衆院選後、私が見に行くブログやTwitterの多くで更新がまばらになっている。京都府立大学名誉教授・広原盛明氏が11月30日に書いたブログ記事(下記URL)の冒頭の文章がその理由を書いているが、強く共感させられた。
http://d.hatena.ne.jp/hiroharablog/20171130/1511997548
総選挙が終わってからというものは、社会や政治を取り巻く空気がどす黒く澱んでいるように思えて仕方がない。息苦しいというか、重苦しいというか、諦めとも無力感とも付かないどんよりとした空気が上から下まで覆っている感じなのだ。深呼吸しようにも力が湧いてこず、低肺活量のままで息切れしそうな気さえする始末。こんなことでは駄目だと気を奮い起こしても、いつの間にかまたもとの状態に戻ってしまう。いったいどうすればいいのか。
こんなことは個人的状況なら体調不良やスランプなどと思ってやり過ごせるかもしれないが、社会状況や政治状況ともなるとそうはいかない。自分の受け止め方に問題があるのか、それとも周辺状況そのものに問題があるのか、原因を突き止めなければ納得がいかないのだ。そんな鬱々とした気分でここ1週間ほどは過ごしてきたが、自分の気持ちに決着をつけるためにも(主観的であれ)考えを一応整理してみたい。
総選挙前の一種の興奮状態が過ぎていま思うことは、今度の総選挙はいったいなんだったのかということだ。結局は「何も変わらなかった」との徒労感だけしか残らない。(後略)
(『広原盛明のつれづれ日記』 2017年11月30日付記事「この総選挙はいったいなんだったのか、総選挙後に広がる野党状況の異変、立憲民主を軸とした新野党共闘は成立するか(6)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その93)」より)
結局安倍政権が続くのかよ、大山鳴動して鼠ならぬ緑の狸一匹の化けの皮が剥がれただけじゃないか、というのが多くの人たちの思いだろう。
結局、今年の政治シーンの収穫は、いくつかの幻想、主にマスメディアによって作られた(捏造された)虚像がぶっ壊されたことだけだったように思われる。
それでも、昨年の今頃と比較すればまだ少しはマシだろうとは思う。
昨年の今頃には、多くの「リベラル」たちが小池百合子に「ワクワク」していた。また、安倍昭恵が「家庭内野党」であるかのような虚像を受け入れる「リベラル」たちも少なくなかった。さらに、右翼方面に目を転じると、稲田朋美が「次期総理大臣候補」であるかのように思われていた。
これらの幻想ないし虚像はすべて破壊された。安倍昭恵はベルギーから何を顕彰されたのかわからないが何やら勲章を授けられた席上で、目に涙を浮かべながら厚顔無恥にも「つらい一年だった」などと被害者意識むき出しの妄言を発したが、安倍昭恵に同情する人などほとんどいなかった。
衆院選では希望の党が惨敗したことが、皮肉にも今後の政治に対する最大の「希望」となった。同等の惨敗によって保守二大政党制の実現不可能性がはっきり示されたからだ。
衆院選後、同党の政党支持率はさらに低下し、JNNの世論調査では政党支持率1.0%となり、衆院議員が左右に分かれて参院議員だけが残っている民進党の支持率(1.1%)と同レベルになった。早くも小池百合子は泥舟だか棺桶だかから片足を抜き去る卑劣な行動に出ている。その無責任さにおいて安倍晋三も橋下徹も小池には敵わないだろう。これほど低劣な「政治家」は見たこともない。
思えば、今年の正月には、日本共産党の板橋区選出都議・徳留道信が小池百合子に媚びへつらう「新年の挨拶」を発するという最悪の出来事で幕を開けた。徳留は7月の都議選に当選したが、この都議選で党勢を伸ばした共産党は選挙戦中に朝日新聞のアンケートにあった小池都政への評価に関する質問に、全候補者が「ある程度評価する」と答えていた。当然ながら都民ファースト同様、「上からの指示」によって回答が決められていたのだろう。
「リベラル」も「リベラル」で、春の千代田区長選で小池が推した老害の多選区長が圧勝した時に歓呼の記事を書いたブロガーがいた。このブロガーは小池に「ワクワク」していた例の御仁だが、この人はもっともひどかった頃には「最近はテレビ(のワイドショー)の応援が下火のように思われて不満だ。もっと小池都知事を応援してほしい」という意味のことを平然とブログに書いていた。
こうした、共産党や民進党支持系「リベラル」に蔓延した「小池翼賛」の機運が、衆院選を前にした前原誠司一派の妄動たる「希望の党」なる一大張りぼて政党を生み出したのだ。
結局この張りぼて政党の正体を露呈させたのは、「今なら勝てる」と奇襲の衆院解散・総選挙に打って出た安倍晋三だった。
安倍の狙い通り自公与党だけで議席の3分の2を超える圧勝をおさめたが、安倍が改憲のパートナーと期待していた希望の党ばかりか、日本維新の会まで惨敗したために、安倍にとっては「めでたさも中くらいなり」の選挙結果だったに違いない。
結局小池百合子や前原誠司・細野豪志らに排除された人たちが枝野幸男を党首に戴いて集まった立憲民主党が野党第一党になった。
もちろん立民にも課題は多いが、立民の「共謀罪廃止法案」に希望の党が乗らなかったことは、同党の正体をはっきり示すものだった。立民が希望に対して仕掛けた「踏み絵」だったようにも思われる。
希望の党の長島昭久は、民進党にも共謀罪廃止法案の共同提出に加わらないよう働きかけたが、立憲民主党の反撃に遭って失敗に終わった。民進党が共同提案に加わった最大の要因は、立民には10%前後の政党支持率があるのに対し、希望の党には1〜3%程度の政党支持率しかないことだろう。つまり、そんな分子と近いとの印象を人々に与えることは、再来年(2019年)に参院選を控えている民進党に不利になるとの思惑が働いたものとみられる。
今年6月に、前文科事務次官の前川喜平に対する謀略報道を仕掛けた読売新聞は、何としても立憲民主党から野党第一党の座を奪おうと、またしても仕掛けてきている。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20171208-OYT1T50108.html
民進・希望、統一会派を検討…将来的な合流視野
民進党と希望の党が、衆参両院で統一会派の結成を検討していることが8日、わかった。
両党の複数の幹部が明らかにした。将来的な合流も視野に、来年の次期通常国会に向けて幹部同士の協議に入る方針だ。
希望の玉木代表は8日、統一会派結成について「選択肢としてはあり得る」と前向きな姿勢を示した。国会内で記者団に語った。
民進は今年10月の衆院選を前に、民進、希望、立憲民主の3党に分裂した。民進の大塚代表は選挙後、3党の再結集を模索したが、独自路線を掲げる立民の枝野代表は消極的な姿勢を示している。これを受けて民進は、希望との連携を優先する方向にかじを切ったとみられる。
(YOMIURI ONLINE 2017年12月09日 16時54分)
だが、これも前川前事務次官の「出会い系バー」報道同様、読売の手前勝手な都合によるヨタ記事の域を出ないだろう。
もちろん民進党には長島昭久と改憲私案を共同で月刊誌に発表した大野元裕なる参院議員などもいるが、この大野はもともと民進党で長島昭久が主宰した「国軸の党」という名称のグループに所属していた長島一派の人間だ。読売が書いたように、本当に民進と希望が統一会派を組むなら、民進を離党して立民入りする参院議員が続出するだろう。また、「無所属の会」の保守系の重鎮である岡田克也や野田佳彦と細野豪志らとの折り合いから考えても、読売の報道が現実化する可能性は低いと私は考えている。
そうそう、前川前事務次官を引っ掛けようとした謀略報道によって読売の信頼が失墜したことも、今年数少なかった痛快事の一つだ。何しろ、読売同様官邸にけしかけられた週刊新潮の記者が前川氏の身辺を洗おうと動いたら先に読売の記者が動き回っていた上、新潮の記者がいくら取材しても前川氏の疑惑の証拠はいっこうにつかめなかったらしく、新潮はそのことを紙面に書いて「御用新聞」読売を痛烈に揶揄したのだった。代表的な右翼週刊誌である週刊新潮に馬鹿にされるまで読売は堕ちた。ついでにプロ野球の読売軍もBクラスに落ち、クライマックスシリーズの制度が始まって以来初めて同シリーズへの進出を逃したが、これについては私がひいきにしているヤクルトスワローズが球団創設以来最悪の敗戦数を記録して最下位に落ちたので、それこそ「めでたさも中くらい」でしかない。それよりも、野球では大谷翔平がヤンキースを蹴飛ばしてエンジェルス入りしたことは手放しで喜べる朗報だった。
話を戻すと、小池百合子と旧民進右派が「高転びに転んだ」ことは今年の政治の最大の収穫だった(その次が安倍昭恵の正体が露呈して少なからぬ「リベラル」を幻滅させたことだろうか。安倍昭恵ほど悪質な「安倍政権の補完勢力」はなかった)。
しかしそれには、安倍自民党を衆院選にまたしても圧勝させるという大きすぎる代償を伴っていた。
来年、2018年には安倍晋三は改憲への大勝負をかけてくる。いよいよ正念場だ。
https://mainichi.jp/articles/20170723/k00/00e/010/231000c
(前略)安倍晋三首相の自民党総裁任期が来年9月に終わることを踏まえ、「代わった方がよい」との回答は62%(3月調査は41%)で、3期目も「総裁を続けた方がよい」の23%(同45%)を大きく上回った。(中略)
首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」による国家戦略特区を利用した獣医学部新設計画を巡り、政府のこれまでの説明を「信用できない」は76%に達し、「信用できる」は11%。内閣支持層でも「信用できない」(49%)が「信用できる」(36%)よりも多かった。首相は24、25両日、衆参両院予算委員会の閉会中審査で、加計学園の計画に自身が関与していないことを説明する考えだ。
調査では「安倍1強」の政治状況についても聞いた。「自民党から安倍首相に代わる人が出てきてほしい」が31%で最も多く、「野党から首相に対抗できる人が出てきてほしい」は25%、「新しい政党や政治団体から首相に対抗できる人が出てきてほしい」は23%。「安倍首相が強いままでよい」は7%にとどまった。自民支持層では「安倍首相に代わる人」が51%を占め、「ポスト安倍」への期待をうかがわせた。
支持率は2カ月連続で10ポイント下落し、与党内では憲法改正論議への影響を懸念する声も出始めた。今回の調査で、首相が目指す20年の改正憲法施行について、議論を「急ぐ必要はない」は66%、「急ぐべきだ」は22%。首相が5月に改憲方針を表明した後、慎重論は調査のたびに増えている。憲法9条の1項と2項をそのままにして、自衛隊の存在を明記する首相の改正案に関しては、「反対」が41%(前回比5ポイント増)、「賛成」が25%(同2ポイント減)、「わからない」が27%(同3ポイント減)だった。
