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きまぐれな日々

現在テレビなどのマスメディアを賑わせている領土問題だが、私は共産党のような「愛国」的な立場には立たないので、お互いの見解が異なる領土問題は「棚上げ」で良いのではないかと思っている。ただ、いわゆる「北方領土」については、あの島々はもともとアイヌの人たちのものではないかと考えていて(それを言い出せば北海道も同じなのかもしれないが)、かつて日本の経済力が強くてソ連は崩壊寸前だった頃に、日本政府(海部俊樹首相・小沢一郎自民党幹事長時代)が北方領土をあたかも「買おう」としているような気配を見せた時には、「日本に返還されたってゴルフ場ができるだけじゃないかなあ」などと思っていた。しかしそれから20年あまりが経過して、今度はロシア政府が択捉島や国後島を開発しようとしている報道に接して、「あれじゃ昔の日本と同じか、それよりひどいじゃないか」と憤っている。つまり、中国や韓国に対しては関係を悪化させないことは必要だが、北方四島は日ロで共同管理し、互いに乱開発などに手を出さないようにすべきだと考えている(軍事施設建設は論外)。

領土問題がやかましくなると右翼が勢いづくのを苦々しく思うのもまた事実だ。なぜいろんな国との領土問題で相手国が強気に出てくるかというと、それは日本の経済力が落ちてきているから足元を見られているのである。それは、かつて日本が崩壊寸前のソ連の足元を見て、北方領土を「買う」と言わんばかりの動きを見せていたことを思い出しても明らかだ。

右翼的風潮に流されて軍備を増強するなどはもってのほかである。それでなくとも乏しい政府支出がそんなものに注ぎ込まれれば、それでなくとも再分配による格差縮小が「世界に冠たる」乏しい国である日本で、ますます再分配が行われなくなり、需要不足はさらに深刻化して経済がどん底に落ち、領土問題で今まで以上に周辺各国に足元を見られるという悪循環をたどる。領土問題を解決したければ、まず日本経済を立て直すことである。日本の経済が良くないのは需要不足が原因だから、これまで乏しかった再分配を強化する必要がある。だから軍備増強などに税金を注ぎ込む余裕などない、というのが私の意見である。

しかし、状況は私が期待するのと逆の方向に向かっているようだ。

8月15日付の朝日新聞が、「大阪維新の会」代表の橋下徹が、次期総選挙に向けて心頭を立ち上げる意思を固め、元首相・安倍晋三に中核議員としての参加を要請したと報じた。

橋下と安倍が接近していたことは、少し前から漏れ伝わってくる情報から感づいていたので、私はただちに『kojitakenの日記』で取り上げて大騒ぎしたが、なぜかネットではこの件に関する反応がいたって鈍い。『日本がアブナイ!』はこの件を取り上げて問題視する記事を書いたが、そのようなブログはむしろ少数派であって、多くの「政治ブログ」はこの件をスルーしている。

特に「小沢信者」のブログ群はこの件を取り上げたがらない。もちろん中には、小沢一郎の政治資金パーティーに参加するなどリアルでも活動している筋金入りの小沢支持ブログ『かっちの言い分』のように、

これ(注:上記リンク先の朝日新聞報道)を聞いた途端、(「維新」と)「生活」との連携は無いように思えた。

と率直に意見を述べているブログもあるが、これまた小沢支持派の中ではごく少数派である。「小沢信者」の大部分は、「橋下の悪口を言うな」という教組・小沢一郎の言いつけを守ってかどうか、この問題で沈黙を保つか、さもなくば「橋下市長が体制変革を目指すというなら安倍晋三とではなく小沢さんと組むべき」などと橋下に秋波を送る人間までいる。

ところで、「小沢信者」の総本山ともいえる植草一秀は、間接的な表現ながら橋下とは距離を置くスタンスをとっているようだ。それには異論はなく、むしろ「小沢信者」の中ではマシな部類といえるのだが、その植草が「『対米隷属』派と『自主独立』派のせめぎ合い」と題したエントリで、孫崎享の著書『戦後史の正体』を好意的に取り上げていることに引っかかり、Amazonのカスタマーレビューをざっと眺めてみた。そして呆れた。

孫崎は、歴代内閣総理大臣を「対米従属派」と「自主派」に分類する。これだけでも植草一秀を筆頭とする「反米愛国」系の「小沢信者」が大喜びしそうな、その実態は陳腐きわまりない「善悪二元論」だが、目新しいのは岸信介と佐藤栄作を「自主派」に分類していることだ(70年代に日本政治の右傾化のきっかけを作った福田赳夫も「自主派」に分類している)。

