きまぐれな日々

 平昌冬季五輪が開幕したが、五輪に合わせて韓国と北朝鮮の合同チームが結成されるなど、南北対話の機運が高まっている。

 大いに結構なことだとしか私には思えないのだが、不思議なのは日本のマスメディアで、いわゆる「保守メディア」(実際には産経やNHKなど、もはや右翼メディアあるいは国策メディアとしかいいようがない)ばかりか、朝日新聞を筆頭とする「リベラル」系メディアまでもが、今年初め頃から南北の接近や対話に「警戒」する報道ばかりを行っている。日本の「リベラル」メディアは、昔から朝日新聞の腰が砕けると総崩れになる悪弊があるが、たとえば最近の毎日新聞やTBSやテレビ朝日などからは「惨状」という言葉しか思い浮かばない。毎週見ているTBSの日曜朝の番組『サンデーモーニング』も右翼的なコメンテーターが占める比率が増え、司会の関口宏も彼らに迎合するなど、番組の内容が大きく右傾化している。

 まさに安倍晋三の「メディア征圧」完了せり、の観があるが、何よりもひどいのはその安倍を筆頭とする日本の右翼政治家たちの言動であって、たとえば安倍は平昌五輪の開会式への出席を渋ったし、再来年の五輪開催都市であるはずの東京都知事・小池百合子に至っては開会式に出席しなかった。

 思えば、この小池が政権奪取の野望に燃え、昨年の日本の政治を攪乱した。小池が選挙戦中だけ代表を務めた「日本ファーストの会」は昨年夏の都議選に圧勝したが、小池が国政に進出しようとして結成した「希望の党」は野党第一党の民進党の分裂を引き起こしたあげくに惨敗し、以後「安倍一強」体制はますます強まったのだった。

 その過程において、「リベラル」の一部はあろうことか小池百合子に「打倒安倍」の夢を託した。マスメディアでは、「民進党は『野党共闘』で左に寄りすぎたから支持を失ったのだ。だから『真ん中』の小池都知事が支持されるのだ」などという誤った認識が平然と流布していた。毎日新聞の与良正男が署名記事で上記の主張を平然と書いたことを知った時、私は唖然として、日本の「リベラル」はもうどうしようもないところにまできてしまったと思った。「リベラル」系大新聞の幹部記者がこのていたらくだから、市井の「リベラル」(実質的には都会保守)のブロガーが「小池都知事と民進党と公明党にちょっとワクワク」してしまったのも無理はなかったかもしれない。

 ともあれ、そんな「百合子の野望」が、「今なら勝てる」と理不尽な衆院解散に踏み切った安倍晋三によって木っ端微塵に砕け散って以来、「リベラル」系メディアは茫然自失の醜態を呈しているように私には見える。その表れが、安倍晋三やその政権に対して言うべきことを何も言えない現在の惨状がある。

 たとえばしぶしぶ平昌五輪の開会式に出席した安倍は、韓国の文在寅大統領と会談してとんでもない内政干渉をやらかし、文大統領の不興を買った。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2679165010022018EA3000/

韓国大統領、安倍首相に不快感 五輪後の米韓演習要請

 【平昌=恩地洋介】9日に韓国の平昌で開いた日韓首脳会談で、安倍晋三首相が文在寅(ムン・ジェイン)大統領に米韓合同軍事演習を冬季五輪後に予定通り実施するよう求め、文氏が不快感を示していたことが分かった。韓国大統領府と日本政府双方の関係者が明らかにした。

 首相は会談で、北朝鮮への対応を巡って文氏に「五輪後が正念場だ。米韓合同軍事演習を延期する段階ではない。演習は予定通り進めることが重要だ」と語った。これに文氏は「韓国の主権の問題であり、内政に関する問題だ。首相がこの問題を直接取り上げるのは困る」と答えたという。

 会談では北朝鮮への対応を巡る両首脳の温度差が浮き彫りとなった。日本側によると首相は文氏を「北朝鮮のほほ笑み外交に目を奪われてはならない。対話のための対話では意味がない」などとけん制。一方、韓国側の説明によると文氏は「日本も積極的に対話に乗り出すことを願う」と語っていた。

(日本経済新聞 2018/2/10 20:41)


 本来こんな件は、「文氏が不快感を示していたことが分かった」などと「客観報道」スタイルで書くことではなく、日本のメディアが日本国首相・安倍晋三による内政干渉を指摘し、安倍を批判しなければならないはずだ。だが、たとえば毎日新聞などは、文大統領と安倍の会談より以前の8日付の記事ではあるが、「対北朝鮮 日米、韓国へ結束求め 「ほほ笑み外交」警戒 安倍首相・ペンス副大統領」などという見出しをつけて、アベさまにひれ伏している。開いた口がふさがらない。