政党支持率は、自民25%▽民進5%▽公明3%▽共産5%▽維新2%--など。「支持政党はない」と答えた無党派は52%だった。【池乗有衣】
調査の方法
7月22、23日の2日間、コンピューターで無作為に数字を組み合わせて作った電話番号に、調査員が電話をかけるRDS法で調査した。福島第1原発事故で帰還困難区域などに指定されている市町村と、九州北部豪雨で被害を受けた福岡、大分両県の一部市村の電話番号は除いた。18歳以上のいる1627世帯から、1073人の回答を得た。回答率は66%。
毎日新聞 2017年7月23日 16時30分(最終更新 7月24日 02時20分)
上記引用記事を眺めると、一番多いのが「自民党政権のままで良いけど、安倍は代われ」という意見のようだ。「野党共闘」の支持層と、「国民ファ★ストの会」(仮称)や維新など、より右翼的で新自由主義色の強い政治勢力が安倍自民にとって代わることを期待する層はほぼ拮抗している。コアな安倍晋三支持層は1割にも満たない(7%)といったところだろう。
昨日は、仙台市長選も行われた。仙台市選管の発表した開票確定速報を見ると、当選した郡和子氏(前民進党衆院議員)の得票率が43.0%、自公が推した菅原裕典氏の得票率が38.7%だった。つまり自公は「野党共闘」の9割の得票を得たわけだ。自治体の合併で馬鹿みたいに広くなったとはいえ、県庁所在地でこの接戦なのだから、過疎地に行けば行くほど自民党が今なお強さを誇っていることは疑う余地がない。とはいえ、仮に近いうちに解散総選挙が行われた場合、各都道府県の1区などでは自民党が「野党共闘」に敗れる選挙区も少なくなさそうだ。
何が言いたいかというと、一部で噂される早期解散・総選挙の可能性はほとんどないと私は考えているのだ。今衆院選をやれば、いわゆる「改憲政党」の3分の2を守れるかどうかは怪しい。
それよりも、「国民ファ★ストの会」(仮称)が成立して、民進党右派がこれに合流してから解散総選挙を行う方が、改憲には有利ではないか。私が安倍晋三ならそう考える。よって、早期の解散総選挙はなく、政党交付金を受け取るための期限が年末であることから年内に必ず発足する「国民ファ★ストの会」(仮称)が発足し、渡辺喜美や長島昭久や若狭勝らといったそうそうたる右翼または新自由主義の面々が名を連ねる保守政党(というより右翼・新自由主義政党)の発足を待って解散総選挙が行われると考えるべきだ。
実は安倍は都議選についても同じことを考えていただろうと思う。ただ、安倍にとっての誤算は自らの政権への逆風が強すぎて自民党が惨敗を喫してしまったことだが、衆院選の過疎地の選挙区などではそのような心配はない。都市部では「国ファ」(首都圏及び減税日本と合流した名古屋市など)あるいは維新(大阪及び阪神間など)で棲み分けは行われるだろうが、自民党の第一党の座は動かないだろう。そして、自公と国ファ、維新などが、憲法9条への自衛隊明記という、そんなに改憲に血道を上げるまでには至らない人たちにも受け入れられやすい案でまとまって改憲へと突き進む恐れは十分すぎるほどある。
問題は、それまで安倍政権が持つかどうかということだろう。
つい最近まで、国会での答弁で「安倍内閣支持率は53%もある。民進党の政党支持率はどのくらいあるのか」などとほざいて、高い支持率をいいことに「僕ちゃんは何をやっても許されるんだ」とばかりにおごり高ぶっていた安倍が、支持率の急落で受けているストレスの強さは相当のものだろう。10年前と同じように、安倍の体が悲鳴を上げて政権運営を続けられなくなる可能性は小さくない。
一方、現在の野党、特に蓮舫の「国籍」問題などという、ネトウヨや産経くらいしか関心を持たないであろう議論でもめている民進党のていたらくから考えて、現在の野党による政権打倒はほとんど期待できない。また、小選挙区制により総理総裁の権力が極端なまでに肥大し切っているので、自民党内の安倍批判勢力による安倍打倒は、野党による安倍政権打倒よりももっと期待できない。
ここは主権者である国民の総意が安倍を追い詰めるしかない。また、仮に安倍が政権を退いた場合でも、10年前に愚劣極まりない某ブロガーがやったように、「水に落ちた犬は叩かない」などとほざいて、それまで掲げていた安倍打倒の旗を降ろして、城内実や平沼赳夫などという、小泉純一郎によって自民党から追い出されてはいたものの紛れもない安倍の盟友の応援にかまけるなどという愚挙を行ってはならない。「安倍的なもの」の根絶を目指さなければならない。
この記事では、陸自日報の隠蔽を稲田朋美が承認していた件のリークと文民統制の関係についても書こうと思ったが、時間が迫ってきたので次回以降に先送りする。私の主張は、一部「リベラル・左派」に見られる、「文民統制の議論はピント外れだ」という意見には強く反対するが、今回のリーク(報道に「複数の政府関係者」とあったことから文官からのリークであると思われるが、武官からの働きかけが影響した可能性は低くない)を2.26事件と重ね合わせる一部の見方にも強く反対する。2.26事件は国粋主義に染まった青年将校たち、つまり武官の暴走が引き起こした事件だが、今回のリークは総理大臣が自衛隊を私物化し、現実に戦闘行為が行われていた南スーダンの実態を隠そうとしたことが引き起こしたものだ。言い換えれば、安倍晋三や稲田朋美を筆頭とする文官(シビル)の暴走が引き起こした問題なのだ。
だから、「これはクーデターだ」と叫んで問題のすり替えを行うことによって安倍政権を守ろうとするフジテレビの平井文夫らの妄論に乗っかることなく、「文民統制ができない(文民統制をやる気もない)安倍晋三と稲田朋美を打倒せよ」と叫ばなければならないと思う今日この頃なのである。
朝日が毎週のように世論調査を打つのは、安倍政権から明確に「敵」と名指しされている(たとえばトランプと安倍が「ニューヨークタイムズに勝った」「朝日新聞に勝った」と言い合った件など)ことや、2014年に慰安婦問題で安倍にすり寄ったところそれを「飛んで日にいる夏の虫」とばかりに政権に利用された失敗に懲りて、政権との対決姿勢を明確に打ち出したことと関係があるのだろう。
それよりも安倍晋三にとって打撃になったのは、政権と一体になっているはずの読売新聞の世論調査で、内閣支持率が2か月で25ポイントも暴落してしまったことかもしれない。最新の読売の調査による安倍内閣の支持率は36%で、前回(6月17〜18日)から13ポイント、前々回(5月)と比較すると実に25ポイントの下落となった。不支持率は52%で、朝日の調査と同様に、支持率と不支持率は第2次安倍内閣発足後最低と最高をそれぞれ記録した。
支持率の数字の低さでいえば、NNNの調査結果(下記URL)がもっとも低い。以下、NNNのサイトより引用する。
http://www.news24.jp/articles/2017/07/09/04366547.html
内閣支持率急落…政府・与党に危機感広がる
2017年7月9日 20:02
NNNが週末に行った世論調査によると、安倍内閣の支持率は前月比7.9ポイント下落して31.9%となり、2012年12月の第2次安倍政権発足以来、最低を更新した。首相官邸前から青山和弘記者が伝える。
安倍政権で入閣経験もある自民党のベテラン議員は、この支持率に「えー」と驚きの声を上げた。政府・与党内には危機感が広がっている。
政府・与党内には都議選の結果からも、ある程度、厳しい数字を予想する声はあった。しかし、第2次安倍政権発足以来最低だった2015年8月を6ポイント近く下回る支持率には衝撃が広がっている。
自民党のベテラン議員は「おととしは安全保障関連法をめぐる政策論だったが、今回は政権への不信感だ。早く対応しないとまずい」と語っている。与党・公明党の幹部は「自民党全体で危機感が足りない」と嘆いているが、政権幹部は「内閣改造をすれば、がらっと雰囲気が変わる」と来月上旬にも行われる内閣改造の効果に期待を寄せる。
しかし、交代は避けられないとみられている稲田防衛相など閣僚の顔の入れ替えが、どこまで政権浮揚につながるかは不透明。政府・与党内には「小手先の内閣改造では乗り切れない」との声も相次いでいる。加計学園の問題などに対する安倍首相の説明責任をどのように果たすのかなど、信頼回復に向けた政権の対応が問われることになる。
一方、野党・民進党の幹部は「国民が総理の言葉を信じられなくなっている」などと攻勢を強めている。ただ、今回、民進党の支持率も9.2%にとどまっていて、政権批判の受け皿になっていないというジレンマを抱えている。民進党幹部は「正直ショックだった」と語っている。
民進党・野田幹事長「野党第一党として、一つ一つ信頼を勝ち得ていくように、がんばっていきたいと思う」
民進党内には蓮舫代表など執行部に対する不満がくすぶっている。
一方、世論調査では「都民ファーストの会」が次期衆院選で全国に候補者を立てることに「期待する」が26.6%だったのに対し、「期待しない」が55.2%に上った。今の政権批判がこれからどこに流れるのか、今後の政治の行方を左右することになる。
(『日テレNEWS24』より)
安倍内閣の支持率低下の傾向には、歯止めがかからなかった。今回のNNN調査の31.9%という数字は、安保法案が批判を浴びた2015年7月に毎日新聞の世論調査が出した32%という「底値」に並ぶものだ。ついに「危険水域」といわれる内閣支持率30%をめぐる攻防の局面になった。
都議選での自民党の惨敗をめぐって、「THIS IS 敗因」などという馬鹿げた言説が流布している。自民党が負けたのはT(豊田真由子)、H(萩生田光一)、I(稲田朋美)、S(下村博文)のせいだというのだ。
冗談じゃない、「A級戦犯」が抜けてるじゃないかと思うのは私だけじゃないだろう。世論調査でも「首相の人柄が信用できない」ことを不支持の理由として挙げる人たちが増えている。安倍晋三こそ自民党の敗因に挙げられなければならない。
なお、この件に関して、「『THIS IS 敗因』ではなく『THIS IS A 敗因』かも」と題された記事をネット検索で見つけたので下記にURLを示しておく。「A」はもちろん安倍晋三を指すが、Iは稲田以外に今村雅弘や石原伸晃もいるよ、Sは菅義偉や佐川宣寿もいるよ、などと書いており、責任を分散させるような書き方にはぬるさを感じさせる。
http://note365.net/?p=6741
