述べる前に「パートタイム労働法の改正」について述べなければなリません。 「パートタイム」労働者とは主たる就業先の企業と直接 (就業時間・賃金)などの取り決めを行う雇用形態でスーパーなどのパートタイマーや短期的なアルバイト、自動車製造工場などの「期間従業員」、一般企業などの契約社員がこの「パートタイム労働法」の適応を受けていました。 昔の雇用体系は正社員とパートタイマーの2つに分類されていました。この時点では労使共にうまくいっていたのですが、パートタイマーの人権・処遇の改善を求める政治的な動き(社会党だったと思うが・・・)でこの「パートタイム労働法」が改正され、一定期間(最長1年間)を超えた場合、その場所で同じ仕事をする場合は正社員と同じ労働条件(賃金・労働時間・社会保障など)にする以外労働契約の更新は認めないという法案に改正されました。結果、企業は直接雇用形式を取りやめ、第3者が雇用者である派遣労働に変わっていったのです。 派遣労働であればこの「パートタイム労働法」の適応外になるためです。スーパーなどもこの「パートタイム労働法の改正」により直接雇用から「派遣労働」へと変わりました。 スーパーの場合ほとんどが形式上の雇用契約となり、独自の派遣会社を持ち労働者と雇用契約を結ぶことができます。そのため「派遣労働者」は急増しパートタイム労働者は消滅しました。
 その増加した「派遣労働者」を更に規制しようとしたのが「労働者派遣法」なのです。
労働者のためと言いつつも結果的に労働者の雇用を減少させ、所得の低下へとつながりました。
20年以上も前のことですがダイハツで期間従業員を6ヶ月間していたことがありますが、その時代は今のような派遣労働ではなく直接雇用の「契約社員」であったため健康保険や失業保険なども全てダイハツと同じでした。今は更に条件の悪い「派遣労働」に変わっています。何故派遣労働者が増えたのかはこの「パートタイム労働法の改正」が原因です。安っぽい正義感のお陰で結局苦しんだのは労働者たちだけでした。

 私のまわりにもこの「パートタイム労働法の改正」で涙を飲み込んで仕事をしている人が大勢います。 本当にその労働者の為になっているのかどうかを考えなくてはいけません。
ただ単に規制をすれば良いという単純なものではありません。

 ちなみに私は小沢信者でも極右勢力や極左勢力でもありませんし、民主党崇拝者や自民党崇拝者でもありません。自分自信が何をすべきかぐらいはわかっているつもりです。

ちなみにTPPには大反対です。


続いて23日のコメント。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20111118/1321550171#c1322058963

yonaosi 2011/11/23 23:36

このパートタイム労働法改正案は度々変更・更新が繰り返されていまのではっきりとした事は言えませんが「派遣労働が問題化する以前のはなしです。当時も「派遣労働」はありましたが、現在のように製造業やスーパーのような小売業に認められたものではありませんでした。 期間工、契約社員、パートタイマーは全て直接雇用でその働く企業と直接雇用されていました。正規社員以外の労働者はこの「パートタイム労働法」の対象でした。この年に改正されたパートタイム労働法の改正点は

- 同一労働同一賃金、同一待遇の原則、有給休暇や賞与など正規社員と同等
- 会社は労働契約を明確にし、契約期間・賃金の掲示を示し、契約更新は認めない。正社員になる場合は除く。
- 休憩場所の差別的待遇を改める

といった現行法と趣旨は同じですが罰則規定が現行法よりもあまりにも厳しかったため、企業は労働者と契約を結ぶのをやめ、規制の緩やかな「派遣労働者」へと雇用形態を変えていったのです。
この法案の狙いは「パートタイム労働者」を強制的に「正規労働者」に変更させる目的があったため雇用者・労働者にとってハードルの厳しすぎる法案となってしまいました。 これは当時野党であった民主党・社会党・共産党が押し切った形で法案化した経緯があります。自動車業界で働く「期間工」もこの「パートタイム労働法」の対象となるためその逃げ道として「労働者派遣法」に製造業も含めるとして今度は自民党が押し切ったかたちとなりました。それから数年後「リーマンショック」がおこり、「派遣村問題」が発生したのです。
ちなみに「福岡パルコ」の仕事をしました。2ヶ月の短期契約でしたが、本来なら請負契約を結ぶのが普通ですが、「派遣社員」として登録、仕事をしました。
行きつけの大手スポーツクラブのインストラクターも以前は契約社員でしたが「派遣社員」としての雇用契約を結ばされ嘆いていた事がありました。

「労働者派遣法」を厳しくすれば企業や労働者は「請負業」として仕事をしていくしか働く道はありません。 建築業でいうところの「一人親方」と同じになり、労働関連法規の対象外となり、労働環境はますます悪化します。
労働者の労働環境を改善するための法律がじつはさらに悪化させることになるのです。

現在のパートタイム労働法はこの派遣村問題以降だいぶ変更されたみたいです。
このへんは私ではなく「社労士」のほうが詳しいと思います。私が知っていることは以上です。これ以上のことはわたしにはわかりません。お近くの「社労士事務所」にお問い合わせください。(費用は払えませんが・・・。)