 報道だけではなくアカデミズムの世界もひどい。現在世間を騒がせているのは、東京大学に籍を置く三浦瑠麗なる「国際政治学者」だが、この三浦が11日にフジテレビの「ワイドナショー」なるワイドショーに出演し、下記のトンデモ発言を行った。以下ハフィントンポスト日本版の記事から引用する。
http://www.huffingtonpost.jp/2018/02/12/ruri-miura_a_23359021/

(前略)番組は、核・ミサイル開発問題でアメリカや韓国、日本と対立し続ける北朝鮮が選手団を派遣したことで、オリンピックが政治外交の舞台になっているなどと紹介した。

そうした流れの中で、三浦氏は朝鮮半島における安全保障問題に触れ、戦争によって北朝鮮の指導者・金正恩氏が死亡した場合、ソウルや東京、大阪に潜む北朝鮮のテロリストたちが活動し始めると指摘。中でも大阪について「今ちょっとやばいって言われていて」などと、潜伏者が多数いるとも受け取れる発言をした。

番組でのやり取りは次の通り(敬称略)。

三浦 もし、アメリカが北朝鮮に核を使ったら、アメリカは大丈夫でもわれわれは反撃されそうじゃないですか。実際に戦争が始まったら、テロリストが仮に金正恩さんが殺されても、スリーパーセルと言われて、もう指導者が死んだっていうのがわかったら、もう一切外部との連絡を断って都市で動き始める、スリーパーセルっていうのが活動すると言われているんですよ。

東野 普段眠っている、暗殺部隊みたいな?

三浦 テロリスト分子がいるわけですよ。それがソウルでも、東京でも、もちろん大阪でも。今ちょっと大阪やばいって言われていて。

松本 潜んでるってことですか?

三浦 潜んでます。というのは、いざと言うときに最後のバックアップなんですよ。

三浦 そうしたら、首都攻撃するよりかは、他の大都市が狙われる可能性もあるので、東京じゃないからっていうふうに安心はできない、というのがあるので、正直われわれとしては核だろうがなんだろうが、戦争してほしくないんですよ。アメリカに。

こうした三浦氏の発言に対し、Twitterを中心に反発の声が上がった。「根拠を示すべき」「根拠がない」と発言内容の信憑性を疑う投稿が相次いだ。また、三浦氏が直接在日コリアンに言及する場面はなかったが、大阪には在日コリアンが多く暮らすことから、彼らに対する差別や偏見を助長するなどと指摘するツイートもあった。(後略)

(ハフィントンポスト日本版 2018年02月12日 18時47分 JST)


 こんなのが東大のセンセイ(講師)だというのだから、日本のアカデミズムの劣化には目も当てられない。もっとも日本の「リベラル」は、そんな東大が排出した右翼学者・西部邁が自殺した時、西部の核武装論を棚に上げて西部の冥福を祈りまくったていたらくだから問題外もいいところだが。

 かくして安倍晋三は一強体制で「わが世の春」を謳歌しているが、そんな安倍政権が長年続き、アベさまを賛美するネトウヨが「日本スゴイ」を連呼しているうちに、「スゴイ」はずの日本の町工場がとんだ失態を晒した。それが「下町ボブスレー」が平昌五輪のジャマイカチームに採用を取り消された一件だ。これについては下記記事にリンクを張っておく。『kojitakenの日記』では同じ件に関するリテラの記事を紹介したが、リテラよりこちらの記事の方が良い。「下町ボブスレーという安倍晋三案件について」と題された2月11日付のはてなブログの記事(下記URL)だ。
http://www.po-jama-people.info/entry/2018/02/11/120732

 「下町のスゴイ工場」とは名ばかりで、実際には大企業の系列会社や東大のセンセイが名を連ね、安倍晋三は第2次内閣発足直後の2013年の施政方針演説で早くも「下町ボブスレー」を取り上げ(このことから、同社の経営者が不遇時代の安倍晋三を応援するゴリゴリの右翼人士であることが容易に推測される)、以後安倍と経産省の肝煎りで進められたプロジェクトだ。しかしその成果はといえば、ソチ五輪でも平昌五輪でも日本チームに採用してもらえず、やむなくジャマイカに(上から目線で)押しつけたものの、ラトビア製の正真正銘の「下町の工場」の製品に敗れるや、フジテレビなどの右翼メディアが、ジャマイカには契約の概念がないのか、と煽り、ネトウヨはジャマイカ非難の大合唱を繰り広げた。それがこれまでの経緯だ。

 これほどの「国辱」はあったものではあるまい。この件が示すのは、日本の技術力の低下というよりは日本の政治の劣化だ。技術や品質の優劣より、アベさまとの距離の遠近によって予算が傾斜配分される。こんな理不尽な話はない。

