そして、翌日深夜には、今度は読売新聞が、東京地検は既に小沢一郎の元秘書で、自民党公認で岩手4区から立候補予定の高橋嘉信氏への事情聴取を行っていたと報じた。だが、読売新聞はなぜか高橋氏が「自民党から立候補予定」であるとは書いていない(一部に公認取り消しの報道も流されたが、現実とはなっていない)。民主党議員の石川知裕氏の参考人聴取の時には、聴取もされないうちから読売新聞が「出頭」などという言葉を用いて大々的に報じ、長年小沢氏の金庫番だった高橋嘉信氏の場合は、聴取が済んでから目立たない時期に報じたのである。これは、どんなに控えめな表現を用いても、検察が時の政権に寄り添って捜査を進めて、その情報をマスコミにリークしているということだ。
きわめつきは、昨夜のNHKニュースだった。NHKは、逮捕された大久保隆規秘書が「政治資金規正法違反の罪で起訴するものとみられます」と報じたのだが、ニュースでは談合へのかかわりだとか何だとか、いかにも重罪であるかのような印象を与えることをアナウンサーがしゃべっていたが、あくまで起訴の罪名は「政治資金規正法違反」。このバカバカしい報道には笑ってしまったし、「2ちゃんねる」の政治板でも嘲笑の対象になっていた。当ブログはあえて2ちゃんねるにはリンクを張らないので、興味のある方は2ちゃんねるを訪問されたい(もう次のスレが立って消えているかな?)。
‥‥そんなワケで(笑)、マスコミ報道はもう「ジ・エンド」と言ってよいかもしれない。マスコミの流す情報には、常に権力側からの強烈なバイアスがかかっていることを意識して読み解かなければならない時代になった。これも、ネットの普及の影響なのだろうか。この事件に関する当ブログ推奨のまとめ記事は、『JanJan』に掲載されたさとうしゅういち記者の「大山鳴動してネズミなし、西松建設事件「収束」へ」という記事である(下記URL)。
http://www.news.janjan.jp/government/0903/0903209796/1.php
さとう記者は民主党員だから、決して不偏不党の立場から書かれた記事ではない。だが、バランス感覚に優れた記事につねづね感服している。さとう記者は『広島瀬戸内新聞ニュース』には、「政権交代近づくからこそ高まる民主党以外の野党の存在意義」という記事を掲載していて、小沢一郎をもきっちり批判している。その部分を以下に引用する。
小沢さんは、
1、そもそもは自民党の最高権力者
であり、
2、小選挙区比例代表並立制を導入、
その結果
(1)小泉自民に見られるような「執行部独裁体制」を招いてしまった。
(2)政権交代が結果として遅れた(∵自民党有利になってしまった)のではないか?
ということは記憶しておかねばなりません。
また、現時点で言えば以下のような個別政策への疑問点もある。
民主党の経済政策がいまひとつまだ、はっきりしない。国民新党や社民党のほうがまだはっきりしています。
高速道路値下げはそもそもは民主党の提案でしたが、「無料化」はもちろん、原則だとしても、環境問題と言う観点からどうか?また、若者の貧困が進み、クルマを持たない若者も多くなっている。一方、高齢化も進んでいる。高齢者の交通手段をどう確保するかも課題であるが、どうか?
将来的にはガソリンはもっと高くて、福祉や環境施策、教育を充実、でいいと思う。
国民新党や社民党が言うように、恒久的な財源は、累進課税強化でいいのではないか?