パートタイム労働法は自民党・宮澤喜一内閣当時の1993年に制定され、同じく自民党・安倍晋三内閣当時の2007年に初めての大きな改正が行なわれた。

18日にいただいたコメントを読み、パートタイム労働法について調べた結果と照らし合わせた結果、「世直し大工」氏は1993年のパートタイム労働法制定について書いているのではないかと私は推測したのだが、昨日いただいたコメントを読むと、どうやらそうではなく2007年の改正について述べていたものらしい。当時の民主党代表は岡田克也ではなく小沢一郎であり、民主党は小泉政権の苛烈な新自由主義政策に対抗して、「国民の生活が第一」の路線に転換していた。従って、イオングループ一族の岡田克也が小売業の利益のために云々という、「世直し大工」氏の最初のコメントは、完全な誤りである。そんな人間がよくもぬけぬけと

「経団連」がどうのこうのと言う前に何故、「派遣社員」が増加したのかをきちんと調べてから発言して下さい。あまりにも無知としか言い用がありません。

とほざけたものだなと、その面の皮の厚さには感心するばかりだし、「世直し大工」氏の3件のコメントはどれをとっても誤りだらけで、正しいところを探す方が難しいほどひどいものだが、本記事の主旨は何も「世直し大工」氏を槍玉に挙げることではない。

何が「世直し大工」氏に3件のコメントに表出しているような誤解をさせたのか。そこに問題があるというべきだろう。もとをたどれば1995年の日経連による「新時代の『日本的経営』」にあり、この提言の目的はいうまでもなく企業の労働コストを下げることにあった。

その線上に沿って、まず「特定の業種についてのみ認められる」というポジティブリスト方式だった派遣業務においてその対象業務を増やし(1996年改正)、次いでポジティブリスト方式を「特定の業種以外は派遣労働が認められる」ネガティブリスト方式にして派遣労働が原則自由化され(1999年改正)、最後にネガティブリストから製造業を外して製造業への派遣労働が認められた(2003年改正)。このあとの2つ、すなわち1999年と2003年の改正こそ、日本において派遣労働者を増やし、格差を拡大して「ワーキングプア」を激増させる元凶なのである。要するに労働者が怒りの矛先を向けるべき政治勢力は1999年と2003年の法改正に賛成した政党や政治家であって、2007年のパートタイム労働法改正の局面における民主党(当時小沢一郎代表)・社民党・共産党ではない。

なお、前回のエントリを公開した当初、一部誤りを書いていた。1999年と2003年の民主党代表はいずれも菅直人だったが、民主党は1999年の法改正に賛成し、2003年の法改正には反対した。また、小沢一郎は前回にも書いた通り1999年の法改正においては与党議員としてこれを推進する立場にいた。少なくとも1999年当時の自由党と民主党は批判されなければならない。

「世直し大工」氏のように、掲示板で経済問題に関して意見を活発に表明している労働者の方でさえ上記のような誤解をしてしまうほど、「反貧困」の運動体を含む日本の労働運動の力は弱い。さるブログのコメント欄で、『kojitakenの日記』は民主党と小沢一郎を批判することしかできなかったと論評されたが、それは私に筆力が欠けていることのほか、「反貧困」の運動体に今なお期待しているからでもある。

だが、働く者の多くが橋下徹だの小沢一郎だのの「力の強そうな者、頼れそうな者」に期待を託している間は何も望めないし、「反貧困」に限らず、「脱原発」にせよ「TPP」にせよ沈黙かさもなくば邪魔しかしなかった小沢一郎に対して何もできない、あるいは「格差拡大」「原発推進」「TPP推進」「消費税増税」を実行しようとしている「野ダメ」野田佳彦に対して何もできない、(もしそんなものが本当に存在するとしたら)「民主党リベラル派」とは一体何なのだろうか。

特に声を大にして言いたいのは、肝心な時に大ボス・小沢一郎の顔色をうかがい、ボスの真意を「忖度」する、いわゆる「ソンタクズ」と揶揄される人たちが、いくら勇ましいことを言ったり、仮に「護憲派」であったところで、そんな人間を信用して未来を託すことなど全くできないということだ。

日本の政治をここまでダメにしてしまった要因として、「(保守)二大政党制」及びそれを生み出した「小選挙区制」が挙げられるが、これを推進した政治家としてもっとも責任が重い人間が小沢一郎であることは今さらいうまでもない。

やはり結論はいつも同じ「小沢一郎の打倒なくして日本の未来なし」になるのだが、今さら小沢一郎を倒したところで日本の焦土化はもはや止められないのではないかという悲観論からどうしても離れられない。
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明日1月17日で、阪神・淡路大震災からまる14年が経過する。

14年前、朝のニュースで、阪神高速道路神戸線が倒壊している映像を見た時、とんでもない災害だと悟った。高速道路が倒壊したあたりは、知っている場所だった。やがて、建物の倒壊や火災によって、多くの人が命を落としたり、住む家を失ったりした。被災者のために、炊き出しが行われた。炊き出しとは、大災害や大事故が発生したときに、避難民や被災者に対し、飯を炊いて供出する行為のことである。