孫崎によると、地位協定の改定を意図していた岸内閣を早期に退陣させる目的で、安保闘争の全学連にまでアメリカの資金が流れていたという。つまり、60年安保闘争も実はアメリカの陰謀だったという「9.11自作自演説」も真っ青な「陰謀論」を孫崎はかましている。そうして岸信介はアメリカによって権力から引きずり下ろされたというのだが、それならなぜ岸信介と佐藤栄作はCIAから資金援助を受けていたのかを孫崎が説明しているのかどうかは、読んでいないので知らない。私はカスタマーレビューだけでお腹いっぱいになってしまって、こんな駄本を読むつもりは全くないので、上記についてご存じの方がおられればコメント欄でお知らせいただけると幸いである。

蛇足ながら、岸信介が「安倍晋三の敬愛する祖父」である点も気になる。可能性としては低いけれども、もっとも極端なケースとして、安倍晋三・橋下徹・小沢一郎の三者の連携もあり得ると私は考えているからだ。不幸にしてこれが実現した場合、「自公民大連立政権」よりもずっと性質の悪いな政権が成立することになる。

孫崎の著書の話に戻ると、この本には既に48件のカスタマーレビューがついていて、うち35件が5つ星である一方、星1つが8件ある。しかし、後者の多くはネット右翼からの異論である。中には本文ではこき下ろしていながら5つ星をつけているレビューもあるが、概して高評価で、「目からうろこが落ちた」的な感想を述べている人も多い。一水会の機関紙、『日刊ゲンダイ』、『噂の真相』元編集長の岡留安則、『週刊金曜日』などでも好意的なレビューがなされていたとのことで、要するに「小沢信者」及びその周辺で大人気を博しているようである。

そして、これまで「護憲」のスタンスを取っていた「小沢左派」のうち、この本に感化されてか「改憲」、つまり「自主憲法の制定」を肯定する立場に転向した人間が少なからずいると聞いた。

リアルの政治において、安倍晋三・橋下徹・小沢一郎の三者連合ができる可能性は実のところきわめて低いと私は思っている。小沢一郎は「国民的不人気」だからである。世論調査で小沢新党「国民の生活が第一」の支持率が出始めているが、同党の支持率は概ね1%前後であり、社民党よりは高いが共産党より低い。小選挙区で勝ち抜ける候補は小沢一郎以外には思いつかないから、同党がどことも提携せずに衆議院選挙を戦った場合、同党の獲得議席は1桁に落ち込むだろうと私は予想している。

だが、それとは別に、「安倍・橋下・小沢」連立政権ができてもそれを支持する下地ができつつあることは、孫崎本が大人気を博していることからもうかがわれるのである。

いや、上記から「小沢」を抜いた「安倍・橋下」政権でも受け入れられるかもしれない。岸信介を「自主独立派」の政治家とみなして肯定するのであれば、「安倍・橋下」政権を否定する理由など何もなくなる。

現在、民自公の一部にある「大連立」志向はよく「大政翼賛会」になぞらえられる。その指摘自体は間違っていないと思うし、私も民自公大連立には反対だ。しかし、1940年の「大政翼賛会」は決して無批判に受け入れられたわけではない。当時も「右」からの強烈な批判があった。その急先鋒が平沼騏一郎だったから、時の近衛文麿首相は平沼を閣内に取り込んだ。それでも、「大政翼賛会は『赤』だ」という「右」からの批判は一定の支持を受けた。

岸信介を肯定的に評価して陰謀論をかます孫崎享に代表されるような「反米愛国」の人たちは、言ってみれば「大政翼賛会」を「右」から批判した勢力に対応するのではないか。彼らは、大政翼賛会ともども戦後否定されることになり、大政翼賛会でも右からの批判でもない「デモクラシー」が占領軍(アメリカ)によって導入された。

現在も似たような状況で、消費税増税を3党合意で導入した民自公「大政翼賛会」やそれに対する右からの批判勢力である「維新」(橋下)は、いつになるかわからない「戦」後、ともに否定されることになるだろう。

