昨日、鳩山邦夫総務相が辞任した。いや、「辞任」と書いているのは朝日新聞だけで、他紙は「更迭」と書いている。「自エンド」界隈では鳩山邦夫を持ち上げるブログが多くて私はうんざりだ。むろん、私も郵政民営化は見直すべきだと考えているが、それは「郵政総選挙」で大量の議席を獲得した自公政府ではなく、次期総選挙を経て成立するであろう現野党の連立政権によってなされるべきものである。
そのあたりを的確に指摘しているのが、民主党員のさとうしゅういち氏や民主党支持の元新聞記者・宮崎信行氏である。
さとうさんは、次のように書いている。
結果として、鳩山大臣を麻生さんが「斬る」結果になったのは、わたしにとっては「想定内」です。
麻生さんは小泉政治の存続を求める声に屈した形ですが、麻生さんの権力基盤は、2005年9月11日の「郵政選挙」(9・11総選挙)で小泉純一郎さんが、「郵政民営化」をメインとしたネオコンないしネオリベラルなマニフェストにより獲得した衆議院での圧倒的な与党の議席です。
筋から言っても、麻生さんは、もし、鳩山邦夫さんをかばう路線をとるなら、解散総選挙を実施し、小泉政治を放棄するマニフェストを掲げて勝利した後でなければ、難しかったでしょう。もちろん、ここまで事態を引き伸ばした麻生太郎総理の威信は、低下することは避けられないでしょう。
(『広島瀬戸内新聞ニュース』〜「鳩山邦夫さんへの過剰な期待は禁物」より)
さとうさんは鳩山邦夫を「裏切り三昧で信用できない人」、「信念などあまりなく、その場その場で、受けそうな行動を派手にぶちあげる」などと評しているが、私も裏ブログ『kojitakenの日記』に「鳩山邦夫 裏切りの人生」と題したエントリを公開し、裏ブログ久々の人気エントリになった。
宮崎信行さんはさらに辛辣で、「鳩山切りで“静脈瘤破裂”の危機回避 住友を甘く見たパフォーマンス大臣去る」と題したエントリは読ませる。宮崎さんのブログは、一時小沢一郎信者らの嫌がらせに遭ったあとの最近のエントリの方が、以前よりも精彩を放っているように思える。
まず、次期衆院選の福岡6区の自民党および民主党による情勢調査で、鳩山邦夫が民主党の古賀一成に大きくリードされていることを指摘し、続いて次のように書く。
そうして迎えた2009年1月からの通常国会。TV入りの審議中継では、官僚の答弁書には目もくれずに、自分の言葉で5分以上の時間を使って、とうとうと答弁する姿が目立ちました。閣僚としてTVを使ったパフォーマンスで起死回生を狙ったのは想像に難くありません。
鳩山総務相は西川善文・日本郵政社長との対立を演出し、茶の間の喝采を浴びましたが、これはあまりにも甘い。
日本の国家予算は年100兆円ですが、日本郵政グループの資産は300兆円を超えます。300兆円が国から民間にスピンオフしたのが小泉自民党による郵政民営化です。この流れを逆にしようしたのです。これを人間に例えると、血液の循環を逆にしようという話です。心臓から静脈に血を流すとどうなるか?直接的な表現で申し訳ないのですが、あっという間に静脈瘤ができて、破裂するでしょう。すなわち自民党は即死です。
郵政民営化見直しは政権交代による国民新党、民主党、社民党の連立政権でなければできるわけがないのです。
住友、小泉、経団連を敵に回して、味方はテレビカメラだけ。この状態で鳩山邦夫さんが勝てるわけがありません。私が麻生首相だったら、なりたくありませんが仮に麻生首相になったと仮定すれば、更迭は当然です。閣内不一致の場合は辞めるのが首相でなく閣僚であるのは自明の理。
住友を甘く見た当選10回のパフォーマンス大臣。民主党を離党して出馬した1999年東京都知事選惨敗の窮地を救ってくれ、福岡に選挙区を与えてくれた自民党への恩を仇で返したお坊ちゃん政治家。選挙区で名刺を配らず、東京の飲食店で初めて会う店員に名刺と称してお札を配る(この行為は選挙区外なので、公選法違反ではない)。地元回りを怠ったツケは、政治家として取り返しのつかない大失態へとつながりました。
(「国会傍聴記by下町の太陽・宮崎信行」〜「鳩山切りで“静脈瘤破裂”の危機回避 住友を甘く見たパフォーマンス大臣去る」より)
確かに「1999年東京都知事選惨敗の窮地を救ってくれ、福岡に選挙区を与えてくれた自民党への恩を仇で返した」という見方も成り立つだろう。裏切りの常習犯である鳩山邦夫にとってはなんてことない行動なのだろうが。
