きまぐれな日々

 前回の記事「朝日・従軍慰安婦報道問題の『日本の常識は世界の非常識』」は、当ブログとしては久しぶりに反響が大きかった。これに関連して一昨日(8月30日)に『kojitakenの日記』に書いた記事「2007年、慰安婦問題に関する竹村健一の主張を一変させたもの」Gunosyからリンクされて多くのアクセスをいただいた。

 現在、政界では第2次安倍内閣の改造人事、特に自民党幹事長を退くことがが決まっている石破茂の処遇が最大の焦点になっているが、私はそれにはあまり関心がない。站谷幸一という保守系の「安全保障アナリスト」が、安倍晋三と石破茂の確執を、親米派(石破)対自称親米派(安倍)の対立と見立て、「軍事マニア」(ミリヲタ)と「ネット右翼」(ネトウヨ)の関係と見立てていることについて、全くその通りだとは思うし、このまま安倍「ネトウヨ」政権が続けば、日本が国際的に孤立する日が急速に近づいていくとは思うけれども、だからといって「ミリヲタ」石破茂を「敵の敵は味方」の論法で応援しようとは全く思わない。

 石破茂とは、安倍晋三とはまた違った脅威であって、安倍晋三が国際的孤立へと日本を導く「亡国の指導者」であるとするなら、石破茂は、それこそ左翼の決まり文句である「アメリカと一緒に戦争する国」を目指す、古典的な「タカ派政治家」だからである。現在は引退して悠々自適の生活を送っていると思われる竹村健一も、石破茂とならウマが合うだろう。それならそれで、こちらとしても批判しなければならない対象である。

 確かに今の「(自称)保守」は、石破茂と安倍晋三の対立構造なら、安倍晋三を支持するのが圧倒的多数ではあるようだが、だからといって安倍晋三に対立する石破茂に必要以上に肩入れすることは、「リベラル」側にとっては自殺行為だろう。同様の論法によって、過去には橋下徹、さらに遡れば小沢一郎などに肩入れしてきたことがいかにアブナイ結果を招いたか、いい加減「リベラル」たちは自覚するべきだ。安倍晋三も石破茂も彼らの悪質さに応じて撃つ。これで良いのではないか。

 とはいえ現在は安倍政権下だから、安倍晋三及び同類の極右政治家を重点的に叩くのは当然である。当ブログ及び『kojitakenの日記』は過去、山谷えり子、城内実、平沼赳夫、稲田朋美、それに最近では片山さつきといった極右の面々を叩いてきたが、その間あまり話題にしなかったのが高市早苗だった。それには理由があって、私がブログを始めた2006年以降、高市はあまり存在感をアピールできない日々が続いていたのだ。

 仮に、ブログ開設がもっと以前で、2002年にブログ記事を書いていたとするなら、高市早苗は私が槍玉に挙げる政治家の筆頭格だっただろう。2002年8月のテレビ朝日『サンデープロジェクト』で田原総一朗が高市早苗を「無知で下品」と罵倒した時には、田原擁護・高市批判の論陣を張ったことは間違いない。現に今でも私が高市に被せる枕詞は「無知で下品」である。

 ただ高市早苗は、田原総一朗に泣かされたあとが冴えなかった。2003年の衆議院選挙において、奈良1区で民主党の馬淵澄夫に惨敗を喫し、比例復活もならず落選した。2005年の「郵政総選挙」では奈良2区に鞍替えし、郵政民営化法案に反対した滝実(自民党の公認を受けられず、新党日本公認で出馬)の刺客として立候補して当選したが、滝の比例復活を許した。そして2009年の「政権交代選挙」では、民主党に鞍替えした滝実に敗れ、辛うじて比例復活を果たしたのだった。ちなみに私は高市をずっと嫌い続けてきたから、2009年の衆院選で高市が比例復活で当選した時には激怒したものである。そういえば高市早苗は新進党に所属していた時代もあり、小沢一郎とも接点がある。

 その後、高市早苗は安倍晋三にうまく取り入ったのかどうか、2012年の衆院選に当選した直後、自民党政調会長の座を射止めた。安倍晋三も、自分より頭の良いと思われる城内実や稲田朋美らよりも、自分と同程度の低能としか思われない高市早苗が気に入ったものであろうか。

 その高市の呆れた行状の一つが、前回の記事でも紹介したが、慰安婦問題に関する「新しい官房長官談話」を発表するよう菅義偉に要請したことである。当然のことながら菅義偉はこれを拒否した。
http://www.47news.jp/47topics/e/256453.php

菅官房長官、慰安婦新談話を拒否 高市政調会長の申し入れに

 自民党の高市早苗政調会長は26日、菅義偉官房長官と官邸で会談し、従軍慰安婦問題をめぐる1993年の河野洋平官房長官談話に代わる新たな官房長官談話を戦後70年となる来年に出すよう申し入れた。菅氏は「新談話は考えていない」と拒否した。(後略)

 (共同通信 2014/08/27 13:05)


 さらに、高市の「下品さ」を象徴するような一件がある。それが、国連人権委員会から改善勧告を受けて検討されているヘイトスピーチの規制に便乗して、国会周辺のデモや街宣を規制しようという企みである。これを8月29日付の東京新聞が厳しく批判した。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014082902000140.html