 第2次安倍内閣発足で戦後日本の「崩壊の時代」が始まったと言ったのは坂野潤治だが、その「崩壊」とは何も戦争に負けるなどといった劇的な出来事によってではなく、「下町ボブスレー」のような喜劇的な出来事の積み重ねで徐々に衰退していく形で崩壊していくものなのだろう。それを食い止めるのは、まず安倍政権を倒さなければならないが、現在の日本国民からはもはやその気力は失われつつあるようだ。
スポンサーサイト
 今年最初の記事。まばらにしか更新できないと思いますが、今年もよろしくお願いします。

 衆議院選挙から間もなく3か月になるが、日本の政治も国民もいよいよ沈滞・低迷の度を増してきた。斜陽国家ならではの倦怠感と閉塞感が漂っている。

 昨日(14日)発表された共同通信の世論調査結果もそれを示すものだ。
https://this.kiji.is/325180456902132833?c=39546741839462401

安倍政権下の改憲反対54%
原発即時停止49%賛成
2018/1/14 17:39

 共同通信社が13、14両日に実施した全国電話世論調査によると、安倍晋三首相の下での憲法改正に反対は54.8%で、2017年12月の前回調査から6.2ポイント増加した。賛成は33.0%。小泉純一郎元首相らが主張する全原発の即時停止に賛成は49.0%、反対は42.6%だった。内閣支持率は49.7%で、前回調査から2.5ポイント増加した。不支持率は36.6%。

 憲法9条に自衛隊を明記する首相の提案に反対は52.7%で、賛成35.3%を上回った。

 長距離巡航ミサイルの導入は、賛成41.7%、反対46.7%。

(共同通信より)


 最近は、国会が開いていない時には安倍内閣の支持率が上昇し、国会が開かれて論戦が始まると支持率が下がる傾向がずっと続いている。今回も国会閉会後に内閣支持率が上がった。

 しかし、安倍晋三がもっとも執念を燃やす改憲については、「安倍政権下での改憲」に対して反対55%、賛成33%と、反対の方が賛成よりずっと多い。賛成者を増やすことを当て込んで昨年の憲法記念日に安倍が言い出した「憲法9条への自衛隊明記」も反対53%、賛成35%と「安倍政権下での改憲」とほぼ同じ割合である。

 この数字から思ったのは、「安倍晋三は国民から信頼されていないが、安倍政権は(なぜか)支持されている」ということだ。

 とうてい信頼できない人を総理大臣に戴く内閣が支持される大きな理由に、「野党は安倍晋三よりもっと信頼できない」という強い印象が民主党の下野後5年以上経ってもいっこうに払拭されないことが挙げられる。

 同じ共同通信が昨日昼、その野党に関するろくでもないニュースを報じた。
https://this.kiji.is/325134026115892321

希望、民進が統一会派結成で大筋合意
2018/1/14 13:46

 希望の党の古川元久、民進党の増子輝彦両幹事長は14日、東京都内で会談し、統一会派結成で大筋合意した。会談後、両氏が明らかにした。

(共同通信より)


 先週、希望の党と民進党との統一会派結成が一部の人たちの強い意志の下でそろそろ決まりそうだなとの官職を持っていたが、日曜日の昼間に出し抜けに報じられた。

 民進党の増子輝彦というのは、一昨年(2016年)の参院選で、「野党共闘」に助けられて当選した人間だ。増子はもともと自民党の衆院議員だったが、のち新進党を経て民主党に転じ、2005年の郵政総選挙で落選後参議院に転身したが、一昨年の参院選では福島県選挙区の定数が2から1に削減されたので、「野党共闘」がなければ間違いなく落選していたはずだ。それが「野党共闘」で共産党などの支援も受けて当選したが、当選後すぐに「野党共闘」に尽力した当時の民進党代表・岡田克也の顔に泥を塗る真似をした。

 そんな人間を民進党は幹事長に任命していた。増子の幹事長就任は昨年11月。大塚耕平が民進党代表になったすぐ後に選ばれた。大塚は、海江田万里(現立憲民主党衆院議員)の衆院選落選に伴って行われた2015年1月の民進党代表選で細野豪志の推薦人になった人間で、昨年の民進党代表選当時から「希望の党寄り」の政治家だとして警戒されていた。今回の希望の党との統一会派結成は、増子や大塚らの思惑通りといえるだろう。

 しかし、増子に顔を潰されたことのある岡田克也はこの動きに不満だろうし、一方で希望の党でイニシアチブを取りたい「チャーターメンバー」の細野豪志も民進党との統一会派には反対だろう。

 一般に持たれているイメージとは逆に、政党は小さくなればなるほど政党内の統制はとりにくくなる。昨年秋以来の、つまり希望の党と立憲民主党が左右に分かれていったあとの民進党はその見本といえる。民進党でも衆院議員と参院議員に違いがあり、昨年の分裂劇と選挙を経ていない参議院の民進党には、従来の民進党内に強く働いていた「右バネ」が強い。一方、衆議院の民進党議員は「希望の党に行かなかった人たち」だから、「右バネ」はいたって弱い。

