小沢一郎には昔から根強い支持者がいて、彼らは自民党時代、自由党時代からずっと応援を続けており、小沢一郎が自民党・自由党時代に唱えていた「自己責任」論や「小さな政府」論を支持する傾向が強い。『カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの虚業日記』(2006年1月22日付)によると、小沢一郎が1993年の参院選前に出した本『日本改造計画』には、「ナイアガラの滝には柵がない、それがアメリカの自己責任精神というものだ」と書かれているが、伊東四朗がナイアガラの滝を旅行する番組に、ナイアガラの滝に設けられた柵が映っていたそうだ。
上記リンク先には、「安倍晋三の地元・下関市長・江島潔と、広域暴力団・合田一家と連合山口が癒着」と題した記事もある。2006年1月22日というと、ライブドア事件で堀江貴文が逮捕される前日だが、5日前には耐震偽装事件に関するヒューザー・小嶋進の証人喚問で「安晋会」の存在が暴かれたばかりであり、ネットでも安倍晋三批判が盛り上がり始めていた。ライブドア事件に絡んだ野口英昭の怪死事件(「自殺」として処理された)が起きたのは、小嶋が「安晋会」の存在を暴いた翌日の1月18日だったが、その野口英昭がなんと「安晋会」の理事だったことを報じた『週刊ポスト』が発売されたのは、上記カマヤンの記事が書かれた8日後、1月30日のことだった。
この頃、安倍晋三批判に加わった人たちから、2006年4月に民主党代表に就任した小沢一郎を熱狂的に支持する、「小沢信者」と呼ばれる人々が生まれた。彼らは、自民党・自由党時代の小沢一郎にはほとんど関心がなかった。ネットにおいて彼らを煽っているのが植草一秀で、彼は「良い小さな政府」を理想とする、かつてテレビ東京にレギュラー番組を持っていた元人気エコノミストである。
小沢・植草信者にもさまざまなバリエーションがあり、平沼赳夫や城内実を熱心に応援する人たちもいたことは、ネットのこの界隈ではよく知られている。当ブログは、アンチ平沼赳夫・アンチ城内実の論陣を張って、彼らのみならず、城内実に関しては政治家本人からも批判を浴びたが、城内実が国籍法改正に関して自らのブログにレイシズム剥き出しの記事を掲載した時、当ブログが城内実を批判する記事を公開し、多くのアクセスをいただいた経緯がある以上やむを得ない。城内実はその後も「眞鍋かをりさんポスター事件」を引き起こし、最近ではバンクーバー冬季五輪をめぐる記事で、自らのブログを炎上させた。
ネットにおける「左」側の平沼・城内信者の言論を代表するフレーズとして、「共産党員すら認める、平沼赳夫という人物」というのがある。その平沼赳夫が与謝野馨と野合して「たちあがれ日本」を結成し、参院選に惨敗した現在、彼らの言説を振り返ってみるのも面白いだろう。前述の参院選山梨選挙区には、安倍晋三・平沼赳夫・城内実の3人が中心となっている議員連盟「創生『日本』」が異様に入れ込んでいた事実を指摘しておく。輿石東は山梨県教職員組合(山教組)を支持母体とする政治家であり、民主党に転じて岩手県教職員組合(岩教組)を支持母体の一つとするようになったといわれている小沢一郎とは盟友中の盟友である。その小沢一郎の盟友を何が何でも落選させようとした「創生『日本』」の中心人物が、安倍晋三・平沼赳夫・城内実の3人なのである。
平沼赳夫は与謝野馨と野合したわけだが、それ以前の平沼赳夫や城内実の経済政策のブレーンが植草一秀だったといわれている。平沼赳夫のメッキは完全に剥がれたが、今後植草一秀のメッキも徐々に剥がれていくだろう。
「たちあがれ日本」の惨敗は、ネット右翼にも打撃を与え、彼らの意気もいっこうに上がらない。代わって息を吹き返したのが、小泉純一郎政権時代全盛だった「自己責任」厨、「小さな政府」厨であり、「みんなの党」の躍進でその勢いをますます増している。
「みんなの党」の政策というと高橋洋一の唱えるリフレが中心であり、裏を返せば財政政策を軽視する「小さな政府」路線の代表的な政党であるといえる。国民新党、社民党、共産党の消費税増税批判は、「みんなの党」の消費税増税批判に回収されてしまって、「みんなの党」の党勢拡大に協力する形となった。『AERA』の6月21日付記事「経済オンチ菅首相が学んだ『小野理論』と消費増税」(一時ネットでも読めたそうだが現在は削除されている)によると、高橋洋一氏のリフレ政策は、菅直人首相にも影響を与えかかったそうだ。勝間和代が菅首相にリフレ政策を進言したこともあった。しかし、結局菅首相が傾斜したのはケインズ派の学者(小野善康阪大教授、神野直彦東大名誉教授など)だった(菅首相の言動はブレーンの学者たちの思想とはだいぶ乖離しているとも思うけれども)。
これに対し、リフレ派の経済学者・飯田泰之は参院選前、『週刊朝日』で、「みんなの党」と明言こそしなかったが「第三極」という表現で、「みんなの党」支持を誘導するような発言をしていた。他方では、池田信夫が「菅首相の『第三の道』や神野直彦氏の『強い社会保障』に共通にみられるのは、マルクス主義の影響である」などとめちゃくちゃな妄言を吐いている。こんな人物に大学教授が務まるとは私には信じられず、彼に教わる学生が気の毒でならない。
このように、経済政策の観点からも、あらゆる方面から攻撃を受ける菅直人首相だが、実際菅首相が唐突に打ち出した消費税増税の政策は確かに最悪で、何のビジョンも示さずにただ消費税増税を掲げても、財政再建に用いられるか法人税減税の穴埋めにしか使われず、日本経済をさらに悪化させるだけであることは明白だ。
とはいえ、いずれ増税は不可避である。菅首相のフレーズ「強い経済、強い財政、強い社会保障」は、「強い経済」については判断を保留するが、少なくとも「強い財政」と「強い社会保障」は間違っていない。ここで、「強い財政」とは「強い再分配機能」を意味するのであって、間違っても「財政再建」(「財政均衡主義」と同義)を意味しないことは、どんなに強調しても強調しすぎることはないが、残念ながら菅首相自身が両者を混同しているように見える。菅首相がしきりに「ギリシャ」を引き合いに出すのがその表れであり、私はこれを耳にするたびに脱力してしまう。
しかし、よりどうしようもないのは小沢信者たちであって、最近では、テレビで森昌子の「せんせい」の替え歌「減税」を歌う映像が流れた河村たかしをマンセーする言説が現れた(植草一秀が作った長淵剛の「乾杯」の替え歌「菅敗」にも呆れたけれど)。河村曰く、「政治というのは納税者が徴税者と戦う歴史」、「有権者の皆さんが一番大事なことは、減税を要求すること」なのだそうだ。
これこそ典型的な新自由主義の論理なのだが、菅直人を「新自由主義者」として非難する「小沢信者」たちは、そのおかしさに気づかない。それどころか、彼らのイデオローグが唱える「良い小さな政府」というフレーズについて、単に批判しないだけならまだしも議論もしない。普通なら、イデオローグが唱える「良い小さな政府」という理想を達成するためには何をなすべきか、などの議論が生じるはずだと思うが、そうはならない。彼らが「小沢支持者」ではなく「小沢信者」と呼ばれるゆえんだ。
そして、河村たかしの主張が庶民の心をとらえているのが現状である以上、有権者の支持は「みんなの党」に集まり、社民党や共産党には集まらない。これは、あまりにも当然だ。ごく狭いネットの世界で小沢一郎に支持を集めるために用いられるのと同じ論理が、世間一般では「みんなの党」に支持を集めるために用いられる。もちろん、大衆への訴求力が強いのは「みんなの党」の方だ。
なぜ国民が税金を払いたがらないかというと、税金が正しく使われないからである。税金が正しく使われ、再分配の効果があることがわかれば、むしろ国民の側から進んで納税するようになるし、直接税の税収を上げて、それでもなお財源が不足する場合には、消費税増税にも国民が応じるようになる。この道筋をはっきり示さなければならないのに、首相は何の前触れもなく突然消費税増税を言い出すし、少し前まで連立を組んでいた少数野党の党首は「増税反対」しか有権者に伝わらない訴え方をした。
これでは、参院選で新自由主義政党が躍進したのも道理だ。
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事前の情勢調査で、地方の一人区における自民党優勢が伝えられていたが、それがさらに加速した。自民党は、一人区を21勝8敗と圧勝した。