ただ、来月(8月)に行われるという内閣改造は、内閣支持率を押し上げる一定の効果を持つだろうとは確実に予測できる。それは、10年前の8月にも起きた現象だ。結局内閣が持たなかったのは体調を崩した安倍晋三が政権を投げ出したためだったが、あの第1次安倍改造内閣で防衛大臣に就任したのが小池百合子だった。当時、小池は "Please call me Madam Sushi." なる妄言を吐いて失笑を買った。
その小池百合子が都議選前と選挙中にだけ党代表を務め、極右の野田数を代表に再起用した「都民ファーストの会」の国政進出について、NNNの世論調査で「期待しない」が過半数55.2%を占めたことも注目される。しかし、それなら民進党が受け皿として期待されているかといえば全くそんなことはなく、前記日テレニュースが伝えるところでも、民進党の政党支持率9.2%という低い数字に、同党幹部が「正直ショックだった」と語っている。
おそらく、辞意を漏らしたという野田佳彦が幹事長を辞任するだけで、現在の蓮舫体制が続くのだろうが、昨年の民進党代表交代以降の民進党低迷の原因として、野田佳彦幹事長任命のほかに、もっと大きな原因がある。それは昨年晩秋に蓮舫がいち早く小池百合子にすり寄って小池に「協力を申し出た」ことだ。しかも、小池はそれにつけこんで、民進党からの協力要請は断りながら、都議選では都ファが民進党から大量の現職・前職(いずれも当時)を引き抜いた(もちろん自民党からも引き抜いたが)。都ファが民進党から引き抜いた現職・前職たちは、ある者は右翼だったり、別の者はもともとは「みんなの党」に属していた新自由主義者だったりした者が多く、民進党内でも政治思想か経済政策かのいずれかが「右寄り」の者が多かった。
民進党代表に就任した直後に、自らのその一員である民進党右派にいい顔をしようとした蓮舫は、逆に右派に逃げられた形となった、海江田万里に代わって民主党(当時)の代表に返り咲いた岡田克也が、おそらく自らの思想信条とは齟齬があるかもしれない「野党共闘」路線にしか活路を見出せないと判断してこれに徹し、昨年の参院選で激戦となった1人区で成果を出すところまでこぎつけたのと好対照といえる。しかし岡田克也には、2005年の郵政総選挙で小泉自民党に惨敗したことからもうかがえる「ポピュリズム政治の攻勢に対する弱さ」があって、それが昨年の東京都知事選での鳥越俊太郎の惨敗(これは「タマが悪かった」側面も否定できないが)につながった。そのあとに蓮舫という「党首にしてはいけなかった」人間を党首(党代表)に据えてしまった民進党の体質を具現しているのが蓮舫なのであって、もはや蓮舫の首をすげ替えたところで蓮舫と同じような人間しか出てこないのではないかと私は思っている。
現在は国政進出を懐疑的な目で見られている「都ファの国政政党版」、これは「新・新進党」とも「国民ファ★ストの会」とも仮称できるが、間違いなく立ち上がるこの政党は、まず民進党からの政治思想右派または経済右派の連中を引き抜き、さらにかつての新進党に倣って公明党を自民党との連立から引き離そうとするだろう。人間は歳をとっても同じことを考えるものだ。小池百合子はかつて新進党を作った小沢一郎のやり方を真似るに違いない。仮に政党名が「国民ファ★ストの会」にでもなれば、それはかつての小沢一郎の「国民の生活が第一」とそっくりの党名になる。これは決して偶然ではない。
民進党右派を取り込み、公明党との連携に成功すれば(その際には自民党内の安倍晋三に対する批判勢力、たとえば石破茂らも動く可能性がある)、都ファの国政政党版への期待が今よりも高まる可能性がある。これに対する警戒を怠ってはならない。しかし、安倍政権をこれ以上長引かせてはならないとも強く思う。当面はろくでもない政治勢力同士のせめぎ合いが続くことになりそうだ。
今後のブログ運営に関して、当面は、「安倍晋三批判」と「小池百合子批判」の二正面作戦で行くしかないと強く思う今日この頃だ。
稲田については、南スーダンの陸自日報に関して言えば、何より文民統制を行う能力も、文民統制を行わなければならないという使命感も何もないことが最大の問題というか防衛大臣としての資質を全く欠く論外の人間としか言いようがない。もちろん安倍晋三の任命責任は極めて重い。しかも稲田は、森友学園事件に関しても虚偽答弁を連発している。即刻大臣罷免にとどまらず、本来なら議員辞職を求められるくらいの失態をえんじたといえる。だから私は「稲田をゴキブリのごとく叩き潰せ」と叫ぶのだ。
その稲田朋美を防衛大臣に任命した安倍晋三は、大好きな「外遊」の最中。朝日新聞によると、第2次内閣発足後4年3か月で52回目(第1次内閣時代を合わせて通算60回目)の外遊で、5年5か月で51回外遊した小泉純一郎の記録を抜いたという。帰国は明日(22日)夕とのことだが、首相・安倍晋三が不在のまま、安倍内閣は共謀罪法案(読売や産経の表記では「テロ準備罪法案」)を閣議決定するという。政府・与党においては安倍晋三は「神聖ニシテ侵スヘカラス」だから、予定通り閣議決定されることは100%間違いない。
一連の森友学園事件、それに今後大きな問題になるかも知れない加計学園の件などを通じて明らかになったのは、安倍晋三とその妻・安倍昭恵が国政を私物化しているという恐るべき実態だ。今の日本の政治においては、安倍夫妻との親疎が陳情の成否を決める最大の要因になっている。特に安倍昭恵の権力はこれまで誰も想像しなかったほど強い。
それが端的に表れた事例としてわかりやすいのが、「もったいない学会」がケニアにエコトイレを設置しようとして外務省に働きかけたものの外務省が渋ってなかなか補助金をつけてくれなかったのが、学会に関わる京大名誉教授らが安倍昭恵に会って話をしたところ、すぐに8000万円の予算がついたという一件だ。ネットで話題沸騰だったこの件をリテラが記事にしているので詳しくはそちら(下記URL)をご覧いただきたい。
http://lite-ra.com/2017/03/post-3006.html
その安倍昭恵は野党4党の議員が籠池泰典邸を訪れている最中に籠池諄子に携帯メールを送るという大胆な挙に出た。籠池諄子は野党議員たち(今井雅人、小池晃、福島瑞穂、森裕子)にこれを見せたとのことで、安倍晋三も籠池諄子と安倍昭恵とのメールのやりとりの事実を国会答弁で認めざるを得なかった。
これらの事実から類推されるのは、森友学園事件で森友学園が多大な利益供与を受けたことにも、安倍昭恵の意向が強く働いているのではないかということだ。既に2015年9月3〜5日の首相動静から、安倍晋三の意を受けた当時の財務省理財局長・迫田英典(山口県出身)が動いた、つまり安倍晋三が口利きを行ったとの心証を少なからぬ国民は持っていると思うが、安倍昭恵に関してはつい先日まで私は安倍晋三の意を受けて森友学園の名誉校長に就任するなどの「お飾り」として動いたとばかり思い込んでいた。しかしどうやら事実はそうではなく、「水からの伝言」を信じるなど「トンデモに弱い」ことで定評のある安倍昭恵が森友学園の「教育方針」に心酔し、まず安倍晋三を動かし、安倍晋三を通じて迫田英典が下手人として動いた、どうやらそれが森友学園事件・財務省ルート(=安倍夫妻ルート)の真相だろうとの心証を持つに至った。「アッキード事件」との異名はダテではなかったどころか、事件の核心を突く命名だったと思わされる。
もちろんこの事件にはこれと並んで大きな寄与をした「大阪維新(松井一郎)ルートがあり、これに関しても松井一郎が実にこまごまと動き回っていたことがあきらかになりつつあるが、最近一番よく見ているTBSの報道は、松井のコメントを政府の事件への関与を匂わせるものとして用いていることに大きな不満を持っている。松井一郎は善玉ではなく悪玉だという認識がTBSには欠けているように思う。
いずれにせよ必要なのは、少なくとも安倍昭恵、迫田英典、松井一郎の3人を国会に呼んで証人喚問することだ。自民党はこれまで「民間人の国会招致には応じられない」としてきたが、籠池泰典の証人喚問にあっさり応じたのだから、たとえ安倍昭恵が「私人」だという政権が強弁を万歩譲って認めたとしても、それが安倍昭恵の国会招致を拒む理由にならないことは明白だろう。ましてや迫田英典や松井一郎にいたってはれっきとした「公人」だ。
私は明後日(23日)国会で行われる籠池泰典の証人喚問にはほとんど何も期待していない。それよりも野党やメディアには、昭恵・迫田・松井の証人喚問を強く求めてもらいたいと思う。
アッキード事件の安倍夫妻ルートなどから明らかになりつつあるのは、安倍夫妻による国政私物化というおそるべき実態だ。それはルイ16世とマリー・アントワネットを連想させずにはおかない。そして、このように国政を私物化する権力のもとで共謀罪法案が可決・成立したらどんなことが起きるか。想像するだにおぞましい。
安倍晋三が不在の今日、閣議決定される共謀罪法案は、絶対に成立させてはならない。
そんな中で注目すべきと思ったのは、格差社会を研究する早稲田大学の橋本健二氏が書いて震災記念日に『現代ビジネス』に公開された「大震災で『格差』を忘れた日本人~いったい何が起こったのか」だったが、この記事は『kojitakenの日記』で取り上げたのでここでは触れない。今週も森友学園(アッキード)事件を中心に扱う。
11年前の2006年に私がブログを始めた動機は、2002年に小泉内閣官房副長官に就任して以来ずっと嫌い続けていて、その間一度もシンパシーを抱いたことのない安倍晋三の総理大臣就任を阻止することだったが、その頃から派遣労働の問題とそれがもたらした具体的な事柄にかかわったことがしばしばあったため、ある時期から反格差、反貧困を大きなテーマとして意識するようになった。だから今では、単に安倍政権を再び一刻も早く終わらせるだけではなく、その後の新政権を極悪な極右にして過激な新自由主義者である小池百合子が担わせないことを大きな目標としていることを明記しておく。
さて、安倍晋三は当初、森友学園事件は3.11の震災報道にかき消されて一服できると考えていたのではないかと思われるが、安倍自身の拙劣な国会答弁が傷口を広げたり、新事実が次々と明るみに出るなどして、先月朝日新聞大阪本社社会部が事件をスクープした時には想像もつかなかったような大問題になった。
南スーダンからの陸自撤収は、多くの自衛官にとっても「寝耳に水」の話だっただろうが、撤収の時期は5月であり、本来はもう少し後に発表されるはずだったのではないかと思われる。だから自衛隊内にも周知されていなかったのではないかと私は想像している。
安倍晋三のあとを受けて、というより王位を簒奪しての「王朝交代」を目指す小池百合子はもともと、こんなに早く政権が揺らぐとは考えていなかったはずだ。それは私も同じであり、だから私は今年の年初には「安倍晋三は『小池新党』を育てにかかる」と見ていた。