 それよりも何よりも、希望の党も民進党も政党支持率はめちゃくちゃに低い。それは、先週NHKが報じた各党の政党支持率にはっきり表れている。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180109/k10011282981000.html?utm_int=news-politics_contents_list-items_040

NHK世論調査 各党の支持率
1月9日 19時26分

NHKの世論調査によりますと、各党の支持率は、自民党が38.1%、立憲民主党が9.2%民進党が1.3%、公明党が2.4%、希望の党が1.0%、共産党が3.6%、日本維新の会が1.0%、社民党が0.3%、「特に支持している政党はない」が36.6%でした。

(NHKニュースより)


 民進党と希望の党の政党支持率は両党を合わせても2.3%であり、立憲民主党の4分の1しかなく、共産党よりも低く、公明党と同じくらいだ。主要政党でそれより支持率が低いのは、日本維新の会(1.0%)、社民党(0.3%)、それになぜか数字が表示されていない自由党しかない。

 そんな希望の党と民進党が統一会派を組もうとする。何を考えているのだろうか。この動きの主導者たちが属していた旧民進党右派の思想信条(心情)が旧民進党支持層の多くの人たちと一致していないことは、昨年の衆院選で示されたばかりではないか。

 やはり政治とは「惰性」で動くものなのだなあと思わずにはいられない。もっとも、この件には民進党の金庫にある政治資金を希望党の連中が使いたいという強い動機も見え隠れしているが。

 「惰性」といえば、民進党を「左」から割った立憲民主党にもまた、ろくでもない惰性力が働いているようだ。

 先週、立憲民主党の「基本政策」に「公務員人件費の削減」などの項目が入っているとして批判を浴びた。ここでは、くろかわしげる(黒川滋)氏のツイートを引用する。

https://twitter.com/kurokawashigeru/status/950148923754033152

自治労の組織内議員が率先して入ったのに、またもや「公務員人件費の削減」という項目が入っている。1人1人の公務員の人件費水準がどうかという議論はあったとしても、基礎自治体では、正規職員と同数程度いて、人件費にカウントされていない非正規職員をどうするか、という問題の壁になる。


https://twitter.com/kurokawashigeru/status/950161366534406145

立憲民主党の基本政策はおおむね穏当に賛同できるものですが、先にツィートした公務員人件費の抑制と非正規職員の問題、子どもの権利条約のめざす内容が日本政府同様限定的にしか示していなこと、地域公共交通を活性化ではなく細々と維持する路線でしかないところに強く違和感・反感を持ちました。


https://twitter.com/kurokawashigeru/status/950321014419873792

立憲民主党を批判したらふだんにないリツィートで驚いています。厳しい口調だけども建設的批判のつもりです。新しい政党には、建設的批判者に悪のりして、そもそも彼らがダメみたいな議論がされてしまうことを杞憂しています。それが新政党の行動パターンの呪いの呪文みたいになってしまいます。


 黒川氏がやったような「建設的批判」をもっと多くの人たちが行い、それで「草の根から」あるいは「ボトムアップで」新党の発展につなげていく方向でなければダメなのではなかろうか。

 上記引用した最後のツイートで、黒川氏は「新しい政党には、建設的批判者に悪のりして、そもそも彼らがダメみたいな議論がされてしまうことを杞憂しています」と呟いているが、その反対方向の動きも私には気になる。

 それは、「枝野信者」とでもいうべき人たちであって、枝野幸男あるいは立憲民主党に対する批判を何が何でも許さない、という人たちだ。そう、おなじみの「小沢信者」(あるいは「安倍信者」すなわちネトウヨ、それにかつて非常に多く存在した「小泉信者」など)と同じ心理規制に動かされる人たち。これが立憲支持層の中でも目立ってきたように思われる。

 彼らの多くは、昨年秋まで私が「民進党信者」と呼んでいた人たちだ。彼らは民進党に対する批判を許さず、「代表選で前原が勝っても枝野が勝っても同じだ」と叫んでいた。前原誠司を強く批判していた私などは、彼らに「市民様」と呼ばれて痛罵されたものだ。しかし、その審判はあっさり下された。前原誠司が小池百合子の「希望の党」との合流に走ろうとした時、彼らは自らの負けを認めざるを得なくなったのだった。

 「小沢信者」にしても同じなのだが、彼らは基本的に「リベラル」であって、(小沢一郎だの)前原誠司だのとは思想信条(心情)が基本的に異なるはずだ。それが無理に小沢一郎だの民進党だのに自分を同一化して(=「信者」と化して)徒党を組む。

