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きまぐれな日々

今日(4月22日)の午前10時から、山口県光市母子殺害事件の差し戻し控訴審判決が広島高裁で言い渡される。

今回、この件をブログで取り上げるかどうか、ちょっと迷った。この判決は、現在行われている衆議院山口2区の補欠選挙に影響を与えるだろうなどと言われているからだ。この裁判に関する野党候補の発言は、私にはおかしなものとは思われないのだが、なにしろ現在の日本では厳罰主義の世論が非常に強く、死刑存置論の支持率が8割に達している。特にこの事件に関しては、右派はもちろん被告人の死刑を強く求めているが、リベラル・左派系でもいくつかの有名ブログを初めとして厳罰を求める声が強い。そういう状況だから、この裁判に関するエントリを公開するだけで、野党候補に不利に働くのではないかと危惧した。

その考えが変わったのは、21日朝にブログのアクセス解析を見て、検索語「綿井健陽」による当ブログへの訪問が数十件あったことを知ったからだ。

綿井健陽(わたい・たけはる)氏は1971年生まれのビデオ・ジャーナリストで、イラク戦争を現地で取材した。昨年から、光市母子殺害事件を被告人側から取材している。

綿井氏は、下記2つのウェブサイトを運営している。

「綿井健陽 Web Journal」 (ホームページ)
http://www1.odn.ne.jp/watai/

「綿井健陽のチクチクPRESS」 (ブログ)
http://watai.blog.so-net.ne.jp/

これらのサイトを見て、検索語「綿井健陽」で当ブログへのアクセスがあった理由がわかった。TBSテレビで20日(日)の深夜、TBSテレビの 「報道の塊」 という番組で、「光市母子殺害事件?もうひとつの視点」が放送され、これに綿井氏が出演していたのだ。おそらく、この番組をご覧になった方がネット検索されて当ブログにたどり着いたものだろう。残念ながら、当ブログ管理人はこの放送があったことを知らなかったし、仮に知っていたところで、関東のみのオンエアだったそうだから、番組を見ることはできなかった。

検索語「綿井健陽」で引っかかる当ブログのエントリは下記である。

"言論が一方向に振れる時 ? 山口県光市母子殺人事件をめぐって"
(2007年8月22日)
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-430.html

このエントリで私は、雑誌「創」の2007年9・10月号に掲載された、光市母子殺害事件に関する綿井氏の記事を紹介した。これは、たいへん印象に残った記事だった。

その少し前の8月9日、私は裏ブログ 「kojitakenの日記」 に、"光市母子殺人事件に関する週刊ポストの勇気ある記事" と題したエントリを公開していた(下記URL)。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20070809/1186660531

これは、被告人への厳罰を求める主張ばかりが目立つこの事件の報道に一石を投じた「週刊ポスト」の記事を紹介したもので、盆休み直前の週末、しかも裏ブログだというのに、2日間で5千件近いアクセス数を記録した。

「創」に掲載された綿井氏の記事は、さらに詳細かつ説得力に富んだものだった。記事の要点については、前記当ブログの昨年8月22日付エントリに記したが、できれば原文をご参照いただきたいすぐれた記事だ。

私が見ることのできなかったTBSテレビの番組でも、綿井氏は、「少年犯罪を大人と同等の裁判にかけることの是非、裁判があだ討ちの場と化してゆくことの危険性、センセーショナルな報道がもたらす弊害」などについて問題提起をしていたようだ。

綿井氏は、
(被告人が)「被害者の女性を両手で首を絞めた」 「赤ちゃんを床に叩きつけた」という部分の「両手」 「叩きつけた」という検察の主張を裏付ける証拠はない(「創」 2007年9・10月号)
と指摘している。そして、ブログ「綿井健陽のチクチクPRESS」に掲載されている最新のエントリ "【本文さしかえ】20日(日)放送番組と掲載誌のお知らせ"(下記URL) には、まさしく「覚悟の言論」と言うべき文章が見られる。
http://watai.blog.so-net.ne.jp/2008-04-20

もし被害者遺族の男性の言うように、弁護側の主張が「荒唐無稽」であると裁判所が同じように認定した場合、なおかつ検察側の最終弁論で述べられている「当審における審理の結果によっても、被告人につき死刑を回避するに足りる特に酌量すべき事情は、これを一切見出すことができない」と裁判所が同じように判断した場合は、私はこれまでの取材などで書いたこと、発表してきたことなどの責任を取って、すべてのジャーナリスト活動から身を引くことにした。