しかし、現状の延長戦を突き進むのであれば、残念ながら必ずや一度は破局的局面を経由せざるを得ないのではないだろうか。
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初めに、昨日(15日)の毎日新聞岩手版の記事を紹介する。

http://mainichi.jp/area/iwate/news/20111115ddlk03010066000c.html

民主県連:県議選、過半数割れ「平野氏の入閣が一因」 異例の個人批判 /岩手

 民主党県連は13日、盛岡市内で総務会・常任幹事会を開き、9月にあった知事選・県議選を総括した。

 県議選で目標とした定数(48)の過半数に届かなかった要因の一つとして、7月に放言で引責辞任した松本龍氏の後任に県連副代表の平野達男復興担当相が入閣したことを挙げ、「菅政権の延命を後押しした上、その後の(民主党)代表選でも独自に活動した」と名指しで厳しく批判した。

 県連代表代行の菊池長右エ門衆院議員は、異例の個人批判を行った経緯について「震災対応の遅れなどを理由に菅政権の早期退陣を目指して行動する中、仮に平野氏が入閣要請を受けなければ退陣がもっと早くなっただろう」と指摘。その後の民主党代表選でも小沢一郎元代表のグループが支持する候補とは別の候補を支援したとし、「元代表の胸中をそんたくした場合、ここまで(総括文に)書かなければいけないと考えた」と説明した。

 また、陸前高田、一関の両選挙区で現有議席を確保できなかった衆院3区で「特に党勢退潮が顕著である」とし、各総支部の立て直しを求めた。

 民主党籍を持つ達増拓也知事が再選を果たした知事選は、得票率が目標を上回る68%となり、全市町村で他候補に勝利したことから「完勝に近い圧勝」と総括した。【金寿英】

(毎日新聞 2011年11月15日 地方版)


この記事を読んで何の問題も感じない人間はどうかしていると思う。これは、記事を書いた毎日新聞(岩手支局?)の金寿英記者にその意図があったかどうかはともかくとして、岩手県の民主党における小沢一郎の「個人崇拝」を戯画化した記事だ。

小沢一郎の異様さはこういうところにある。今ダブル選挙を行なっている大阪の橋下徹や今年4月に4選を果たした東京の石原慎太郎についてもいえることだが、「強そうな者、頼れそうな者」として持ち上げられた彼ら権力者は「信者」を生み出し、個人崇拝の対象になるのである。

9月の新内閣発足以来、野田政権(「野ダメ」政権)の悪行は目を覆うばかりで、TPP参加表明を強行したあとには「消費税増税」の政局が待っている。その野田内閣が発足した時、「菅、枝野、岡田、仙谷が内閣を去って爽やかな秋風内閣デス」などと言っていた「小沢信者」がいた。この人間は、「これから、国民の生活が第一へと本気度を示せば、拉致問題と普天間問題も解決へ前進しそうな内閣」だなどと、「野ダメ」内閣を天まで届かんばかりに持ち上げていたが、それからわずか2か月。「野ダメ」内閣や民主党はいったい何をやってきたのか。

ひどかったのはTPP政局で、民主党内の「TPP反対派」と呼ばれていた人たちは、野田佳彦の明白な「TPP参加表明」を「あれは参加表明ではない、関係国と協議に入るだけだ」などという意味不明の言葉を吐いて、結局内閣不信任案提出どころか民主党離党もしなかった。

私は最初っからそういう経緯をたどるほかないと確信していたから、あまりに予想通りだったので拍子抜けしたほどだが、山田正彦らを正真正銘の「TPP反対派」だと思い込んでいた(信仰していた?)人たちは「山田の裏切りは許せない」と怒り狂っている。だが、あんなのは裏切りでもなんでもない。最初からそういう人たちなのである。

鍵はボスの小沢一郎の真意にあった。腹の底では「TPPに反対ではない」小沢一郎は、手の者たちの行動を抑えたのである。これまでの長年にわたる小沢の軌跡を知っている人間にとっては、小沢が「TPP反対」に打って出るはずがないことなどあまりにもわかりきった話だった。「小沢さんならTPP反対に立ち上がってくれるはず」という小沢信者の信仰は、妄想に過ぎなかった。

「野ダメ」は「TPPには一段落つけた。今後は消費税だ」と思っているに違いないが、消費税の問題では小沢一味もTPPとは違った動きをするかもしれない。消費税の問題はいずれ当ブログでも扱うだろうから、この記事では昨日(11月15日)に報じられた下記のニュースに触れておこう。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20111115-OYT1T00381.htm

製造業派遣「原則禁止」削除…民自公が大筋合意

 政府提出の労働者派遣法改正案に盛り込まれた「製造業派遣」と「登録型派遣」をそれぞれ原則禁止する規定について、民主、自民、公明3党が両規定の削除で大筋合意したことが15日、分かった。両規定に反対する自公両党に民主党が譲歩した。