実際、小池百合子の手口は明らかに大阪維新の会を真似ている。公明党と手を組むというのはそのもっとも露骨な表れである。というのは大阪府議会では大阪維新の会は圧倒的な第一党であり、公明党と連立を組んでいるのだ。そして大阪維新と安倍晋三や菅義偉が親密な一方、大阪の自民党は党本部の執行部とぎくしゃくしているという捻れが生じている。
それとのアナロジーでいえば、安倍晋三も真っ青な極右中の極右である野田数(かずさ)を代表に戴く「都民ファ□ストの会」が与党となって公明党と連立を組み、安倍や菅とは良好な関係を保とう、としばらく前までの小池が考えていたであろうことは想像に難くない。石原伸晃らが牛耳る東京の自民党が弱小化したって小池百合子ばかりか安倍晋三だって何も困らないのだ。
ところが安倍が森友学園(アッキード)事件で躓いた。しかも小池自身は先般の千代田区長選虚結果に端的に見られたように、当初「4島ならぬ4党」の仲間として当てにしていた民進党や共産党(!)のアシストなど必要ないくらいに過熱した人気を得ている。そして森友学園事件の衝撃は、安倍晋三に早期の解散総選挙をためらわせる効果を持っている。
こう考えると、いつになるかわからないが来年(2018年)12月までには必ず行われる衆院選で、小池は安倍と一戦交えざるを得ない情勢へと変化したといえるかもしれない。だから小池は「都民ファ□ストの会」が国政の勉強会を立ち上げることを「報道させた」のであろう。私はそう推測する。
南スーダンからの陸自撤収の話に戻ると、この件は当初次の解散総選挙へ向けての「リベラル」層への機嫌取りを狙ってもう少し後に発表するつもりだったのが、森友学園事件が予想外に大きな問題になってしまったところにもってきて、籠池泰典がその件で記者会見をするというので日程を繰り上げ、それも最初は10日夜に発表するつもりだったのが、籠池の会見の時間帯が夕方だとわかったので、それにぶつけるべく発表時刻まで、もしかしたら当日になって突然繰り上げた。もちろん、9日にとんでもない動画をYouTubeに上げた籠池(その内容の一部は各社のニュースで報じられたが、籠池は稲田朋美や安倍晋三の実名こそあげなかったものの、2人に対する露骨な厭味を口にしていた)との手打ちも怠らなかった。しかし籠池との手打ちだけでは安心できなかった安倍は、念には念を入れて陸自撤収の発表を籠池の会見の時間帯にぶつけたものだろう。一連のドタバタ劇にはこんな経緯があったのではなかろうか。あまりにも露骨かつ恐るべき安倍晋三の「しつこさ」だが(安倍は籠池を評して「しつこい」と言ったが、本当にしつこいのは籠池よりもむしろ安倍である)、このしつこさこそ安倍の真骨頂であり、この性格があるからこそ執念で「改正教育基本法」(実際には大改悪)も安保法も成立させたのだ。絶対にこれを甘く見てはならない。
しかも安倍晋三は今年から3.11の記者会見を「打ち切り」にした。報道各社は「打ち切り」という言葉でこれを報じたが、その語感からも明らかな通り、これは被災者に対する冷酷非情な仕打ち以外のなにものでもない。しかもその動機がまたぞろ「森友学園事件に関する質問封じ」だったことはあまりにもミエミエだ。ここまで露骨に国政を私物化する総理大臣を私は見たこともない。戦後最悪どころか、伊藤博文以来、自殺した近衛文麿や死刑になった東条英機や元A級戦犯容疑者の岸信介を含めた歴代の総理大臣の中でももっとも劣悪な最低最悪の人格の持ち主、それが安倍晋三だと私は確信している。
現段階では内閣支持率が5,6ポイント程度下落したくらいではあるが、ここにきて安倍晋三批判の声がようやく聞こえてくるようになり、長かった安倍晋三の独裁政権にも(まだかなり遠いけれども)終わりの兆しが見えてきたように思う。
しかしその後釜がまかり間違って小池百合子になるようなら、最低最悪の座は安倍晋三の単独ではなく、安倍と小池とが二人して分け合うことになるだろう。
「崩壊の時代」はますます渾沌の度を増してきたと思う今日この頃なのである。
4年に一度行われる五輪には、快哉を重ねる毎にというか私自身が歳をとるほどにというか、さっぱり興味がわかなくなってきている。特に、次回の東京五輪に対しては、東京というか日本でもう五輪なんかやってくれるなとずっと思ってきたから、その直前の大会である今回の五輪は見る気にもならない。
このところ『kojitakenの日記』にはずっと都知事選に圧勝した小池百合子及び小池に異様に甘い日本の「リベラル」たちに悪態をつく記事ばかり書いてきた。
今回は、それとは少し離れて、これまで気になっていながらまとまった書く機会がなくここまできた、稲田朋美の防衛大臣就任について書く。
まさか安倍晋三が稲田朋美を防衛大臣にするとは思わなかった。仮に安倍晋三がどこかの国に自衛隊を派遣することになった時、ワシントンポストに「戦中日本の行いを軽視し、極右思想(far-right views)で知られる女性」と評された札付きの極右人士が防衛大臣でいて大丈夫なのか、と思う人は少なくないのではないか。
女性の防衛大臣は第1次安倍改造内閣における小池百合子以来であって、その小池もまた極右だった。
だが、小池の任期は長く続かなかった。第1次安倍改造内閣発足からさほど間を置かずして、安倍晋三が政権を投げ出したからだ。
今回は独裁権力を恣にしている安倍晋三が政権を再び投げ出すことはまず考えられないが、稲田朋美が防衛大臣でいられる時期はそう長くはないかもしれない。それは安倍晋三がいつ衆議院を解散するかにかかっている。
違憲の疑いが濃厚な「7条解散」だが、もうすっかり総理大臣の伝家の宝刀とみなす慣例が続いているから、現在の安倍晋三の最大の関心事は、いつこの「切り札」を切るかということに尽きるといえる。
私は安倍晋三とは基本的に日本国民の生活には何の関心もなく、母方の祖父・岸信介がなしとげることのできなかった「憲法改正」を自らの手で行うことを唯一の目的とする政治家であるとみなしている。例の安倍政権の経済政策も、安倍にとっては改憲のための手段に過ぎない。
だが、安倍は明文改憲を行う前に9条の解釈改憲をやってしまった。アメリカにせっつかれて自衛隊を海外に派遣するケースもそのうち出てくるかもしれない。
とはいえ、アメリカも秋に大統領選挙を控えている。ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの戦いは、少し前までは勝負にならずクリントンの圧勝だろうと思われていたが、アメリカでも「クリントンが大統領になるくらいならトランプの方がマシだ」という、小池百合子に投票した日本の一部「リベラル」にも似たバーニー・サンダース支持者のような人間が少なからずいるせいもあって、クリントンとトランプのどちらが勝つかは全く予断を許さない情勢になっている。アメリカがいつ自衛隊を自らの戦争に巻き込もうとするかはわからないが、しばらくはその機会はないと安倍晋三はみているのではないか。
つまり、安倍晋三はそう長く稲田朋美を防衛大臣にとどめておくつもりはないかもしれない。今回の防衛大臣抜擢は、安倍がお気に入りである稲田の経歴にハクをつけるための人事であるように思われる。
いつもの安倍晋三の行動パターンからいえば、汚れ役には安倍自身の思想信条とは比較的距離のある人物にやらせることが多い。想像したくもないが、第4次安倍内閣が発足する時には、そういう人物を改めて防衛大臣に据えるのではないか。そして稲田朋美には、大臣としては比較的重んじられない防衛大臣よりも、もっとランクが上とされているポストを割り振るのではないかと私は邪推する。
今年衆参同日選挙を見送ったのだから、しばらくは衆議院の解散はないというのが普通の味方だろうが、参院選の直後に行われた東京都知事選は、「野党共闘」に亀裂を入れる結果に終わった。野党統一候補の鳥越俊太郎の得票は、小池百合子の半分にも満たない大惨敗だった。
「野党共闘」は今後どうなるかわからない。民進党次期代表就任確実と見られる蓮舫は、党内右派にも左派にもいい顔をしようとしているように見受けられ、その蓮舫が現実に代表になった時、「野党共闘」をどうするのかは不透明になっている。
一部からは、民進党は何も共産党から票を流してもらわなくとも、おおさか維新の会から票を流してもらえば良いのだから、「野党共闘」を続ける理由など何もないという声もある。
確かに民進党にとってはその通りかもしれないが、お維にとっては違う。お維は、主に大阪や兵庫において、一時は民主党(当時)に流れながら、民主党に飽き足らなくなったり民主党政権に失望した人たちの心をつかんで成長した政党だ。民主党を叩くことによって大阪の人たちの拍手喝采を受けるというのがお維の行動パターンになっている。
そんなお維にとって、民進党に票を流す行為は、それまでのお維の行動に矛盾するものであり、そんなことをしたら支持者が怒り狂って票を大量に失ってしまう。民進党に票を流すことはお維にとって自殺行為に当たるから、そんなことは絶対にできないのだ。
だから民進党はお維とは組めない。しかし民進党自身、単独では議席の獲得が難しくなっている、だから共産党、社民党、生活の党と山本太郎となかまたちの3党と組んで「野党共闘」を続けるしか選択肢はない。特に民進党代表なんかになった日には、そういう政治の現実に制約されて、代表のとり得る選択肢はごく限られてしまう。
もちろんこの状態には、民進右派はフラストレーションを溜め込んでいる。私は、「野党共闘」の解消よりも民進党の分裂の方が起きる確率が高いと考えている。これは、自らも野田佳彦という右派政治家の派閥に属していながら今後民進党をまとめていかなければならない立場の蓮舫にとっては不都合な事態だ。右派グループに出て行かれてしまっては、「民進党を分裂させた政治家」という負の実績が残るだけになってしまう。
蓮舫が民進党内のあらゆるグループにいい顔をしようとするのは、上記の党内事情によるものであろう。仮に私が蓮舫の立場にいたとしても、同じ行動をとるのではないかと思われる。だからといって蓮舫が私の好まない政治家であることには変わりはないが、ここで言いたいのは、蓮舫の行動には合理性があるということだ。
いずれにせよ、安倍晋三は蓮舫が代表になったあと、民進党が「野党共闘」をどうするかを見極めつつ、仮に「野党共闘」の継続の方向が固まった場合は、野党統一候補の選定などの準備が整い切らないうちに早めに解散カードを切るものと思われる。
これが普通の政治家であれば、衆参同日選挙を見送ったなら年内解散はないと考えられるが、あいにく安倍晋三は全く普通ではない異常な政治家である。だから、いついかなる時に解散カードを切ってくるかは全くわからない。常に警戒を怠ってはならないだろう。