民主党は、比例区では第一党を維持したが、前々回(2004年)、前回(2007年)より得票率及び獲得議席を減らした。また、自民党は比例区における低落傾向に歯止めがかからず、過去最低の議席数を記録したものの、一人区での貯金にものをいわせて、9年ぶりに改選第一党の結果を勝ち得た。
民主党対自民党以外で注目されるのは、みんなの党が得票を伸ばしたことだが、思ったほどの爆発的な勢いではなかった。公明党は議席を減らした。また、与党の国民新党、野党の共産党、社民党、国民新党は揃って惨敗するとともに、雨後の筍のように立ち上がった「たちあがれ日本」、「日本創新党」、「新党改革」もいずれも惨敗し、「たちあがれ」と「新党改革」が各1議席、「日本創新党」は獲得議席ゼロに終わった。
要するに、勝ったのは自民党とみんなの党だけだったのだが、勝ったはずの自民党も比例区では過去最少の議席を記録したことを、再度強調しておきたい。
昨日(11日)はずっと開票速報を見ていたのだが、風が吹かない選挙ではこういう結果になるのかなあと思った。
地域にもよるのかもしれないが、地方議会においては自民党の議席が圧倒的に多く、民主党の議席は最近少し増えたもののほんのわずかである。だから、自民党政権時代には、いつも国政選挙の1か月前くらいまでは民主党の支持率は低く、これで選挙になるのかと訝るくらいだったが、選挙直前になると論戦がテレビで注目されたところに小泉首相が失言するなどして(たとえば「人生いろいろ」発言など)民主党に追い風が吹き、民主党は2003年の衆院選で躍進し、2004年の参院選では改選第一党になった。もちろん、自民党も手をこまねいていたわけではなく、03年には当時「国民的人気」があるとされていた安倍晋三を幹事長に据え、04年には参院選前に当時の小泉首相が北朝鮮訪問を行うなど、人気取りの手を打ってきたが、安倍晋三が小泉が期待したほどの能力を持っていなかったために、小泉がもくろんだような結果は出せなかった。
これらの選挙を見ながら、民主党も綱渡りの選挙をするなあと思っていたのだが、2005年、小泉はついに順風を吹かせることに成功した。「郵政総選挙」である。自民党に吹いた猛烈な追い風の前に、民主党はなすすべなく惨敗した。あの時、民主党は「風」に頼った選挙のやり方が間違っていることを痛感したはずだ。だから、2006年に民主党代表に就任した小沢一郎は、地方を回って支持を訴え、2007年の参院選の大勝につなげた。
とはいえ、2007年の参院選も「消えた年金」問題という風が吹いたから民主党が勝ったのだった。今でも覚えているのだが、あの年の4月から5月前半くらいまでは、安倍内閣も自民党も支持率が高くて、まさか参院選で自民党が負けるとは思えなかった。それが、「消えた年金」問題と、松岡利勝農水相(当時)の自殺などで、あっという間に風向きが変わった。国民の生活そっちのけでひたすら「改憲」にだけ熱中した当時の首相・安倍晋三も実質的に民主党を応援したようなものだった。つまり、あの選挙でもやはり強烈な「風」が吹いたのだ。
ところが、今回の選挙ではそういった「風」がなかったように思う。菅直人首相が唐突に消費税増税を言い出して、民主党に逆風が吹いたとはいうものの、自民党もそれ以前に消費税増税を打ち出していた。民主も自民も、互いに風を打ち消すような行動をとった。こうして無風化された時、政党の地力が出たのだと思う。民主党の小宮山洋子が、一人区では地方議会の議員が自民党と比較して圧倒的に少ないことが響いたと言っていたが、そういう要因は確かにあっただろう。
当然、民主党は来年の統一地方選で地方議会での議席増を狙ってくるだろうが、大きな問題がある。というのは、現在の民主党は、あまりに都市部リベラルの利益代表という色合いが強すぎて、地方ではなかなか支持が得られないのではないかと思うのだ。特に、菅直人首相や枝野幸男幹事長は「都市部リベラル」の色彩が強い。
今回、民主党執行部が情勢を甘く見たのも、彼らが東京ではさほど逆風を感じなかったこともあるのではないか。東京では民主党は2議席を獲得して、得票数も多かったし、私の周囲でも、民主党支持の声が多かった。しかし、地方はそんなもんじゃないぞ、と私は思っていたのだった。現時点というか近い将来における消費税増税の悪影響は痛んでいる地方を直撃する。だから、自民党も民主党も消費税増税を言っているなら、昔からなじみのある自民党が消去法で選ばれる。地方での強さに関しては、民主党は自民党の足元にも及ばないし、菅直人は小沢一郎の足下にも及ばない。
民主党が都市リベラルに偏りすぎた体質を改めるのは容易ではない。何より、同じく都市部を支持基盤とする前原誠司や野田佳彦らが持っている新自由主義的体質を克服しなければ、民主党が地方で地力を蓄えることはできない。新自由主義は、地方との相性が悪い。再分配がうまく働かなければ、地方はどんどん疲弊する。
今回の選挙結果を教訓として、民主党は新自由主義的体質を改めるべきだと思うが、実際には躍進した新自由主義政党・みんなの党に幻惑されて、逆に新自由主義色を強めるのではないか。みんなの党は、選挙区での当選者は首都圏だけであり、残りは比例区の票で議席を稼ぐ勢力である。そういう性格を持っているから、決して単独では天下はとれない。だから、民主党がそういう政党の真似をしても、墓穴を掘るだけだと思うのだが、彼らは失敗から学ばない人たちだから、きっと墓穴を掘るだろう。国民の新自由主義への幻想はまだまだ強く、もう一度新自由主義の政治で痛い目に合わなければ社民主義的な方向への転換はできないのではないかと私は悲観的に予想している。
もう一つ私が関心を持っているのが、例の比例定数削減の話である。今回の参院選でも、民主党は菅直人がぶれまくったことで比例票をずいぶん「みんなの党」にとられたけれど、それでもなお比例区で強みを持つ政党である。そんな政党が比例区定数を削減するなんて自殺行為だと思うし、民主党内の政治家の色分けでも、小沢一郎な地方に強い政治家であれば小選挙区主体の選挙でも勝てるが、菅直人のような都市型の政治家にとっては、小選挙区制主体の選挙は苦手なはずだ。それを示したのが昨年の衆院選であり、今回の参院選における民主党の一人区惨敗だった。
だから、小沢一郎と鳩山由紀夫が熱心に推進していた「衆院比例定数80削減」を止めようと言い出す理性的な議員が、反あるいは非小沢側から出てきても良いと思う。別に親小沢側から出てきても良いと思うけれども、それはあり得ないだろう。しかし私は、民主党の国会議員たちにはそんな勇気のないだろうだから、この方針を撤回はしないだろうと考えている。なぜなら、それは二大政党制を志向する民主党のイデオロギー自体を見直すことを意味するからだ。いい加減民主党内から二大政党志向見直しの議論が出てきても良さそうなものだが、なかなか出てこない。衆院比例定数削減法案自体は提出しても成立しないだろうから、普通に考えれば提出はしないはずだけれど、これだって民主党と自民党がつるんで強引に成立させる可能性がある。この場合もっとも得をするのは、いうまでもなく自民党である。
民主党の話ばかりしたが、勝った自民党については特に言うことはない。比例区の得票は惨敗した前回参院選よりかえって減らしているくらいであり、今回の選挙では、民主党の敵失と、長年築いてきた地方での蓄積にものを言わせただけだ。自民党低落のトレンドは変わっていない。だが、歴史的使命を終えた政党とはいえ、しぶとさは大したもので、かつての社会党のように一気に衰退するのではなく、徐々に衰えていくのだろう。微減の公明党も同様に、徐々に衰退しながらも今後も国会に議席を得ていくに違いない。
問題は、消費税増税に強硬に反対した国民新党、共産党、社民党の三党である。国民新党の場合、連立政権において思想右翼の度合いを強めて連立政権の成果を出す上で障害になったデメリットがあり、せっかくの経済政策におけるメリットを打ち消してあまりあるものだったので、獲得議席ゼロという今回の惨敗も仕方ないと思うが、共産党と社民党の比例区における得票が3年前と比較して減っていて、「みんなの党」に食われた形になっているのはまったくいただけない。共産党の訴えも社民党の訴えも、「消費税増税反対」しか有権者には伝わっておらず、だからアピールできないのである。