この年末年始、職や住居を失って、食うに困っている人たちのために各地で「炊き出し」が行われてニュースになった。阪神大震災が天災プラス人災によって被害が拡大したといえるのに対し、ワーキングプアの問題は政治の失敗が招いた人災であるといえる。失業者や路上生活者たちは、一種の被災者である。

被災者を救援する行為は、それを行う主体の属性や動機に関わらず、賞賛すべきものである。阪神大震災の時は、暴力団が炊き出しを行った。彼らの普段の行ないは糾弾されるべきであるが、彼らが行った被災者のための炊き出しは賞賛に値する。

田中康夫は、阪神大震災の被災地に足を運び、被災者救援に奔走した。私はこの田中康夫の行為を高く買っている。一方、震災の起きた当日に、さっそく「この規模の震災がもし東京で起きたら、どの程度の被害になるか」などと言っていたテレビの報道番組に、激しい怒りを感じた。現に被災して苦しんでいる時に、なんということを言うのかと。その番組とは拡大された枠のTBS「NEWS23」であり、キャスターは筑紫哲也だった。この件に限らず、阪神大震災の報道に関しては、筑紫はかなりの批判を浴びた。代表的なものは、ヘリコプターから見る神戸を、「温泉に湯煙が上っているかのよう」と表現したことだ。私は筑紫哲也に対しては一定の評価を与えているけれども、阪神大震災に関する報道では、残念ながら筑紫哲也はジャーナリスト失格だったと考えている。田中康夫も、著書『神戸震災日記』(新潮文庫、1996年)で、筑紫哲也を厳しく批判した。

ところが、そんな田中康夫が年末年始の「派遣村」の救援活動を批判した。湯浅誠が思い描いたものとは違う方向に進んでいるというのがその批判で、要するに共産党や同党系の労組が運動を政治利用していると言いたいらしいのだが、14年前の阪神大震災で救援活動を実際に行った田中がどうしてそんなことを言うのだろうか。また、田中の尻馬に乗る形で、電波芸者・勝谷誠彦も派遣村の活動を批判した。勝谷の実家は阪神間の兵庫県尼崎市だったはずである。勝谷の呆れた言動については、ブログ『勝谷誠彦様の華麗なる脳みそ』が詳しいが、視聴者のニーズに従って、右に左に言動がぶれる勝谷の卑しい言動は、唾棄すべきの一語に尽きるものだ。しかし、そんな勝谷と田中康夫は仲が良い。

「派遣村」への協力は、他の政治勢力や労組がやらなかった積極的でなかったから、共産党や同党系労組の協力が目立っただけの話である。田中康夫も、湯浅誠自身に党派性などないことを知っているから、「湯浅さんが思い描いたものとは違う」などという言い方をしているのだが、そんなことを言うくらいなら、「新党日本」が積極的に「派遣村」に協力すべきだったのだ。たとえ彼らがそれを政治利用しても、私はそれを批判しない。

自民党でも、大村秀章や片山さつきが派遣村の活動にかかわった。両議員とも、普段は私の支持しない政治家だが、この動きは評価できる。片山さつきにはできる限り対立候補の城内実の票を奪い取って、城内を落選に追い込んでほしい。それはともかく、派遣村の活動の援護に関する件では、大村や片山は、田中康夫なんかよりずっと良い仕事をしている。選挙を意識したパフォーマンスであろうがなかろうが関係ない。

最低なのは、以前からの新自由主義の主張を今なお改めようとしないばかりか、派遣村の活動を激しく誹謗中傷した池田信夫のような輩であり、ああいうのはどこがどう悪いという前に、その言論を問答無用で全否定しても構わないと思っている。まさに人間のクズである。

だが、こと派遣村についての論評に関しては、残念ながら田中康夫も池田信夫と五十歩百歩だと言わざるを得ない。歳をとって、田中康夫もダメになってしまったのだろうか? そうではないことを、今後の言動を通じて示してほしい。


[追記]
みどりさん(ブログ『労働組合って何するところ』管理人)さんから下記のコメントをいただきました。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-826.html#comment4753

細かいことですが一つ言わせてください。
派遣村への協力を「労組がやらなかった」ということだけは事実に反します。
そもそも、派遣村の事務局となった「全国ユニオン」は2002年結成の労働組合です。その他にも、連合、全労連、全労協というナショナルセンターの違いを超えて様々な労働組合が派遣村に初期段階から参加していました。そういった労働組合が表に出ることなく裏方として運営を行なったことと、初期段階では組織全体ではなく有志での参加であり、徐々に組織としての協力の意志が固まってきたという経過もあり、労働組合の協力は目立たず、今も「労働組合は何もしない」というような批判を浴びています。ですが、事実はそうではありません。
この派遣村の取り組みは、三大ナショナルセンターが垣根を超えて協力したということで活気的なものであり、むしろ日本の労働組合運動史に明記されるべき重大な出来事です。