犠牲フライとは8月14日に安倍晋三が発表した「安倍談話」である。安保法案推進派ながら、戦争責任の問題に関しては一家言のある読売新聞の老ドン・ナベツネ(渡邉恒雄)の意向を安倍は受け入れ、「4つのキーワード」を談話に入れた。しかし同時に、安倍はそのことを親しい人間たちにリークし、ダメージを最小限に抑えた。具体的に言えば、産経新聞の阿比留瑠比は、「安倍談話」をワイツゼッカー談話と対比した。それどころか、下記のような「得点」を稼いでいる。以下、「談話」当日の8月14日の安倍の記者会見を記録した官邸のウェブページから引用する。
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2015/0814kaiken.html
(内閣広報官)
これからは幹事社以外の方の御質問をお受けしますので、御希望される方は挙手をお願いします。私が指名いたします。再度、自らお名前と社名を明らかにした上でお願いします。
(記者)
産経の阿比留です。
今回の談話には、未来の子供たちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりませんとある一方で、世代を超えて過去の歴史に真正面から向き合わなければなりませんと書かれています。
これはドイツのヴァイツゼッカー大統領の有名な演説の、歴史から目をそらさないという一方で、自らが手を下してはいない行為について、自らの罪を告白することはできないと述べたのに通じるような気がするのですが、総理のお考えをお聞かせください。
(安倍総理)
戦後から70年が経過しました。あの戦争には何ら関わりのない私たちの子や孫、その先の世代、未来の子供たちが謝罪を続けなければいけないような状況、そうした宿命を背負わせてはならない。これは今を生きる私たちの世代の責任であると考えました。その思いを談話の中にも盛り込んだところであります。
しかし、それでもなお私たち日本人は、世代を超えて過去の歴史に真正面から向き合わなければならないと考えます。まずは何よりも、あの戦争の後、敵であった日本に善意や支援の手を差し伸べ、国際社会に導いてくれた国々、その寛容な心に対して感謝すべきであり、その感謝の気持ちは世代を超えて忘れてはならないと考えています。
同時に、過去を反省すべきであります。歴史の教訓を深く胸に刻み、より良い未来を切り拓いていく。アジア、そして世界の平和と繁栄に力を尽くす。その大きな責任があると思っています。
そうした思いについても、あわせて今回の談話に盛り込んだところであります。
胸くそが悪くなる八百長の質疑だが、阿比留以外にも、稲田朋美応援団長を務める老極右の渡部昇一が、極右雑誌『WILL』の10月号に「『安倍談話』百点満点だ! 東京裁判史観を克服」と題した文章を書いている。
このように、彼ら安倍の極右仲間たちは、こぞって「安倍談話」を大絶賛した。実際その中身も、「4つのキーワード」を使ってこそいるが間接話法を用いることによって「村山談話」を骨抜きにし、子孫の代には謝罪させないと宣言した舌の根も乾かぬうちに、軍事介入宣言にほかならない「積極的平和主義」を謳い上げるなど、極右の渡部昇一が「百点満点」と言うだけのことはある、リベラル・左派にとっては我慢ならないほどひどい内容である。
しかし、軽薄な「リベラル」は「4つのキーワード」が盛り込まれただけで満足してしまい、「安倍談話」をあげつらう人間は「極左」であるとでも考えたらしい。下記は、このブログに寄せられた「リベラル」のコメントを批評したコメントである。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1405.html#comment19063
終戦70年の節目に発表された「安倍談話」の概要。
(1)自らは「侵略」を認めず、「おわび」はせず。
「侵略」「おわび」は入れたくなかった。
しかし内外の世論を考慮していやいや入れたということをまざまざと見せつけられました。
(2)日本帝国主義の侵略戦争「日露戦争」を正義の戦争と大嘘を抜かす。
日露戦争により日本帝国主義は、朝鮮を植民地にし、南サハリン、遼東半島、満鉄を強奪しました。
(3)「積極的平和主義」と称して、戦前のように日本が戦争をする国にすることを宣言、そして目指すは大東亜共栄圏復活です。
彼が心酔いしている狂信的な日本軍国主義者、日本帝国主義者でA級戦犯だった岸信介の亡霊であることを改めてさらけだしました。
安倍談話を聞きネトウヨが万々歳なのは当然でしょう。
リベラルなら激しく反発すべきでしょう。
理解を示すようでリベラルとはいえません。
名ばかりリベラル、ニセリベラルです。
2015.09.05 23:59 風てん
本当にその通りだ。私も同感である。
また、別の例も挙げる。下記は、さる「リベラル」のブログからの引用。以前にも取り上げたかもしれないが、あまりに腹が立って未だに思い出すたびにムカムカするので、改めて槍玉に挙げる。
ただ、○○○が真ん中へんから客観的に見ると、今回の談話には、安倍氏&超保守仲間の思想や考えが、彼らがいつも主張していることの半分も反映されていないことから、安倍首相は周囲の圧力や世論に押されて、負けちゃったかな~(=超保守派の期待を裏切っちゃったかな~)という感じがするし。
もしこれで、近い将来、拉致問題や北方領土問題にも前進がなければ、さらなる失望を招いて、そのうち党内のアンチ安倍派に加えて、超保守派の間からも「安倍おろし」が起きるかも知れないな~と(半分、期待込みで)思ったりもする○○○なのだった。
「真ん中へんから客観的に見ると」などと書いているところがなんともイタい。しかもその大甘の見通しは大外れだった。70年代の言論状況を覚えている私から見ると、先のコメンテーターも上記のブログ主も、「保守」と分類されるならまだ良い方で、下手したら明白な「右派」あるいは「反動」として(70年代なら)強く批判されていたところであろう。そもそも、自分が「真ん中」であるとか、「客観的に」物事を判断できると思い上がっている時点で既に、人間として道を踏み外しているとしか言いようがない。こういうことを書く人は、私などを「頑迷な左翼」としか思っていないのであろう。しかし、70年代においては私などはせいぜい「中道左派」に過ぎなかった。それが今では「極左」などと呼ばれることも珍しくない。
しかし、上記のような言説を発する人は、「リベラル」の間では決して少なくないし、この人自身にしても、「安倍談話」が出されたからといって安倍政権支持に転向することはない程度にはしっかりしているのである。現実には、もっと甘い「リベラル」たちがウヨウヨいて、安倍晋三が「4つのキーワード」を入れただけで安倍内閣支持に逆戻りしてしまうていたらくである。これでは安倍晋三は「左うちわ」だよなあとため息が出る。
安保法案成立は確実と見て浮かれた安倍晋三は、9月4日、今や日本最悪の極右都市と化した大阪を訪れ、日本最悪の局放送局・読売テレビ制作のワイドショー『ミヤネ屋』に出演して言いたい放題だったようだ。以下読売テレビを含む系列のキー局である日本テレビのニュースより。
http://news.livedoor.com/article/detail/10553137/
首相、“安保法案”採決に踏み切る考え示す
2015年9月4日 22時16分
安倍首相が4日、日本テレビ系列の番組「情報ライブ ミヤネ屋」に出演し、安全保障関連法案について「決めるときには決めなければいけない」と述べ、成立への強い意欲を示した。
安倍首相「会期も大幅に延長したのですが、あとわずかになってきました。どこかの段階では、やはり決める時には決めなければいけない」
関連法案のうち、集団的自衛権の限定的な行使を可能にする法案だけ採決を見送ることはないかと聞かれ、安倍首相は「切れ目のない対応を可能とするための法案で、全体の法制が大切だろう」と否定的な考えを示した。さらに、民主党などについて「対案は示さないで、憲法違反としか言わないのでは、議論が深まらない」と批判した。
再来年4月に予定されている、消費税率の8%から10%への引き上げについては、「予定通り行っていく」と強調する一方、「リーマンショックのようなことが起これば別だ」と述べた。
また、来月末にも開催することで調整が行われている日・中・韓3か国による首脳会談については、「実現することになった」と評価する姿勢を示した。さらに、「その際、ぜひ日韓首脳会談も行いたい」と述べ、2度目の首相就任以来、実現していない韓国との首脳会談開催に意欲を示した。
(日テレNEWS24より)
国会の審議をほったらかして極右都市・大阪に凱旋して勝利の雄叫びを上げるとは呆れたものだが、安倍は安保法案採決宣言に加えて、消費税増税宣言まで行ったようだ。
これを、「金融緩和が何よりも優先される。それができるのは安倍晋三だけ」と言って、金融緩和一点だけで安倍晋三を無条件支持する、いわゆる日本の「リフレ派」はどう考えるのか。そもそも、自民党の憲法草案には「財政健全化条項」なるトンデモ条項まで含まれているのである(さすがに、日本会議に属しているらしい政治思想右派のリフレ派も、このトンデモ条項は批判していたが)。
よく日本のリフレ派は、ポール・クルーグマンやジョセフ・スティグリッツが安倍政権の経済政策を支持していると宣伝するが、実際には彼らが支持しているのは安倍政権の経済政策の一部に過ぎない金融政策だけである。その一点だけで、安倍政権の財政政策に触れないか、触れてもせいぜい「今後の課題」扱いにして過小評価する日本の「リフレ派」とは一体何者なのか。私はクルーグマンやスティグリッツは信頼するが、日本の「リフレ派」はこれっぽっちも信用しない。
安倍晋三とそれを持ち上げる極右報道人の浮かれぶりに関して怒り心頭に発したのは、安倍が出演してビデオ収録された同じ読売テレビ制作の、かつて「たかじん」の冠がついていた番組が昨日(6日)放送されたらしいことだ。この番組に、「左翼(ひだり つばさ)くん」なるゆるキャラが登場して安倍晋三と握手していたらしい。『日刊安倍晋三』と題されたブログ記事によると、「左翼(ひだり つばさ)君なる安保法案に対して反対している国民を代表しているキャラクターが、出演者(なんとここのパネラーは全員安保法案に賛成している)に対して、質問を投げかけ」たらしい。
その「パネラー」の中には、東京新聞論説副主幹の長谷川幸洋も含まれている。東京新聞(中日新聞)といえば、「安倍談話」を「評価」する社説を掲載して、反安保法案の流れに水を差した新聞だ。普段「リベラル」が目の敵にする朝日新聞が「安倍談話」を強く批判したのとは対照的だった。『日刊ゲンダイ』でおなじみの、「肝心な時に裏切る」体質を、東京新聞も持っていたと私はみなしている。