共産党は「科学的社会主義」を標榜しているが、社民党は社会民主主義的な福祉国家を目指す政党であるはずだ。それなら、目指す社会のビジョンと、そこに至る道筋を示さなければならない。「消費税ハンターイ」とだけ言っていれば参院選に圧勝できた21年前の成功体験にいまだにしがみついているから、同じ消費税増税反対を主張する「みんなの党」に票を取られてしまう。「みんなの党」は「小さな政府」を目指すとはっきり言っている。社民党はそれとは対極の「サービスが大きくて賢い政府」を目指す政党のはずだが、それを訴える努力があまりにも欠けていた。だから社民党はダメなのだ。開票速報のあとに田原総一朗の司会でやっていたテレビ朝日の番組を見ていると、辻元清美にはそのあたりを説得力を持って訴える能力があると思った。福島瑞穂党首とは不仲なのかもしれないが、辻元氏が今後の社民党のキーパーソンになるように私には思われる。
共産党については、今後党内で開かれた議論ができるかどうかに党勢の回復がかかっているのではないか。今回の参院選では、政権を批判する政党として唯一筋が通った政党だったから共産党に投票したが、政権をとる力をもった政党として期待して投票したわけではない。「科学的社会主義」にこだわるなら独自の道を行くのも良いだろうが、「共生党」的な党のあり方を志向するのであれば、開かれた党体質に改め、社民党は言うに及ばず、さらに広く「反貧困」運動との協力関係を構築して支持層を広げる努力が求められるだろう。
いずれにしても、「消費税増税反対」しか伝わらなかった(本当はそれ以外のことも言っていたのだろうし、選挙戦終盤では報道もされていたけど)これまでの行き方を続ける限り、社民党にも共産党にも未来はないことがはっきりした。
躍進した「みんなの党」だが、これはいうまでもなく徹底的な「小さな政府」を主張する政党である。雑誌『ロスジェネ』などで人気を得た学者たちが、今回「第三極」を宣伝して、暗に「みんなの党」支持へと人々を誘導する動きを見せたことには、彼らの正体見たりの思いだが、それが劇的に選挙結果に反映したというほどの選挙結果でもなかった。それでも、今後「みんなの党」の影響力を増すだろうと考えるとうんざりさせられる。
今回の参院選で、せめてもの溜飲を下げたのは、いうまでもなく「たちあがれ日本」、「日本創新党」、「新党改革」の3党の惨敗だった。平沼赳夫も与謝野馨も山田宏も中田宏も舛添要一も全然テレビの画面に出てこなかったし、「日本創新党」の比例区の得票は、女性党に肉薄されていた。党発足時からは考えられない惨敗だった。これで彼らの影響力もずいぶん削がれるだろう。ここ数年、平沼赳夫が「新党を結成する」と叫んでは週刊誌に取り上げてもらうというパターンが続き、「真正保守」の政党でもできるのかと思ったが、何もできないことがこれで証明された。今後、平沼赳夫がメディアに取り上げられる機会は激減するだろう。他の面々も同様である。クソ面白くもなかった参院選で、唯一溜飲を下げたのがこれらの党の惨敗だった。だがそれも、「三党揃って全滅」ではなかったので画竜点睛を欠いた。残り3議席の時点まで、「たちあがれ日本」と「新党改革」は獲得議席数ゼロだったのだが、「たちあがれ」と「改革」が立て続けに議席を確保したのに失望させられた。残る1議席を社民党が獲得して、同党はようやく2議席目を得るとともに、国民新党の獲得議席ゼロが確定した。最後まで不愉快な開票速報だった。
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朝日新聞の予想通りになれば、現有議席との比較でいうと自民党も増えることになるが、私が基準としているのは2004年参院選における民主党50議席、自民党49議席という獲得議席数であり、両党ともこれを下回った場合敗北であると見なす。つまり、現状では両党とも敗北する可能性が高いわけで、その代わりに伸びる政党が「みんなの党」ということになると、いわゆる「民意」は、民主党と自民党がともに掲げる消費税増税に「ノー」だということになる。
特に注意を喚起したいのは自民党の比例区獲得議席の予想であり、朝日の紙面を見ると11議席程度となっている。2004年は15議席、07年には14議席だった。あれほど「惨敗」した安倍晋三時代の自民党の参院選で、自民党は比例区では1議席しか減らしていないが、今回は党勢が大幅に落ちているのだ。選挙区で民主党の自滅に助けられて善戦しているだけだ。民主党も、2004年の19議席、07年の20議席から、17議席程度に減る予想になっており、要するに民主党と自民党の両方が支持を失っているということだ。これが、両党とも消費税増税を打ち出していることと無関係だとは言わせない。
ただ、私が問題だと考えているのは、一口に消費税増税反対といっても、経済軸上の左側の反対と右側の反対があるということで、「みんなの党」の党勢拡大は、明らかに経済軸上の「右」側というか、要するに新自由主義勢力への支持がいまだに非常に強いことを意味する。
思い出すのは2月、菅直人が財務大臣に就任早々、税調専門家委員会の委員長に神野直彦・東京大学名誉教授(当時関西学院大学教授)を招聘し、税制の抜本的改革の議論を始めた頃の話だ。マスコミは早速これを「消費税増税論」にねじ曲げ、神野氏を「消費税増税に理解のある学者」などとテレビが報じていたので、当ブログはさっそくそれに反論した。だが、肝心の菅直人自身が消費税増税に傾いていたことが、菅直人の首相就任後に露呈した。
社会民主主義をとる北欧諸国の消費税率は確かに高い。だが、直接税の税率も高く、日本が消費税率を10%に引き上げると、税収全体に占める消費税の比率は、スウェーデンよりも高くなってしまう。このことは、月曜日(5日)に放送された、たけしの政治バラエティ番組でも紹介されていた。
歴史的にいえば、日本が福祉国家であったことは過去一度もない。田中角栄というのは、先見の明のあった政治家で、1972年に総理大臣に就任した彼は、1973年を「福祉元年」と位置づけ、日本を福祉国家へと転換しようとした。それまでの日本は、新自由主義者たちの大好きな「トリクル・ダウン」が成り立っていた国だった。高度成長期においてはたいへんな人手不足で、正社員よりパートタイマーの方が時給が高いこともあったが、大企業は従業員への手厚い福利厚生や終身雇用制で正社員をつなぎ止めていた。だが、それは高度成長経済で初めて可能だったことであり、本来政府がなすべきことを企業が肩代わりする、そんな時代は長くは続かない。
政策転換の必要性は、古くは池田勇人が予見していたことであり、本来なら佐藤栄作内閣時代に日本は福祉国家への道を模索すべきではなかったかと思うが、生憎佐藤は池田の政敵であり、佐藤が池田の示唆を政治に生かすことはなかった。田中角栄が総理大臣に就任したのは1972年で、1973年を「福祉元年」としたことは、田中角栄が政権初年度から福祉国家志向を見せたことを意味するが、不幸にして1973年は石油危機の年であり、田中角栄が意図した福祉国家への転換は頓挫した。不況は次の三木政権時代にも続き、景気が持ち直した時に政権を担当したのは緊縮財政への志向性を持つ福田赳夫だった。
不幸にも、日本では悪い内閣ほど長く続く傾向がある。中曽根康弘内閣や小泉純一郎内閣がそうだが、佐藤栄作内閣もその例に数え入れて良いだろう。とにかく、岸信介や安倍晋三も含めて、彼ら一族は日本に害毒ばかり流し続けた。田中角栄の総理大臣就任があと数年早ければどうなっていたか、と思うようになったのは最近のことだ。
福祉国家を建設する道筋においては、まず直接税の税収を増やし、それでも足りない分を間接税で補う。これが基本であるが、消費税を導入しつつ、直間比率を適正化すると称して直接税を減税し、結局税収を増やさないまま直間比率だけヨーロッパ並みにしたのが、80年代以降の自民党政府が行ってきた税制改革だった。いうまでもなくその政策の基本は「小さな政府」である。特に、中曽根康弘や竹下登の時代、バブル経済で税収が増えている時に直接税減税を行ったが、バブル経済を過熱させ、税収を減らした最悪の政策であり、本来「財政健全化」はバブル期のような時にやるべきことだった。中曽根や竹下の罪があまりクローズアップされないことに、私は不満を抱いている。
現在、「消費税増税論者」として非難されている小野善康は、その著書において、好況期に財政再建を行い、不況期に財政出動を行えと主張していたと記憶する。これ自体はまっとうな主張である。小野善康が不用意に消費税増税を口にして、「所得税増税の方が良いけれど、消費税でも良い」と発言したことには批判があって良いと思うが、それ以前に、自民党政権時代が推進し、現在の菅民主党政権にも影響が根強く残っている「小さな政府」の政策を批判することの方が、より本質的だし重要だ。