 同改正案は修正のうえ、今国会で成立する見通しとなった。

 同改正案は派遣労働者の待遇改善を目指し、2010年の通常国会に提出された。改正案には、〈1〉派遣元企業が得る手数料の割合を明示するよう義務づけ〈2〉製造業への派遣は原則禁止〈3〉仕事がある時だけ派遣元と雇用契約を結ぶ登録型派遣は秘書や通訳などの専門26業種以外で原則禁止――などを規定した。

 このうち、製造業派遣と登録型派遣の原則禁止には、経済界に「急な仕事の発注に対応できない中小企業が影響を受ける」などと反対意見が強い。自公両党も経済界の懸念を踏まえて政府案を批判。同改正案は衆院で継続審議となり、今国会でも実質的な審議に入れないままになっている。

 このため、民主党は、製造業派遣と登録型派遣の原則禁止以外の待遇改善策の実現を急ぐ必要があると判断し、両規定の削除に応じることにした。

(2011年11月15日11時15分 読売新聞)


製造業への派遣を認める労働者派遣法は2004年に改正されたが、この時岡田克也菅直人代表時代の民主党は改正案に反対した。民主党は派遣労働を原則自由化した1999年の同法改正時にはこれに賛成したが、昨年だか今年だかに枝野幸男が「賛成したのは誤りだった」と言った。ちなみに1999年当時の民主党代表もやはり菅直人であり、小沢一郎は自由党、つまり連立与党の側にいて同法改正を推進していた。

今回、民主党が自公に妥協したことは、要するに「経団連に屈した」のと同じことであり、「1999年の労働者派遣法改正に賛成したのは誤り」どころか、2004年の同法改正に民主党が反対したことさえ否定する、めちゃくちゃな妥協であり経団連への屈服だ。これは考えられないほどひどい退歩である。

これもまあ、「野ダメ」が代表を務める今の民主党ならやりそうなことだと思うが、民主党内の小沢一郎一味がこの件で「野ダメ」執行部を批判して騒いだという話は寡聞にして知らない。要するに、なんだかんだ言って「小沢自治労」(右翼の評論家・屋山太郎の命名)もまた「経団連となあなあ」の保守政治家に過ぎないということだ。

こんな小沢一郎のような政治家に夢を託す世の「リベラル・左派」のふがいなさを嘆くほかはない。発売中の『サンデー毎日』で小沢一郎にインタビューしている鳥越俊太郎などがその代表格だが、このインタビューを読んで「小沢さんはやっぱり『TPP反対派』だし、『脱原発派』なんだな」と思って安心する「小沢信者」は「アホの活き造り」以外のなにものでもない。事実は小沢一郎は菅内閣当時の浜岡原発の再稼働を受けて内閣不信任案騒動を起こしたが、野田佳彦のTPP参加表明に際しては手の者の動きを制止したのである。小沢一郎の真意はこれらの結果から読み取らなければならない。

大阪をダメにするのが橋下徹、東京をダメにするのが石原慎太郎なら、日本をダメにするのは小沢一郎である。その害毒はあまりにもひどい。目に余る。

[追記](2011.11.17)
2004年の労働者派遣法改正の審議は2003年に行なわれ、当時の民主党代表は最初当記事に書いた岡田克也ではなく菅直人でした。訂正します(本文も訂正しました)。
一昨日(6日)、昨日(7日)の2日間で、2008年3月30日付当ブログエントリ「極左と紙一重の極右・稲田朋美を衆議院選挙で落選させよう」へのアクセスが3千5百件強にのぼり、その間更新しなかった当ブログのアクセス数を押し上げた。6日に稲田朋美が行った代表質問が、視聴者の心をとらえたものらしい。上記は、一昨年3月から4月にかけて、当ブログが何度か稲田朋美を取り上げて批判したエントリの一つだが、なぜこの頃稲田朋美が話題になったかというと、一昨年3月に映画「靖国 YASUKUNI」(李纓監督)の試写会で映画にクレームをつけ、その結果映画館が予定していた映画の公開を延期する騒ぎが起きたからだ。

最初にこの件について書いた、同年3月12日付エントリ「テロを肯定する女・稲田朋美が今度は映画を検閲しようとした」を読み返すと、この時にも、TBSの「NEWS23」がこの件を報じると同時に、当ブログへのアクセスが急増したために稲田の妄動を知るに至ったいきさつが書かれている。一度ならず二度までもアクセス数を押し上げてもらって、私は福井に足を向けて寝られそうにもない(笑)。