(『広島瀬戸内新聞ニュース』 2009年3月22日付「政権交代近づくからこそ高まる民主党以外の野党の存在意義」より)
ここで書かれた主張には、私はすべて賛成である。四国に住んでいて痛感するのは、公共交通網が年々貧弱になっていることである。民主党にはどうもモータリゼーションに親和的な体質が強すぎる。
おことわりしておくが、さとう記者は決して「反小沢」ではなく、むしろ私の目から見ると「親小沢」の立場の人である。だが、リベラルであれば小沢一郎に対してであれ批判的な視座を持っていて当然。記事では、共産党にも一定の評価を与える記述がされているが、「共産党が自民党と一緒になって小沢代表を攻撃している。共産党は自民党の補完勢力だ」などと叫ぶ一部の人たちとは全く異なる。私などは、何十年にもわたって「小さな政府」なるスローガンに反対だったのだが、このスローガンは、つい先ごろまで疑いもなく正しいこととされていた。つまり長年の少数派時代を耐えてきた人間だから、「民主党と一緒になって小沢代表を守る」ことを、少数派である共産党および同党支持者に強要するかのような感性にはとても耐えられないものがある。
さて今後だが、24日の大久保秘書の「政治資金規正法違反」による起訴は間違いなく、そこで小沢一郎氏がどう身を処すかが一つのカギだ。29日の千葉県知事選は森田健作が圧勝の見通しで、これは西松事件の影響というよりポピュリズム政治の問題と考えるべきだろう。郵政総選挙より前の前回の知事選でも、森田は現職の堂本知事に肉薄する得票を得た。今回の選挙でも、仮に西松事件がなかったとしても森田が勝つ可能性が高かった。大阪の橋下徹だとか宮崎の東国原英夫らを論じるのと同じ視点でとらえるべきである。なお、森田は事実上自民党の候補者であるにもかかわらず、「完全無所属」を詐称しているのだが、その詳細は『東京サバイバル情報』に詳しいので、読者の皆さまには是非ご参照されたい。
いずれにしても、「政治の季節」はまだまだ続く。総選挙はまだまだ先だ。本当に任期満了選挙になってしまうかもしれない。
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JanJanの矢本さんに比べると、さとうさんの主張にはかなり違和感があります。
「ネズミなし」
大久保容疑者は「尻尾を捕まれたネズミ一匹」でしょう。
「怪しい点があれば「秘書否認」だからこそ「本人聴取」のはず」
小沢本人も否認する(というかしらばくれる)に決まっています。小沢本人が追及を免れているのは、「小沢も違法献金だと知ってた」証拠が出てこなかったからに過ぎない。常識的に見れば、小沢本人も十分怪しいというか「知らなかった」訳がないのに。
「検察が「便宜供与」など新事実が証明できなければ「撤収」は当然です」
ネズミ一匹についてはおそらく起訴されるでしょう。そうなれば「ネズミなし、撤収」とはちょっと違うでしょうね。
「そもそもが、「逮捕するほどの話」ではなく、選管なり総務省なりの行政指導で記載を訂正してもらえば済む話です」
さとうさんの主張のうちこの点は最悪です。政治資金規正法を読めば、そんな訂正で済む話ではないことが判ります。虚偽記載かどうか以前に違法ですから。
「小沢さんご自身が、3月18日に表明されたような企業団体献金全面禁止に前向きになられたことは、たとえ「人気取り」であっても歓迎します」
マニフェスト違反はスルーですか。ちょっと手前味噌過ぎですね。
2009.03.23 17:08 URL | Black Joker #RtNpiJ3M [ 編集 ]
勾留期限直前になっても、相変わらずのリーク記事が出てきています。
各社見比べると不可解なところも。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090324-OYT1T00034.htm
(西松建設側は)05年末にゼネコン業界が「談合決別宣言」を出したことから、献金をゼロにしたいと伝えた。
これに対し、大久保容疑者は「こちらも困る。どうにか続けてくれ」などと反発。同社は改めて協議した結果、献金額を年間500万円とすることを決めた。
ダミー団体の「新政治問題研究会」は06年12月、「未来産業研究会」は11月にそれぞれ解散し、献金はこの年で打ち切りになったが、約束に基づき両団体からは解散直前、残っていた資金の大半となる計500万円が、陸山会など小沢代表側の政治団体に献金された。
----------引用以上------------
注目するのはこの500万円。
以前産経がこんな記事を出していたのですが、
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090314/crm0903140132003-n1.htm
(西松建設は)ダミーの政治団体「新政治問題研究会」と「未来産業研究会」から小沢氏側の陸山会、「民主党岩手県第4区総支部」、「民主党岩手県総支部連合会」の3つの政治団体に献金。(西松建設は)2006年3月に工事を落札したが、半年後の10、11月には5回に分け、計500万円を献金していた。このうち200万円は工事開始当日に献金されていた。
----------引用以上------------