2009.01.16 09:26 URL | みどり


ご指摘に従って、本記事の記述を一部改めました。コメントどうもありがとうございました。


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朝日新聞や読売新聞の熱いラブコールに応えて、麻生太郎総理大臣が3年後の消費税増税を表明した。これは、解散を当面見送ることとセットになっている。臨時国会冒頭での所信表明演説で民主党の財源論に突っ込みを入れておきながら、自民党の政策は財源をどうするのかと突っ込まれて答えに窮する醜態をさらした麻生としては、早期の解散総選挙では絶対に口にできなかった3年後の消費税増税を持ち出すことによって、財源論の論戦を与党有利に進めたいという思惑があるものだろう。もちろん、これは国民には不人気を極める政策なので、一部にいわれるクリスマス解散の線はない。総選挙は、自民党の誰かが言っていた「都議選のあと」、つまり引っ張れるだけ引っ張って、任期満了寸前まで持っていくだろう。麻生が臨時国会冒頭解散のチャンスを逸した以上、自民党にとってそれしか道はなくなった。自民党内では、「解散カード」を切れなくなった麻生への求心力は、今後失われていくだろう。

一部で指摘されているように、本音では自民党同様、財源として消費税増税を持ち出したかったであろう民主党は、自民党が先に消費税増税を言い出してくれてほっとしているかもしれない。民主党は本質的に経団連の主張に強く逆らえない保守政党だからである。しかし反面、民主党には世論に応じてクルクル政策を変える、悪く言えば節操がないが良く言えば柔軟な体質もあるから、そこに期待して近未来における消費増税の理不尽さを主張していくしかない。

財政について、私が国民必読の書と考えているのが、神野直彦著『財政のしくみがわかる本』(岩波ジュニア新書、2007年)である。中高生を対象にした本だが、内容を理解できる中高生がどれくらいいるだろうか。何より、働いて収入を得ている大人でなければ問題を切実に感じられないのではないか。これは、大人こそが読んで勉強し直すべき本であるように思える。そして、神野教授は社民党のブレーンであり、民主党の政策にも強い影響力を持つ人だと私は認識している。

この本の89頁に、国民負担率の内訳の国別比較のグラフが出ており、それについて著者が解説している。アメリカは個人所得課税のウェイトが高いが社会保障負担が低く、消費課税も低い。スウェーデンは所得税、社会保障負担、消費課税のいずれも高い。日本はどうかというと、個人所得課税が著しく低く、社会保障負担はアメリカやイギリスよりは高いものの、フランス、ドイツやスウェーデンに比べて著しく低い。著者は、「国民の最低生活を保障していく責任を政府が引き受けていない」(90-91頁)と指摘している。

実は日本の所得税は累進的になっておらず、ほぼ比例的だと著者は指摘する(67-69頁)。金持ちの所得は給与所得ではなくて、利子所得や配当所得、不動産所得などの資産所得が多いが、日本の税制ではこれらを分離課税にして累進税率の適用除外にしているからである。ただでさえこういう現状なのに、自民党は証券優遇税制の延長を言い出し、民主党でも同様の案を検討しているようだが、この期に及んで新自由主義的政策を競ってどうする、と自公与党・民主党の双方に注文をつけたい。さらに重要なこととして著者が指摘するのが株式の売却益で、これも累進課税を選択することも出来るが、事実上取引額の1%を払えばよいことになっている。このように、高額所得者の所得に対しては、累進税率が適用されない税制になっている。著者は、下記のように指摘している。

 日本の所得税に関する問題点は、すべての所得を集めて累進税率をかけないで、あまりにも多くの多くの所得を分離課税していることです。多くのヨーロッパ諸国では金融所得も累進課税をしています。日本の場合は分離しているために、応能的に課税できる唯一といえるほど重要な所得税が、お金持ちに多くの負担を強いていないという問題点があるのです。

(神野直彦『財政のしくみがわかる本』(岩波ジュニア新書、2007年) 69頁)


そもそも、金融所得など「努力をした結果報われたもの」でも何でもあるまい。それが累進課税されないでいるのに、「努力した人間が報われる社会を」などとほざく新自由主義者は、詐欺師以外の何者でもない。そういう詐欺師たちが消費税増税をたくらんでいるのである。

その消費税増税を叫ぶ議論について、神野直彦教授は、当然ながら厳しい批判を加えている(91-93頁)。これを以下に要約する。

消費税率の高いドイツ、フランス、スウェーデンなどは社会保障負担も高く、社会保障が充実している。これらの国々では、個人所得負担も高く、金持ちはそれだけ高い負担をしているからこそ、貧しい人々に消費課税の負担を求めることができる。

一方アメリカは消費課税が低く、個人所得課税のウェイトが高い。つまり自己責任を求める社会であって、所得税という豊かな人々が重く負担する税金で、社会秩序を守るための防衛や治安などの公共サービスを負担している。

日本はどうかというと、アメリカのような自己責任の社会を目指しているように見える(注:この本は安倍内閣時代の2007年6月に出版された)。それなら、アメリカと同様に、消費税ではなく所得税の増税を目指すべきだ。ドイツもフランスもスウェーデンも、社会保障が充実しているからこそ、貧しい人にも負担が担える。

(神野直彦『財政のしくみがわかる本』(岩波ジュニア新書、2007年) 71-73頁より要約)