 そうした旧弊から脱却しようとする動きが、ようやく国政政党の選挙結果に表れたのが昨年の衆院選における立憲民主党の躍進ではなかったか。

 立憲民主党の支持者ではない私が言うのも何なのだが、同党の支持者ないしシンパの方には、前記の黒川滋氏を見習って、「建設的批判」を同党にぶつけて行って、政党を育てようとしていただきたいものだ。

 それをしないばかりか、立憲民主党を批判する人に喧嘩を売りに行っているばかりでは、やっていることが「小沢信者」と何も変わらないとしか言いようがない。それでは閉塞感の打破などとうていおぼつかない。
 今年の政治で唯一の収穫といえるのは小池百合子のバブル破裂だ、とはもう何度も書いたが、逆に最悪だったのは安倍晋三政権を生き延びさせ、第4次内閣の発足を許してしまったことだった。

 年の半ば、共謀罪法案と森友・加計問題で批判を浴びた安倍は、7月の都議選で自民党が大敗を喫したこともあって政権支持率が毎日新聞の調査で26%にまで落ちたが、その後V字回復した。

 安倍が生き延びた理由として、少なからぬ政権批判派が愚かにも「期待」なり「ワクワク」なりしてしまった小池百合子(私がこの政治家を肯定的に評価したことは一度もない)がその正体を露呈したため、「政権批判票」が(一部は立憲民主党に流れたものの)「行き場を失った」とか「自民党に回帰した」などというバカバカしい解釈も可能だし、それは全くの的外れでもないとは思う。

 しかし、何よりも良くなかったのは、早々と通常国会を閉めて議論さえなくしてしまえば批判を浴びないし、批判を浴びなければ内閣支持率も下がらないだろうとの安倍の思惑通りに世論が動いてしまったことだ。

 この悪影響は測り知れない。実際、安倍は要人を私邸に呼んで政治を行うようになったと言われている。これを「政党政治の崩壊」と私は位置づけている。

 戦前には軍部の影響力が強くなり、政党は軍部に屈従して政党政治が崩壊したが、現在は安倍の影響力が強くなり、政党は安倍に屈従して政党政治が崩壊しつつある。

 こう書くと、野党、特に共産党は安倍に屈従などしていないぞ、との反論を受けるだろう。

 安倍に屈従はしなかった。それはその通りだ。

 しかし、安倍と同様の極右独裁者である小池百合子に対してはどうだったか。「是々非々」とか言って半分屈従していたのではなかったか。

 民進党に至っては、党が小池系の希望の党と非小池系の立憲民主党に割れた。しかも選挙のなかった参院議員と希望にも立民にも行かなかった衆院議員による民進党も残っている。

 立憲民主党が本当に「非小池系」(好ましくは「反小池系」)であれば良いのだが、昨年小池百合子にすり寄った蓮舫が立民入りを希望している。こんなのや山尾志桜里や(まさかとは思うが)原口一博なんかを入党させてしまえば、もはや分裂前の民進党からわずかに極右の連中(長島昭久、細野豪志、前原誠司、松原仁ら)を除いただけの政党に逆戻りするだけだろう。

 そんなことでは、事実上失われてしまったも同然の「政党政治」を「取り戻す」ことはできないと思うのだ。

 来年、2018年は、安倍の野望である改憲を阻止するとともに、政党政治を取り戻す年にしなければならない。

 このブログはもう少しだけ続けます。それでは皆様、良いお年を。
 1か月ぶりの更新になる。FC2ブログでは、1か月以内に更新がないとトップページに広告が表示されるが、その目前にまで来てしまった。

 衆院選後、私が見に行くブログやTwitterの多くで更新がまばらになっている。京都府立大学名誉教授・広原盛明氏が11月30日に書いたブログ記事(下記URL)の冒頭の文章がその理由を書いているが、強く共感させられた。
http://d.hatena.ne.jp/hiroharablog/20171130/1511997548

 総選挙が終わってからというものは、社会や政治を取り巻く空気がどす黒く澱んでいるように思えて仕方がない。息苦しいというか、重苦しいというか、諦めとも無力感とも付かないどんよりとした空気が上から下まで覆っている感じなのだ。深呼吸しようにも力が湧いてこず、低肺活量のままで息切れしそうな気さえする始末。こんなことでは駄目だと気を奮い起こしても、いつの間にかまたもとの状態に戻ってしまう。いったいどうすればいいのか。

 こんなことは個人的状況なら体調不良やスランプなどと思ってやり過ごせるかもしれないが、社会状況や政治状況ともなるとそうはいかない。自分の受け止め方に問題があるのか、それとも周辺状況そのものに問題があるのか、原因を突き止めなければ納得がいかないのだ。そんな鬱々とした気分でここ1週間ほどは過ごしてきたが、自分の気持ちに決着をつけるためにも(主観的であれ)考えを一応整理してみたい。