私が情けないと思うのは、多くの「政権交代ブロガー」だとか、いつの間にかリベラルでもなんでもなくなっている某掲示板(日に2万件以上のアクセスがあるあそこのこと)の投稿者たちが、単なるパフォーマンスに過ぎない鳩山邦夫の行動を歓迎していることだ。民主党との距離が近い人ほど冷徹に鳩山邦夫を批判していることに、彼らは目を向けるべきだろう。何より、今回の件は自民党政府の内紛に過ぎない。政権政党内の内紛があたかも国民の関心事であるかのように解散総選挙になだれ込むのは、自民党お得意の手法である。2005年の郵政総選挙は記憶に新しいところだが、過去にはもっとひどい例がある。それは、1979年から翌1980年にかけてのことだ。1979年10月の総選挙で自民党が敗北したあと、自民党内で「40日抗争」が起き、第2次大平正芳内閣は苦難のスタートとなった。福田(赳夫)派、三木派、中曽根派は反主流派となって大平首相を攻撃、5月に野党が提出した内閣不信任案の議決に欠席し、不信任案が可決されて、前年の総選挙からわずか半年あまりで再び解散総選挙になってしまったのである。この時は、たまたま参議院選挙の時期と重なっていて、史上初の衆参同日選挙になった。この選挙で、大平首相は公示日の遊説で気分が悪くなって入院し、選挙戦さなかの1980年6月12日、心筋梗塞で死去した。明らかに、自民党内の激しい抗争が大平首相を殺したようなものだった。ところが、大平首相の死を契機に、自民党の候補者が「弔い合戦」なる意味不明のスローガンを掲げて攻勢に出て、自民党は衆参両院の選挙に圧勝したのである。
このように、党内抗争を選挙のエネルギーに転じて得票に結びつけるのが自民党の十八番(おはこ)である。どの政党にも十八番があり、たとえば民主党にとっては年金問題がそれだ。2004年と2007年の参院選は、いずれも年金問題が争点になって民主党が勝った。一方、党内抗争を票に結びつける十八番に持ち込んで自民党が圧勝したのが「郵政総選挙」なのだ。そこには、筋が通っているも通っていないもない。自分たちが大平首相を殺しておきながら、平然と「弔い合戦だ」などと口にできる厚顔無恥さを彼らは持っており、そうでなければ政治家など務まらないに違いない。大平正芳の命日である6月12日に、鳩山邦夫が総務相を更迭されたのは象徴的だ。
当ブログは、前から書くように、次期政権は民主党、社民党、国民新党の3党連立の枠組であるべきだと考えており、民主党に対しては是々非々の立場を貫く。西松事件の捜査に疑義を呈すれば、右から「小沢支持の陰謀論者」と批判され、民主党を批判すると「隠れ自公」と誹謗される。だが、現野党の連立政権に政権を交代すべき、と考えているのであるから、少数政党を圧殺するような民主党の比例区定数削減案には断固として反対するし、連立政権の政策の中ですぐれていると考える環境・エネルギー政策に焦点を当てたりもする。だが、主流の反自公ブログや掲示板の話題といえば、自民党の土俵である日本郵政の社長人事だとか、もはや鳩山由紀夫執行部もあまり触れなくなった西松事件についての第三者委員会の報告書の話ばかりではないか。いったい何を考えているのかと頭痛がしてくる。某BBSでは、民主党自らが西松事件を総選挙の争点にせよなどという、正気を疑うような投稿さえあった。そんな中で、当ブログ6月5日付エントリ「「政権交代」への流れは止まりそうにはないけれど‥‥」にコメントを下さったukihunetei_tanakayaさんの、「鳩山邦夫打倒が結論」という投稿には、大いに共感した。以下に紹介させていただく。
鳩山邦夫打倒が結論
投稿者---ukihunetei_tanakaya(2009/06/13 08:04:29)
本BBSに結集するヤトウズ民主党応援団の皆さん
・自民党内の政局プロレスに過ぎない今回のお祭り騒動には冷静に対処しましょう
・鳩山邦夫の選挙区事情から派生したパフォーマンスには飽き飽きしていました
・彼こそ民主党を脱党し、自民党に寝返り、麻生太郎の最大の支援者となり、菅代行の選挙区に刺客として現れた、民主党の敵ですよ
・評価すべきことは何もありません。選挙のためのメディアを使った売名が今回の祭の本質です
・その選挙区で民主党候補をきっちり当選させる、このことに尽きます
・郵政に潜む巨大な闇の構造は、政権交代後に全貌解明の作業が始まるまで明らかになることはないでしょう
・ヤトウズ民主党派は、目くそひとつ分も鳩山邦夫を評価してはいけません
胸のすく投稿である。何より鳩山邦夫は自民党の議員であり、鳩山邦夫にエールを送る民主党支持者は、福岡6区の票を固めてきた古賀一成氏の身にもなってやれ、と言いたい。
同様のことが静岡7区についてもいえる。他区の民主党公認候補予定者までもが、静岡7区から無所属で立候補を予定している城内実を「気配りの人」などと持ち上げていたのをどこかで見たことがあるが、なぜ同じ民主党から立候補を予定している斉木武志氏への配慮を見せられないかと疑問に思ったものだ。
とにかく、再び「郵政民営化」を選挙の争点にされてはたまらない。城内実にとってはおそらくその方が好都合だろうが、国民の多くは、日に日に苦しくなる生活を良くする政治を願っている。「郵政民営化」のピンポイントではなく、コイズミらが進めた「構造カイカク」(新自由主義)全体の総括、安倍晋三らが進めた戦前回帰の是非などを、総合的に問う選挙にしなければならないと思うのである。
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