特に、社会民主主義を掲げる社民党は、本来高福祉高負担の社会を作るロードマップを国民に訴える努力をすべきだったと思うが、その成果が見られなかった。福島瑞穂党首の主張からは、「増税反対」しか伝わってこないし、かと思うと阿部知子政審会長は直接税の税収増へのアピールが全然できていない現状で、唐突にテレビで「消費税増税容認」発言をする始末だ。福島瑞穂も阿部知子も、やっていることは「みんなの党」の党勢拡大に協力しているだけなのだ。朝日新聞の予想では、社民党の獲得予想議席は比例区の「1」だけで、比例で2議席目を獲得できる可能性が出てきたとするものの、改選の3議席を守る可能性はないようだ。朝日新聞が11議席獲得を予想する「みんなの党」と社民党との差が、そのまま新自由主義と社民主義の支持率の比だと考えるほかはない。国民の圧倒的多数は今でも「小さな政府」を熱狂的に支持している。いつ「第二の純ちゃん」が現れても不思議はない(「第二の純ちゃん」は日本の中央より西寄りのところにいるような気がする)。
民主党の話をすると、神野名誉教授の税制改革を「消費税増税による財政再建」(もしくは法人税減税の穴埋め)に換骨奪胎してしまった菅直人首相の罪は重く、これだけでも民主党は参院選に負けて当然である。「社会民主連合」を出発点とする政党人がこんなことをやらかしたことは、1979年に保守本流の大平正芳が「小さな政府」にかぶれていながら、「一般消費税」創設を公約に掲げて満を持して解散し、批判を受けて公約の撤回に追い込まれる醜態をさらして、自民党の党勢拡大期であったにもかかわらず惨敗したことと対応する。よく今回の菅直人を12年前の橋本龍太郎と重ね合わせる議論があるが、1998年には既に消費税を増税したあと(1997年に3%から5%に増税)の減税を巡る議論で橋本首相(当時)の発言がぶれたのだった。1989年に「山が動いた」消費税参院選にしても、消費税が創設されたあとの選挙だった。今回の菅直人に一番近いケースは、1979年衆院選の大平正芳である。
当時「小さな政府」にかぶれていながら一般消費税を創設しようとした大平には、直接税減税の意図があったのではないかと思うが、選挙で惨敗した自民党では「40日抗争」が起きた。今後、民主党政権内で「40日抗争」が起きるのか、あるいは参院選で惨敗する民主党と比例区で惨敗する自民党が許されざる「大連立」を組むのかはさだかではないが、後者の場合、民主党内が許さなかった2007年の小沢一郎の「大連立」を阻止したと同じ役割を、当の小沢一郎が務めるという漫画のような事態が生じるかもしれない。
前回のエントリで、政策の立ち位置では民主党と公明党が近く、「えらぼーと」の回答は民公連立を示唆していると書いたが、実際の政治がその方向に動く兆しは見られず、むしろ公明党は自民党との接近を強めている。考えてみれば道理で、菅直人は2007年に受けた『論座』のインタビューで公明党とは体質が合わないと明言している一方、創価学会は菅直人を「仏敵」扱いしている一方、公明党と小沢一郎は、細川連立政権から新進党までの時代と、自自公連立時代に組んだ間柄だ。
私は、だからこそ菅直人が小沢一郎の動きを封じるために、公明党との接近という高等戦術に出るかもしれないと思ったのだが、現在の民主党政権首脳たちは思いのほか原理主義的らしく、そのくせ新自由主義には親和的で「みんなの党」に秋波を送ったりするからどうしようもない。鳩山政権時代の「旧民社の弊害」も深刻だったが、現在の菅政権の「松下政経塾の弊害」も深刻だ(もっとも、「みんなの党」に秋波を送った枝野幸男は松下政経塾出身ではない)。旧民社にせよ松下政経塾にせよ、肝心なところでマキャベリズムに徹しきれずに墓穴を掘る。
最近私はつくづく「菅直人は小沢一郎と無原則なところがよく似ているなあ」とか、「菅直人は八方美人で自滅するところが鳩山由紀夫とよく似ているなあ」と思う。考えてみれば、菅直人にとっての消費税は鳩山由紀夫にとっての普天間だ。いわゆる「小鳩体制」で民主党が参院選に臨んだ場合、30議席を割るともいわれていたから、小沢一郎や鳩山由紀夫の菅直人批判には、「お前が言うな」という側面がある。批判されるべきは、菅直人や小沢一郎や鳩山由紀夫といった政治家個人ではなく、民主党という政党自体が抱える構造的問題なのだ。その問題点を露呈したのが、小沢一郎であり、鳩山由紀夫であり、菅直人だととらえるべきだ。
民主党が全体で惨敗し、自民党が比例区で惨敗する予想がなされている参院選の予想を見て、日本の政治で問題なのは社民主義勢力が弱すぎることだと改めて痛感した。ちょうど、この記事を書いている最中に、日頃私が多くを教えられている『広島瀬戸内新聞ニュース』に、良い記事が公開されたので、これを紹介したい。
http://hiroseto.exblog.jp/12924385
それから、みんなの党は、小さな政府論です。ただ、消費税増税反対票を一手に引き受けている感じはします。皮肉にも共産党や社民党が、消費税増税反対で頑張れば頑張るほど、みんなの党へのエールになってしまう。
もちろん、まずは、特別会計の見直し、というのはわたしも同感です。しかし、その後をどうするのか?あまり多くは語っていない。
共産党や社民党も、高級官僚の特権にメスを入れつつも、お金持ちからも税金をいただく事をはっきりさせるべきだ。もちろん、消費税増税反対は現在のスローガンとしては大事です。
しかし、「税金はお金持ちから」と論戦を巻き起こしたほうがよい。
わたしが社民党党首なら「今は景気」「税金はもっとお金持ちから」を正面に掲げます。そうしないとみんなの党と一般有権者は区別が付きにくいです。新鮮なイメージがあり、マスコミが持ち上げる方へ票が流れるのは必然です。
「今は景気」「特別会計の見直し」「税金はまずは、お金持ちから」。その後、ノルウェーなどの北欧並を目指すなら、複数税率を前提に消費税を引き上げるが、アメリカ並の政府規模なら、直接税中心でいく。そういう議論を社民主義者は普段からしておくべきだったのです。
なお、大きな政府にしても、えらい人の給料は日本は実は高い。現場公務員がアメリカよりも少ない。
その辺を是正することも大事です。同一価値労働同一賃金を、政府が率先する。これからは、そういう議論をしていくべきです。
それがない限り、日本では社民主義者は勢力を伸ばすのは困難です。
(『広島瀬戸内新聞ニュース』 2010年7月9日付記事 「参院選情勢と税制改革論議の混迷」より)
今回の参院選にはもう間に合わないが、現在の日本において「立ち上がる」べきは、与謝野馨のような財政再建厨の「経済極右」でも、平沼赳夫のような「国士」気取りの「政治思想極右」でもなく、社民主義勢力なのだと思う今日この頃である。
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これに伴い、当ブログは、2008年8月17日付エントリで開始を宣言した「『毎日新聞叩き』に反対するキャンペーン」を終了し、代わって「毎日新聞を含むすべての全国紙を叩くキャンペーン」を開始する。その理由は説明不要だろう。
それにしても、読売新聞の渡邉恒雄(ナベツネ)、朝日新聞の船橋洋一、毎日新聞の岸井成格と、三大新聞の主筆がすべて親米新自由主義派で占められる事態になった。心胆を寒からしめるものがある。
とはいえ、今回はその毎日新聞の「えらぼーと」回答結果を分析した記事である。以前から、今日公開すると決めて準備していたから仕方がないし、他には読売も「ボートマッチ」を実施しているが、毎日の企画には、候補者の回答を参照できるメリットがある。
昨年の衆院選前に、「えらぼーと」への回答をもとに、政党間の距離を測ってみた記事を掲載し、反響をいただいたことがある。2009年8月17日付エントリ「『右』に寄り過ぎた自民党と、巧みなポジショニングの民主党」がそれだが、今回も同じ手法で政党間の距離を測定してみたところ、面白い結果が得られた。今回は、下表のようになったのである。

今回は、前回と表示の色合いを変え、5段階表示にしてみた。政党間の距離が非常に近い場合(0.25以下)を赤地白抜きで表示し、やや近い場合(0.25より大きく0.35以下)をピンク地、中間は白地、やや遠い場合(0.50以上0.60未満)をグレー地白抜き、非常に遠い場合(0.60以上)を黒地白抜きで表示した。
前回衆院選前の時の分析も、同じ表示にすると下表のようになる。