実際には日本では、コイズミ政権末期に閣議決定された「骨太の方針2006」に、社会保障関連予算を5年間で1兆1000億円削減することが盛り込まれており、毎年2200億円ずつ社会保障費が削られている。コイズミカイカクの総括がタブーになっている現自公政権はこれを守り続けている。「骨太」の命名者がコイズミか竹中平蔵かは知らないが、「骨粗しょう症の方針」としかいいようのない代物だ。そして、神野教授の論に従うと、社会保障を削減しているのに消費税を増税するなどとは、全く筋が通っていないのだ。これでは新自由主義でさえなく、アメリカよりひどい「やらずぶったくり」の政治である。アメリカではどうしようとしているかというと、次期大統領就任が確実視されるバラク・オバマは金持ち増税と庶民減税を打ち出している。麻生太郎は、金持ち低負担はそのままで、庶民増税を打ち出そうというわけだ。こんなでたらめな政策は、断じて許してはならない。

やらずぶったくりを続ける一方で、政権には恋々としがみつく、これが麻生太郎や自民党の正体というわけだ。今後麻生内閣の支持率はますます低下し続け、来年秋に任期満了総選挙をやった時には、自民党は130議席くらいしか獲得できないのではないかと思う今日この頃である。


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昨日(8月31日)、高松市民文化センターで行われた「反?貧困全国2008キャラバン」(生活保護問題対策全国会議主催)の「高松集会」に出かけてきた。事前の申し込みも何もせず、当日にいきなり会場を訪れて講演会とシンポジウムを聴講しただけの、一般聴衆としての参加である。

8月23日付エントリで書いたように、高松での集会は、前半(第1部)が湯浅誠さんの基調講演『反貧困 ?これは「彼ら」の問題ではない?』、後半(第2部)が生活保護・ワーキングプアに関するシンポジウムだったが、湯浅さんの講演に先立って、主宰者や来賓の挨拶があった。来賓として壇上に立ったのは、民主党、社民党および共産党の政治家だったが(民主党は国会議員、社民党は県会議員、共産党は昨夏の参院選候補者)、自民党からは香川県選出の国会議員3人から祝電が来ただけだった。こういうのを見ていると、自民党というのはやはり貧困対策には不熱心な政党だと思えてしまうのだが、いかがだろうか。

湯浅誠さんの講演は、著書『反貧困―「すべり台社会」からの脱出』と同様のトーンで、約1時間、過激にアジることなど一切なく、クールに、しかし的確に貧困問題を語っていた。

貧困問題は、中間層が非常に厚くて上流層と下流層の人が少ない「提灯型」といわれた日本社会が、富裕層と貧困層に二極化する社会構造の変化によって生じており、これがさらに進むと、中間層がやせ細った「砂時計型」の社会になってしまう。そして、今の日本の政治は、そのように社会の構造を変えなければ日本はやっていけないと考えている人たちがイニシアチブを握っている。しかし、それはおかしいと思う、そう湯浅さんは言う。

たとえばフランスでは大がかりなストライキやデモが行われて、反貧困運動が盛り上がったが、それはフランスが曲がりなりにも福祉国家であって、労働市場から疎外されても最低限の生活を営むことができるからだ。しかし、社会保障給付費の対国民所得費比率が、欧州と比較して際立って低く、しかもその大半が医療と年金につぎ込まれて福祉が薄くなっている日本の社会では、我慢できない仕事でも大部分の人はそれを受け入れざるを得ない(韓国も日本と似たような状況になっている)。ひところ蔓延した「自己責任論」も、この傾向に拍車をかけている。このような社会の構造を変えていかなければならないと湯浅さんは言う。「新自由主義」などの用語を湯浅さんは用いず、自公政権反対とも言わないが、その方向性はおのずと自公政権、特にコイズミや安倍晋三の頃の政策の方向性とは真逆にあたることはいうまでもない。今の福田政権とも、真逆、つまり180度違うとはいわないまでも、鈍角(90度より大きく180度より小さい角度)をなすくらいの方向性の違いがあるだろう。

貧困問題を解決するためには、社会の底上げが必要だ。それには、我慢できない時には「NO」という必要がある。それが市民の責任だ。緊張感を社会に走らせなければならない。そう湯浅さんは訴えた。

『反貧困』を読まれた方なら、湯浅さんが "溜め" という用語で、目に見えない生活困窮者の境遇や条件を語っているのをご存知だと思う。生活相談・支援やトラブル対応、生活保護申請付添などの社会資源を充実させ、利用しやすくするとともに、当事者のエンパワーメントが求められると湯浅さんは言う。居場所を確保して自信を持ち、いやなときには「もうガマンできない」とはっきり言い、広くつながる。そうやって "溜め" を拡大していく。それが貧困問題の解決につながっていく。

集会ではこのあと、この4月まで4年間四国でホームレスをやっていた九州出身の山口洋さんの体験談が語られた。以下、9月1日付朝日新聞香川版から引用する。

山口さんは、農家などで季節労働者をし、お堂で寝泊まりしたことがあり、高松市役所で生活保護制度のことを知り、民間団体に助けてもらったという。山口さんは、「貧困から脱出のチャンスを」と訴えた。

(2008年9月1日付朝日新聞香川版記事より)


集会は、さらに生活保護行政及びワーキングプアの現状について、各専門家、実務家によるシンポジウムが行われたが、紙幅の関係、もとい書く時間がなくなったので、記事はこれまでとする。