自民党総裁選に野田聖子が出馬の意欲を見せているが、朝日新聞は「安保国会がハードル」と報じ、極右の産経新聞は、ほかならぬ安倍晋三じきじきの指名によって財政再建を目指す、政治思想極右にして経済極右の稲田朋美の「(野田氏は)総裁選をすることに意味があるというふうに言っているように思う。何を議論するかが重要であり、総裁選だけが議論の場ではない」との発言を引用している。もっとも、同じ産経の記事によると、野田聖子も「『反安保ではない』と述べ、安保関連法案に否定的との見方を自ら打ち消した」とのことで、その程度の政治家らしい。
悪いことずくめの9月のスタートとなった。
現在、国会は政府・自民党から民主党・生活の党などの野党も巻き込んだ「政治と金」の問題で揺れているが、問題になっている政治家のうち、特別に悪質なのは下村博文であって、他は下村と比較すれば微罪だと思う。野党や政権への批判精神を多少なりとも残しているメディアには、下村を集中攻撃してもらいたいものだと思っているのだが、なかなかそうしてくれない。
第2次安倍内閣末期の小渕優子の時も、同時期に小渕と比較すれば微罪としか思われない松島みどりと同時閣僚辞任になって、小渕の罪深さの印象が薄まったのが気に入らなかったが、それでも小渕は閣僚辞任にまでは追い込まれた。政治的スタンスから言えば、小渕よりも下村博文に対する方が、安倍晋三が守りたい度合いは強いに違いないとは思うが、下村を閣僚辞任に追い込めないようでは、国会の自浄作用は全く働いていないことになるのではないか。
とはいえ、下村が辞任したところで安倍晋三の天下は終わらない。このまま安倍政権が夏まで続くと、安倍が「総理大臣談話」を発表する恐れが大きくなる。
政治的立場の対立の話を棚上げして言えば、安倍政権、特に総理大臣である安倍晋三の「歴史修正主義」は日中や日韓もさることながら、何よりも日米関係を軋ませるリスクが大きい。一方、安倍政権が昨年政府解釈を変更させた集団的自衛権を中東で行使することについては、アメリカは大歓迎だ。
安倍晋三というのは、孫崎享のトンデモ論法を援用すると、ある時には「対米従属派」であったり、別の時には「自主独立派」であったりする。先般の自称「イスラム国」(IS)の時に見せた、「テロリストには妥協しない」(湯川遥菜・後藤健二の両氏を見殺しにした)パフォーマンスでは「対米従属派」の顔を見せ、ケリー米国務長官を殴ったことがあるらしいイスラエル首相・ネタニヤフと仲良くしたり、靖国神社を参拝したり、新談話を発表して「村山談話」を否定する構えを見せたりする時には「自主独立派」の顔を見せるという具合だ。
問題は、すっかり極右化した国内世論の均衡点と国際政治の均衡点のズレが大きくなっていると思われることだ。敗戦国・日本の「歴史修正主義」は国際社会に許されない。一方、極右化した日本の世論は、2007年には異物として排泄した安倍晋三という糞を、今では偶像として崇め奉るていたらくだ。安倍晋三が今夏に下手な「談話」など発表しようものなら、日本の未来に大きなリスクを背負うことになる。
安倍晋三の「親米路線」で自衛隊を中東で戦争させ、日本人がテロリストの標的になるリスク、安倍晋三の「反米路線」で日中戦争を開戦するもアメリカの加勢を得られず大きな破滅に終わるリスク。現時点では前者の恐れの方が大きいと思うが、後者の懸念も無視できない。
安倍政権の経済政策への懸念もある。安倍晋三はここに来て、稲田朋美に「痛みを伴う改革」をやらせようとしている。農協改革はその走りに過ぎない。安倍晋三の経済政策といえば、リフレと金融緩和しか議論にならない現状はおかしい。経済学者や経済評論家たちの怠慢である。今朝(3/9)の朝日新聞3面は、「こんなに違う自民党中枢の2人」として、稲田朋美と二階俊博を対比しているが、外交・安全保障で稲田はタカ派、財政では緊縮派、戦後70年談話では安倍晋三に任せるべきとする稲田は、ありとあらゆる面で私と政治姿勢が対極にある、「極右新自由主義者」である。安倍晋三もそうだが、いったい世の中に稲田朋美ほどおぞましい政治家が他にいるだろうかと唖然とする。
昨年には、稲田朋美は第2次安倍内閣でなんの実績も挙げていないとして、閣僚左遷の話が出ていた。ところが、閣僚は外れたものの安倍は稲田を政調会長に抜擢した(昨年9月)。稲田はよほど安倍に気に入られていると見える。
外交・安全保障でも内政でも、これほどマイナス要因ばかり抱えて見通しの暗い政治状況は、政治についてブログ記事を書く気力を萎えさせるくらいひどい。今回もつまらないぼやきだけの、全く冴えない記事になってしまった。
歳をとって、年々月日の過ぎるのが速く感じられるが、今年の1月と2月は、特にあっという間だった。ブログに関連する話題でいえば、年末にピケティ本を買って年明けを挟んで読み、年が明けたらパリでシャルリー・エブド襲撃事件があり、そのすぐあとに自称「イスラム国」(IS)による日本人人質事件が起きて凄惨な結末になった。その間ピケティが来日して経済メディアを中心に狂躁が繰り広げられ、国会が始まると農水相・西川公也が辞任し、今なお下村博文ら数人の閣僚に「政治と金」の問題が持ち上がっている。
トマ・ピケティが来日した1月29日は、湯川遥菜氏殺害と後藤健二氏殺害の間に当たり、来日当日は大きく報じられなかったが、ピケティの離日後、改めて日本のメディア関係者との対談やピケティ本の評論がテレビや経済誌で大きく取り上げられた。安倍政権は、当初ピケティの経済論に冷淡な対応をとるかと見られたが、「ブームで人気の高いピケティの議論を否定的にコメントするのは得策でない」との政治判断が働いたらしく、「ピケティの主張と『アベノミクス』は矛盾しない、もしくは適合する」という宣伝を政府が行うようになった。
なお、「アベノミクス」という言葉を普段私はブログの記事で用いないことにしているが、今回は例外的に用いる。
それでなくても、リフレ派の経済学者は、昨年末来、「ピケティは安倍政権の金融政策を否定していない」と宣伝するのに躍起だった。特に彼らが論拠として用いたのは、昨年12月22日付の日本経済新聞に掲載されたピケティのインタビュー記事である(下記URL)。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF19H05_Z11C14A2SHA000/
以下、インフレに関する部分を引用する。
――日本の現状をどう見ますか。
「財政面で歴史の教訓を言えば、1945年の仏独はGDP比200%の公的債務を抱えていたが、50年には大幅に減った。もちろん債務を返済したわけではなく、物価上昇が要因だ。安倍政権と日銀が物価上昇を起こそうという姿勢は正しい。物価上昇なしに公的債務を減らすのは難しい。2~4%程度の物価上昇を恐れるべきではない。4月の消費増税はいい決断とはいえず、景気後退につながった」
何もピケティのような経済学者の言葉を借りなくても、「物価上昇なしに公的債務を減らすのは難しい」ことくらいは誰にでもわかる。デフレは金持ちには恩恵をもたらすが、借金を抱える側にとっては債務が重くのしかかるばかりだ。
しかし、このピケティの発言の拡散に励んだのが、「再分配も重視するリフレ派経済学者」の飯田泰之だった。
https://twitter.com/iida_yasuyuki/status/547285071669899265
飯田泰之
@iida_yasuyuki
ピケティ氏の日本の金融政策への言及.要拡散.「(主に財政を巡って)安倍政権と日銀が物価上昇を起こそうという姿勢は正しい。2~4%程度の物価上昇を恐れるべきではない。4月の消費増税はいい決断とはいえず、景気後退に」ピケティ氏インタビュー http://s.nikkei.com/1HkOGl0
22:58 - 2014年12月22日
まあ気持ちはわからなくないし、ピケティが金融政策自体を否定するはずがないとも思う。しかし、どう控えめに言っても、ピケティが金融政策よりも再分配を「より重視する」学者であることは間違いない。例えば、日経BPから『トマ・ピケティの新・資本論』というタイトルの便乗本が出ていて、これは実は日経BPのサイトにある通り、ピケティが「数年にわたってリベラシオン紙に連載していた時評をまとめたもの」であって、主にフランスを中心としたヨーロッパ経済を論じたコラムを集めたものなのだが、この本の81頁に「ミルトン・フリードマンに捧ぐ」という文章が載っている。これは、フリードマンが死んだ直後の2006年11月20日付のコラムだが、ピケティはフリードマンについて、
とこき下ろしながらも、フリードマンが1929年の大暴落に続く大恐慌の時代にFRBがとった過度の緊縮策が、単なる株式市場の大暴落を過去に例のない大恐慌にしてしまったと結論を出した分析(同82-83頁)を高く評価している。共感できる人物だったとは言いがたい。信念の人にありがちなことだが、経済面での超自由主義思想(市場至上主義、国家不要論)は、ある意味で自由主義に反する政治思想(市場の敗者を罰する権威主義的な国家)に行き着いた。一九七〇年代にピノチェト政権を表敬訪問したことは、その表れと言えよう。
(『トマ・ピケティの新・資本論』(日経BP社,2015)81頁)
ピケティが特に評価するのは、フリードマンがアメリカの資本主義を一世紀にわたって遡って実証的に分析したことだ(同82頁)。ピケティ自身が『21世紀の資本』で用いたのと同じ方法論といえる。
しかしピケティは、フリードマンを評価しながらも下記のように書いている。以下再び引用する。
フリードマンが経済学の研究から導き出した政治的な結論は、やはりイデオロギーを免れていない。「よい中央銀行」があればよいと言うなら、「よい福祉国家」があってもよかったはずだし、おそらく後者のほうがよいのではないか。とは言え、フリードマンの重厚な研究が、二〇世紀で最も深刻な危機を巡る当時のコンセンサスに疑義を提出したことはまちがいないし、あのみごとな研究に裏づけられていたいたからこそ、彼のメッセージはあれほどの影響力を持ったのである。今日では、一九二九年の危機と金融政策の役割に関する議論は、ほとんど決着がついている。だからと言って、フリードマンの業績の重要性が薄れることはない。(前掲書84頁)
どこをどう読んだって、ピケティが金融政策の効果を否定する論者とは言えないものの、それよりも「富の再分配」を重視する経済学者であることは明らかだろう。
さらに、『トマ・ピケティの新・資本論』には、「日本――民間は金持ちで政府は借金まみれ」という、東日本大震災の直後の2011年4月5日付のコラムでは、下記のように書いている。以下三たび引用する。