毎日が、これ↑とほぼ同じ、つまり後追い記事をなぜかきょうになって出しています。
http://mainichi.jp/select/today/news/20090324k0000m040127000c.html
西松のダミーとされる「新政治問題研究会」と「未来産業研究会」の政治資金収支報告書によると、両団体は(胆沢ダム「洪水吐き打設工事」の)公告から約3カ月たった05年12月~06年11月、小沢氏の資金管理団体「陸山会」、地元の「民主党岩手県総支部連合会」「民主党岩手県第4区総支部」の小沢氏関連3団体に対し、11回にわたって計1800万円を献金していた。
このうち500万円分は、工事開始日を挟んだ10月25日~11月2日の9日間に集中していた。
----------引用以上------------
また、3月7日の毎日の記事だと、
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090307k0000e040077000c.html
政治資金収支報告書によると、06年の2団体による小沢氏側への献金額は計500万円。
----------引用以上------------
とあるので、最初の記事の500万円と、2番目・3番目の記事の500万円はおなじ500万円です。
【同社は改めて協議した結果、献金額を年間500万円とすることを決めた。】という500万円を、いかにも胆沢ダム関連工事落札の「謝礼」かのように産経と毎日は書いているわけです。
なお、毎日の記事には、胆沢ダム関連工事の入札日が書かれており、「2006年3月10日」でした。
よって、それからすでに3年(=あっせん利得処罰法の公訴時効)経過しています。(共犯となる西松建設側の人間をすでにあっせん利得処罰法でも起訴していれば、大久保容疑者の時効も停止するようですが、あっせん利得処罰法での起訴はしていないはずです)
もし検察が、大久保容疑者をあっせん利得処罰法でも起訴するとしたら、3月24日(=入札日は過ぎています)以降の献金(たとえば上記記事での2006年10月~11月の500万円の全部または一部)が、あっせん利得処罰法でいうところの「財産上の利益」として、何らかの(たとえば胆沢ダム関連工事受注に関する)あっせんの見返りに大久保容疑者側が得た、と認定されることが必要になります。
まとめますと、
一番最初に紹介した読売記事の【同社は改めて協議した結果、献金額を年間500万円とすることを決めた。】が正しければ、皮肉にも、あっせん利得処罰法での立件はやはりかなり無理筋であることが分かると思います。
もしあっせん利得処罰法立件の可能性があるとしたら、「我が社に便宜を図っていただき落札できましたら、2006年分としてお約束の500万円を支払います」というような、いわばインセンティブ契約みたいなものを交わしていた、などが明らかになった場合でしょうか?
(現時点で、あっせん利得処罰法での立件も予想している人は少ないでしょうから、あまり意味のないコメントで済みません)
2009.03.24 09:00 URL | sweden1901 #SVqLzQOU [ 編集 ]
福岡の経済誌データマックスも面白いですよ。
http://www.data-max.co.jp/2009/03/post_4976.html
西松献金事件 「検察リーク」に違法性はないか (1)2009/03/23
西松献金事件 「検察リーク」に違法性はないか (2)2009/03/24
http://www.data-max.co.jp/2009/03/post_5000.html
東京地検、小沢代表の秘書を起訴 ほかの政治家はどうなった!2009/03/24
2009.03.24 23:12 URL | 元BP@闘争中 #oeKd1LZE [ 編集 ]
ココログからTBが通りませんので、下記アップしました。よろしくです。
これだけでも小沢民主を支持する価値あり⇒記者クラブ制度見直し、沖縄返還時密約政権取れば公開、取調べ可視化の司法改革。
http://soba.txt-nifty.com/zatudan/2009/03/post-aaf5.html
企業献金と言えば自民党がはるかに多いことは誰でも知っている。で見辛い総務省の政治資金収支報告中主なPDFを一つにまとめました。
http://soba.txt-nifty.com/zatudan/2009/03/post-d102.html
↓もよろしくです。
http://soba.txt-nifty.com/zatudan/0anime/jiminwotheend78.gif
http://soba.txt-nifty.com/zatudan/0anime/jiminwotheend74.gif
http://soba.txt-nifty.com/zatudan/0anime/jiminwotheend76.gif
2009.03.25 17:55 URL | SOBA #XPXthLJ6 [ 編集 ]
皆さんもっと法律をよく勉強したほうが良いのでは?
2009.03.26 20:27 URL | #- [ 編集 ]
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