自民、国会デモ規制検討 政権批判封じの疑念

 自民党は二十八日、人種差別的な街宣活動「ヘイトスピーチ」(憎悪表現)を規制するとともに、国会周辺の大音量のデモ活動の規制強化を検討し始めた。デモは有権者が政治に対して意思表示をするための重要な手段。その規制の検討は、原発や憲法などの問題をめぐる安倍政権批判を封じる狙いがあるとみられる。

 自民党は二十八日、ヘイトスピーチ規制策を検討するプロジェクトチーム(PT)の初会合を開催。高市早苗政調会長は、国会周辺のデモや街宣について「(騒音で)仕事にならない」などと指摘し、「秩序ある表現の自由を守っていく観点から議論を進めてほしい」と求めた。

 PTは今後、国会周辺での拡声器使用を制限する静穏保持法などで対応が可能かを調べて、新たな法律が必要かどうかを判断する。国会周辺では、東京電力福島第一原発事故後、脱原発を訴えるデモが毎週金曜日夜に行われている。警察庁の担当者はPTの会合で、静穏保持法による摘発は年間一件程度と説明した。

 一方、在日コリアンに対するヘイトスピーチについて、高市氏は「特定の民族を名指しした中傷はやめなければいけない」と強調。ヘイトスピーチに対象を限定した規制法はないため、PTは刑法の運用強化や新規立法を検討する。

 民主党の大畠章宏幹事長は記者会見で、「ヘイトスピーチ(規制)とデモ規制は性格が違う。デモ規制が行き過ぎると民主主義のベースが壊れる」と批判した。

 ヘイトスピーチは人種や民族、宗教上の少数者に対する憎悪をかき立てるような表現で、保守をうたう団体による在日コリアン批判が社会問題化している。国連人権委員会も改善勧告を出すなど、国際的な批判が強まっている。

◆揺らぐ民主主義の根幹

 自民党がヘイトスピーチと国会周辺のデモを同列にして規制しようとしている。人種差別などを助長する表現のヘイトスピーチと、政治に対して市民が声を上げるデモは全くの別物だ。音量規制強化を名目にひとくくりにして制約する動きは見過ごせない。

 ヘイトスピーチに対しては、国連でも規制を求める意見が出ており、放置は許されない。表現の自由を守りながら、差別的な言論や表現方法をいかに規制するかは議論する必要はある。

 一方、国会周辺で行き過ぎた大音量の抗議活動は現行法でも規制できる。にもかかわらず、自民党が新たに規制強化に乗り出したのは、市民による原発再稼働や集団的自衛権の行使容認、特定秘密保護法に抗議するデモを標的に入れているとの疑念を招く。

 在日外国人の人権を守るという議論に乗じて、規制してはならない市民の政治活動を制約するだけでなく、民主主義の基盤である表現の自由という別の人権も侵す恐れがある。

 上智大の田島泰彦教授(メディア法)はヘイトスピーチと国会周辺デモの音量について「別々に検討すべき問題だ」と指摘。「国会周辺は、あらゆる言論が最も許容されなければならず、その規制強化は民主主義の在り方にかかわる」と話す。 (大杉はるか)

 <静穏保持法> 国会や外国公館、政党事務所周辺での拡声器の使用を制限する法律。1988年、国会周辺の右翼団体の街宣活動を規制するため、議員立法で成立した。静穏を害する方法で拡声器を使用し、警察官の制止命令に応じなかった場合、6月以下の懲役か20万円以下の罰金が科せられる。

(東京新聞 2014年8月29日 朝刊)


 この高市早苗の企みに、「火事場泥棒」という言葉を思いついたのは私だけではあるまい。現にネット検索をかけてみたら、「火事場泥棒」というそのものずばりのタイトルのブログ記事があって、

「火事場泥棒」という言葉が在るけれど、安倍首相及び其の取り巻き連中の念頭に在るのは、「国連人種差別撤廃委員会の勧告案を利用して、自らに不都合な連中を排除出来ないものか。」という事ではないか?

と書かれていた。その通りであろう。

 それにしても、国連からのヘイトスピーチ規制の勧告を国会周辺のデモの取り締まりに悪用しようという発想がいかにも「下品」である。政治家本人が "bakawashinanakyanaoranai" という文字列を含むURLのブログ記事にヘイトスピーチ満載の記事を書いたりとか、(小泉政権時代に)加藤紘一が小泉純一郎の靖国参拝を批判した発言が地元紙に載ったら加藤紘一の実家が放火されたと笑いながら話したりするなど、自らヘイトスピーチを平然とやらかす国会議員も悪質だが、あからさまな火事場泥棒を企てる高市早苗の下品さには、城内実や稲田朋美とはまた違った嫌悪感を抱かずにはいられない。田原総一朗の「無知で下品」との高市早苗評はまことに的確だった。

 そんな高市早苗が明後日(3日)の第2次安倍改造内閣で重要閣僚に任命されるという噂には、呆れるほかない今日この頃なのである。
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