民間部門が金持ちで政府部門は借金まみれという不均衡は、東日本大震災の前から顕著だった。この不均衡を解消するには、民間部門(GDPに占める割合は三〇%程度)に重く課税する以外にない。論理的に考えれば今回の大震災は、一九九〇年から続いているこの現象を一段と加速させるはずだ。そして日本をヨーロッパに、つまりは債務危機に近づけることになるだろう(前掲書254頁)
このピケティの提言が、いわゆる「アベノミクス」と適合的だと解釈できる人など、誰一人としていないのではないか。
もちろんインフレが債務解消に有効であることはピケティも述べている(というより当たり前だ)。しかし、その処方がインフレターゲットであるとは限らない。日経のインタビューでは、「安倍政権と日銀が物価上昇を起こそうという姿勢は正しい」と言っているが、今年1月1日付の朝日新聞に掲載されたインタビュー(これは1月5日付の記事「平和・自由・平等の『揃い踏み』を追求すべし」でも取り上げた)では、ピケティはこう言っている。
――デフレに苦しむ日本はインフレを起こそうとしています。
「グローバル経済の中でできるかどうか。円やユーロをどんどん刷って、不動産や株の値をつり上げてバブルをつくる。それはよい方向とは思えません。特定のグループを大もうけさせることにはなっても、それが必ずしもよいグループではないからです。インフレ率を上昇させる唯一のやり方は、給料とくに公務員の給料を5%上げることでしょう」
(2015年1月1日付朝日新聞オピニオン面掲載 トマ・ピケティインタビュー「失われた平等を求めて」より)
この答えには私も「その通り」と思うのだが、聞き手の朝日新聞論説主幹・大野博人は、「それは政策としては難しそうです」と反応している。ピケティは、金融緩和でバブルを発生させるのは「よい方向とは思えません。特定のグループを大もうけさせることにはなっても、それが必ずしもよいグループではないからです」と言い、金融緩和に代わる方法として公務員の賃上げを提案したのだ。さらにピケティはそれに続いて、
と語っている。これがピケティの本当の主張なのである。日経の記者から金融緩和によるインフレについて聞かれたらそれは否定しないが、インフレにするためには公務員の賃上げの方が効果的で、さらにもっと良いのが累進的な資産課税だというのである。私は、もっとよい方法は日本でも欧州でも民間資産の累進課税だと思います。それは実際にはインフレと同じ効果を発揮しますが、いわばインフレの文明化された形なのです。負担をもっとうまく再分配できますから。
さて、ここまで長々と書いてきたが、実は本論はここからである。だから、今回は前振りが異常に長い。だから全体も長い。私の無能ゆえに(毎度のように書くが、私は経済学の素養を全く欠くど素人である)馬鹿長い記事になってしまった。
1月5日付記事で、
と書いた。私が書いた文章は信用できない、という向きには、ネット検索で「ピケティ『21世紀の資本』を読む」と題した連載記事を載せているブログ(『海神日和』=下記URL)に、該当箇所の要約が短く載っている。『21世紀の資本』の第16章「公的債務の問題」でピケティが最悪の解決法だと評しているのが緊縮財政である。
http://kimugoq.blog.so-net.ne.jp/2015-01-07
いうまでもなく、政府が支出をまかなう方法は、税金と負債です。現在、先進国は1945年以来経験したこともないような負債をかかえこんでいます。「金持ち世界は金持ちだが、でも金持ち世界の政府は貧乏」という奇妙なパラドックスが生じている、と著者はいいます。
この公的債務を解決する方法は、資本税、インフレ、緊縮財政の3つしかありません。このなかでは緊縮財政が最悪の解決方法です。
(ブログ『海神日和』 2015年1月7日付記事「累進資産税の提案──ピケティ『21世紀の資本』を読む(9)」より)
ところが、安倍政権が現在やろうとしているのは、ピケティが言うところの「最悪の解決方法」である緊縮財政なのである。下記日経記事(下記URL)は、ピケティが来日した当日にして、日本の報道が日本人人質事件に集中していた1月29日に載ったので、うかつにもこの週末まで知らなかった。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS28H6A_Y5A120C1PP8000/
自民、財政再建へ新組織 政府会議の民間識者参加
自民党は2月から歳出抑制の議論に着手する。稲田朋美政調会長をトップに特命委員会を設け、高齢化で膨らむ社会保障費などに切り込む。財政問題に詳しい土居丈朗慶大教授ら学識有識者を助言役に加える。機械的な歳出削減だけでは党内の反発も予想される。行政改革などの専門家も交え、規制緩和による経済成長を通じた税収増や公共サービスの効率化なども含めることをアピールしたい考えだ。
(2015/1/29 2:00 日本経済新聞 電子版)
せっかくピケティ来日のタイミングで流れたニュースなのだから、新聞社の経済記者は、このニュースについてピケティに質問すれば良かったのにと思った。この政策の是非について聞かれたら、ピケティは肩をすくめて一刀両断に切り捨てたに違いない。
この件を私は週末に発売された講談社の写真週刊誌『FRIDAY』(3月13日号)で知った。「安倍首相が稲田政調会長に託した財政再建素案『痛みに耐えよ』」という見出しがついている。載っている写真だけ見れば、稲田朋美と安倍晋三の宣伝記事にしか見えないが、腰が引けながらも安倍と稲田を揶揄する調子の文章が書かれている。『FRIDAY』の記事をまとめると下記のようになる。
安倍晋三は1月下旬に「財政再建に関する特命委員会」を立ち上げ、稲田朋美を委員長に指名した。つまり、財政再建を稲田朋美に丸投げした。安倍のお気に入りながら経済には明るくない稲田は、4人の有識者を特命委員会の会議に招聘したが、稲田の「指導係」と黙されているのが慶応大経済学部教授の土居丈朗。稲田じきじきの依頼で土居が招聘された。今年初め、土居を中心として作成された〈社会保障改革しか道はない〉と題されたレポートが、「稲田委員会」の討議の叩き台になる。稲田は、このレポートを読み込み、「財政再建はこの道しかない」と認識している。
中身は「大幅な歳出削減」。最初に標的にされるのは医療費(2.7兆円削減、ジェネリック医薬品利用促進でさらに0.5兆円削減)、次いで介護費(1.1兆円削減)。さらに年金受給者向けの優遇税制の圧縮(0.4兆円削減)。それでも数兆円不足するが、消費税率を12%に上げて賄う。国民に大きな痛みを強いる改革案だが、安倍はこの路線に賛成している。レポート発行元のNIRAの会長は、安倍の「後見人」と言われ、安倍の兄の岳父でもあるウシオ電機会長・牛尾治朗。
稲田を「自民党のジャンヌ・ダルク」と高く評価する安倍は、財政再建改革案を無事にまとめれば、稲田を重役ポストに登用するという観測も。「身内」しか信用しない安倍に、国民に痛みを強いる重要な改革ができるか甚だ疑問。
(週刊『FRIDAY』 2015年3月13日号18-19頁 「安倍が稲田に託した財政再建素案の核は『痛みに耐えよ』」より要約。敬称略=週刊誌の記事には人名に役職名が付されていた)
あまりに凶悪極まりない中身には唖然とするほかない。飯田泰之が「ピケティが安倍政権と日銀のインフレ政策を評価した」とされる日経記事をネットで拡散したり、高橋洋一が「ピケティ氏の理論を都合よく“編集”した言説にはご注意を」などと夕刊紙に書いたりして「アベノミクス」を宣伝している間に、こんな悪質な企みが進んでいたのだ。
「再分配も重視するリフレ派」のはずなのに、いわゆる「アベノミクス」から再分配が欠落していることをどの程度批判しているのかはなはだ疑わしい飯田泰之もダメだが、夕刊フジの記事に「ピケティ氏はアベノミクスや金融政策に否定的だという印象を受ける」と書いた高橋洋一はさらに悪質だ。
ここまでに書いたことから、金融政策はともかく、「アベノミクス」にはピケティは間違いなく大反対であると断言できる。ピケティが「アベノミクス」を評価する点があるとするなら、それはインフレ実現を指向した金融政策に限定されるだろう。
そもそも、「アベノミクス」とは「安倍経済学」を意味する言葉のはずであって、当然そこには金融政策ばかりではなく、財政政策も含まれるはずだ。しかるに、安倍政権が進めようとしている財政政策は、ピケティが「最悪の解決方法」だと主張する緊縮財政政策なのである。こんなことをやっていたら、いくら金融緩和を続けても日本経済は上向くどころか、悪化する一方だろう。
高橋洋一に対しては、「ピケティ氏の理論を都合よく“編集”した言説」をなすのは一体どっちなんだよ、と言いたいが、その高橋洋一に輪をかけて最低最悪な人間がいる。
高橋洋一は、まだピケティがインフレ政策を肯定していること「だけ」を強調する程度だ。別件で、ピケティが資産(ピケティのいう「資本」)の話をしているのに、高橋洋一が書いたコラムで所得の話にすり替えているというご指摘を、渡辺輝人弁護士から『kojitakenの日記』のコメント欄にいただいているが、それよりもっとひどいピケティのねじ曲げをやった男がいる。それが、ほかならぬ稲田朋美の「財政再建に関する特命委員会」のブレーン・土居丈朗なのである。
そのことは先週、『kojitakenの日記』の記事「ピケティをねじ曲げる土居丈朗、どうでも良い雑談をかます高橋洋一」に書いた。高橋洋一の記事を「どうでも良い雑談」と書いたの私の記事は、高橋がやらかした資産と所得のすり替えを見逃しているというのが、渡辺輝人弁護士のご指摘だと認識しているが、それでも土居丈朗によるピケティのねじ曲げは、高橋洋一よりももっとひどい。以下『kojitakenの日記』に書いた文章を引用する。
昨日、職場に置いてあった日本経済新聞(確か日曜日の22日付)を見ていたら、緊縮財政派にして消費税増税派と思われる土居丈朗がコラムを書いていて、ピケティの『21世紀の資本』に言及していたが、その言及が実にひどかった。イギリスが今の日本と同じようにGDPの200%にあたる政府債務を抱えていたが、低成長下で緊縮財政をずっと続けて完済した話を肯定的に引用し、自説へとつなげていたのだが、実はピケティはこの例を否定的に取り上げていたのである。土居はそのことをコラムに一言も書いていなかった。実に不誠実極まる態度だと思った。なお、ピケティがイギリスの方法に批判的であるのは、下記「東洋経済オンライン」の記事でも確認できる。
http://toyokeizai.net/articles/-/58906?page=2■ イギリスと同じ轍を踏んではいけない
――反対に、すべきでないことは?