こんなことがあったおかげで、私は映画「靖国 YASUKUNI」に興味を惹かれ、実際に映画館でこれを見たが、当時自民党の右翼議員・島村宜伸が「一貫したストーリーを見せるというよりは、様々な場面をつなげた映画。自虐的な歴史観に観客を無理やり引っ張り込むものではなかった」と述べた通りの内容で、むしろ思想の右左を問わず多くの方に是非ご覧いただきたい映画だと思ったほどだ(映画としてとびきりの傑作だとは思わなかったが)。なお、この映画にはほかならぬ稲田朋美も出てくる。

稲田朋美は、そんな映画に公開中止の圧力をかけ、現実に多くの映画館が公開を取りやめる中、辛うじて東京・渋谷の映画館が一昨年の憲法記念日に公開した。一方、稲田朋美の行動はどうだったかというと、同年4月6日のテレビ朝日『サンデープロジェクト』の出演交渉を受けながら出演を承諾せず、おかげで番組は田原総一朗による稲田朋美の欠席裁判となり、稲田は厳しく指弾された。これは、2002年8月に田原が高市早苗の、やはり靖国に関する言葉に対して、「こういう幼稚な人がね、下品な言葉で、靖国、靖国って言う」と激怒した時と並んで、田原の「靖国二大激怒事件」だった。

田原総一朗との議論からは逃げる「腰抜け」(笑)の稲田朋美だが、大衆をアジる才能だけは抜群らしい。他にも当ブログの天敵・城内実をはじめとして、その名がメディアに取り上げられると当ブログのアクセス数が伸びる政治家はいるが、国会の代表質問だけでここまでアクセス数を押し上げる政治家は、ほかにはいない。例えば城内実が当ブログのアクセス数を押し上げたのは、眞鍋かをりさんを無断で選挙ポスターに用いた件や、冬季五輪で女子フィギュアスケートについて城内実がブログに何か書いた時だった。城内実は、アジテーションよりも芸能・スポーツ関係が得意らしい。

実際、稲田朋美の国会代表質問は、昨日(7日)の朝日新聞にもほとんど取り上げられておらず、稲田が「総理がなすべきことは内閣総辞職か一刻も早い衆院解散」と言ったことが触れられているだけだ。あと、稲田の言葉遣いに菅直人首相が切れた件はコラムに書いてあって、菅直人も同様の言葉遣いで小泉純一郎首相(当時)の失言を引き出したじゃないか、と、菅直人を揶揄するのに引き合いに出されてはいるが、稲田自身はそのダシにされたにすぎない。しかし、テレビで稲田の質問を見ていた人のインパクトが大きかったことは、平日の昼間で視聴率もごく低かったであろう国会中継なのに、検索語「稲田朋美」でググった人たちが多かったことからうかがい知ることができる。

私が苦々しく思うのは、稲田朋美の質問に熱狂した人たちの多くが、その前に質問した谷垣禎一・自民党総裁を引き合いに出し、谷垣を批判して稲田を持ち上げる挙に出ていることだ。しかも、それはネット右翼にとどまらず、先の参院選で「みんなの党」に投票した天木直人も同じだ。「みんなの党」に投票した天木直人は、稲田朋美の代表質問を、

一切の馴れ合いを排し、周到に準備された自分の言葉で菅民主党政権の政策の弱点や、民主党という政党が抱えている矛盾を見事についた。民主党攻撃材料のすべてがその中にあった。

と絶賛するが、同じ代表質問を見た『日本がアブナイ!』のブログ主・mewさんは、

何か「国旗や愛国心」がどうの「反日行為」がどうの「腰抜け」「愚挙」などと,今、国民が目の前で抱えている問題など目にはいっていないかのようなことばっか言っていて、「あら、自民党は、また超保守の新人女性でも売り出すつもりなのかしらん」と思いつつ、TVに近寄ってみたら、何と、あの超保守のマドンナの稲田朋美ちゃんだったですぅ。(@@)

と書いている。あまりの落差に、頭がクラクラする。

実際、問題なのは国民生活にかかわりが深い経済問題のはずで、稲田朋美の代表質問を無視した朝日新聞は、「税制改革 定まらぬ首相」という見出しの記事を、「政策」面と銘打った7面に載せているが、参院選惨敗後、消費税増税を口にしなくなった菅首相に不満たらたらの上、菅首相が公約している法人税減税について、企業を優遇する租特(租税特別措置)の見直しなどの「課税ベース(対象)の拡大」を前提としていること、つまり法人税全体としては減収にならない方向性を示していることについて、