総選挙前の一種の興奮状態が過ぎていま思うことは、今度の総選挙はいったいなんだったのかということだ。結局は「何も変わらなかった」との徒労感だけしか残らない。(後略)

(『広原盛明のつれづれ日記』 2017年11月30日付記事「この総選挙はいったいなんだったのか、総選挙後に広がる野党状況の異変、立憲民主を軸とした新野党共闘は成立するか(6)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その93)」より)


 結局安倍政権が続くのかよ、大山鳴動して鼠ならぬ緑の狸一匹の化けの皮が剥がれただけじゃないか、というのが多くの人たちの思いだろう。

 結局、今年の政治シーンの収穫は、いくつかの幻想、主にマスメディアによって作られた(捏造された)虚像がぶっ壊されたことだけだったように思われる。

 それでも、昨年の今頃と比較すればまだ少しはマシだろうとは思う。

 昨年の今頃には、多くの「リベラル」たちが小池百合子に「ワクワク」していた。また、安倍昭恵が「家庭内野党」であるかのような虚像を受け入れる「リベラル」たちも少なくなかった。さらに、右翼方面に目を転じると、稲田朋美が「次期総理大臣候補」であるかのように思われていた。

 これらの幻想ないし虚像はすべて破壊された。安倍昭恵はベルギーから何を顕彰されたのかわからないが何やら勲章を授けられた席上で、目に涙を浮かべながら厚顔無恥にも「つらい一年だった」などと被害者意識むき出しの妄言を発したが、安倍昭恵に同情する人などほとんどいなかった。

 衆院選では希望の党が惨敗したことが、皮肉にも今後の政治に対する最大の「希望」となった。同等の惨敗によって保守二大政党制の実現不可能性がはっきり示されたからだ。

 衆院選後、同党の政党支持率はさらに低下し、JNNの世論調査では政党支持率1.0%となり、衆院議員が左右に分かれて参院議員だけが残っている民進党の支持率(1.1%)と同レベルになった。早くも小池百合子は泥舟だか棺桶だかから片足を抜き去る卑劣な行動に出ている。その無責任さにおいて安倍晋三も橋下徹も小池には敵わないだろう。これほど低劣な「政治家」は見たこともない。

 思えば、今年の正月には、日本共産党の板橋区選出都議・徳留道信が小池百合子に媚びへつらう「新年の挨拶」を発するという最悪の出来事で幕を開けた。徳留は7月の都議選に当選したが、この都議選で党勢を伸ばした共産党は選挙戦中に朝日新聞のアンケートにあった小池都政への評価に関する質問に、全候補者が「ある程度評価する」と答えていた。当然ながら都民ファースト同様、「上からの指示」によって回答が決められていたのだろう。

 「リベラル」も「リベラル」で、春の千代田区長選で小池が推した老害の多選区長が圧勝した時に歓呼の記事を書いたブロガーがいた。このブロガーは小池に「ワクワク」していた例の御仁だが、この人はもっともひどかった頃には「最近はテレビ(のワイドショー)の応援が下火のように思われて不満だ。もっと小池都知事を応援してほしい」という意味のことを平然とブログに書いていた。

 こうした、共産党や民進党支持系「リベラル」に蔓延した「小池翼賛」の機運が、衆院選を前にした前原誠司一派の妄動たる「希望の党」なる一大張りぼて政党を生み出したのだ。

 結局この張りぼて政党の正体を露呈させたのは、「今なら勝てる」と奇襲の衆院解散・総選挙に打って出た安倍晋三だった。

 安倍の狙い通り自公与党だけで議席の3分の2を超える圧勝をおさめたが、安倍が改憲のパートナーと期待していた希望の党ばかりか、日本維新の会まで惨敗したために、安倍にとっては「めでたさも中くらいなり」の選挙結果だったに違いない。

 結局小池百合子や前原誠司・細野豪志らに排除された人たちが枝野幸男を党首に戴いて集まった立憲民主党が野党第一党になった。

 もちろん立民にも課題は多いが、立民の「共謀罪廃止法案」に希望の党が乗らなかったことは、同党の正体をはっきり示すものだった。立民が希望に対して仕掛けた「踏み絵」だったようにも思われる。

 希望の党の長島昭久は、民進党にも共謀罪廃止法案の共同提出に加わらないよう働きかけたが、立憲民主党の反撃に遭って失敗に終わった。民進党が共同提案に加わった最大の要因は、立民には10%前後の政党支持率があるのに対し、希望の党には1〜3%程度の政党支持率しかないことだろう。つまり、そんな分子と近いとの印象を人々に与えることは、再来年(2019年)に参院選を控えている民進党に不利になるとの思惑が働いたものとみられる。