(「綿井健陽のチクチクPRESS」 2008年4月20日付エントリより)

私は、この言葉が現実とならないことを願う者だが、正直言って、判決がそのようなものになるとはあまり思えない。広島高裁も、「空気を読んで」しまうのではないかという気がしてならないのだ。

そして、「民主党の平岡はあんなことを言っていたぞ」などという自民党の宣伝が功を奏して、平岡秀夫の優勢が予想されている衆院山口2区の補選が、これを機に形勢逆転などということになったら、それこそ目も当てられない。そこまで日本人が理性を失っているとは思いたくないのだが、あれだけコイズミカイカクの矛盾が噴出しているのにいまだにコイズミ再登板待望論が衰えないことなどを考えると、あまり大きな期待はできないような気もする。

なお、綿井氏は月刊「現代」 5月号に "山口・光市母子殺害事件 面会15回 「元少年」の素顔と肉声" と題した記事を発表しているほか、明日(4月23日)の地方紙各紙に "光市母子殺害事件?判決が問いかけるもの"(仮題)が掲載される予定だ(共同通信配信)。

[関連記事]
下記は、被告バッシングに対するリベラル系ブログの批判。

「カナダde日本語」より
"山口県・光市母子殺人事件: 世論が変わるとき"
(2007年9月5日)
http://minnie111.blog40.fc2.com/blog-entry-598.html

下記は、死刑廃止議連による終身刑創設法案提出の動きについてのブログ記事。

「Because It's There」より
"終身刑創設法案を今国会提出へ?亀井静香・死刑廃止議連会長に真意を聞く(東京新聞平成20年3月18日付「こちら特報部」より)"
(2008年3月20日)
http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/blog-entry-952.html

超党派による死刑廃止議連会長の亀井静香氏は、先日もTBSテレビ「NEWS23」で死刑廃止論を滔々(とうとう)とぶっていた。同氏が2002年3月31日に放送されたテレビ朝日「サンデープロジェクト」で情熱的に死刑廃止論を論じていたことは、今でも忘れられない。

[追記] (2008.4.22 12:38)
判決は、やはり死刑だった。


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 綿井氏の行動には敬意を感じずにはいられませんが、法曹の掟として、最高裁から量刑不十分(要は死刑にしろ)として差し戻されたものを、今回の弁護側の主張で覆すのは難しいと考える次第です。
 法廷が仇討の場になってはいけないというのはおっしゃる通りでして、今後の裁判員制度でも、マスコミの煽り次第で量刑が重くなり、死刑判決が続発する可能性を考慮すると、死刑制度自体を考え直さねばならないのですが。
 しかし、今は、法律に死刑という条文がある以上、裁判ではそれも考慮に入れざるを得ないのが現状です。
 この事件で一番まずいのは、被告が友人に送ったという手紙の中の傍若無人さが、一般の人だけでなく、裁判官にも悪い心証を与えているであろうことです。
 ああ言うことを書く人間が、差し戻し審でいきなり新事実を述べても、最初から疑われてしまいます。物的証拠は何もないし。
 高裁の裁判官が、死刑を否定できるほどの証拠が出されたとは私は考えていません。残念ながら。高裁の判事は苦しい立場でしょう。

2008.04.22 05:11 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]

眠り猫さん。
あの「不謹慎な手紙」が、実はずいぶん長文のものであり(テレビが狂奔したのはほんの一部のトリミング。全文にはほど遠い)、原2審裁判長は全文読んだ上で「反省も認められる」として無期懲役にしていることをご存知でないのですか。
差し戻し審になって、被害者の検死報告書から、著名な法医学者である上野正彦氏が「首の締め痕には右手の指だけ、それも逆手の痕しかない。気管や頸骨の損傷もない。検事の言うように、殺す気で両手で締めたのならこんな風にならない。驚いて騒いだ被害者を黙らせようとして誤って頸部圧迫の体勢になった(被害者も抵抗しただろうが、それがたまたま悪い方に作用した)ものであり、傷害致死罪しか成立しない」とする鑑定書を作成し、法廷で証言もしていることを、ご存知ないのですか?