産業界は「全体の税負担が実際に軽くなる改革でなければ、国際競争力の強化にならない」と指摘する。

などと、財界を代弁する記事を書いている。この記事を書いたのは伊藤裕香子という記者であり、見覚えがあったので自ブログ内検索をかけてみると案の定で、今年6月11日付エントリ「消費税増税による財政再建を暗に求める朝日新聞の欺瞞」が引っかかった。朝日新聞経済部の「経済右派」記者として記憶しておきたい。伊藤裕香子の記事にも典型的に見られる通り、朝日新聞は菅政権を、経済軸のさらに「右」から攻撃している。これは昔からずっとそうで、あの安倍晋三でさえ朝日新聞に経済軸の「右」側から攻撃されたことがある。

朝日新聞がますます「小さな政府」志向を鮮明にしてきた現状こそ問題なのだが、そんなことは天木直人の関心の埒外らしい。経済問題に関心を持たず、極右の稲田朋美が菅政権を攻撃するのを「敵の敵は味方」の論理から喜ぶ、「みんなの党」に投票した天木直人のような人間が、「小沢信者」たちに悪影響を与え、日本をますますダメにする。

そもそも、小沢信者の思考様式は「敵味方志向」の一語で言い表されるものであり、だからかつては主張が稲田朋美とほとんど変わらない城内実を絶賛しながら、映画『靖国 YASUKUNI』公開中止の圧力をかけた稲田朋美を非難するなどの矛盾した行動をとっていた。その意味では、小沢信者がいまや稲田朋美をも絶賛するようになったことは矛盾が一つ解消した、喜ばしいことなのかもしれない。

小沢信者の大きな矛盾はもう一つあって、橋下徹を激しく非難しながら、河村たかしを絶賛することだ。こと歴史修正主義に関しては、河村たかしは橋下徹よりもずっと安倍晋三・平沼赳夫・城内実・稲田朋美らに近い。また経済政策も極端な新自由主義である。ところが、小沢一郎が河村たかしによる名古屋市議会リコールの署名運動を支援して、松木謙公や三宅雪子らを名古屋に送り込んだいきさつなどもあり、小沢信者の多くは河村たかしを絶賛する。

アメリカで、「ティーパーティー運動」というのがあり、「9・11陰謀論者」として小沢信者の間でも人気の高い共和党下院議員のロン・ポールが始め、次期大統領候補(!)といわれるサラ・ペイリンも参加している。そういえば、前記『日本がアブナイ!』で、ブログ主の友人によると、ペイリンは「共和党の稲田朋美みたいなやつ」なのだそうだ。言い得て妙であり、ペイリンもまた極右で有名だ。

例によって脱線したが、「ティーパーティー運動」とは何ぞや、というと、要するに現在の共和党よりももっと過激に「規制緩和」と「小さな政府」を目指す運動だ。河村たかしらの運動は、要するに「日本版ティーパーティー」運動といえ、それは小泉純一郎や竹中平蔵らよりももっと過激に「規制緩和」と「小さな政府」を目指すものにほかならない。しかも、小泉純一郎は靖国神社参拝には熱心だったものの、それは保守的な支持者のご機嫌を取るための打算に基づくもので、小泉自身は必ずしも歴史修正主義者とはいえない一方、河村たかしは "THE FACTS" の意見広告にも名を連ねた、筋金入りの歴史修正主義者である。極端な新自由主義者にして、極端な新保守主義者、というより極右。これが河村たかしの正体なのである。

こういうのを公然と支援する小沢一郎とは何者なのか、と私は言っている。私が「小沢=河村」と決めつけていると、読者のcubeさんはご不満の様子だが、cubeさんが「小沢=河村」に対する反証を示したことは一度もない。小沢一郎の功罪の総括がなされないまま強引に小沢一郎を葬り去ろうというのが、「西松事件」以来の一連の流れであり、特捜検察の捜査や検察審査会の議決をも私は強く非難する。その上で小沢一郎を批判している。

だが、真に問題なのは、もはや小沢一郎自身より「小沢信者」であり、彼らはかつての「小泉信者」と質において何も変わらないばかりか、「小泉信者」をより一層極端にしたものになっている。

稲田朋美や河村たかしを持ち上げることが一体何を意味するのか、冷静に考えてみよといいたいが、そもそも冷静に物事を考えることのできる人間であれば、「信者」になんかなりようがないよなあと匙を投げる今日この頃なのである。


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