 今年6月に、前文科事務次官の前川喜平に対する謀略報道を仕掛けた読売新聞は、何としても立憲民主党から野党第一党の座を奪おうと、またしても仕掛けてきている。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20171208-OYT1T50108.html

民進・希望、統一会派を検討…将来的な合流視野

 民進党と希望の党が、衆参両院で統一会派の結成を検討していることが8日、わかった。

 両党の複数の幹部が明らかにした。将来的な合流も視野に、来年の次期通常国会に向けて幹部同士の協議に入る方針だ。

 希望の玉木代表は8日、統一会派結成について「選択肢としてはあり得る」と前向きな姿勢を示した。国会内で記者団に語った。

 民進は今年10月の衆院選を前に、民進、希望、立憲民主の3党に分裂した。民進の大塚代表は選挙後、3党の再結集を模索したが、独自路線を掲げる立民の枝野代表は消極的な姿勢を示している。これを受けて民進は、希望との連携を優先する方向にかじを切ったとみられる。

(YOMIURI ONLINE 2017年12月09日 16時54分)


 だが、これも前川前事務次官の「出会い系バー」報道同様、読売の手前勝手な都合によるヨタ記事の域を出ないだろう。

 もちろん民進党には長島昭久と改憲私案を共同で月刊誌に発表した大野元裕なる参院議員などもいるが、この大野はもともと民進党で長島昭久が主宰した「国軸の党」という名称のグループに所属していた長島一派の人間だ。読売が書いたように、本当に民進と希望が統一会派を組むなら、民進を離党して立民入りする参院議員が続出するだろう。また、「無所属の会」の保守系の重鎮である岡田克也や野田佳彦と細野豪志らとの折り合いから考えても、読売の報道が現実化する可能性は低いと私は考えている。

 そうそう、前川前事務次官を引っ掛けようとした謀略報道によって読売の信頼が失墜したことも、今年数少なかった痛快事の一つだ。何しろ、読売同様官邸にけしかけられた週刊新潮の記者が前川氏の身辺を洗おうと動いたら先に読売の記者が動き回っていた上、新潮の記者がいくら取材しても前川氏の疑惑の証拠はいっこうにつかめなかったらしく、新潮はそのことを紙面に書いて「御用新聞」読売を痛烈に揶揄したのだった。代表的な右翼週刊誌である週刊新潮に馬鹿にされるまで読売は堕ちた。ついでにプロ野球の読売軍もBクラスに落ち、クライマックスシリーズの制度が始まって以来初めて同シリーズへの進出を逃したが、これについては私がひいきにしているヤクルトスワローズが球団創設以来最悪の敗戦数を記録して最下位に落ちたので、それこそ「めでたさも中くらい」でしかない。それよりも、野球では大谷翔平がヤンキースを蹴飛ばしてエンジェルス入りしたことは手放しで喜べる朗報だった。

 話を戻すと、小池百合子と旧民進右派が「高転びに転んだ」ことは今年の政治の最大の収穫だった(その次が安倍昭恵の正体が露呈して少なからぬ「リベラル」を幻滅させたことだろうか。安倍昭恵ほど悪質な「安倍政権の補完勢力」はなかった)。

 しかしそれには、安倍自民党を衆院選にまたしても圧勝させるという大きすぎる代償を伴っていた。

 来年、2018年には安倍晋三は改憲への大勝負をかけてくる。いよいよ正念場だ。
 衆院選から3週間が経った。

 選挙直後には小選挙区制に対する批判の声が挙がりながら、それはすぐに沈静してしまい、相変わらず無為無策のまま時間が過ぎるパターンに、今回もはまろうとしている。

 たとえば、市民連合は衆院選翌日の10月23日に、「10.23【第48回衆議院議員選挙に関する見解】」を発表した(下記URL)。
http://shiminrengo.com/archives/1954

 この見解に、

与党の巨大な議席は、勝者にボーナスを与える小選挙区制度がもたらした、民意からの乖離といわなければなりません。

と書かれている。

 また、「野党共闘」の指導的立場にいる学者とされる中野晃一は、衆院選の直後に下記のツイートを発信した。
https://twitter.com/knakano1970/status/922258719907311616

改めて小選挙区制が極めて非民主的な選挙制度であることと、メディアがそのことを問題視しないで「野党分裂で自民漁夫の利」とか報じてことにうんざりするな。 野党側が共産党から希望の党まで一緒にならないと、創価学会と日本会議が一緒になってる与党に勝てない選挙のあり方っておかしいだろ。


 同じ中野晃一は、衆院選総括のインタビュー(上下2回に分けて公開)で下記のように述べている。
https://thepage.jp/detail/20171026-00000005-wordleaf?page=2