ピケティ たとえば公的債務の危機は過去にもあった。イギリスは19世紀に、今の日本と同様、GDPの200%の水準になったことがある。19世紀のイギリスは、歳出削減によって予算を黒字化させて公的債務を減らすという、オーソドックスなやり方でこの危機を乗り越えた。
だが問題は、非常に時間がかかったということだ。解決には1世紀を要した。その間、イギリスは毎年GDPの1~2%の黒字を蓄積していき、自国の金利生活者にカネを返し続けた。結果、イギリスは教育への投資を減らしてしまった。これは、今の日本や欧州が「同じ轍を踏まないように」と考えさせる重要な教訓だと思う。
東洋経済オンラインではこれだけだが、ピケティは「イギリスが教育への投資を減らしてしまった」ことがイギリス経済に悪影響を与えたと批判していたはずだ。それを、ピケティとは立ち位置が全く異なると思われる土居丈朗が我田引水する。これだから日本の「経済学者」とやらは信用ならないのだ。
その「最悪の経済学者」にして、小泉純一郎政権時代に日本社会の格差を拡大させた竹中平蔵と同じ慶応大経済学部教授の土居丈朗が、あの稲田朋美のブレーンとなって安倍政権の「財政再建政策」の方向性を決める。
トマ・ピケティの思想とは正反対、「反ピケティ」の極致であるのはもちろん、これまでに見たこともない凶悪な経済政策としか言いようがない。
経済学者たちよ、それでも「アベノミクス」を支持するのか。
特にやいのやいのと言われているのが、「女性閣僚が5人」誕生したということだ。昨日(9/7)朝、最近あまり見なくなったテレビ朝日の「報道ステーション」の日曜版を久々に見ていたら、星浩が例の慰安婦問題をめぐる池上彰と朝日新聞の問題について何やら言ったあと、女性閣僚についてキャスターに聞かれて、結構なことじゃないですかとか答え、さらに何やらゴニョゴニョとノーテンキなことを言っていた。番組終了直前で、心ここにあらずみたいな受け答えではあったが、いかにも星浩らしいぬるさに呆れてしまった。
今朝(9/8)の朝日新聞も、安倍内閣の支持率が47%に上昇して(前回42%)、特に女性の支持率がめざましく回復した(44%、前回36%)とか、女性閣僚を5人に増やしたことを「評価する」人が55%だったなどなど、何やらお追従たらたらの気配である。いよいよ朝日のヘタレぶりは極まりつつあるようだ。
もちろん、女性閣僚の数がいれば良いというものではなく、5人のうち4人までもが安倍晋三に思想信条の近い極右であることが問題視されるべきであるのは当然だ。名前を挙げると、高市早苗、山谷えり子、有村治子、松島みどりである。このうち松島みどりだけは当ブログで取り上げたことがなかったが、この朝日新聞出身の法務大臣も、日本会議にこそ属していないものの右翼政治家だ。他の3人は、一般的にはあまり知られていなかった有村治子を含めて何度か記事に取り上げてきた。
有村治子は自民党政調会長に就任した稲田朋美とともに、映画『靖国 YASUKUNI』を潰そうと画策した悪行で知られる。山谷えり子は「親学」信奉その他の「トンデモ」への傾倒や元「ウィークエンダー」(読売テレビ)レポーター出演歴など、第1次安倍政権時代の首相補佐官として数々の話題を振りまいた人間だ。そして高市早苗は言わずとしれた「無知で下品な」馬鹿だが、この高市がNHKを所管する総務大臣に就いたことの危険さを、ブログ『日本がアブナイ!』の記事「米中韓も右に傾く改造内閣を懸念&高市のNHK支配も要警戒+錦織が決勝進出」(下記URL)が指摘していた。
http://mewrun7.exblog.jp/22365170/
余談だが、『日本がアブナイ!』のコメント欄に、下記のコメントがあった。
(前略)
>安倍シンパの女性議員(有村、山谷、松島氏)・・・
mew様の言葉では並列になっているけど、この中では有村が最も危険。
大島派なので今まで気付かなかったけど、根っ子がとんでもなく右翼、
有村を見ると、山谷・松島・高市が左翼政治家に見える。
ですから、現段階で山谷・松島・高市をパッシングするのは具の骨頂。
パッシング対象を有村と稲田に絞るのは勿論、
時と場合によっては、山谷・松島・高市を応援してしまった方が良い。
当然、山谷も松島も高市も、有村の右翼姿勢に困っているはず。
似たような文章を最近見たことがある。そう、当ブログの先週の記事への、shinoshi氏のコメントである。以下引用する。
>高市たちウヨ
どうでも良いけど、高市って右寄りか?
ある程度の保守派
(具体的にはhttp://botsubo.publog.jp/ぐらい)
から見たら、やや左寄りに見える。
と言うのも、
高市の村山談話や河野談話に関するスタンスは
「わたしは戦後生まれだから謝罪するいわれはない」
って感覚。
それ以外、
森ないし小泉時代、人権擁護法案を提出してるし、
旧安倍ないし福田時代、「小沢民主党は信用できるか」を出版してる。
(小沢を批判したら菅になるリスクがある)
今回の改造、高市が(松島や山谷や小渕も)潰れるなと思われる所を当てられてるし、
安倍も高市を左寄りと見てるのではないかな。
原発に関しては右寄りなんだけどね。
2014.09.03 23:18 shinoshi
誰が見ても同一人物の書いたコメントであろう。shinoshi氏の意見に構わず、『日本はアブナイ!』は「高市のNHK支配も要注意」と書いた。私もshinoshi氏の意見を全く容れない記事をこうして書いている。それどころか、shinoshi氏のホームページまで出血大サービスで宣伝してあげているのだから、shinoshi氏におかれては、自らのホームページ運営に専念されてはいかがかと愚考する次第である。
さて、shinoshi氏のコメントへの批判はこれくらいにして安倍内閣の女性閣僚の話に戻ると、唯一、安倍晋三と思想的に距離があるのは経産相の小渕優子であるが、小渕経産相と聞いた時点で、原発再稼働のための小渕人気の悪用だろうなとピンときたから、『kojitakenの日記』に、「谷垣禎一幹事長、小渕優子経産相の人事に見る安倍晋三のえげつない狙い」と書いた。
ついでに谷垣幹事長は安倍晋三が消費税率10%への再引き上げの腹があることを示すものだと書いたが、案の定ニュースでそのような見方が報じられていた。谷垣幹事長任命について、安倍晋三が消費税債引き上げを意図していることが懸念されると、ネガティブな意味を込めて書いていたのは、どこだったか忘れたがアメリカかイギリスの新聞だった。これに対し安倍晋三びいきの夕刊フジは、再増税見送り狙いだろうと書いていた。
昨年秋に安倍晋三が消費税率引き上げを決断した時には、政権べったりのブロガーを含む保守の連中がえらく落胆していたが、どうして「安倍ちゃんが増税を阻止してくれる」などと信じられる、というか安倍晋三をあてにできるのか、私には全く理解できない。安倍晋三という人間は、自らの思想信条である「偉大なおじいちゃん・岸信介に倣う」こと以外に関心はなく、官僚の言いなりなのであって、既定路線を変更するという官僚の嫌う政策をとるはずがないと私は考えている。
あと、党の政調会長に稲田朋美を任命したことにも、いい加減にしろよとしか思えないが、稲田朋美の悪口はこれまでさんざん書いてきたし、これからも書く機会はいくらでもあるだろうから、今日は止めておく。