「反?貧困全国2008キャラバン」は、このあと今日(9月1日)と明日(2日)に香川県の自治体キャラバンが行われたあと、9月4日からは岡山、8日からは広島へと進んでいく。


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今日から3連休の方も多いと思うが、仕事が忙しくて休みどころではない方、お出かけを予定されている方、日ごろたまった疲れを取ろうと思っている方などさまざまだと思う。私の場合は、3日間のうち仕事もあるけれども、外出予定もあり、疲れをとる休養に充てる時間もあるから、この生きづらい新自由主義社会にあっては比較的恵まれたほうなのだろうなあと思う。疲れはずいぶんたまっているけれども。

ブログは3日間とも更新できると思うが、いつもとちょっと違う趣向の記事にしたいと考えている。初日の今日は、ここしばらくたまっていたものをぶちまけるエントリにしたい。

数日前から気になっているのが、7月14日のエントリ「「貧困大国ニッポン」 (『文藝春秋』8月号の湯浅誠論文) より」で、Black Joker氏とasdnof氏の間でかわされている論争だ。

もともとのきっかけは、7月12日のエントリ「『論座』休刊説と『ロスジェネ』創刊 ? 鈍感な「保守リベラル」」にいただいたasdnof氏のコメントだった。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-678.html#comment3671

よくわらからないのですが。

> 猛烈な勢いで貧困に直面する国民が増えている現在

どこにそんなデータがあるのですか?
高齢化社会なのでフローでは当然そうですが、キャッシュで貧困がみとめられるデータはないと思いますが。

> 新自由主義は基本的に産業、特に製造業にダメージを与えるものなので

どういう論理で?
最も規制から自由だった、つまりもっとも市場原理にさらされた製造業のみが世界で戦えているのですが?

経済学の常識中の常識とあまりにかけ離れているようなので伺わせてください。

2008.07.12 14:59 URL | asdnof



最初これを読んだ時およびこのコメント欄でのasdnof氏とのやりとりを通じて、氏は典型的な新自由主義者だと私は思った。

それで、7月14日のエントリで、私は、

新自由主義者は、今の日本社会で格差が拡大しているデータがあるのか、それを示せとか、加藤智大が起こした「秋葉原事件」を新自由主義(コイズミカイカク)と結びつけるのは良くない、などと言うのだが、そんなことを言う人たちは、自分がいかに恵まれた立場にいるかを自覚していないのだ。


と書いた。ここで私は2人の論者を念頭に置いていたが、そのうちの前者は、いうまでもなくasdnof氏である。

ところが、ここでのコメント欄におけるasdof氏とBlack Joker氏との論争中、asdnof氏は下記のようなコメントを書いた。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-680.html#comment3690

たびたびですいませんが。

先にネオリベとレッテル張りする方が多いのですが、リベラル・左翼、ロスジェネの立場で書いていることを前提としてください。

赤木氏の主張は、
1) 経営者層
2) 労働者層
という古典的な左派フレームワークに
3) 非正規雇用者層
というレイヤを追加することで、2),3)の格差を論じたものだと思います。肌で実感されるのは2),3)の格差の話だと思いますが、「2)は恵まれていないから問題ではない」「近寄るのが気持ち悪い」というのが、ロスジェネ以外の左派思想でしょうか?

2)の既得権益は堅持し、かつ平等を謳う事が、リベラル・左翼としては理解不能なのですが。

2008.07.14 23:24 URL | asdnof


と書いた。これを読んで、私は初めてasdnof氏が赤木智弘氏に影響を受けた主張をしているのだと気づいた。それくらい、そこに至るまでのasdnof氏の主張は、新自由主義者のそれとそっくりだったのである。

それまでにも私はしばしば、赤木智弘氏の言論に不用意に近づいて、安易に共感を表明することに対して、軽率さや危うさを感じていたが、その実例を自ら管理するブログのコメント欄で目にすることになるとは予想しておらず、これはちょっとしたショックだった。

赤木智弘氏の理想は福祉国家のはずだ。彼がどこかでそれをはっきり書いているのを見たことがある。

ところが、赤木氏の文章を字面だけしか読み取れないasdnof氏のような人は、新自由主義者を利するような主張に走って、よりマイルドな方法論で福祉国家を目指す行き方を攻撃する。それは、最終目標である福祉国家に至る道筋において、現時点でより過酷な境遇に晒されている人の方が、受ける痛みはずっと多いから、そんなやり方ではたまったものではない、どうせそんな社会では生き延びられないから、周りを巻き込んで一度戦争でもしてぶっ壊してしまえ、という主張だ。asdnof氏とは別人だが、この主旨の主張をコメントではっきり書いた人もいた。

その痛ましさに私などは暗い気持ちになるのだが、そんなところに、本当に「下」かどうか疑わしいブロガーが、「赤木智弘さんは面白い人ですよ」なんて言い出すから、その言論に対する無自覚さに私は唖然とするのだ。そんな人は、赤木氏の言論に煽動された人たちが、先の戦争の時と同じように、日本の社会を一度大クラッシュさせる方向性をあと押しすることに協力しているも同然だと思う。大クラッシュが起きた時、いかにおおぜいの人が犠牲になるか。具体的にどのような事象が生じるか。そこまでの想像力を働かさずして、安易に「赤木智弘さんは面白い人だ」などと口にすべきでない。