穏健な多党制で2つ程度のブロックに

 今回の選挙と希望の党との合流による一連の騒動によって、「二大政党制を追い求めていくことの不毛さが見えた」と言います。前原代表は希望の党への合流の理由を「二大政党の一翼を担うような大きな政党をつくらなければならない」としましたが、「純粋にリベラルだけでいく、純粋に保守だけでいくとなれば大きな政党は作れない」「無茶な企て」と断じました。

 中野教授は「二大政党制に選択肢を狭めることが出来るほど、今は単純な社会に生きていない」といいます。「大きな政党をつくるとなれば政策が焦点ボケする。ペプシコーラとコカコーラのどちらがいいですかと言われても、どちらもちょっと、という人はたくさんいるはず。第2政党をつくるためだけに永田町だけで離合集散を繰り返すというのはもうやめた方がいい」(後略)

(「THE PAGE」 2017年10月27日)


https://thepage.jp/detail/20171026-00000006-wordleaf?page=2

選挙制度見直し「せめて議論を」

 中野教授は、今回の選挙での民進党の分裂騒動が、政治家の政策的な立ち位置をはっきりさせた役割もあったとみます。一方で課題がたくさん明らかになった選挙ともいいます。

「立憲民主党はリベラル色をはっきりさせたことで、躍進したが、戦後の最大野党としては一番少ない議席数であることには間違いない」。現行の選挙制度が、96年の導入から20年以上経過し、「自民党支持者を含め、多くの人が、政治が劣化したといっている。小選挙区制のひずみが明らかになってきたので、広く国民の中でこの制度でいいのか議論するべき」と提起します。

「個人的には、比例の結果で全体の議席を配分する中で、小選挙区で選ばれた議員が優先的に当選するドイツやニュージーランドの『小選挙区比例代表併用制』の仕組みがいいと思うが、中選挙区に戻す方がいい、現行のままでいいのかなど、せめて議論を始めないといけない。過度に小選挙区に依存し、比例的配分が無視されているままでは、混乱は続いていくと思う」(後略)

(「THE PAGE」 2017年10月28日)


 だが、現実に「野党共闘」を推進する政治家や運動家や論客らの間からは、なかなか商戦区制廃止を目指して選挙制度を議論しようとの議論は上がってこない。

 なにしろ、「小選挙区制廃止 野党共闘」を検索語にしてネット検索すると、「kojitakenの日記」の記事「『小選挙区制廃止』を野党共闘の統一綱領に!」とこの日記の前回のエントリ「立憲民主と野党共闘は『小選挙区制を改める』方向に舵を切れ」及びそれにリンクを張っただけの「kojitakenの日記」の記事の計3件が最上位でヒットするのだからお話にならない。

 この日記にも、選挙制度から論点を逸らせようと必死になるコメンテーターの執拗なコメント(今朝も前回のエントリに3件いただいたのでそのまま承認した)が投稿されているが、彼らの同志たちは各所で同様の意見を発し続けている。

 たとえば、「こたつぬこ 選挙制度」を検索語にしたネット検索経由で引っかかったのは、こたつぬこ(木下ちがや)氏のツイートに反応した下記URLのツイートだった。
https://twitter.com/yocibou/status/928268383576924160

よしぼ~
@yocibou
返信先: @Eminenkoさん、@sangituyamaさん

今の選挙制度は、野党が纏まりさえすれば、国民の生活を第一に考えない政権は簡単に取っ換えることができる、というのが売りでしょう。みんな欲が出てきますから、今の選挙制度では、巨大与党体制のメリットはないのではないですか。ギッタンバッコンをするようになっていますよ。

6:30 - 2017年11月8日


https://twitter.com/yocibou/status/928271461478838272

よしぼ~
@yocibou
返信先: @Eminenkoさん、@sangituyamaさん

そうですね、小沢一郎が唱えていた、民進+社民+自由による3党合流或は”オリーブの木”とそれに並行する共産との密接選挙協力が実現すれば良かったですね。そうした合流に、枝野幸男や菅直人が反対したのではないでしょうか。民進の大半が合流してしまえば、小池の手足をもぐことができたと思います。

6:42 - 2017年11月8日


 これらは、民主党・国民の生活が第一の元衆院議員で、現在では自由党を離党したものの今でも小沢一郎を支持しているという三宅雪子氏のTwitterなどで「極オ」(極端な「小沢信者」)とも「極マ」(極端な「前原信者」)などと馬鹿にされている人間のツイートだ。小選挙区制が巨大与党にとってなんのメリットもないとは噴飯ものだが、そんな馬鹿げた意見が目立ってしまうくらい議論は低調なのだ。

 こんなことでどうする。このざまでは、何度国政選挙をやっても自民党の圧勝を許し続けるばかりだぞ。

 「小選挙区制廃止」を野党共闘の統一綱領に!

 そのための議論をもっと活発に!!