お断りしておかなければならないのは、今回の「えらぼーと」では正反対の意図を持った回答が同じ選択肢に収まってしまう設問があることだ。たとえば「子ども手当」に関する設問がそうで、「財源を他の政策に振り向けるべきだ」という選択肢があるが、「現金給付より現物給付を行うべきだ」とする社民主義的立場からの批判も、「現金給付も現物給付も不要だ」とする新自由主義的立場からの批判も、同じ選択肢に収まってしまい、この設問に関する両者の距離はゼロになってしまう。こういう問題点はあるものの、これは毎日新聞のアンケート自体の欠陥だからどうしようもない。今回の計算ではこれらに関する補正は行わず、機械的に計算した。
真っ先に気づくことは、自民党とたちあがれ日本、日本創新党、新党改革の距離がきわめて近いことで、特に自民党とたちあがれ日本は際立って近く、すべての二政党の組み合わせの中でもっとも距離が近い(前回は共産党と社民党の距離がズバ抜けて近かったが、今回は連立政権の政策の評価をめぐって意見が分かれた)。
昨年の記事で、自民党ともっとも距離が近いのが「平沼グループ」(当ブログにおける呼称は「平沼一派」)であると指摘したが、平沼一派側から見た場合、もっとも距離が近いのは国民新党だった。しかし、平沼赳夫と与謝野馨が野合して「たちあがれ日本」が結成された結果、「たちあがれ日本」の経済政策が自民党と同じとなり、両党の距離がさらに接近したのだ。自民党と「たちあがれ日本」の距離の近さは異様である。
昨日(4日)に放送されたテレビ朝日の『サンデーフロントライン』では、大手生保会社の人間が作った、縦軸に「保守?リベラル」、横軸に「増税賛成?増税反対」とする怪しげなフリップを見せて、自民党から右翼政党「たちあがれ日本」が分かれて、その結果民主党と自民党の二大政党間の距離が縮まった、などと言っていたが、それは大嘘である。事実は、民主党と自民党との距離は縮まるどころか広がっている。一方、自民党を飛び出した「たちあがれ日本」と自民党の距離などほとんどない。自民党は、野党に転落して右翼度を強め、「トンデモ政党」と化しているのである。
とにかく番組で示されたあのフリップはあまりにずさんで、あんな馬鹿な仕事しかできない無能な人間が高給をもらっているかと思うと、それだけで腹が立つ。横軸に「増税賛成?増税反対」をとって、社民党、共産党と国民新党を「増税反対」だとしていたが、3党は「消費税増税」に反対しているだけである。「増税反対」を主張しているのは新自由主義政党である「みんなの党」だけである(「みんなの党」も法人税減税後景気が回復すれば消費税増税を念頭に置いている)。逆にいうと、社民党や共産党の「消費税増税反対」も、それだけのメッセージしか有権者に伝わらない場合、「みんなの党」を助けるだけになる。もっとも、社民党の阿部知子のように、唐突に消費税増税の必要性をテレビ番組で口にすると、自らの属する政党の勢いに水を差すことになる。社民党は、社民主義の理念についてアピールする日頃の努力が欠けているとしかいいようがない。
あの馬鹿げたフリップを示した人間の意図はミエミエで、要するに民主党と自民党に大連立を組ませたいのだ。そのためのポジショントークである。だがそんなことをしたら、間違いなく民主党の分裂を誘発し、大きな政治の混乱を招くだろうから、菅直人がよほどの馬鹿でない限り、そんなことはしないと私は予想している。むしろ私が自らの分析結果を見て思ったのは、参院選後の民主党と公明党との連立の可能性である。
前回、「巧みなポジショニング」と評した民主党だが、今回は前回と比較して全政党と距離が開いている。距離が「非常に近い」政党も「やや近い」政党も1つも存在せず、社民党、国民新党、みんなの党、公明党の4党と適度な距離感を持っている程度だ。また、前回自民党と「やや近い」関係にあった公明党は、自民党とは「やや遠い」関係になってしまった。公明党も「非常に近い」政党も「やや近い」政党も持たないが、もっとも数字の小さい、すなわちもっとも距離の近い政党は民主党なのである(但し数値自体は前回よりやや大きい)。民主党と公明党の連立であれば、消費税増税に反対する「うるさい国民新党」も切れて、小沢グループが再編を仕掛けようにも対抗勢力を作るために手を組む相手が見つからない(強いて挙げれば自民党になるだろう)、こう考えれば菅首相が公明党との連立に傾斜する可能性はかなり高いように思われる。
ところで国民新党だが、これまで民主党の新自由主義化を阻止する勢力として評価していたけれども、ネガティブな面にも目を向けざるを得ない。表を見れば一目瞭然、国民新党は衆院選前と比較して保守色を大幅に強めているのだ。たとえば「取り調べの可視化」については、民主党の千葉景子法相が思いのほか弱腰だったり、国家公安委員長の中井洽がブレーキをかけているせいもあるが、亀井静香がかなり強硬な反対派である影響も大きいのではないか。連立政権の政策に成果が少なかった理由には、国民新党の悪影響も相当あると言わざるを得ない。仮に民主党が国民新党を切って公明党と連立の組み替えをした場合、国民新党の「自業自得」という側面があることを否定できないのである。少し前に植草一秀が民主党と公明党の連立を熱望していたが、なるほど民主党命の人間がそういうことを考えたくなる理由もわからなくはないと、初めて思った。社民党にせよ国民新党にせよ、参院選で投票したいという気が起きる政党ではなく、やはり私の選択は「選挙区も比例区も共産党」しか残されていない。
もっとも、国民新党を批判しているからといって、間違いなく直接税をいじる前の消費税増税を実現させるであろう民主党の「国民新党切り捨てによる公明党との連立組み替え」になど、私は与しない。公明党は、自公連立時代の悪行があまりにひど過ぎた。今度の参院選では、政権交代9か月の採点という意味合いもあるが、10年の長きにわたった自公連立政権の総括もまだなされていないのである。
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政治について思ったことを書く、この狭いブログの世界でも、批判されると簡単にブチ切れて「なんとか騒動」を起こしたり、意見の合わない相手に「ソーカツ」を求めて人心離反を招くなどの例を何度も見てきた。政治について語る場合、ある政治勢力に対しては反対の意思表示をすることを伴うので、その代償として自らも批判を浴びることは当然だと思うが、なかなかそうはいかない。「権力」を批判する「庶民」だと自らを位置づけると、自らに批判を受けない特権が生じると勘違いする人間もいるが、人間、批判されてなんぼである。
「イラ菅」との異名をとる菅直人首相も、特にネットの世界では、右からも左からも批判を浴びていて、『日本がアブナイ!』が書くところによると、
とのことである。私はネット右翼が異様に強いあの「人気ブログランキング」が大嫌いで、何があってもあんなものには絶対に参加しないと決めているのだが、ランキングを見てみると、1位のヒロシ、もとい博士君や2位の植草大センセをはじめとして、菅首相を罵倒する記事ばかり書くブログであふれ返っているのは一目瞭然だ。政治系のブログのランキングの上位(何十位か)にはいっているブログは、ここ(筆者註:『日本がアブナイ!』)を除いて、ほぼ全てのブログで(ウヨ保守系もそうでないものも)菅首相の批判が書かれている
独自路線を行く当ブログは、小沢一郎に対しても菅直人に対しても是々非々を貫いているので、批判すべきは批判し、評価すべきは評価している。だから、当ブログも「菅首相の批判を書く」ブログなのだが、同時に菅直人に対して肯定的なこと「も」書くブログであって、それに対して「いまだに菅直人(や枝野幸男)に幻想を持っている」とか、「菅直人に思い入れがある」などとコメントをいただくこともある。実際には、菅直人自身よりも、33年前に菅直人も参加した社会市民連合を立ち上げた江田三郎に思い入れがあって、安倍晋三首相を総裁にいただく自民党が参議院選挙で惨敗した3年前の2007年7月29日が、江田三郎生誕100年の記念日だと知った時には、なんという素晴らしい偶然かと感激したものだ。
現在の菅直人は、「バル菅政治家」としかいいようがないが、あまりに周囲が新自由主義者ばかりであることに加えて、おそらく菅直人自身にも新自由主義志向の体質があるため、政策がすぐに新自由主義的に流れそうになる。しかし、菅直人の出発点は、彼が1980年の衆議院で初当選した時に所属した政党名「社会民主連合」が示すように、社会民主主義である。菅直人は、朝日新聞が以前出していた月刊誌『論座』の企画で、五百旗頭真(いおきべ・まこと)、伊藤元重、薬師寺克行3氏から受けたインタビューに答えて次のように語っている。