みんなで楽しく談笑しながら権力者の悪口を言っていれば日本の政治、日本の社会が良くなるのなら、こんなうまい話はない。しかし、現実はそんな生易しいものじゃない。権力はそんなにお人よしじゃない。水からの主張が批判を受けたら、「自分がやられたらいやだと思うことをやるな」などと、一対一の友人関係と公共の場で政治的言説を世に問うことを混同した泣き言を言う姿勢や、そのナイーブな心性を、私は批判してやまないのである。


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一昨年から昨年にかけて話題になり、すっかり定着した「ワーキング・プア」という用語を、湯浅誠は日本語で「働く貧困層」といった方が良いと主張する。もっとずばり言ってしまえば、「働いても食べていけない」層のことだという。

『文芸春秋』 8月号に掲載された、湯浅誠が書いた「貧困大国ニッポン ?ホワイトカラーも没落する」を読んだ。読んで、反新自由主義の論壇の中心テーマが、「年次改革要望書」あたりであった時期はとうに過ぎ、格差と貧困の拡大を一刻も早く止めなければならない段階に達したことを痛感した。

幸運なことに、私自身は読みたい雑誌や書籍を買うことも、ほぼ毎日ブログを更新することもできる恵まれた立場にいる。しかしそれでも一昨年より昨年、昨年より今年と、年々生きづらさを感じるようになっているし、雨宮処凛が『生きさせろ!』 (太田出版、2007年)で描いたワーキング・プアの悲劇の一つとそっくり同じ事件が、私の身近なところで起きたりもした。

すさまじい勢いで格差が拡大し、貧困に面する人たちが急増しているというのは、それこそ皮膚感覚で知るところだ。

新自由主義者は、今の日本社会で格差が拡大しているデータがあるのか、それを示せとか、加藤智大が起こした「秋葉原事件」を新自由主義(コイズミカイカク)と結びつけるのは良くない、などと言うのだが、そんなことを言う人たちは、自分がいかに恵まれた立場にいるかを自覚していないのだ。

例の「水伝騒動」も、ブログ言論に蔓延するポピュリズムや陰謀論、疑似科学などの対決という意味では、絶対になされなければならなかったバトルだったと思うが、格差や貧困の問題を盾にとって、互いに争うべきではない人間同士が争うことになってしまうと、百害あって一利なしだ。「水伝騒動」第一幕においては何の意味も持たなかったどころか欺瞞でさえあった「真の敵を見失うな」という言説が、ここにきてリアリティを持つようになった。

また、「水伝騒動」第四幕(現在の段階)で展開されそうになったあるバトルの構図は、一昨日のエントリで取り上げた、かもがわ出版の新雑誌『ロスジェネ』における赤木智弘と浅尾大輔の討論の構図とも重なり合う。

当ブログは、「ひっぱたく相手が違うんじゃないか」という浅尾大輔の立場を支持するが、「リベラル・左派」の人たちの中には、安易に赤木智弘の言説にコミットする人間も少なからず存在する。私には、赤木の主張は安易なエピゴーネンを受けつけない厳しさを持っていて、下手に接近したら大怪我をするとしか思えない。へらへら笑って揉み手をせんばかりに赤木智弘に接近して共感を表明する一部のブロガー(=ブログを書く余裕を持っている人間)の神経が、私には理解できない。

湯浅誠は、「勝ち組などどこにもいない」と書く(『文藝春秋』 2008年8月号96?98頁)。大企業などで働く収穫的正規労働者は勝ち組か、というとそうではない。東京都の調査では、正社員の平均年収は530万円で、契約社員と比べて200万円近くも高いが、湯浅は「正社員=勝ち組」という構図は大嘘だと考えていると書く。

普通に働いていてはこなせないほどのノルマを課せられ、長時間のサービス残業を余儀なくされる。そこに、処遇に不満を持つ非正規社員とともに働くというストレスも加わるのだ。

 その結果として、ホワイトカラーのうつ病や過労死、自殺などによる労災認定は、過去最高数を記録している。しかも非正規労働者の低賃金に引っ張られて、正社員の給与も抑えられている。これでも彼らが勝ち組だといえるだろうか。

(『文藝春秋』 2008年8月号掲載 湯浅誠「貧困大国ニッポン」より

と湯浅は書くが、その通りだと私も思う。

湯浅は、小泉改革と安倍晋三の「再チャレンジ」を厳しく批判している。当ブログでも再三書いていることだが、日本がかつて「福祉国家」であったことは一度もない。国の貧弱な社会保障を補ってきたのが企業、家族や地域社会だったが、「コイズミカイカク」はそれらを破壊してしまったのだ。

小泉政権による構造改革は、もともと薄い社会保障費をさらに薄く削ぎ落とすものだった。これでは貧困が蔓延しないはずがない。2002年度に3千億円が削減され、その後も毎年2千百億円ずつが抑制されていった。そして2006年の「骨太の方針」で「5年で1兆1千億円削減」が決定された。今なお「セーフティネット撤去工事」は進行中である。