2008.04.22 15:03 URL | 現役の泥棒が陪審員になるな #mQop/nM. [ 編集 ]

現役の泥棒が陪審員になるなさん。

そもそも黙らせようとするのであれば、口に手を持っていく訳で謝って首に手を掛けるにしても死亡するほどのチカラで締め付けるのはあり得ないのでは?
判決では逆手であった事自体を否定していますが。

本人が覚醒剤を使う等の行為をしてないならばあり得ないと思う。
それに殺意が無いなら、子供の方が説明が付かない。
この事件は奥さんとお子さんと両方に対して殺意がなかった事を証明しなければ成らないわけで、片一方の矛盾を仮説で証明しても子供に対しては証明出来ていない。

2008.04.22 18:13 URL | らんらんるー #JalddpaA [ 編集 ]

現役の泥棒が陪審員になるなさん>

だからそれが何か?としか言いようがありませんね。
原2審の高裁判断はあくまで原2審の高裁判断でしかないですし、上野鑑定もあくまで権威ある1人の鑑定結果であって絶対ではない。
それでしたらその高裁よりも上位の裁判所が「原2審の高裁の事実認定は間違っていないが量刑が軽すぎる」と判断したことはご存じないのですか?w

一番危険なのはあなたみたいな思考回路の人間ですね。
冷静に物事を判断することなく、自分の中での望ましい結果だけをロックオンして他の情報をロックアウトし、更に自分にとって都合のいい情報に他所の権威を持ってきて論拠を高めようとする。
典型的な権威主義者、独裁者追従型の人間の思考回路です。

話を戻すと、まあ、逆に言えば原2審においてそこまで反省する手紙を書いておきながら供述を翻したというところに信用性が欠ける訳で。
「手紙」と「差し戻し審供述」が両立することはあり得ない。
それこそ「手紙」の内容を信用するなら「差し戻し審供述」がおかしい。
逆も然り。

「少年犯罪を大人と・・・」というのであればそれはこの裁判の問題ではなく刑法上の問題であるし、死刑廃止論者の方々が好きな「世界の流れ」からすれば、日本でも成人年齢引き下げに向かっているわけで、犯行当時18歳1ヶ月の人間が大人と同じ審判を受けることに何ら疑問は無いですが、逆にどこが疑問なのか知りたいです。
そもそもよく言われる「18歳になって1ヶ月しか経ってない」論には「じゃあ、一体どこで線引きするんですか?」と聞きたいですね。

自分に有利な線引きは認めても不利な線引きは一切認めず、報道の自由と取材源・取材内容の秘匿を犯そうとした本事件弁護団に正義を語る資格など一切無い。

2008.04.24 09:05 URL | 小島 #Apn/oWnY [ 編集 ]

上野鑑定は差し戻し審で初めて提出されたのであって、原2審では弁護人含め誰も殺人罪の成立に異を唱えていなかったということがわかっていないようですね。
第2段落の内容はそっくり小島さんとやらのことだ。
故意にやったのでなくとも、自分の手で人を殺めたことは何の違いもない。何しろ傷害致死罪という区分が存在することすら差し戻されるまで教わっていなかったのですから、抽象的でも自分が大きな罪を犯したことを実感していて何が不自然だと言うのでしょう。罪の意識を感じてさえいるのなら、実態以上の重罪だろうが文句言わずに背負って死ねと(例えば、交通事故で人を撥ねて死なせた場合、ブレーキ痕も争わず、故意にひき殺した殺人鬼呼ばわりに異を唱えず死刑になれと)いうのですか?
18歳成年論については、私は刑事で成年扱いする以上民事で成年扱いしないのはおかしい、何故ならどちらも「一人前の判断能力」が問題なのであって、20歳過ぎでも成年被後見者などの制度があるんだから、とは思いますが、小島さんが何を言いたいのかわかりません。
報道の自由と取材源取材内容の秘匿がどうのってさっぱりわかりません。報道の自由言論の自由を金儲けの為に悪用するテレビ局(任侠がどうのとか抜かして、弱みのある個人法人に暴力を振るって正義ヅラする暴力団の同類)への嫌悪感なら私にもありますが

2008.04.27 07:26 URL | 現役の泥棒が陪審員になるな #mQop/nM. [ 編集 ]

ブログ本文中、
> TBSテレビで20日(日)の深夜、
> TBSテレビの 「報道の塊」 という番組
とありますが、
これは正しくは
# 報道の魂
# http://www.tbs.co.jp/houtama/
です。

2008.08.21 17:35 URL | しんばし #- [ 編集 ]













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