私の発想にはヨーロッパ型社民政党というのが根っこにあります。社会党解体論者ではあるけれども、単なる解体ではなくて解体・再生論者ですから、社会党的なものが一切なくていいというわけではありません。そういうところが1つのベースになって、もうちょっとリベラルな、保守的なものも含めた、ロシア型や中国型の社会主義ではない、ヨーロッパ型の社会民主主義というものをイメージしていたわけです。
(五百旗頭真・伊藤元重・薬師寺克行編 『90年代の証言 菅直人 市民運動から政治闘争へ』(朝日新聞出版、2008年) 102頁)
これは3年前の菅直人の言葉である。もちろん、3年前にこう語っていたからといって、菅直人が掲げる政策が社民主義的だ、などと主張するつもりは私にはない。ただ、菅直人の原点は紛れもなく社会民主主義だったことを指摘するだけだ。現在では、どちらかというと「左」寄りの論者が自称することの多い「リベラル」という言葉を、菅直人は「左側」からより「右」の立場を指す言葉として用いている。このことも、菅直人が元来中道左派の政治家だったことをよく示している。そんな菅直人だからこそ、北欧に範をとる財政学者の神野直彦をブレーンとしたのだろう。
その一方で、菅直人は新自由主義への傾斜も以前から見せていたのだが、このあたりは小沢一郎にも似て、菅直人にも何でもかんでも吸収しようとする傾向がある。よく思うのだが、「何でもかんでも吸収する」ことに関して、小沢一郎と菅直人は実によく似ている。かつて小沢一郎はゴリゴリの新自由主義者だったが、現在では「国民の生活が第一」などと言っているし、かと思うと民主党代表選に極端な新自由主義者・樽床伸二を担いだりして、その無定見には呆れたものだが、菅直人もまた、神野直彦をブレーンにするかと思うと、「経済極右」の与謝野馨に秋波を送るなど、その無定見ぶりは小沢一郎に勝るとも劣らない。
だから、いくら小沢一郎が「国民の生活が第一」と言ったり、菅直人が「私の発想にはヨーロッパ型社民政党というのが根っこにあります」と言ったりしたところで、彼らの言葉を額面通りに受け取ることはできないのだが、彼らのそういう言葉を実現させる方向に、それこそ「庶民」が圧力をかけていきたいものだ。現実には、力ある少数者たち(いわゆる「エスタブリッシュメント層」=財界トップ、高級官僚、マスコミ幹部など)の圧力ばかり強くて、彼らの思うがままの政治になっている。これではいけない。小泉純一郎政権時代に、「痛みを伴う改革」などというふざけた言葉が流行したが、真に痛みを味わってもらわなければならないのは、ここ数十年の日本を傾けてきた張本人であるエスタブリッシュメント層の人たちである。彼らにこそ、「ノブレス・オブリージュ」にふさわしい、より多くの負担が求められると思うが、小泉時代の日本は本当にひどい国で、「自己責任論」を煽った勝谷誠彦(最近全国放送のテレビ出演が激減していることは大いに喜ばしい)のごとき人物が、暗に自らを指して「ノブレス・オブリージュ」という言葉を用いていたのを目にした時には、ブチ切れそうになった。私が小沢一郎だとか田中康夫といった人たちに信を置けない理由の一つに、彼らが勝谷と親しいことが挙げられる。
菅直人の話に戻ると、ヨーロッパ型社民政党が根っこにあるのは良いとしても、いただけないのはイギリスにかぶれた二大政党制論者であることだ。『論座』のインタビューをまとめた前述の朝日新聞出版の本によると、菅直人は『世界』1993年12月号に政界再編に関する論考を書いていて、日本新党とさきがけ(当時菅直人が所属)、社会党に自民党の一部を加えた「日本型民主党」と、新生党(当時小沢一郎が所属)、公明党、それに自民党の一部を加えた「日本型共和党」、それに自民党の残りの議員の政党による3大政党のイメージを描いているとインタビュアー(五百旗頭、伊藤、薬師寺氏のいずれか)が指摘したのに対し、菅直人は、それは再編の過程でいろいろなことが起きるだろうと思っていたことであって、自分は積極的に「3つの党を」と言ったことはない、基本的に小選挙区制による二大政党論者だと述べている(前掲書71?72頁)。
1993年当時、菅直人が「日本型共和党」に所属すると想定していた小沢一郎が、実際には「民由合併」で民主党に加わったのだが、小選挙区制による二大政党論に関しては、菅直人は小沢一郎と完全に意見が一致している。衆院比例定数80削減の政策は、事実上の民主党の両巨頭、小沢一郎と菅直人の意見が一致しているから、強硬に推し進められようとしているのである。
ここは、菅直人や小沢一郎の政策においてもっとも同意できないところである。90年代の「政治改革」の局面においては、「政権交代可能な二大政党制」を実現させるための選挙制度、という大義名分が語られたが、それ以前の鳩山一郎や田中角栄が狙った小選挙区制は、自民党が圧倒的な議席数を得て憲法改正を行うことを狙いとしていた。基本的に小選挙区制は第一党が圧倒的な議席数を獲得する選挙制度であって、それによって生じた有象無象の与党議員たちがいかに役に立たないかは、「小泉チルドレン」たちが証明したし、「小沢チルドレン」たちも、「国民の生活が第一」というスローガンを掲げながら、それとは正反対の方向性を持つ新自由主義者・樽床伸二を嬉々として担ぐていたらくだ。議員定数を削減するというなら(定数削減自体にも私は反対だが)、小選挙区制の比率を下げ、比例区は現在のようなブロック制ではなく全国区にするなどの改革をすべきだろう。それをやらない限り、タイゾーだの藤野真紀子だの川条志嘉だのといった役立たずの国会議員が生まれることを阻止できない。彼らこそ「ムダ」の最たるものではなかったか。
参院選の争点がどうだとか言っているが、おそらく2004年と似たような選挙結果になるのではないかと私は予想している。つまり、地方の一人区では自民党が優勢、比例区では民主党が第一党を維持して、合計では民主と自民が拮抗する議席数になる。これは、だいぶ前からの私の予想であって、地方の有権者が消費税増税に反対だから民主党から離れるのではなく(自民党も民主党同様消費税増税を唱えている)、単に政権交代に幻滅した、特に高年齢層の有権者が自民党に回帰するだけの話である。どんな政権交代でも、こういう「揺り戻し」は必ず起きる。だが、自民党の支持層が高年齢層に偏っている以上、今回の参院選で多少一人区の議席を伸ばしたところで、長期的なトレンドでは自民党の衰勢に歯止めがかかることはない。
支持できるところのほとんどない自民党に、私がかすかな望みをかけているのはそこにあって、つまり、民主党の「衆院比例定数80削減」を阻止するために、地方の一人区で自民党が勝つことを私は容認しているのである。民主党に単独過半数を獲得させてしまったら、「衆院比例定数80削減」は実現してしまう。だから、3人区以上の選挙区や比例区で少数政党(たちあがれ日本、日本創新党や改革新党は除く)に頑張ってもらうとして、一人区での自民党復活さえ容認せざるを得ない気分になっているのだ。
あんな自民党なんかの一人区勝利を容認せざるを得ないような参議院選挙なんて、くそ面白くもない。こんなつまらない気持ちで国政選挙を迎えるのは、小泉自民党圧勝の予想で気分が真っ暗になっていた「郵政総選挙」の前以来のことである。
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司会は懐かしさなど全く覚えない田原総一朗、民主党からはすっかり口が達者になった細野豪志、自民党からはすっかり影が薄くなった石原伸晃、あと社民党の辻元清美や共産党の穀田恵二らが出演していた。
税制の論議がメインだったが、辻元氏がもっとも当ブログの意見に近い発言をしていた。普天間基地移設問題では福島瑞穂党首が頑張ったが、経済問題に関しては辻元氏の方が福島氏より一枚上手であるように感じた。辻元氏のような人が、社民党と(もし存在するのであれば)民主党左派を束ねる形になれば、社民主義的主張も力を増すのになあ、と思った次第だ。福島党首との距離が遠いように見えることは残念だが、今後の政治において、辻元氏は重要なプレーヤーの一人になるだろうと改めて思わされた。
だが、今日のエントリの主題はそれではなく、福島瑞穂氏同様、経済問題を不得手とする菅直人首相がたくらんでいる「財政健全化会議」の座長に与謝野馨を据える構想への批判と、以前から民主党がたくらむ国会議員比例定数削減への批判。これが今日のメインテーマである。