(『文藝春秋』 2008年8月号掲載 湯浅誠「貧困大国ニッポン」より


今なお「セーフティネット撤去工事」は進行中である、というのは本当にその通りで、自民党の政治家たちはそれを公言している。嘘だと思うなら、NHKの『日曜討論』などが社会保障問題を取り上げる時に、自民党の政治家が何を言っているかを注意して聞くが良い。福田首相が多少「カイカク」色を薄めようとしたところでその影響はほとんどなく、現政権もその前の安倍政権も、まぎれもなく「コイズミカイカク」路線をひた走ってきた。

湯浅誠は、どういった福祉予算が具体的に削られたかについて書いているので、『文藝春秋』を直接ご参照いただきたい。

コイズミのあとを受けた安倍内閣は「再チャレンジ支援総合プログラム」を打ち出したが、この冒頭には、「達成すべきもの自体を直接付与するような施策も考えられるが、再チャレンジ支援策としては位置づけないこととする」と書かれており、要は金銭付与による直接的な支援は何もしませんよ、と最初から宣言している。

だから安倍晋三にはコイズミカイカクへの歯止めなど全くかけられなかった。というより、無邪気な安倍は、新保守主義と新自由主義の幸福な結婚を夢見ていたフシさえある。

安倍自民党の参院選惨敗を受けて成立した福田康夫内閣は、外交・安全保障政策、経済政策でともにマイルドな方向に舵を切りたいと思っているのは感じられるのだが、ネオリベに染め上げられた自民党がそれを許さない。

これ以上の貧困の進行を一刻も早く止めることは、今の日本における最大の課題だと私は考えるのだが、残念ながら現在の自公政権にはそれはできない。「コイズミカイカク」に縛られすぎているからだ。

最後に、湯浅の論文の結びの章「「気づけない貧困」が足元に」から一部を抜粋、引用して本エントリを締めくくりたい。

まだ私たちの生活相談には姿をあらわしていないが、いま確実に存在し、将来浮上していくだろう新しい貧困層がある。それは、「気付けない貧困」者たちだ。その層は、上場企業をも含む企業の正規社員やホワイトカラー層にも及んでいると推測される。

(中略)

 これまで政府や経済界は、目先の利益のために、長期に渡って日本社会からセーフティネットを削減し続けてきた。それはもはや限界に達し、貧困ラインはいよいよホワイトカラー、中流層に迫りつつある。繰り返すが、「貧困」は単なる経済問題ではない。日本社会そのものが崩壊の危機に瀕しているのである。

(『文藝春秋』 2008年8月号掲載 湯浅誠「貧困大国ニッポン」より



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昨日、7月12日に北九州で「反‐貧困全国2008キャラバン西日本ルート出発式」が行われた。

東日本ルートが今日出発式とのことで、西日本はどうなのだろうと思ってネット検索したら、日本共産党の福津市議会議員・松尾ひとみさんのブログ記事(下記URL)が引っかかり、それで知った次第だ。
http://hitomi3.blog65.fc2.com/blog-entry-1052.html

ルートは、下記のポスターに記されている。

反貧困キャラバン
(↑クリックすると画像が拡大します)

下記のようなスケジュールが組まれているのでお知らせする。

  • 7/12? 福岡
  • 7/16? 熊本
  • 7/20? 長崎
  • 7/24? 佐賀
  • 7/29? 鹿児島
  • 8/3? 沖縄
  • 8/9? 宮崎
  • 8/13? 大分
  • 8/18? 愛媛
  • 8/22? 高知
  • 8/26? 徳島
  • 8/30? 香川
  • 9/4? 岡山
  • 9/8? 広島
  • 9/12? 山口
  • 9/16? 島根
  • 9/20? 鳥取
  • 9/25? 兵庫
  • 9/29? 京都
  • 10/3? 滋賀
  • 10/7? 奈良
  • 10/11? 和歌山
  • 10/15? 大阪
  • 10/19? 東京(東日本ルートと合流)


(東日本のほうのスケジュールも、画像から読み取れますので、東日本在住のブロガーの方、どなたか表にしていただくと助かります)

[追記]
東日本ルートのスケジュールは、ooaminosoraさんのブログ 『フンニャロメ日記』 が表にして下さいました。東日本在住の方は、同ブログのエントリ「「反‐貧困全国2008キャラバン」東日本ルート」(下記URL)をご参照ください。
http://funnyarome.blog82.fc2.com/blog-entry-199.html


以下は、貧困関係の雑誌記事、書籍の情報。いずれも当ブログ管理人が昨日購入したもの。

『文藝春秋』の8月号に、湯浅誠さんの「貧困大国ニッポン ?ホワイトカラーも没落する」が掲載されている。

また、昨年12月にNHKテレビで放送され、大きな反響を呼んだ『ワーキングプアIII』が書籍化された。

ワーキングプア解決への道ワーキングプア解決への道
(2008/07)
NHKスペシャル「ワーキングプア」取材班

商品詳細を見る

当ブログでは、番組評を昨年12月17日に公開した。

「「ワーキングプアIII」(NHK)とその関連の話題」
(2007年12月17日)
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-528.html


この本は、番組を見逃した方には特にオススメだし、見た方も本を読むと番組の記憶が鮮やかによみがえってくることと思う。


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