前者は、『朝まで生テレビ』の番組中で、田原が情報を提供したものである。菅首相が超党派の財政健全化会議を、「自民党」という党派名を出して呼びかけ、当ブログはもちろんこれを批判したのだが、田原はなんと、菅首相がこの会議体の座長に、「たちあがれ日本」共同代表の与謝野馨を据える意向だと暴露したのである。
与謝野馨といえば当ブログにとって「天敵」の一人であり、「小さな政府」と「消費税増税」の両立を目指す与謝野を、「考えられる限りもっとも苛酷な経済政策を目指す政治家」であるとして、安倍晋三や平沼赳夫を筆頭とする「政治思想極右」の政治家たち(他に城内実や稲田朋美も当ブログではおなじみ)と並んで攻撃の槍玉に挙げてきた。
この与謝野を座長とした「財政健全化会議」なるものができたとしたら、その会議体が打ち出す方向性は決まっている。「消費税増税」と「小さな政府」の両立という最悪の政治。与謝野馨は中曽根康弘直系の政治家であり、読売・ナベツネ(渡邉恒雄)の強い支持を受けている。参院選後に民主党と自民党が「大連立」を組むか否かにかかわらず、与謝野を座長とした「財政健全化会議」が発足するだけでも、これは事実上与謝野を接着剤とした大連立だ。
おそらく民主党は、「たちあがれ日本」にくっついている平沼赳夫一派や、下野してますます極右色を強めている自民党とあからさまな形で「大連立」を組むところまではいかなくて、経済政策に関してのみ民主党と自民党が与謝野馨を軸として協力するという形になると予想しているが、これは私が前回の記事で非難し、『kojitakenの日記』で(経済軸上での)「超絶極右」と評したナベツネ(読売)が思い描く通りの税制改革が行われることを意味する。すなわち、法人税減税と引き替えにした消費税増税であり、金持ち増税は決して行われず、消費税の増税分は財政再建に充てられる。
ケインズ派の学者たちの主張については、さまざまな論評がなされているが、昨日のテレビ朝日『サンデーフロントライン』で小野善康・阪大教授が強調していたことは、基本的には「再分配」だったと思う。もともと小野氏は「ニューディール政策」をやれと主張しているだけなのだ。ただ、金曜日(25日)付の朝日新聞夕刊文化面(東京本社発行最終版)に掲載された数理経済学者の指摘にあったように、再分配であれば所得税の方が適切であり、実際小野教授のもともとの主張もそうなのだが、菅首相が増税したいのは消費税であり、そこに残念な齟齬がある。これは政治の勢力分布において、与謝野・自民党・民主党右派・朝日新聞・読売新聞など、あまりにその方面からの影響力が強いからではあるが、所得税との比較を藤原帰一氏に質問された小野氏が、「どちらがいいかと言われたら所得税の方が良いけれども、消費税でもかまわない」という言い方をしていたのは、学者として妥協が過ぎると思った。そりゃ人頭税と比較したら消費税にだって再分配効果はあるだろうが、それはあくまで消費税増税分が再分配に用いられた場合に限る話であって、現実の政治が推し進めようとしているのは、「財政再建のための消費税増税」あるいは「法人税減税分を穴埋めするための消費税増税」なのである。これでは再分配効果が生まれるどころではなく、逆再分配になる。つまり、新自由主義のプロジェクトの目的である「格差の拡大と階級の固定」にいいように利用されてしまうだけなのだ。
与謝野を座長に据えた「財政健全化会議」などができたら、間違いなく上記の最悪の政治が始まる。だから、われわれのなすべきことは、参院選で民主党と自民党の議席数を減らすことであり、同時に「たちあがれ日本」には1議席も与えないことである。大部分の地方の一人区では民主党と自民党のどちらかが議席を獲得することは避けられないからどうしようもないが、比例区及び二人区以上では、民主・自民・「たちあがれ日本」の3党にダメージを与えるような投票行動が求められる。
特に、民主党に過半数の議席を与えてはならない。なぜならば、参議院でも過半数が得られたら、例の「衆議院比例定数80減」の法案を上程してこれを通すと民主党の枝野幸男幹事長が明言しているからだ。『朝まで生テレビ』でも細野豪志がこれに言及していた。民主党は参議院も40議席削減するとしているが、これも比例区中心の削減なのだろう。
菅政権を批判する小沢信者たちからも、この比例定数削減への批判はほとんど聞かれない。それもそのはずで、これは鳩山前首相や小沢一郎前幹事長が強く主張していた政策なのだ。昨年、当ブログはこの政策を批判するエントリをいくつも上げたが、コメント欄常連の方々からは強いご賛同をいただいたものの、他の「政権交代ブログ」で同様の主張をするところはほとんどなかった。今でも覚えているのは、当ブログの「天敵」の一人である植草一秀・元早稲田大学教授が、民主党の「比例定数80減」を批判するエントリを上げたことだが、小沢・植草・鳩山の「三種の神器」(植草一秀は「鏡」に相当するのだろう)として信奉する人たちにとっては、三種の神器にも序列があって、小沢一郎と植草一秀の主張が異なる場合、植草一秀の主張は、この例のような正論であっても斥けられるのである。なんたる個人崇拝の世界。小沢信者たちと相性が良いのは、ヒトラーのドイツ、スターリンのソ連、毛沢東の中国などだろう。
小沢信者批判はともかく、民主党が単独過半数をとれば「衆院比例区80削減」が実現してしまうのは、極めて深刻な事態だ。嘆かわしことに、「自ら身を切る」と称する民主党のこの妄動を支持する人たちが少なくないようだが、とんでもない話で、現在で既に日本の国会議員は世界的に見れば十分少ないし、ただでさえ民意を反映しない小選挙区の弊害がひどいのに、民主党が削減しようとしているのは比例区の定数なのである。それも、現在の180議席が半分近くの100議席にまで減ってしまう。これはとんでもない暴挙である。こんなことを断じて許してはならない。
民主党の単独過半数を阻止するためなら、先月まで「消費税増税」を主張していながら、急に「消費税増税反対」に主張を豹変させた二枚舌の渡辺喜美が率いる新自由主義政党「みんなの党」の力さえ借りたくなる、なんとも情けない今日この頃なのである。
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もっとも、有名人とはいっても、谷亮子や池谷幸雄を除けば、ほとんどが70年代や80年代に活躍したプロ野球選手やタレントであり、「B層作戦」をどの政党も行っている(共産党を除く。今回は社民党や公明党もあまり聞かないが、前科はある)。担ぐ方も担ぐ方なら、ヘラヘラと誘いに乗る方も乗る方だ。そんな中で、高橋尚子が毅然として政党の誘いに乗らないことが報じられ、評価を高めている。かつて高橋の師匠・小出義雄が2001年に自民党の誘いを受けた時、「俺はマラソンしか知らないから」と言って断ったが、後年師匠から独立した高橋にも師の教えは今なお生きているようだ。
それにしても、ただでさえ軽視されている比例代表制に2000年から導入された「非拘束名簿式」を各党とも悪用しているとしか思えない。3年前に、「AbEnd」 (「安倍を『The END!』させようと銘打ったブログ運動)界隈で「比例区は『天木直人』と書こう」というキャンペーンが起きた時、私は「非拘束名簿式比例代表制への疑問」という記事を書いて、天木直人に熱狂する人たちに冷水を浴びせて、某ブロガー氏の激しい怒りを買ったことがあるが(笑)、当該記事で紹介した社民党による「非拘束名簿式」の批判の方がもちろん正しく、「政党と国民との絆・結びつきを深めるという比例代表制導入で期待された理念をも否定すること」になり、「政党自らの存在価値自体を問われる」ものである。今、民主党、自民党、国民新党や「たちあがれ日本」がやっているのは、そういうことなのだ。
自民党や「たちあがれ日本」は、そもそもそういう政党だからどうでも良いとは前のエントリに書いた通りだ。これに対し、喫緊の課題は民主党の暴走を止めることだ、それには自民党への投票がもっとも有効だとするコメントをいただいたが、冗談じゃない。「小さな政府で消費税増税」を掲げる自民党に勝たせたら、民主党政権が「民意を真摯に受け止める」と称してその方向へと走り、政治は今よりさらに悪くなる。自民党に勝たせることは「地獄への道」以外の何物でもない。次の参院選では共産党しか投票先が見つからない。共産党が伸びて、民主党と自民党の両方に厳しい審判が下る選挙結果になれば、与党も民意を取り入れる方向に政策を改めるかもしれない。同じ民主党が負けるにしても、民主党の悪いところをさらにデフォルメしたような自民党が勝つようでは、何の意味もないのである。
民主党で一番問題だと思うのは、「国民の生活が第一」と言いながら、選挙に有名人を次々と立てて「B層」票を狙ったり、その先には比例区定数削減を狙っていたりすることにある。昨年、民主党の「衆議院比例区80削減」を当ブログが批判した時も、大多数の民主党支持ブログは頬被りしていたが、現在の谷亮子ら有名人に頼った民主党の選挙戦術にも何も言わない。
定数削減反対は、昨年6月に植草一秀でさえ言っていた。植草は、小沢一郎の信者には不人気の上脇博之教授の論を引いて、民主党が企てる衆議院の比例区定数削減案に反対したのだが、植草一秀と小沢一郎の意見が相反する時は、小沢一郎の意見を優先するのが小沢信者の行き方らしく、小沢信者のほぼ全員がこの時の植草一秀の主張を無視した。
ネットで「反自公」を掲げてきたブログの中には、2007年の参院選山口選挙区と、昨年の衆院選山口4区に立候補して落選した戸倉多香子氏を応援する人たちがかなりいたと思うが、今回の山口選挙区への原田大二郎擁立に際して、民主党本部は山口県連から推薦のあった公募者を認めず、小沢氏主導のもとで候補者選定作業を仕切り直したと報道されていることについて、誰も何も言わないことも解せない。
権力者としての小沢一郎の影響を直接受ける民主党の政治家ならともかく、なぜしがらみとは無縁に自由にものを言えるはずのブロガーまで何も言わないのか。「物言えば唇寒し」の風潮は、およそ「市民ブログ」には似つかわしくない。
ネット住民がこのていたらくだから、小沢一郎や民主党や自民党、マスコミや官僚、財界や御用労組などの権力者たちのやりたい放題は終わらないのである。
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普天間基地移設問題の迷走に続いて、企業・団体献金の抜け道づくり、直接税に手をつける前の消費税増税など、政権交代後8か月にして、早くも政権党の驕りばかりが見られるようになった。前政権党の自民党が同じことをやっていたから、民主党が同じことをやってもそんなに強くとがめ立てされることはあるまいという、有権者を馬鹿にした態度が、小沢一郎からは感じられる。鳩山由紀夫首相は普天間基地移設問題で疲れ果て、菅直人は自分の番が巡ってくるのをじっと待っている。七奉行らはもう自民党と何も変わらない。
こんなふざけた政権与党には参院選で痛撃を食わせるしかないと思う。とはいえ、自民党や、極右と新自由主義が合体した新党群が伸びるのでは意味がない。私個人としては、これまでの参院選では1人区の地方から、5人区の東京都に移ってきたので、従来のような「戦略的投票行動」をとる必要はなく、選挙区も比例区も共産党に投票するしかないが、移住していなかったらこれまでと同じ投票行動を取るしかなかっただろうと考えると、小選挙区制を中心とする現在の選挙制度がいかに民意を歪めるものかが改めて感じられる。イギリスでも小選挙区制への批判が強まり始めているが、日本において小選挙区制導入を推進し、今なお議員定数の削減をまず比例区から行おうとしているのが小沢一郎であることも、改めて思い出した方が良い。
民主党が有権者を馬鹿にしていることを象徴するのが、谷亮子を担ぎ出したことだ。小沢一郎は有権者を「B層」扱いしているとしか私には思えない。参議院議員を、「私ならできると思った」と臆面もなく語る、面の皮の厚い谷亮子は、記者会見で政治のことを訊かれてほとんど何も答えられなかったらしいが、ジャーナリストたちは、毎日新聞の「えらぼーと」に出てくるような項目について、逐一谷亮子に質問すべきだろう。「私ならできる」と言う谷亮子なら、質問にすらすら答えられてしかるべきだ。
昨年夏の毎日新聞の「えらぼーと」には普天間基地問題や消費税に関する設問はなかったが、今年の参院選前にも同様の企画が行われるならば、必ずやこれらの設問があるだろう。谷亮子に限らず、昨年の衆院選に当選したポピュリスト議員の中にも、普天間や税制についてほとんど語らない人間がいる。たとえば城内実がそうだ。城内の師匠格だった平沼赳夫は、与謝野馨と野合することによって、「小さな政府志向なのに消費税増税」という路線に何の抵抗もない正体を露呈したが、そんな野合政党に参加するのは得策ではないと計算したに違いない城内実も、中身は平沼と何も変わらないと私は見ている。
城内実も平沼赳夫も、「真正保守」を標榜する人たちだが、同じ思想的傾向を持つ「改革クラブ」の大江康弘は、なんと幸福実現党入りした。この大江は、和歌山県議の倅だが、関西で勉強のできない大金持ちの子弟が進学することで知られる芦屋大学を卒業して、和歌山県選出の右翼系国会議員として有名だった玉置和郎の秘書を務めた経歴を持つ。そんな男が、小沢一郎に惹かれて自由党経由で民主党入りしたわけだが、民主党時代には「民社協会」に属した。大江自身は民社党に所属したことはないようだが、民主党の旧民社系議員には、このような市民感覚から乖離した人間がいることも認識した方が良い。
昨年の衆院選前に自民党の小池百合子が幸福実現党と選挙協力したことも忘れてはならないが、小池もまた市民感覚からの乖離が著しい議員の代表格だ。大江が芦屋大学卒なら、小池はこの大学がある兵庫県芦屋市の出身である。「真正保守」とは金持ちの道楽なのではないかと思ってしまうが、実際、安倍晋三、麻生太郎、故中川昭一は言うに及ばず、平沼赳夫は平沼騏一郎の兄で早稲田大学総長を務めた平沼淑郎の曾孫にして平沼騏一郎の養子で東京出身、城内実は元警察庁長官・城内康光の倅で横浜出身と、主立った「真正保守」の政治家たちは、ことごとく金持ちの家に育ったボンボンである。例外は稲田朋美くらいだろうか。こんな人たちが、国民生活そっちのけで「真正保守」の思想を信奉して、それを振りかざす。
プロの政治家がこのていたらくだから、谷亮子に政治家という職業を見くびられるのも仕方ないといえなくもないが、国会議員を志す以上は、上記のボンボンの「真正保守」たち程度の識見で合格点を与えるわけにはいかない。マスコミも、普天間基地や税制、それに企業・団体献金、さらには雇用や社会保障などの問題について、谷亮子に厳しい質問をしつこく浴びせかけてほしいと思う。
谷亮子について、私が特に腹に据えかねるのは、「ロンドン五輪を目指し、政治の方でも頑張る」などと、国会議員をアスリートの余禄か何かのように勘違いしていることだ。国会議員の金バッジを、金メダルと等価のものと見なしているのかもしれないが、谷と同じ思想を持っている国会議員が前述の城内実であり、先のバンクーバー冬季五輪の女子フィギュアスケートで浅田真央を大差の判定で破って金メダルを獲得したキム・ヨナに感情移入して、「だんとつの圧勝というのもあれこれ文句のつけようんがないから気持ちがいいものだ。私の選挙もこれからもそうでありたい」と城内実自身のブログに書いた上、同じブログの別エントリでは、決勝戦で僅差で敗れたものの銀メダルを獲得したスピードスケート追い抜きの日本女子チームをこき下ろした(一時は大差をつけていながらゴール直前で僅差で逆転されたレースを見て、何かを思い出したのだろう)。
城内実の極楽トンボぶりを見ると、いわゆる「真正保守」とは、金持ちを中心とする人たちの道楽だよなあと改めて思うが、「真正保守=金持ちの道楽」説には、昨日の深夜にTBいただいたさにぃさいどさんからもご賛同いただいている。そんなものに踊らされているネット右翼たちが不憫でならない。
だが、「真正保守」たちはともかく、「国民の生活が第一」を標榜して昨年の衆院選に圧勝した政権与党の民主党や、同党の公認を受けて立候補する人たちが同じ態度をとるのを看過するわけにはいかない。民主党は他にも、池谷幸雄、岡部まり、岡崎友紀といった人たちを擁立するらしいが、有権者をなめ切った姿勢である。堀内恒夫や石井浩郎を擁立する自民党や、中畑清(や杉村太蔵)を擁立する「立ち枯れ日本」も同様だが、これらはもともとそういう政党なのだからほっとけばよい。しかし、「国民の生活が第一」という看板を掲げながら、浮世離れした谷亮子を擁立する民主党のふざけた姿勢は、強く批判したい。
民主党が谷亮子を売り出そうというなら、蓮舫参院議員並みに弁が立つとまではいかなくとも、谷亮子が政治に関する諸問題を堂々と論じることができるところを有権者に示す必要があるだろう。城内実が何も語らない普天間基地移設や税制の問題などについて、谷亮子が堂々と自分の言葉で論じるところを見せてくれれば、谷亮子を見直してやっても良い。
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